肥育素牛の採食行動と肥育成績との関連性を検討する目的で, 黒毛和種去勢牛を9カ月齢時および12ヵ月齢時にそれぞれ6頭導入し, 濃厚飼料と乾草の混合飼料を1日2回不断給与し, 24ヵ月齢まで肥育した, 肥育開始1ヵ月後に, 各供試牛の採食行動を観察し, 1日の採食行動パターンの特色, 1日採食量と, 肥育期間中の増体量, 飼料利用効率, 解体成績との関係を検討した.
12カ月齢および9カ月齢導入牛は等月齢時の季節が異なったが, 両者の肥育期間中の平均日増体量はともに0.70kg, TDN要求率は7.87で同じであった. 一方, 枝肉中の分離脂肪含量は肥育末期が冬になった12ヵ月齢導入牛の方が多かった.
体重あたりの第一・二胃組織重量の大きい牛が1日採食量が多いとは限らず, 肥育牛の採食量調節における消化管容積的要因の関与は大きくないものと思われた.
供試牛の導入約1ヵ月後の1日採食量は, 体重の2.6-2.4%に相当し, 1日の採食回数は約11回, 1回の採食時間は11-14分であった. 1日の採食行動を1時間ごとの採食量で表すと, 肥育期間中の平均日増体量が0.8kg以上の牛は給飼直後の1時間に1日採食量の約30%を摂取し, 日増体量が0.7kg以下の牛では20%以下で, 給飼後短時間に多量の飼料を摂取する牛ほど増体成績がよかった.
供試牛の給飼直後30分間の採食量は1日採食量との間に有意な正の相関関係が認められると共に, 肥育期間中の平均日増体量や肥育終了時の肥育度指数との間にも有意な正の相関関係が認められた. これらのことから, 肥育開始時期の素牛の給飼直後30分間の採食量は生理的要求量をよく反映し, 将来の肥育成績を予測する上での判断材料の一っになり得ることが示唆された.
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