牛赤肉,ビーフ•デファッティド•ティシューおよび豚赤血球を原料とし,麹を加え,一般の醤油の製造方法に準じて発酵調味料を作成した.発酵期間1か月ごとに4か月目まで,諸味の一般生菌数,乳酸菌数,カビ数,酵母数を測定し,また,諸味を〓過後火入れし,さらに〓過して調製した調味液について,pH,全窒素,ホルモール態窒素,遊離グルタミン酸,色調を測定した.さらに,発酵の終了した4か月目の試料については,ボーメ度,塩分,純エキス,全糖,アルコール,酸度を測定し,また,市販薄口醤油を対照として,官能検査を実施した.仕込時に,
Pediococcus halophilusの培養液を加え,直ちに30°Cで発酵を開始したところ,仕込後1か月でpHは4.50~4.75に達し,以後はほぼ一定の数値で推移した.全窒素,ホルモール態窒素,遊離グルタミン酸は,いずれも経時的に増加し,発酵が順調に進行したことがうかがえ,分解率も仕込後1か月で41.7~44.1%に達し,以後はゆるやかにこ増加して,4か月目でも45.8~51.7%であった.色調の変化では,牛赤肉,豚赤血球調味液が,3か月目に市販薄口醤油に近い色調になったが,ビーフ•デファッテッド•ティシュー調味液は,4か月目でも薄い黄褐色を呈するにすぎなかった.今回は,諸味に
Pc. halophilusおよび
Saccharomyces rouxiiの培養液を加えたが,諸味中の微生物数は,一般生菌数が10
6~10
7/gの範囲で漸減し,カビは発酵前半期に死減した.また,乳酸菌数,耐塩性酵母数の最大値到達時期は一般の醤油の発酵に比較して早いことが推察された,4か月間の発酵終了後の調味液の分析値を市販薄口醤油と比較すると,全窒素,ホルモール態窒素,純エキスは大差ないものの,遊離グルタミン酸は原料のアミノ酸組成を反映して2分の1から3分の1であり,特に豚赤血球調味液では最も少なかった.各調味液とも,全糖,アルコールは低い数値であり,pHもやや低く,酸度は高く,酸生成がやや過度であると考えられた.また,豚赤血球調味液中の鉄は22ppmで,一般の醤油と大差なく,原料から移行すると思われた高濃度の鉄の遊離はなかった.各調味液とも醤抽に近い色とフレーバーを有していたが,官能検査では,とりわけ豚赤血球調味液の色と外観,香りは良い評価であった.総じて,各調味液とも比較的良好な色と外観,香り,味を有し,調味素材として充分評価できるものであったが,うま味が少なく,酸味がやや強く感じられた.
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