日本畜産学会報
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58 巻, 5 号
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  • 広岡 博之, 山田 行雄
    1987 年 58 巻 5 号 p. 365-373
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    わが国の肉用去勢牛を対象に生物学的シミュレーションモデルを用いて肥育時の成長 (1日増体重;DG), 肉質 (筋肉・脂肪比;MFR), ならびに2種の生物学的効率 (1kg増体に要する飼料エネルギー量;FCR;および筋肉1kg生産に要する飼料エネルギー量;MFCR) に対する飼料の量 (飼料エネルギー水準;MEL) と質 (代謝率;q) ならびに遺伝的サイズ (遺伝的成熟時体重;A) の効果をさまざまな出荷時体重において調べた.シミュレーションの結果は感度解析と反応曲面法を用いて分析した.各要因の評価範囲としては, MELは食欲の物理的制限と生理的制限から求められる飽食量の80-100%, qは0.50-0.70, Aは500-600kgとした.得られた結果の概要は次のとおりである.(1) DGはいずれの出荷時体重においてもMEL, q, Aが増加するどとに2次曲線状に増加した.また, qとAの効果は出荷時体重が大きくなるにつれて増加した.すべての1次の交互作用 (MEL×q, MEL×A, q×Aは1%水準で有意であった).(2) MFRはすべての出荷時体重においてMELやqが増加するどとに2次曲線状に高くなり, 逆にAの増加に伴って低くなった.このことより, 脂肪含量の高い肉は飼料の量と質を高くし, かつ小型の牛を用いることにより生産されることが示された.(3) FCRはすべての出荷時体重においてMEL, q, Aの増加に伴って2次曲線状に減少した.それゆえ, 増体に対する飼料エネルギーの変換効率は良質の飼料を多く給与し, 大型の牛を用いることにより向上すると考えられた.(4) MFCRについてはFCRと同様の結果が得られたが, FCRに比べてMELの効果は小さく, Aの効果は大きかった.(5) 以上の結果より肥育牛に関する重要な形質はMEL, q, Aの変化によって変えられる可能性が示された.将来, 栄養学, 育種学, 肉科学など畜産学の多くの分野を統合するこの種の研究は肉牛生産のどとき複雑なシステムの問題解決にますます必要になると思われる.
  • 和田 康彦, 塩見 雅史, 松川 正
    1987 年 58 巻 5 号 p. 374-380
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    全国規模での黒毛和種の種雄牛評価を実施する際の問題点について検討するために, 各地の枝肉市場から得られた現場後代検定成績に反復BLUP法を適用した.データは全国14か所の枝肉市場から収集されたものの中で1種雄牛あたり40頭以上の子の記録のある, 59種雄牛から生まれた7, 374頭の去勢肥育牛の記録である.分析対象形質は日齢体重, 日齢枝肉量, 枝肉歩留, 脂肪交雑, 枝肉等級, 枝肉単価で, しモデルには種雄牛産地内種雄牛の変量効果と, 種雄牛産地および子牛出生年次・肥育県・枝肉市場・屠殺日齢区分の組合わせの母数効果を含めた.反復BLUP法で最尤推定した分散成分から換算した遺伝率は枝肉歩留と脂肪交雑でやや低く推定された.また, リピータビリティーの平均は0.55前後とやや低かった.日齢体重における種雄牛産地の効果の推定値は妥当な値であったが, 脂肪交雑における兵庫県の効果の推定値は予想されるほど高くなかった.種雄牛評価値間の相関は既に報告されている遺伝相関の値と似かよったものであった.さらに, 分子血縁係数行列を考慮した場合と考慮しない場合の種雄牛評価値間の相関は全形質で0.996以上であった.また, 間接検定成績との比較では間接検定のDGと日齢体重の種雄牛評価値の間に0.43, 枝肉歩留と脂肪交雑でともに0.28の相関が認められた。以上の結果より本研究で使用したデータでは日齢体重についてはある程度正確に評価できるものの, 枝肉歩留と脂肪交雑においては正確には評価されないのではないかと推察された.今後, より正確な種雄牛評価を行なうためには基準種雄牛を設定してその後代の一部を各々の子牛生産県や屠場に計画的に配置する必要があろう.
  • 善林 明治, 稲山 真理子
    1987 年 58 巻 5 号 p. 381-387
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    黒毛和種, 日本短角種およびホルスタイン種の去勢牛を濃厚飼料を自由摂取させて肥育し, 生体重330kg台から690kgまでの範囲で段階的に屠殺して得たそれぞれの枝肉中の脂肪の蓄積について, 枝肉中の全脂肪と皮下, 筋間脂肪およびKKCF別の蓄積の様相と, 部分肉ごとのこれらの脂肪の蓄積の様相についておもに品種間の違いを検討した.枝肉中への脂肪の蓄積量は日本短角種が他の2品種よりとくに皮下脂肪で多く, 筋間脂肪で少なかったが, 皮下脂肪に対する筋間脂肪の相対的蓄積が他の品種よりも大きい点に特徴が見られた.黒毛和種とホルスタイン種は, 各脂肪組織間の相対的蓄積の様相がいずれの脂肪組織でも良く似ていた。体脂肪の体各部分への分布は, 皮下および筋間脂肪ともに多くの部分で品種間に差異が見られた.また体各部分での脂肪の蓄積のパターンにも品種間に違いがみられ, 日本短角種とホルスタイン種は肥育が進むにつれてマエ部分への蓄積が多くなるが, 黒毛和種ではロース部分で多かった。
  • 広岡 博之, 山田 行雄
    1987 年 58 巻 5 号 p. 388-395
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    生物的・経済的シミュレーションモデルにもとづき, 経済的観点からわが国における現行の黒毛和種去勢肥育システムを評価し, 更に生産効率を改善する方法を検討した.本研究においては3種類のシミュレーション実験を行なった.結果の概要は次のとおりである.(1) 支出当りの収入で表わされる経済効率に対して飼料エネルギー水準 (MEL), 代謝率 (q), 遺伝的成熟時体重 (A) ならびに出荷時体重 (MWT) の及ぼす効果を反応曲面法を用いて検討した結果, 経済効率はMEL, q, MWTの増加に伴って増加するが, Aに関しては500kgと600kgの間に最大値の存在することが判明した.また湾の効果はMEL, q, MWTのような環境要因によって有意に影響された。このことより最適な家畜の選択は他の環境要因を十分に考慮した上で行なうべきであることが示唆された.(2) 3水準のMEL, q, Aにおける経済効率の推移を, 出荷時体重を450kgから700kgまでの範囲内に設定して調べた結果, わが国における現行の肥育システムをシミュレートした場合, 経済効率を最大にする最適出荷時体重は641kgであった。この出荷時体重は現状の平均出荷時体重である630kgとほぼ一致した.また最適出荷時体重はMEL, qならびに.Aによっていろいろと変化することが示された.(3) 将来, 牛肉の貿易自由化が実現され, 牛肉を枝肉1kg当り1000円で生産しなければならないと仮定した時の現行の肥育システムと, 種々の代替システムとを比較した結果, 現行のシステムでは経済効率は0.681となり, その損益はかなり大きなものであった.そこで, 飼養管理の改善, 家畜の選抜や交雑などいくつかの技術的革新がなされたと仮定して代替システムのシミュレーションを行なったところ, 経済効率は1.0に近い0.993まで改善された.しかし本研究で採用されたシミュレーションの条件内ではいずれの場合も正の利益は得られなかった.
  • 脇田 正彰, 小林 泰男, 星野 貞夫, 北林 栄宗, 橋村 元男, 工藤 英彦
    1987 年 58 巻 5 号 p. 396-402
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種雄去勢牛28頭を供試して, サリノマイシン (SL) およびモネンシン (MN) の飼料要求率および第一胃液性状 (第一胃液pH, 揮発性脂肪酸 (VFA) 濃度, アンモニア濃度およびプロトゾア数) に及ぼす影響を検討した。供試牛は, 無添加 (対照), 20ppmSL添加, 30ppmSL添加, 30PPmMN添加の濃厚飼料を給与する4処理区に等しくなるよう分け, 7か月齢から292日間それぞれの濃厚飼料と粗飼料として稲わらを自由採食させた.最終時体重と平均1日当りの増体量はSLまたはMN給与によって影響されなかったが, 濃厚飼料の摂取量は減少し, SL-20PPm, SL-30PPmおよびMN-30PPm添加給与は濃厚飼料の要求率がそれぞれ7, 2および8%改善された.現在わが国で飼料添加物として指定されているSLの20ppmとMNの30ppm添加給与の効果には, 有意な差は見られなかった.飼料要求率改善の割合は飼養期間中, 必ずしも一定でなかった.試験前半の第一胃液性状には, VFA組成割合を除いてSLおよびMN給与による変更はなかったが, 試験後半にはSLおよびMN給与によって第一胃液pH, アンモニア濃度, および酢酸/プロピオン酸 (A/P) 比が低下した.試験開始時のプロトゾア総数は104/ml以下でイオノフォア給与によってもほとんど影響がなかった.
  • 横濱 道成
    1987 年 58 巻 5 号 p. 403-406
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    二次元電気泳動法 (2-D法) による馬transferrin (Tf) 蛋白のheterogeneityを検出した結果, 易動度の遅いグループに属するTfOおよびR型のheterogeneityはTf型を構成する主バンド (T) および副バンド (T') 成分が分離でき, それぞれ等電点 (pI) の異なる4個計8個のスポットとして検出された.一方, 易動度の早いグループのTfD, FおよびH型はTおよびT'の易動度が互いに近似し, 両成分が重複しているためいずれも4個のスポットとして検出された.また, 同一Tf型内のheterogeneityには, スポット数およびその濃度に変化が認められ, 1%ammoniumfermus sulfate液での処理によりTf型のTおよびT'成分の4個のスポットがそれぞれ1個に変化した.このことから, 2-D法により検出されるTf型内のheterogeneityは鉄イオン等との結合に関与したfunctional heterogeneityであると考えられた.
  • 入江 正和
    1987 年 58 巻 5 号 p. 407-412
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    Bモードの超音波診断装置であるリニア電子スキャナーを用いて, 分娩後の正常泌乳豚10頭の子宮と停留妊娠産物を伴う異常例1例の子宮を下腹部から観察した.皮下組識, 腸内ガス, 膀胱によって囲まれた子宮像の大きさの経日的変化によって分娩後の子宮収復状況を検討した.発達した乳腺や充満した膀胱は, 子宮像の観察を困難にする場合があった.超音波断層像における子宮の大きさは分娩後10日まで急速に減少し, 以後哺乳期, 離乳後を通じて変化はほとんどみられなかった.分娩後8日の哺乳中の, ある母豚で超音波診断により子宮内に停留妊娠産物を認めた.それはミイラ化した胎子であり, 高輝度の脊椎像によって確認することができた.その胎子の体の外形および内部の像は明瞭さを欠いていた.また, その豚の子宮像は大きいままであった.それゆえ, 超音波断層像における分娩後の子宮の大きさは異常の診断の手がかりになるものと思われた.以上のことから超音波断層法は, 分娩後の子宮収復に対する情報を与え, 特に停留妊娠産物の発見に役立つことが示された.
  • 細野 明義, 鈴木 浩, 大谷 元
    1987 年 58 巻 5 号 p. 413-420
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    わが国において食肉製品をはじめ, 多くの食品の製造に最も一般的に用いられているナツメグ, メース, シナモン, 白コショウ, ショウガの5種類を選び, それらの変異原性をSalmonella typhimurium TA 98 から造成したストレプトマイシン依存性株 (SD510株) を指標菌にして調べた.その結果, 供試のすべてのスパイスに変異原性が認められた.また, これらスパイスを紫外線照射 (3.J/m2/secで12時間照射) もしくは加熱 (135℃で3時間) を行なった場合, ナツメグ, 白コシヨウ, ショウガで変異原性が減少することが認められたのに対し, メースではそれらの処理により変異原性は増大した.一方, これらスパイスの変異原性はα-トコフェロール, β-カロチン, システィンそれにニンジンェキスにより全般的に減弱の傾向を示した.中でもα-トコフェロールおよびβ-カロチンのそれらスパイスの変異原性に対する減弱効果は顕著であった.
  • 佐藤 正寛, 水間 豊, 山岸 敏宏
    1987 年 58 巻 5 号 p. 421-428
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    2系統のマウスICR, ddYを用いて, 雄親, 雌親が純系および正逆F1となるような144ペアの組合わせ交配を行ない, 交配後150日間連続妊娠させ, 長期連産能力における統計遺伝学的分析を行なった.交配後150日間の繁殖成績では, 総産子体重 (16.2%), 離乳時総体重 (16.1%) で母性ヘテロシス効果が認められた (いずれもP<0.05).また, 総産子体重で平均直接遺伝効果に有意差がみられ (P<0.05), ddYの産子の能力がICRのそれを上回っていた.しかし, 総産子数, 離乳時総生存数ではいずれの遺伝効果も認められなかった.
    交配後150日間の飼料摂取量1kg当たりの繁殖成績では, 生時生存数で平均直接遺伝効果 (P<0.01) および平均母性遺伝効果 (P<0.05) に, 産子体重で平均直接遺伝効果 (P<0.05) にそれぞれ有意差が認められた.また, 離乳時体重で母性ヘテロシス効果 (8.4%) が有意な傾向にあった (P<0.10).しかし, 直接ヘテロシス効果にはいずれの形質にも有意差はみられなかった.以上のことから雑種の雌親は長期連産能力に加え, 飼料摂取量当りの繁殖能力においてもすぐれていることが明らかとなった.
  • 田中 桂一, 許 振忠, 森 真人, 大谷 滋
    1987 年 58 巻 5 号 p. 429-431
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
  • 松井 徹, 森田 毅, 春本 直, 余田 康朗, 五十嵐 良造
    1987 年 58 巻 5 号 p. 432-434
    発行日: 1987/05/25
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
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