日本畜産学会報
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56 巻, 6 号
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  • 林 孝, 長嶺 慶隆, 西田 朗
    1985 年 56 巻 6 号 p. 439-446
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    放牧牛群の社会関係を調査するために,斜め空中写真法による行動の記録と解析を試みた.放牧地の近くに立つ塔の上から放牧牛の行動を確察しながら,市販の35mm一眼レフカメラを斜め下方向に向けて,3分間隔で連続撮影した.地上座標が既知の牧柵などと共に放牧牛の写真をとれば,放牧牛などの地上座標を写真上の座標から推定することができる.この斜め空中写真法により20頭および8頭からなる2群の各個体の3分間ごとの位置を求め,これを用いて個体間距離および移動距離を計算した.放牧牛の位置する頻度は牧区の角と水飲み場が高い傾向にあった.育成牛と成雌牛を混合した群では,育成牛と成雌牛間の個体間距離は育成牛間および成雌牛間のそれよりも有意に大きいことが多く,これらは牧区内に無作為に2点を配置してシミュレートした値と区別することは困難であった.つまり育成牛と成雌牛は互いに他と関連せずに行動していたといえる.群内で特定の2個体が他よりも有意に小さな個体間距離をもつならば,この2個体は互に親密であると考えられ,この親密な関係を図示することによって牛群内の社会構造を単純化して表現することができる.個体間距離の比較によって,育成牛群内に網目構造あるいは直線構造の内部構造をもつサブグループが見出され,さらに成雌群内には直線構造のサブグループが見出された。しかし他のどの個体とも親密な関係をもたないはなれ牛も少頭数認められた
  • 向井 文雄, 新内 義和, 福島 豊一
    1985 年 56 巻 6 号 p. 447-455
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    黒毛和種種雄牛の選抜は検定場方式による能力検定と後代検定の2段階選抜が実施されている.本研究では検定規模(NT)が限られた条件下における能力検定時の選抜率(p1)と期待される改良量との関係を検討した.2段階選抜のモデルは現行の黒毛和種種雄牛の検定方式を基にした.最終的に選抜する種雄牛頭数は検定済種雄牛頭数(200頭)とその更新率(20,25,33.3%)により変化し,世代間隔は更新率ごとにそれぞれ7.5,7.6.5年とした。NTは1000,2000,3000とし,能力検定頭数(N)を変えることにより種々の検定構成割合を設定した.改良目標はH=aXGX+aYGYとした.GXとGYは能力検定の選抜対象形質(X)および後代検定のそれの育種価,aXとayは相対経済価値である.改良量はCOCHRAN(1951)の式により推定し,世代間隔で除した年当たりの改良豊(ΔH/y),さらに検定総経費で除した年•経費当たりの改良量(ΔH/yc)を算出した.XとYの遺伝率はそれぞれ0.6と0.4,遺伝相関は-0.25と設定した.aX/aY=1の時のΔH/yはNTおよびNが大きくなるほど高くなった.最適なp1は,更新率によって異なるが,NTが1000(N=600)で9~15%,2000(N=1200)で4~8%,3000(N=2000)では3~4%の範囲にあった.なお検定構成割合や選抜率が不適であれば,NTを大きくとっても,小さい場合よりもΔH/yは低下することが認められた,aX/ay=0.5では,Nによる顕著な差異はな高,いずれのNTにおいても30~40%程度の能力検定割合で,p1が25~30%時に最適なΔH/yが期待できた.ΔH/ycは,aX/ay値やNTにかかわりなく,更新率が20%,またNが少ないほどすぐれていた.最適なp1は,ax/aY=1の場合,NTが1000(N=200)では24%,2000(N=300)では18%,3000(N=300)では19%となっ.aX/ay=0.5では,いずれのNTにおいてもN=200で,p1は33,40,45%と大きくなった.以上のように,NTに制限がある場合には,検定構成割合や両選抜時における選抜率の組合わせにより改良量は顕著に変化することが明らかになった.
  • 小沢 忍, 小石川 常吉, 吉武 充, 千国 幸一
    1985 年 56 巻 6 号 p. 456-461
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    枝肉脂肪の冷却前除去処理が枝肉の冷却速度に及ぼす影響を観察するとともに,貯蔵初期における枝肉温度が肉質に及ぼす影響を検討した.黒毛和種成雌牛4頭を供試し,屠殺1時間後右半丸について腎脂肪および胸最長筋をおおっている皮下脂肪の一部を除去し,処理を施さない左半丸とともに0°Cで48時間急冷した後4°Cで貯蔵した.両区における貯蔵初期の枝肉温度低下速度を観察するため,胸最長筋3部位について24時間にわたり温度変化を記録した.また,7日間の貯蔵期間をおいた後,胸最長筋6部位および大腰筋の計7部位について試料を採取して理化学的測定を行ない,処理による理化学的性質の差異を貯蔵初期枝肉温度との関連で比較検討した.その結果,枝肉脂肪を除去することにより枝肉の冷却が促進され,とくに腎脂肪は胸最長筋腰部の温度に対して著しい影響を及ぼしていることが判明した,また,腰部においては脂肪除去により枝肉の冷却が促進された結果,対照区に比較して低いTM-valueと高いpHが観察されたことから,貯蔵初期段階における高い肉温に起因する筋肉の構造蛋白質の変性が抑えられ,解糖作用も緩慢に進展したものと推察された.その結果,保水力が向上し,またcooking lossも少なく,部位によっては肉色も改善される傾向を示した.一方,脂肪除去による肉のやわらかさに対する影響はみられなかった.以上のことから,屠殺後すみやかに枝肉脂肪とくに腎脂肪を取り除くことは,枝肉の冷却を促進する結果,肉質に好影響を及ぼすことが示唆された.
  • 高橋 寿太郎, 正木 淳二, 安田 泰久
    1985 年 56 巻 6 号 p. 462-467
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    成熟雌ラットにPMSG 50IUとHCG 50IUを投与して過排卵を誘起したときの妊娠前半期における子宮粘膜上皮細胞表面の微細構造の変化を,走査電子顕微鏡を用いて経日的に観察した.正常妊娠ラットでは,妊娠5日目において,水胞状およびロゼット状を呈する細胞質突起が全例に出現した.しかし,処理ラットでは,それらの出現数の正常娠に比べて有意に少なく,形状も全く異なっていた.
  • 甫立 京子, 浜田 龍夫
    1985 年 56 巻 6 号 p. 468-471
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    サイレージと配合飼料を給与した成山羊に酢酸-α-トコフェロールを投与して,血漿ビタミンE水準と非イオン性界面活性剤Twean 20による溶血率の関係をしらべ,Tween 20溶血法が成山羊において血漿ビタミンE水準の簡易的判定法として利用できるかどうか検討した.血漿中のα-トコフェロール値を,(1) サイレージの種類をイタリアンライグラスからトウモロコシに変換する,(2) 酸酸-α-トコフェロールを1日100mg宛経口投与する,(3) 酢酸-α-トコフェロールを3mg/kg体重筋肉内に注射するの3種類の方法で変化させた.液体クロマトグラフィーで供試した山羊血漿中の遊離型のα-トコフェロール値を測定した結果,0.88~6.91μg/mlの間に分布していた,それぞれの赤血球を1.25%Tween 20溶液中に浮遊させ,37°Cで15分間培養後,溶血率をもとめた.溶血率が20%以上でα-トコフェロール値が2μg/ml似下,ならびに,溶血率が20%以下でα-トコフェロール値が2μg/ml以上の関係を示したものが83例中77例あった.以上の結果からTween 20溶血法は血漿中のビタミンE水準の簡易判定法として利用できると考えられる.
  • 出口 栄三郎, 平山 秀介
    1985 年 56 巻 6 号 p. 472-475
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    チェビオット(Cheviot)種の純粋交配により出生した異性3子(雄1頭,雌1頭,本症例)の内から,鼠径部皮下精巣を有する間性ヒツジ1例が見い出された.本症例は有角で,その外生殖器は陰唇を有する雌型であった.他の生殖器官として,精巣,精管,陰茎および精嚢腺は存在し,さらに精管膨大部と陰茎亀頭は認められたが,これら全器官はいずれもきわめて小さく発育不良であった.陰茎亀頭は陰唇外に突出していた.未梢血中リンパ球細胞培養後の染色体検査では,核型2n=54,XYの正常雄型であり,本例はXY型性腺形成不全症と判明した,同腹雌は染色体検査で正常雌の核型を示し受胎能を有していた.残りの雄については検索できなかった.
  • 園田 立信, 黒崎 順二
    1985 年 56 巻 6 号 p. 476-483
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    鳥類での大脳辺縁系と推測される終脳旧線状体の後内側部の機能を検討するため,この部位を電気的に局所破壊した場合の各種の行動の変化について調べた.(1) 摂食,飲水行動については明らかな変化は認められなかった. (2) 観察者が実験鶏のケージ内に手を挿入した場合(恐れテスト),ほとんどの手術鶏で恐れ反応を示さなかった. (3) 他の雄鶏の頭部をケージ内に入れた場合(侵入者テスト),手術鶏は全てその侵入者を攻撃せず,また多くの手術鶏が侵入者に対して反応しなかった.次に,他の正常な雄鶏と対面させた場合(初対面テスト),多くの手術鶏は相手を攻撃せず,また相手から攻撃をうけても反応しなかった. (4) 正常な雌鶏と対面させた場合(性行動テスト),多くの手術鶏は求愛も乗駕も示さず,さらに雌鶏からの求愛に対しても反応しなかった.(5) 性行動を示さない手術鶏の精巣重量は,偽手術鶏と比べて明らかな差は認められなかった.
    以上の結果より,雄鶏の終脳旧線状体の後内側部は,外部からの刺激や相手鶏を認識することによって社会行動を発現させるよう機能していると推測される.
  • 鄭 正權, 長澤 太郎
    1985 年 56 巻 6 号 p. 484-494
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Bifidobacterium breve (MT-17)の菌体抽出液を,硫酸プロタミン処理,硫安分画,DEAE-セファロースCL-6Bカラムクロマトグラフィー(2回),ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー,クロマトフォーカシングとポリアクリルアミドゲル電気泳動抽出によりL-プロリン-p-ニトロアニリドを基質として,プロリンイミノペプチダーゼを精製(約3,400倍,比活性590units/mg protein)した.
    本酵素はポリアクリルアミドゲル電気泳動的に単一蛋白質であり,クロマトフォーカシングにより等電点はpI 3.60で,分子量はセファデックスG-75のゲル〓過法およびよびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によりそれぞれ約67,000と67,500と推定された.またその最適pHおよび温度はそれぞれ6.8および37°Cで,40°C30分間の加熱処理では安定,45°C以上では急激に不活性化された.重金属,チオール試薬およびアルキル試薬は阻害的にそれぞれ作用したがキレート試薬は本酵素の活性を阻害しなかった.
    本酵素はdi-, tri-およびlonger-chainなどのペプチドのN末端プロリンとハイドロキシプロリン-β-ナフチルアミドに活性を示した.またハイドロキシプロリン-β-ナフチルアミドの加水分解率はプロリン-β-ナフチルアミドのそれの約2倍であった.
  • 清水 弘, 粟田 崇, 上田 純治, 八戸 芳夫
    1985 年 56 巻 6 号 p. 495-504
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    マウス主要骨格の特性とその大きさを支配する要因を明らかにするために,9週齢時の体重と11骨格部位を含む12部位の測定値について,主成分分析を行なった.さらに,体重選抜に伴う体格の大きさと体形の変化について検討した.
    (1) 主成分分析から得られた第1主成分はすべての測定値で正の固有ペクトルを示し,体格の大きさを表す特性値と解釈された.第2主成分は体形の特性値で肢が長く,胴が短かい体形と関連していた.
    (2) 第3主成分については,性間,反復間で一致した解釈がえられなかったが,雌の反復1の第4主成分と反復2の第3主成分はいくつかの測定値で同程度の固有ベクトルをもち,とくに寛骨幅と強い関連性が認められた.
    (3) 6週齢体重を重く雄雌ともに選抜した系統は体格が大きくなるが,相対的に胴が長く,肢が短かい体形になり,雄のみの選抜系は体格の大きさも増加するが,体形が前系統と逆に肢が長く胴が短かい傾向を示し,両系統間に体形の差異が認められた.
  • 鷹津 秋生, 稲葉 元, 寺島 福秋, 伊藤 宏
    1985 年 56 巻 6 号 p. 505-511
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    オーチャードグラス乾草摂取めん羊から採取したルーメン液(微生物)の凍結乾燥標品を調製し,標品中に保持される飼料消化能の活性について検討した.採取したルーメン液を直ちに-20°Cまたは-70°Cで凍結した後凍結乾燥機で乾燥し,標品を調製した.脱気蒸留水で標品を元の量に復元したものまたは新鮮ルーメン液に人工唾液を加えて培養液として,セルロース(ろ紙粉末),オーチャードグラス乾草,アルファルファミール,フスマ,大麦およびトウモロコシを基質としin vitro消化試験を行なった.いずれの標品もセルロースを全く消化しなかったが新鮮ルーメン液では32%のin vitro消化率(IVDMD)を示した.2種類の標品によるIVDMDはアルファルファミールを除くすべての基質においてほぼ同じ値を示した.オーチャードグラス乾草およびアルファルファミールの標品によるIVDMDは新鮮ルーメン液によるそれより明らかに低かったが,フスマ,大麦およびトウモロコシのIVDMDは両者でほぼ同じ値を示した.標品による培養液中のVFA濃度はいずれの基質においても新鮮ルーメン液のそれより有意に低かったが,乳酸濃度は著しく高かった.以上の結果は標品中にはデンプン分解菌群の活性は保持されるがセンイ分解菌群の活性は保持されないことを示している.
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