子豚におけるL-トリプトファン0.05%添加トウモロコシ-大豆粕基礎飼料へのリジン,トレオニン,メチオニン,イソロイシンおよびバリンの添加効果ならびにトレオニンの要求量を明らかにする目的で,不断給飼,群飼の条件下で3週間の発育試験を4回にわたって実施した.1) 実験1では,体重約25kgの子豚24頭を用い,基礎飼料へのL-リジン塩酸塩0.5%(リジンとして0.4%),L-トレオニン0.1%およびDL-メチオニン0.1%の添加効果を調べた.基礎飼料の組成はリジン0.44%,トレオニン0.39%,含硫アミノ酸(メチオニン+シスチン)0.49%,トリプトファン0.15%および粗蛋白質(CP)10.7%であった.3種のアミノ酸混合物を添加した場合には,1日増体量(DG)および飼料要求率(FCR)はそれぞれ762gおよび2.5,混合物からメチオニンのみを除いた場合はそれぞれ738gおよび2.6となり,ほとんど差はみられなかった.リジンを含まない混合物を添加した場合にはそれぞれ524gおよび3.2で,発育成績は著しく劣った.混合物からトレオニンを除くとそれぞれ619gおよび2.8となり,中間的な値であった.2) 実験2および3では,いずれも体重約24kgの子豚を20頭用い,トレオニン要求量を検討した.L-リジン塩酸塩を0.5%添加した基礎飼料にL-トレオニンを,実験2では0,0.05,0.1および0.15%,実験3では0,0.1,0.15および0.2%添加して発育の反応をみた.DGおよびFCRはL-トレオニンの添加量が0.1~0.15%までは直線的に変化したが,それ以上添加しても効果はみられなかった.DGおよびFCRを指標とすると,トレオニンの要求量はそれぞれ飼料中含量0.51および0.49%と推定された.3) 実験4では,体重約29kgの子豚16頭を用い,L-リジン塩酸塩0.5%およびL-トレオニン0.15%添加した基礎飼料に対してL-イソロイシンおよびL-バリンをいずれも0.1%添加した場合の効果を調べたが,それらの添加効果は認められなかった.4) 以上の試験結果から,CP10.7%で,トリプトファンを添加したトウモロコシ-大豆粕飼料における第1および第2の制限アミノ酸はそれぞれリジンおよびトレオニンであり,含硫アミノ酸,イソロイシンおよびバリンは不足しないことが示唆された.
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