牛および豚精漿中に出現するPGF
2αの由来を明らかにするために,雄牛5頭,雄豚3頭の精漿,精のう腺液ならびに精巣上体尾部漿液中PGF
2α濃度をradioimmunoassay法で測定した.また雄牛および雄豚,各9頭から得た精液を用い,精漿中の果糖濃度とPGF
2α濃度を測定し,両者の関係を調べた.牛の精のう腺液中のPGF
2α濃度は精漿および精巣上体尾部漿液中の濃度に比べてきわめて高い値(平均値で精漿中の値の約100倍)を示した.また18才の高齢牛1頭の精のう腺液および精漿中PGF
2α濃度は他の4頭に比べて著しく低かった.精巣上体尾部漿液中のPGF
2α濃度は5頭中3頭において精漿と同程度の値を示した.豚精のう腺液中のPGF
2α濃度は牛精のう腺液中の濃度に比べて著しく低い値(平均値で約360分の1)を示した.また豚精のう腺液中のPGF
2α濃度は精漿中の濃度に比べいく分高くなる傾向を示したが,その差は牛の場合に比べるときわめて小さかった.豚では精巣上体尾部漿液中のPGF
2α濃度は精漿および精のう腺液中の濃度に比べ高い値を示した.精漿中PGF
2α濃度と果糖濃度の間には正の有意な相関が牛で認められたが(r=0.865,P<0.01),豚では認められなかった.以上.結果から,牛精漿中のPGF
2αは主として精のう腺に由来すると考えられた.豚の場合は牛のような特徴がみられなかったが,副生殖腺液の分泌量を考慮すると,精のう腺の関与を無視でぎないと思われた.
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