本実験はウズラの精巣, 脈管豊多体およびクロアカ腺の重量に及ぼすプロラクチンの影響を検討したもので, とくに脈管豊多体およびクロアカ腺に関しては, プロラクチンが直接的に及ぼす影響ならびにこれらの器官に対する雄性ホルモンの作用を介して及ぼす影響について検討した. 正常な成熟ウズラにプロラクチンあるいはCB 154 (2-
bromo-α-
ergocriptine) を投与したとき, いずれの場合にも精巣の重量は顕著な変動を示さなかった. 一方, 脈管豊多体およびクロアカ腺の重量はプロラクチンの投与によってほとんど変動しなかったが, CB 154の投与によって小さくなる傾向を示し, プロラクチン欠如の影響がうかがわれた. つぎに去勢ウズラにプロラクチンと少量のテストステロンを単独もしくは同時投与し, 脈管豊多体およびクロアカ腺の重量を測定した結果, 両器官の重量はプロラクチンの単独投与では無投与の場合とほぼ同じ値を, またテストステロンとプロラクチンの同時投与ではテストステロン単独投与の場合とほぼ同じ値を示し, いずれの場合においてもプロラクチンの投与効果は認められなかった. 一方, 去勢ウズラにCB 154とテストステロンを単独投与, もしくは組合わせて投与 (あらかじめCB154のみを1週間投与し, 以後はCB 154とテストステロンを同時投与) し, 脈管豊多体およびクロアカ腺の重量を測定した結果, CB 154の単独投与では両器官の重量は無投与と差のない値を示し, プロラクチン欠如の影響は認められなかった. しかし, CB 154とテストステロンとを組合わせて投与したときはテストステロン単独投与のときより, 脈管豊多体は明らかに小さく, クロアカ腺は小さい傾向を示し, プロラクチン欠如の影響が認められた. 以上の結果よりsウズラにおいてプロラクチンは精巣の重量にはほとんど影響しないものと考えられたが, 脈管豊多体およびクロアカ腺の重量については単独で影響を及ぼすことはないものの, 雄性ホルモンの作用を補助することによって影響するものと推定された.
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