LPCは通常,加熱凝固法により緑汁液から分離されるが,加熱に多大の燃費を要する.緑汁液を嫌気状態に保つことによってもLPCは分離するが,1週間の貯蔵中に約50%の蛋白質がLPCから失われることを前報で報告した.しかしその際,貯蔵1日目で既にLPCの凝固が観察されたので,今回は,イタリアンライグラス緑汁液を1および2日間貯蔵したのちLPCを回収した.また,貯蔵中の蛋白質分解の多くは植物酵素活性に帰しうるところから,それを抑制する目的で塩酸によりpH4に調整した緑汁液も同様に貯蔵した.
緑汁液を1日嫌気条件下に保つ間に,20および27%の乾物および蛋白質がLPCから失われた.しかし貯蔵前に塩酸処理することにより,上記の損失は約1/2にとどまった,さらに1日貯蔵しても,LPC収量に対する大きな影響はなかった.
凍結乾燥LPCとメチオニンを単一N源とする粗蛋白質含量10%の飼料を,体重約50gのラットに10日間制限給与した.体重,蛋白消化率,尿中N排泄量およびN保留のいずれの測定項目も,緑汁液の貯蔵中に低下した.しかし塩酸処理1日貯蔵の場合の低下はわずかで,N保留にのみ有意差が認められた.無処理2日間貯蔵の際の消化率の低下は,とくに著しかった.尿中N排泄量の増加と,LPCのリジン含量の低下はよく一致した.
なお,対照として,緑汁液をpH4に調整後ただちに直火で70°Cに加熱あるいは加熱することなく直接高速遠心により分離した2種類のLPCを用いたが,両者の収量および栄養価に差は認められなかった.
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