日本畜産学会報
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54 巻, 4 号
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  • 本郷 富士弥, 川島 由次, 城間 定夫, 深沢 利行
    1983 年 54 巻 4 号 p. 217-223
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    熱帯原産のマメ科の多年生であるギンネムの飼料化が推進されているが,その中に含まれる遊離アミノ酸の一種であるミモシンの毒性が問題となっている.本報告は,ギンネムの飼料的利用に必要な基礎的知見を得るための一連の研究を実施するにあたって,まずギンネム各部位におけるミモシン含量を測定し,その種子より従来とは異なった方法によって,ミモシンを比較的簡単に分離精製する方法を見い出した.さらに本ミモシンを用いて,その生理活性の確認として,マウスの体重,飼料摂取量および体毛の発育などを中心に調査を行なった.得られた結果は,次のとおりである.1) ギンネムの茎,葉,花および種子などの各部位に存在するミモシン含量は,平均約3.6%であり,生長の盛んな部位ほど,その含有量の高いことが認められた.2) ギンネム種子中の遊離アミノ酸を測定した結果,全遊離アミノ酸中の60%がミモシンであった.3) ギンネム種子,約50gの熱水抽出物を除タン白,濃縮後,再結をくり返すことによって,ミモシンの針状結晶(収量,約0.95g)を得た.本品が,ミモシンであることを市販ミモシンを標品として,薄層クロマトグラフィー,紫外吸収スペクトル,アミノ酸分析および赤外線吸収スペクトルなどによって同定した.4) 本ミモシンを飼料中0.5%,1.0%および2.0%と添加して,マウス(Jcl-ICR系)に投与した結果,その添加量の増加に伴なって体重の減少がみられ,0.5%以上のミモシンの投与は,摂食阻害作用を与えるものと考えられた.5) マウスの体毛の発育は,ミモシンの飼料中への添加に伴なって著しく低下することが認められた.
  • 新部 昭夫, 伊藤 晃, 川谷 豊彦, 鈴木 正三
    1983 年 54 巻 4 号 p. 224-231
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    わが国では広域泌乳記録に基づく泌乳形質の遺伝率に関する報告が極めて少ない.そこで本研究では,泌乳形質の全国集団における遺伝的パラメータを推定した.用いた材料は昭和43年から52年までに高等登録されたホルスタイン1,454頭の泌乳記録である.分析の対象とした形質は乳量,乳脂率,乳脂量および体高,体重の5形質である.分散分析はHENDERSONの方法IIIにより行い,変動因としては種雄牛,分娩時年齢,年次,地域,分娩季節および種雄牛と年齢,地域と季節の交互作用を取り上げた.分散分析の結果,乳量,乳脂量および体重で種雄牛と年齢の交互作用が有意であった.最小二乗平均値は乳量,乳脂率,乳脂量でそれぞれ6,825kg,3.57%,243.5kgであった.各地域の推定値にMean separation(平均分離)を実施した結果,乳量では能力の比較的低い東日本と比較的高い西日本の2群に分離した.乳量,乳脂率および乳脂量の遺伝率はそれぞれ0.06,0.42および0.07と推定された.また各形質間の表型相関は乳量と乳脂率間を除いてすべて正の値で0.1~0.5であった.乳量と乳脂率および乳脂量との遺伝相関はそれぞれ-0.35,0.52であった.また体重と乳量および乳脂率との遺伝相関は-0.72および0.59と大きな値であった.乳量および乳脂量の遺伝率が低く推定されたのは,環境分散が遺伝分散を大きく上回ったことによるが,高等登録牛集団における種雄牛間の遺伝的似通いも多少影響したものと考えられる.
  • 松井 徹, 矢野 秀雄, 川島 良治
    1983 年 54 巻 4 号 p. 232-238
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反すう動物におけるカルシウムとリン代謝に及ぼす内分泌腺の制御機構を明らかにすることを目的とし,めん羊を用いて,甲状腺の摘除(TX)と,甲状腺と上皮小体の摘除(TPTX)とを実施し,カルシトニンまたはカルシトニンと上皮小体ホルモンの分泌を欠除させた場合における血清中カルシウムとリン濃度,骨吸収の指標である血清中ハイドロキシプロリン濃度,および尿へのカルシウムとリンの排泄に及ぼす影響について検討した.
    血清中カルシウム濃度はTPTX処理後2日目までは低下し,以後次第に回復した.血清中ハイドロキシプロリン濃度もカルシウム濃度とよく似た変化を示したことから,上皮小体ホルモン欠乏は骨吸収の低下によって血清中カルシウム濃度を低下させると考えられた.血清中カルシウムとハイドロキシプロリン濃度の回復は長期の上皮小体ホルモン欠乏への適応,すなわち血清中リン濃度の低下により増加した活性型ビタミンD3の働きによるものかもしれない.
    TPTX処理により血清中リン濃度は明らかに低下したが,この低下は上皮小体ホルモン欠乏によるものであろう.
    尿中カルシウム排泄量はTPTX, TX,無処理めん羊の順に高かった.尿中リン排泄量は,TPTXめん羊および無処理めん羊に比較するとTXめん羊で著しく低い値となった.これらの結果から,めん羊におけるカルシトニン欠乏は尿中カルシウム排泄量の増加,リン排泄量の減少を,上皮小体ホルモン欠乏は尿中カルシウム排泄量の増加を引き起すものと考えられた.
  • 西田 朗, 林 孝, 長嶺 慶隆
    1983 年 54 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    前報で明らかにした理論を発展させて,ある形質(P1)に対する継続的な選抜が,その形質と他の形質(P2)との間の遺伝相関(rG1G2)に与える影響を調べた.理論を踏まえた電子計算機による選抜実験で,つぎのことが明らかになった.
    1. 初期の遺伝率と遺伝相関が高いほど,直接ならびに間接選抜反応は大きい.
    2. 選抜のための切断面がG2軸に平行であれば,育種価に関する回帰bG2/G1は選抜の影響を受けないが,rG1G2は世代とともに低下する.
    3. bG2/G1が選抜に影響されなければ,現行の相関反応の推定式は,選抜を受けた後でも有効である.
    4. bG1/G2は世代とともに曲線化する.
    前報で理論の展開のために設けた交配法に関する仮定に,訂正を加えた.
  • 小川 雄二, 中村 良, 佐藤 泰
    1983 年 54 巻 4 号 p. 245-253
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ニワトリ卵管より精製したβ-N-アセチルヘキソミニダーゼ(NAHase)は,ディスク電気泳動で移動度の異なる2本のタンパクバンド(NAHase A,B)を示す.この2種の本酵素について,ゲル〓過,電気泳動,ペプチドマップ及び免疫化学的手法を用いてその性質を比較した.種々のアクリルアミド濃度でディスク電気泳動を行ない,移動度をアクリルアミド濃度に対してプロットしたところ,両者は傾きの異なる直線を示し,分子量が異なるものと推定された.しかし,ゲル〓過法では両者は同一の画分に溶出され,その分子量は1.6×105ダルトンであった.またSDS電気泳動においては,両者は等しい移動度からなる単一のバンドを示し,その分子量は5.3×104ダルトンと算出され,サブユニットの分子量は同一であることがわかった.さらに両者の抗原決定基は同一であり,125Iラベルトリプティックペプチドもわずかな違いがあるのみであった.これらの結果は,2種の酵素のタンパク部分が極めて類似していることを示すものと思われる.
  • 加世田 雄時朗
    1983 年 54 巻 4 号 p. 254-262
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1979年1月から1981年12月までの3年間,御崎馬のharem group (1頭の種雄馬と数頭の成雌馬及びその子馬から構成された群)の行動圏と群の大きさの季節的変化について,放牧地の植生との関連で調査した.
    繁殖シーズンには,全てのharem groupは,ノシバ,チガヤ,ハマヌゲなどの馬の嗜好する草が豊富に繁茂する草地で生活した.この時期にはほとんど全ての成雌馬はその子馬とともに,それぞれ特定のharem groupに加わるので,群の大きさは年間を通じて最も大きくなった.しかし9月以降草地の生産量が減少し始めると,大部分のharem groupは相互に結びつきの強い馬同志の小さな群に分れて草地を離れ,冬の主な採食草樹であるススキ,チガヤ,ホシダ,ツワブキなどの雑草やタヅノキ,アカメガシワ,クロガネモチなどの木の葉を求めて15年以下の杉林内や海岸沿いの雑草地内のそれぞれ固有の冬の行動圏に移動し,そこで冬を過した.
    harem groupの行動圏は相互に重複しており,特に繁殖シーズンには多数のharem groupが同じ草地を共有した.調査期間を通じで,特定の群が特定の区域を占有するいわゆるなわばり行動は認められなかった.
  • 伊藤 和彦, 中川 成男, 岡山 高秀
    1983 年 54 巻 4 号 p. 263-268
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ピックル液に添加したギ酸がクロムなめし排水を循環利用する過程で,クロム液の組成と革質に与える影響を検討した.ナトリウム,硫酸イオンなどクロム液の組成は循環の3~5回までは変動したが,その後は安定した.
    ピックル液に添加したギ酸は浸酸皮によってクロム液中に移行し,9回までの循環の間にクロム液中に蓄積し,その間に徐々にクロム錯塩に配位して,錯塩はカチオンからアニオンに多少移行する傾向が見られる.これはイオン交換クロマトグラフィー及び〓紙電気泳動法による荷電分布の分析で明らかとなった.しかし20回の排水の循環利用で,クロム錯塩は過度のアニオン化もなく,革の機械的強度を測定した結果からも,革質に異常がないことが認められた.
  • 松島 芳文, 池本 卯典
    1983 年 54 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    著者らはマウス涙液蛋白成分のポリアクリルアミドゲル電気泳動像の第II分画に系統間の変異型を発見し,これをMouse tear protein system-1 (Mtp-1)と名付けた.
    今回はMtp-1の遺伝様式を交雑実験によって推定した.また涙液蛋白第I, III, IVおよびV分画に認められる性差について,テストステロンレセプターを欠損した睾丸性女性化症マウス(Tfm/Y)を用いて性差の発現機構を検討した.
    調査した20近交系マウスのMtp-1の表現型はF型8系統(CBA/N, C3H/He, C57BL/6, IC/Le, KK, SWM/Ms, WB/Re, WC/Re), S型6系統(C57L, DBA/1, DBA/2, NZB, NZW, SM/J)およびO型6系統I(A/He, AKR, BALB/c, CL/Fr, DDD, NC)であった.近交系間F1における結果は,F×SではFS型,F×OではF型,S×OではS型のみが観察された.F1, F2世代および戻し交配の結果からMtp-1の遺伝子型はFF, SS, OO, FS, FOおよびSOの6型が推定され,遺伝様式は共優性のMtp-1FとMtp-1Sおよびこれらに対して劣性を示す遺伝子Mtp-1Oの3つの対立遺伝子によって支配され,これらはいずれも常染色体上の同一遺伝子座に存在すると推定された.
    Tfmマウスの涙液蛋白第II分画はF型を示したが,性差を示す各分画は雌型を示し,テストステロン投与による雄型への変化は認められなかった.したがって雄型液液蛋白成分は,涙腺のテストステロンレセプターを介した蛋白同化作用により発現するものと推定された.
  • 石田 直彦, 須崎 尚, 川島 良治
    1983 年 54 巻 4 号 p. 275-279
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    冬季を通してセレンを充分に含む濃厚飼料を与えられて舎飼された牛のセレン栄養状態が,夏季放牧されることによりどのように影響されるか調査した.調査の対象とした牛は,2ヵ所の公立畜産試験場で飼養された平均年齢5.6才の雌牛合計35頭である.春の入牧時と秋の終牧時の年2回,血液•被毛および牧草をそれぞれ放牧牛と放牧場より採取し,ケイ光法により,セレン濃度を測定した.またセレン欠乏症の動物においてその著しい上昇がみられる血清中GOTとLDH活性を測定した.混播牧草中のセレン濃度は,乾物中0.019ppmから0.032ppmの範囲にあり概して低かった.また季節や試料採取地それに草種の違いによる大きな変動は見られなかった.血液と被毛中のセレン合量は,春の放牧開始時に較べて秋の終牧時において有意に(P<0.01)低下していた,しかしこれら秋の値は,セレン欠乏動物ですでに報告されている値と比較すると,正常範囲に入るものであった.血清中GOT活性は,放牧前後で大きな差は見られなかった.血清中LDH活性は,春に比較して秋で増加したが,この増加は羊の白筋症発生時に見られる程の著しいものではなかった.我国で一般的である比較的セレン含量の低い牧草地での夏季放牧により牛のセレン栄養状態は,かなり低下するが,欠乏状態には致らないものと推察された.
  • 相井 孝允, 代永 道裕, 田中 博
    1983 年 54 巻 4 号 p. 280-283
    発行日: 1983/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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