日本畜産学会報
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57 巻, 6 号
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  • 寺脇 良悟, 海野 泰彦, 小野 斉
    1986 年 57 巻 6 号 p. 463-470
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛群における疾病の発生が,その後の繁殖成績に及ぼす影響を径路分析により検討した.径路分析では,因果関係を時間的な推移を考慮しながら,疾病が繁殖成績に影響を及ぼす道筋とその相対的重要性について考察した.北海道帯広市農業共済組合人工授精資料より,1980年1月から1981年12月までの間に分娩し,かつ,初回授精を行なった乳牛検定組合加入ホルスタイン種乳牛36群,のべ1018頭の記録を使用した.疾病発生調査は診療台帳に基き,分娩から初回授精までの期間(前期)と初回授精から受胎までの期間(後期)について行なった.それぞれの疾病は8項目に分類した.繁殖成績としては,分娩後初回授精までの日数,初回受精から受胎までの日数,受胎に要した授精回数,空胎日数および分娩間隔を用いた.1) 疾病の発生状況については,卵巣疾患が前•後期とも最も多く,また,前期と比較して後期における子宮疾患の発生頻度が高かつた.2) 罹患記録を有する疾病牛群は,すべての繁殖成績に関して正常牛群より明らかに劣る成績を示した(P<0.01).疾病の影響は,分娩後初回授精までの日数より初回授精から受胎までの日数に対して大きかった.3) 難産,代謝疾患および前•後期の乳房疾患の繁殖成績に及ぼす影響は,すべて間接径路によるものであった.4) 分娩後初回授精までの日数については,前期の卵巣疾患の影響が最も大きく,その影響はすべて直接径路によるものであった.5) 多くの疾病と繁殖成績とを結ぶ間接径路は,後期の子宮疾患を経由した.6) 受胎に要した授精回数,初回授精から受胎までの日数,空胎日数および分娩間隔については,後期に発生した子宮疾患の影響が最も大きかった.7) 総合的に評価すると,繁殖成績向上のためには,胎盤停滞,前•後期の子宮疾患ならびにこれらの疾病にかかわる径路が最も重要であると考えられた.
  • 林 孝, 長嶺 慶隆, 西田 朗
    1986 年 57 巻 6 号 p. 471-478
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛の泌乳曲線を解析するために振動方程式を変形した振動モデルを導入した.y=b(e-t/c-e-t/ac)ここでyは分娩後t日の乳量を表す.このモデルには,a,bおよびcの3個のパラメータが含まれ,それぞれ乳量の立上り,尺度あるいは最高乳量,および泌乳期間に関するパラメータであると解釈された.このモデルとWOOD1)の実験式を毎日の搾乳記録および毎週の体重記録のある32例について逐次法により当てはめた.このモデルの適合度はWOOD1)の実験式とほぼ同じであり,その曲線の形状もよく似ていた.さらにこのモデルのパラメータと繁殖成績,WOOD1)の実験式のパラメータおよび分娩前後の体重変化量などとの関係を検討し,パラメータの生物学的解釈を試みた.振動モデルのパラメータは各々独立ではなく相互に関連し,特にcはaの非線形関数と判断されたことから,乳量の立上りが泌乳期間に影響することが予想され,またパラメータbは個体に固有の形質であることが示唆された.パラメータcは繁殖機能と深く関連していることも明らかになった.
  • 四十万谷 吉郎, 古郡 浩, 安藤 哲, 片山 秀策
    1986 年 57 巻 6 号 p. 479-484
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    無断熱自然換気牛舎(自然区)と断熱機械換気牛舎(断熱区)の冬季間における牛舎内気温が,乳牛の生産反応と生理反応に及ぼす影響を検討した.供試牛はホルスタイン種経産牛6頭であり,3頭ずつ2群に分け,1期2週間の反転法により実験を行なった.配合飼料は脂肪補正乳量の1/3量を給与し,コーンサイレージと乾草は不断給餌とした.室内日平均気温の平均値は自然区が-1.8°Cであり,外気温に大きく影響されたが,断熱区では設定温度の10°Cをほぼ維持していた.サイレージと乾草摂取量は自然区が断熱区より有意に多かったが,乳量,脂肪補正乳量,固形分補正乳量は両区間に差がなく,牛乳生産粗効率は自然区が断熱区より低かった.全固形分率,無脂固形分率,乳蛋白質率は自然区が断熱区より高い傾向を認めた.自然区においては断熱区より牛の呼吸は深く遅かったが,熱発生量は両区間に差がなかった.血漿中グルコース濃度と遊離脂肪酸濃度も両区間に差がなかった.これらの結果から,舎外の日平均気温の平均値が-6°C程度の地域においても,粗飼料摂取量が増加するものの,搾乳牛舎に窓からの入気と棟頂部からの換気を行なう無断熱の自然換気方式を採用することの可能性が示唆された.
  • 関根 純二郎, 森田 茂, 花田 正明, 諸岡 敏生, 近藤 誠司, 大久保 正彦, 朝日田 康司
    1986 年 57 巻 6 号 p. 485-490
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    6ヵ月齢の子牛に対するオーチャードグラス1番刈あるいは2番刈乾草およびそれらと濃厚飼料との混合飼料のエネルギー価を査定し,標準成分表に示されているエネルギー価と比較•検討した.結果は,以下に示す通りであった.1. 可消化エネルギー(DE)価(MJ/kgDM)は,番草による差が認められず,乾草割合(H)と共に,直線的に低下した.両者の関係は,以下の式で表わされた.DE=15.38-6.11(±0.44)H,r=-0.919**,s.e.=±0.10 2. 窒素補正した代謝エネルギー(ME)価(MJ/kgDM)は,番草による違いが認められず,Hと共に直線的に変化した.ME価とHとの関係は,以下の式で表わされた.ME=13.14-5.38(±0.63)H,r=-0.867**,s.e.=±0.15 3. 維持および発育のための正味エネルギー(NEmおよびNEg)価(MJ/kgDM)を推定した.NEmおよびNEg価に,番草による違いは認められなかった.NEm価は,Hと共に直線的に変化したが,NEg価は,曲線的に変化した.それらの関係は,以下の通りであった.NEm=9.99-4.24(±0.38)H,r=-0.928**,s.e.=±0.09,NEg=-3.14+11.86(±0.96)e-H,r=-0.987**,s.e.=±0.12 4.NEg価以外のすべてのエネルギー価は,日本標準飼料成分表により算定したエネルギー価の約92%であった.
  • 野村 哲郎, 祝前 博明, 小川 彰, 伊藤 要二, 佐々木 義之
    1986 年 57 巻 6 号 p. 491-496
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1971年から1982年に兵庫,鹿児島および宮崎県の産肉能力検定場で実施された和牛産肉能力検定間接法における検定雄牛およびそれらの交配雌牛の血統記録を用いて,交配の無作為性について検討した.材料は,158頭の検定雄牛とそれらの交配相手である1,173頭の雌牛の5代祖までの血統記録である.検定雄牛および交配雌牛の平均近交係数ならびにそれらの間の平均血縁係数を検定場別,年次別に計算した.さらに,交配雌牛間の血縁を無視した場合,後代検定による選抜の正確度をどの程度低下させるかについて検討した.得られた結果の概要はつぎのとおりである.1. 検定雄牛および交配雌牛の平均近交係数は,兵庫県で最も高く,次いで鹿児島,宮崎県の順であった.検定雄牛間および交配雌牛間の平均血縁係数についても同様の傾向が認められた.2. 同一セット内雌牛間の平均血縁係数は,いずれの検定場においても,異セット雌牛間の平均血縁係数より高い値を示す傾向が認められた.同一セット内の検定雄牛とその交配雌牛間の平均血縁係数も,いずれの検定場おいても,検定牛と異セット交配雌牛間の平均血縁係数より高い値を示した.これらの結果は,交配の無作為性が満たされていないことを示唆するものである.3. 交配雌牛間の血縁を無視した選抜は,後代検定による選抜の正確度にわずかな低下しか招かないものと考えられた.しかしながら,個々のセットについてみると,交配雌牛間の血縁が非常に高いものもあり検定成績の信頼性を著しくそこなう可能性があるものと推察される.
  • 高橋 幸資, 吉村 圭司, 白井 邦郎, 和田 敬三
    1986 年 57 巻 6 号 p. 497-502
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    溶液中のコラーゲン分子は,適当な環境条件下でフィブリルを再構成する.本研究では,この再構成コラーゲンフィブリルの熱変性挙動を示差走査熱量測定(DSC)により,分子内に存在する架橋(少量の分子間架橋も含む)やフィブリルの集合状態との関連で検討した.すなわち豚皮より抽出した酸可溶性コラーゲン(ASC),中性塩可溶性コラーゲン(NSC)およびこれらのペプシン処理物(PASCおよびPNSC)の分子分散溶液から,種々の条件でフィプリルを再構成し,そのDSCを行なった.いずれのフィブリルも,そのDSCパターンにおいて明らかに熱変性による2つの吸熱ピークを示した.分子内架橋の少ないPASCやPNSCおよびNSCの吸熱ピークは,架橋の多いASCより約10°C低温度領域に検知された.フィブリルの熱変性処理条件をコントロールすることにより,低温側吸熱ピーク成分と高温側ピーク成分を分離して両者の分子内架橋の量を調べたが,相違は認められなかった.低温側ピ-ク成分のみを熱変性させて除き,高温側ピーク成分のみを未変性のまま再び酢酸に溶解後,フィブリルを再構成してみると,DSC曲線に再び2つの吸熱ピークが現われた。このことは,DSCにおける2つの吸熱ピークが,熱変性温度の異なる2つの成分の存在を反映しているのではなく,フィブリルのマクロな集合状態の差を反映していることを示唆している.比較的希薄な濃度の溶液からASCフィブリルを調製したところ,吸熱曲線は約10°C低温側にシフトするとともに,単一のピークを示すことを認めた,以上のことから,フィブリル化したコラーゲンの熱的構造安定性には,分子内架橋のような分子自体の構造の差異に加えて,フィブリルの集合状態のようなマクロな高次構造の差異が大きな影響を及ぼすと考えられる.
  • 佐々木 晋一, 渡辺 泰邦
    1986 年 57 巻 6 号 p. 503-511
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    一般に反芻動物はインスリンに対して抵抗性あるいは低感受性であるとされているが,その耐性機構に関しては不明である.今まで反芻動物において,単離が困難であるとされていた脂肪細胞をめん羊の脂肪組織より,コラゲナーゼ処理にて単離することに成功した.そこで,この単離脂肪細胞を用いてインスリン受容体に対するインスリン結合のKineticsを解析することにより,ラットのそれと比較し,反芻動物におけるインスリン抵抗性の機構の一端を解明した.
    めん羊の単離脂肪細胞に対する125I-insulinの特異結合は4.82±0.41%とラットのそれの70%であった.なお,インスリン結合は3.9×10-11Mから4.2×10-9Mの生理的濃度範囲でラットに比し有意(P<0.02)に低かった.negative cooperativity modelに従いScatchard plotを解析した結果,めん羊およびラットのKe(受容体がインスリンによって全く占有されていない時の親和定数)は,それぞれ1.29×108M-1,1.76×108M-1,Kf(全受容体がインスリンによって占有された時の親和定数)は0.50×108M-1,0.67×108M-1であり,Ro(全受容体数)は2.32×105 sites/cell,2.56×105 sites/cellであった.さらに,average affinity profileは受容体占有率10%時での親和力がラットの50%であることを示した.以上の解析結果から,めん羊における低インスリン結合は,受容体数の違いというよりはむしろ低親和力によるものであり,このことが反芻動物におけるインスリン抵抗性の一因をなすものと考えられる.
  • 小山 久一, 堤 義雄, 鈴木 裕之
    1986 年 57 巻 6 号 p. 512-523
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    家兎,豚および牛子宮腺腔への精子侵入について光学顕微鏡ならびに走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した.その結果,家兎精子は交配後2時間で子宮腺腔に出現しており,とくに子宮角下部で多く観察された,腺腔内精子の出現は交配後の時間経過に伴い子宮角下部から子宮角上部へと拡大し,4時間後では子宮角全域の腺腔に分布していた.しかし交配後48時間で腺腔内精子数は減少しており,96時間では精子を見い出せなかった.豚精子は交配後7時間および26時間10分に屠殺した2頭の子宮腺にのみ発見され,42時間50分から49時間10分にわたって屠殺した4頭の子宮線腔には見いだせなかった.牛では排卵前および排卵後の2頭に凍結融解精液を授精し,24時間後に屠殺したが両牛とも子腺腔に精子侵入が観察された.一般に子宮腺腔内精子の多くは精子頭部を腺底方向に向けていたが腺開口部方向または子宮内膜と平行方向に向けて位置しているのも見られた各動物とも,子宮腔には白血球が侵出し,多数の精子と接触しているのがみられたが,子宮腺腔内での精子貪食頻度は極めて少なかった.家兎および豚子宮内膜表面のSEM像では,子宮腺開口部に頭部を突入している精子が観察され,精子の子宮腺腔内侵入は明瞭であった.
  • テラプントワット スイット, 田先 威和夫
    1986 年 57 巻 6 号 p. 524-533
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    鶏ヒナに対する飼料中サポニンの有害作用と,コレステロールによるその緩和効果について検討した.すなわち飼料中サポニンはその含量に応じてヒナの成長を阻害し,また飼料摂取量を低下させた.大豆蛋白を主成分とする飼料に0.4%または0.8%のサポニンを添加することにより生じたヒナの成長低下は,それぞれ0.4%または0.8%のコレステロールを飼料中に添加することにより完全に防止することができた.アルファルファLPCを主成分とする飼料は0.6%のサポニンを含有しており,これを給与すると大豆蛋白質飼料に比較してヒナの成長が減退したが,0.6%のコレステロールを添加すればそれを防ぐことができた.LPC飼料にサポニンを0.4%添加すると発育阻害の程度は高くなったが,これも1.0%のコレステロール添加により防止できた.大豆蛋白飼料を給与したヒナの血漿中コレステロールは約200mg/dlであるが,これにサポニンを添加するか,またはLPC飼料を給与すると血漿中コレステロール濃度は低下した.しかし飼料中に適量のコレステロールを添加すると,血漿中コレステロールは通常レベルにまで回復した.以上の諸点より,アルファルファLPCはそれに含有されるサポニンの作用によりヒナの発育を抑制するが,サポニンの含量と同量のコレステロールを飼料中に添加すればサポニンの害作用を除去できることが明らかになった.
  • 大島 光昭, 上田 博史
    1986 年 57 巻 6 号 p. 534-539
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    LPCは通常,加熱凝固法により緑汁液から分離されるが,加熱に多大の燃費を要する.緑汁液を嫌気状態に保つことによってもLPCは分離するが,1週間の貯蔵中に約50%の蛋白質がLPCから失われることを前報で報告した.しかしその際,貯蔵1日目で既にLPCの凝固が観察されたので,今回は,イタリアンライグラス緑汁液を1および2日間貯蔵したのちLPCを回収した.また,貯蔵中の蛋白質分解の多くは植物酵素活性に帰しうるところから,それを抑制する目的で塩酸によりpH4に調整した緑汁液も同様に貯蔵した.
    緑汁液を1日嫌気条件下に保つ間に,20および27%の乾物および蛋白質がLPCから失われた.しかし貯蔵前に塩酸処理することにより,上記の損失は約1/2にとどまった,さらに1日貯蔵しても,LPC収量に対する大きな影響はなかった.
    凍結乾燥LPCとメチオニンを単一N源とする粗蛋白質含量10%の飼料を,体重約50gのラットに10日間制限給与した.体重,蛋白消化率,尿中N排泄量およびN保留のいずれの測定項目も,緑汁液の貯蔵中に低下した.しかし塩酸処理1日貯蔵の場合の低下はわずかで,N保留にのみ有意差が認められた.無処理2日間貯蔵の際の消化率の低下は,とくに著しかった.尿中N排泄量の増加と,LPCのリジン含量の低下はよく一致した.
    なお,対照として,緑汁液をpH4に調整後ただちに直火で70°Cに加熱あるいは加熱することなく直接高速遠心により分離した2種類のLPCを用いたが,両者の収量および栄養価に差は認められなかった.
  • 新村 末雄, 石田 一夫
    1986 年 57 巻 6 号 p. 540-541
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 関根 純二郎, 森田 茂, 花田 正明, 諸岡 敏生, 近藤 誠司, 大久保 正彦, 朝日田 康司
    1986 年 57 巻 6 号 p. 542-545
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 金川 佳弘, 松井 徹, 矢野 秀雄, 川島 良治
    1986 年 57 巻 6 号 p. 546-548
    発行日: 1986/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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