妊娠豚の代謝エネルギー(ME)要求量を要因解析法によって算出するために,総数で16頭の妊娠豚を用い,妊娠89±3日から2日間の呼吸試験(間接法•開放式)および窒素出納試験を実施した.給与飼料は,ME含量の異なる3種類(乾物中のME含量;2.94,3.20および3.82kcal/g)で,1日当り2~2.5kgを定量給与した.ここで得られたエネルギーおよび蛋白質蓄積量のデータを用いて,脂肪蓄積量を推定した.なお,ME要求量を算出するために,2つの異なるモデル式を用いた.得られた結果は,次の通りである.
(1) 直線回帰モデル式を用いた場合,ME摂取量(ME, kcal/W
0.75kg/day)と体全体(妊娠子宮を含む)におけるエネルギー蓄積量(ER, kcal/W
0.75kg/day)との間には,ME=81.0+1.17ERの式が成立した.本式より,維持のME (MEm)は,81kcal/W
0.75kg/dayおよび体全体におけるエネルギー蓄積に対するMEの効率は,85.5%と推定された.
(2) 重回帰モデル式を用いた場合,ME摂取量(ME, kcal/W
0.75kg/day)と体全体における蛋白質および脂肪蓄積に由来するエネルギー(それぞれPとFと略記,kcal/W
0.75kg/day)との間には,ME=81.2+1.15P+1.16Fの式が成立した.本式より,MEmは81kcal/W
0.75kg/day,体全体における蛋白質および脂肪蓄積に対するMEの効率は,それぞれ87.0および86.2%と推定された.しかし,上式のPの偏回帰係数(1.15)は,有意ではなかった(0.05〈P〈0.10)ことから,87.0%の効率の信頼性は薄いと考えられた.
(3) 本研究と前報の結果ならびに文献値の収集により,交配時の体重が120,140および160kgで,妊娠全期間における正味増体量(妊娠子宮を除いた培加量)を20,30および40kgとした場合にっいてME要求量を算出し,本研究とは異なるモデル式を採用しているARCのME要求量との対比を行なった.その結果,本研究で用いた2っのモデル式間のME要求量の差は約2-4%と小さかった.また,本研究のME要求量とARCのそれとの差は-4~9%となり,両値は比較的一致しているものと考えられた.
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