著者らはマウス涙液蛋白成分のポリアクリルアミドゲル電気泳動像の第II分画に系統間の変異型を発見し,これをMouse tear protein system-1 (Mtp-1)と名付けた.
今回はMtp-1の遺伝様式を交雑実験によって推定した.また涙液蛋白第I, III, IVおよびV分画に認められる性差について,テストステロンレセプターを欠損した睾丸性女性化症マウス(Tfm/Y)を用いて性差の発現機構を検討した.
調査した20近交系マウスのMtp-1の表現型はF型8系統(CBA/N, C3H/He, C57BL/6, IC/Le, KK, SWM/Ms, WB/Re, WC/Re), S型6系統(C57L, DBA/1, DBA/2, NZB, NZW, SM/J)およびO型6系統I(A/He, AKR, BALB/c, CL/Fr, DDD, NC)であった.近交系間F
1における結果は,F×SではFS型,F×OではF型,S×OではS型のみが観察された.F
1, F
2世代および戻し交配の結果からMtp-1の遺伝子型はFF, SS, OO, FS, FOおよびSOの6型が推定され,遺伝様式は共優性のMtp-1
FとMtp-1
Sおよびこれらに対して劣性を示す遺伝子Mtp-1
Oの3つの対立遺伝子によって支配され,これらはいずれも常染色体上の同一遺伝子座に存在すると推定された.
Tfmマウスの涙液蛋白第II分画はF型を示したが,性差を示す各分画は雌型を示し,テストステロン投与による雄型への変化は認められなかった.したがって雄型液液蛋白成分は,涙腺のテストステロンレセプターを介した蛋白同化作用により発現するものと推定された.
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