日本畜産学会報
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59 巻, 4 号
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  • 藤本 泰裕, 木村 英司, 澤田 勉, 石川 全, 松永 寛, 森 純一
    1988 年 59 巻 4 号 p. 301-305
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種経産牛17頭を用いて,分娩前における直腸温,心拍数および呼吸数の変化を観察し,それらの分娩予知への応用について検討した.直腸温には日内変動が認められ,午前9時に比べ午後4時の値の方が高かった.分娩0-1日前には著しい直腸温の下降が認あられた,直腸温下降の度合いは午前9時よりも午後4時の方が大きく,分娩予知には午後4時の直腸温測定値の方が利用価値が高いものと考えられた.分娩前2日以内の午後の直腸温が39.0deg;C以下に下降したものおよび前日より0.5deg;C以上下降したものは,それぞれ64.7%と47.1%であった.直腸温による分娩予知の基準としては,「39.0deg;C以下への下降」は「前日の値より0.5deg;C以上下降する」ものよりも適中率が高かった.心拍数は分娩0-1日前に著しい増加を示した.しかし,実測値では個体差が大きく,分娩予知には不適当であり,分娩30日前の値に対する比率を用いた場合に,高い適中率が得られた.分娩前2日以内にこの比率が1.3を越えたものは88.2%であった.一方呼吸数では,実測値においても比率においても若干の変化は認められたものの,変動が大きく,分娩予知への利用には不適当と思われた.
  • 菅原 道熙, 服部 貴次, 中島 泰治
    1988 年 59 巻 4 号 p. 306-310
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    筋胃潰瘍(GE)陽性である加熱ブラウンホールミール(魚粉)を含む飼料で,(強度負荷;60%,中度負荷15%配合),ブロイラー雄雌を7日間飼育した.配合した試験飼料に,シメチジン,重曹および硅酸マグネシウムを,それぞれ段階的に添加して(シメチジン:実験I,2.5,5,10,20,40,80,160ppm;実験II,0.625,1.25,2.5,5,10,20,40,60,80ppm;重曹:実験III,0.42,0.84,1.68%;実験IV,0.21,0.42,0.84,1.68%;硅酸マグネシウム:実験III,0.45,0.9,1.8%;実験IV,0.225,0.45,0.9,1.8%),GEスコアおよび各雛のGE症状,斃死雛の発生状況,飼料摂取量および増体量から,GE抑制効果の有無を判定した.シメチジンには,添加量の増加に伴って,飼料摂取量,増体量の改善傾向と共に,若干のGE抑制効果が認められ,強度負荷の場合に,その効果はより顕著であった.しかしその効果の程度は,実用的に充分評価されるものではなかった.重曹と硅酸マグネシウムでは,強度負荷の場合に,飼料摂取量,増体量に若干の改善傾向が認められたが, 中度負荷では全く効果は認められなかった.
  • 河南 保幸, 苅田 淳
    1988 年 59 巻 4 号 p. 311-318
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    孵化期における骨組織形成の特徴を明確にするため,孵卵開始12日目より孵化後7日までのニワトリひなの〓骨について,骨化の進行経過を組織学的に検索した.その結果,孵卵16日までの胚子の〓骨では,骨芽細胞は大型で多角形をなし,骨膜下において,多数の骨小柱が骨の外側に向かって突出するとともに,カルシウム沈着が活発に進行した.しかし,孵卵18日以後の胚子では,骨膜の骨芽細胞が急速に萎縮し,特に孵化期には,骨質におけるカルシウム沈着の進行が緩慢となり,骨形成が著しく衰えた.さらにこの時期の髄腔側の骨組織では,破骨細胞が増数肥大して骨吸収が急速となり,胚子期に形成された骨質が減少した.また孵化後は,骨膜内層の骨芽細胞が柱状をなして骨質表面で密集するようになり,骨膜下では骨小柱が再び突出し,カルシウム沈着の進行は骨組織の内方にまで及んでいた.そして,骨組織の内側部では,類骨層の拡大と層板状のカルシウム沈着が明瞭となり,オステオンが造られ始めた.なお,骨芽細胞と類骨層の変化について解析した結果,骨組織の内側部でみられる骨芽細胞は孵化直前には機能的に高い状態にあることが確認された.
  • 梶 雄次, 古谷 修
    1988 年 59 巻 4 号 p. 319-323
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    肉豚後期(体重58~92kg)におけるリジン要求量を,不断給飼,群飼の実際的飼養条件下で測定した.反応指標には,窒素蓄積,1日増体量および飼料要求率を用いたが,窒素蓄積はカリウムを指標物質とする窒素出納法によって測定した.玄米と大豆粕を主体とし,粗蛋白質,リジンおよび可消化エネルギーがそれぞれ12.8%,0.61%および3043cal/g含む基礎飼料とこれにL-トレオニンおよびDL-メチオエンをいずれも0,1%加え,さらにL-リジン塩酸塩を段階的に添加して,リジン含量を0.61,0.69,,0.77および0.85%とした4種類の合計5種類の飼料を供試した.基礎飼料を除く全ての飼料でリジンが第1制限アミノ酸であった.平均初体重58kgの雌豚10頭を1群2頭の5群に分け,1期7日間の5期間を設けて,5×5のラテン方格法によって試験を実施した.試験結果はつぎの通りであつた.1) 窒素蓄積,1日増体量および飼料要求率は,いずれも飼料中リジン含量が0.77%まではリジン含量の増加に伴って改善されたが,0.85%ではそれ以上の改善はみられなかった.2) 各反応がプラトーに達する点を折れ線モデルに当てはめた結果,リジン要求量の推定値は窒素蓄積,1日増体量および飼料要求率で,それぞれ,0.75,0.75および0.72%となった.3) 増体1kg当りのリジン要求量は19.5gと推定された.4) カリウムを指標物質とする窒素出納法は,不断給飼,群飼の実際的飼養条件下でのアミノ酸要求量を推定する上で有効な方法であることが確かめられた.
  • 鉄代謝および免疫グロブリン量との関連性について
    横濱 道成, 側原 仁, 茂木 一重
    1988 年 59 巻 4 号 p. 324-328
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    軽種馬のトランスフェリン(Tf)は,生直後と生後1ヵ月齢前後に鉄飽和またはそれに極めて近い状態になる時があることが二次元電気泳動(2-D)法によるTfのパターン分析で分った.また,この時期はTf量および血清鉄値もピークを示し,Tfの総鉄結合能が高くなっていた.一方免疫グロブリン量とTfの加齢変動を比較した結果,IgG量が最も低下する生後1~3ヵ月齢頃は,Tf量が成体時の約2倍量保持している時期であった.以上のことから,Tfの加齢変動は,生体内におけるTfの鉄運搬機能および感染防御と関連した成育時期におけるTfの顕著な作用増進の現象と考えられた.
  • 宮本 元, 佐藤 英明, 石橋 武彦
    1988 年 59 巻 4 号 p. 329-334
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ブタ卵胞卵を0-20°Cの温度に冷却したときの生存性を明らかにするために,本実験を行なった.直径2-5mmの卵胞から卵核胞期の卵胞卵を採取し,20%の牛胎児血清を含む修正リン酸緩衝液(30°C)に浮遊させた.卵胞卵を0.5または3°C/分の速度で0,10および20°Cに冷却し,これらの温度に到達直後,または0.1,20および60分間保った後に室温下の培養液で洗浄後,培養した.卵胞卵を,冷却前または0.5°C/分の速度で0,10,20°Cに冷却し,ただちに室温下の培養液で洗浄後培養した場合,卵核胞期から第2成熟分裂中期に移行した割合はそれぞれ54,0,0および18%であった.また卵胞卵を3°C/分の速度で0,10,20°Cに冷却した場合,第2成熟分裂中期に移行した割合はそれぞれ0,0および3%であり,20°Cに冷却した卵の移行率は3°C/分より0.5°C/分の方が高かった.30°Cで卵巣から採取した卵胞卵を洗浄し小試験管に移した後,30°Cで60分間保持しても,培養後第2成熟分裂中期へ移行する割合は低下しなかったが,20°Cで60分間保持すると培養後の移行率は低下した.ジメチルスルフォキサイド,グリセロールおよびショ糖を添加しても,冷却された卵胞卵の生存性は影響を受けなかった.以上の成績から,本研究における実験条件下では卵核胞期のブタ卵胞卵を0-10°Cに冷却すると死滅し,ブタ卵胞卵は冷却処理にきわめて弱いと思われる.
  • 長嶺 慶隆, 林 孝, 佐藤 博, 西田 朗, 小松 繁樹
    1988 年 59 巻 4 号 p. 335-343
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    日本短角種の皮下脂肪厚をAモードタイプの超音波測定機で測り,この測定値を直接検定にこおける選抜形質とすることについて検討した.また比較のため去勢肥育牛についても測定を実施した.
    1) 直接検定牛における遣伝的パラメーター
    88頭の直接検定牛を用い,平均体重(±標準偏差)476(±13)kg時に背および腰において,背正中線を対称軸にして左右6ヵ所(上部4ヵ所,下部2ヵ所)ずつの部位で超音波により皮下脂肪厚を測定した.上部の4ヵ所において左右の皮下脂肪厚の和は,0.42~0.63の遺伝率を示し,左右8ケ所の上部の皮下脂肪厚の和は0.87の遺伝率を示した.上部の皮下脂肪厚と一日平均増体量は正の遺伝相関を示した.
    2) 間接検定の去勢牛における遺伝率
    39頭の去勢肥育牛の皮下脂肪厚を平均体重(±標準偏差)578(±43)kg時に(1)と同じ方法により超音波を用いて測定した.上部4ヵ所および下部2カ所において左右の皮下脂肪厚の和の遺伝率は,0.34~0.60および0.34~0.75であった.
    3) 測定時の体重による皮下脂肪厚の変化
    88頭の直接検定牛のうち15頭について皮下脂肪厚を平均体重425kgおよび477kg時に超音波により測定した.農家の去勢肥育牛40頭の皮下脂肪厚を平均体重419,457,480kg時に超音波により測定した.直接検定牛においては体重増加による皮下脂肪厚の平均値の変化はほとんどなかった.上部の皮下脂肪厚による直接検定牛の順位は2度の測定時においてあまり変化しなかった.去勢肥育牛では体重の増加にともなって皮下脂肪厚が増大した.
    皮下脂肪厚と一日平均増体量との間には正の遺伝相関が推定されたため,成長速度だけによる選抜は枝肉における脂肪の蓄積を早める可能性がある.これらの結果より超音波による皮下脂肪厚測定値を選抜形質として直接検定に採用すべきであろう.選抜形質としては遺伝率が高く,体重による順位変動の少ない上部の皮下脂肪厚の超音波測定値が望ましい.また超音波を用いて去勢肥育牛の皮下脂肪厚を測定し,飼養法や出荷日を調整することにより,さらに効率の高い可食肉生産が行なえるであろう.
  • 島崎 敬一, 土本 哲也, 祐川 金次郎
    1988 年 59 巻 4 号 p. 344-350
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    血液中および乳汁中に含まれている免疫グロブリンと,Staphylococcus aureusの産生するプロテインAとの相互作用は,免疫グロブリンの各クラス,サブクラス間でさらには動物種間でその様式は微妙に異なっている.ウシ免疫グロブリンのIgGクラスでは,IgG 1はプロテインAと相互作用せず,IgG 2が相互作用をする事がプロテインA-セファローズCL-4 Bを用いたアフィニティークロマトグラフィーで確かあられた.さらにIgG 2のヒスチジン残基をジエチルピロカルボネートによりエトキシホルミル化したところ,4.2-8.3個のヒスチジン残基が修飾され,かつ7.7個以上修飾されたIgG 2ではプロテインA-セファローズカラムへの結合能は全く見られなくなった.ヒドロキシアミンにより修飾基を脱離すると,プロテインA-セファローズカラムへの結合能が回復し,ウシIgG 2とプロテインAとの相互作用にIgG 2のヒスチジン残基の寄与が不可欠である事が示された.
  • 今井 壮一, 扇元 敬司
    1988 年 59 巻 4 号 p. 351-356
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    複胃をもち,反芻動物のモデル動物として有望視されているハタネズミの消化管内における原虫相を検索した.その結果,反芻胃内や馬大腸内,またカピバラの下部消化管内から報告されているような繊毛虫の存在は認められなかったが,前胃を含む調査した全ての部位から多数の鞭毛虫が験出された.盲腸,直腸内からは2種の鞭毛虫が認められ,それぞれTritrichomonas muris, Tetratrichomonas microtiと同定された.一方,前胃および後胃からは1種のみが見出された.本種はトリコモナス類であると考えられたものの,同定の有力な特徴である前鞭毛を有していなかったが,虫体の計測値および形態の比較から,本来下部消化管である盲腸,直腸に生息しているT. murisの栄養体への移行型であると考えられた.
  • 寺島 福秋, 金子 雅一, 伊藤 宏
    1988 年 59 巻 4 号 p. 357-365
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻家畜において粗飼料主体給与から濃厚飼料多給へ急激に飼料を切り換えた場合,乳酸アシドーシス等のルーメン発酵異常が起こる.本実験は濃厚飼料給与に適応した新鮮ルーメン液またはその凍結乾燥標品を飼料切換時めん羊のルーメン内に投与し,飼料摂取量およびルーメン発酵に対する影響を検討した.粗飼料給与に適応しためん羊を2日間絶食した後,濃厚飼料を1日2時間だけ7日間給与した.実験期間1日目および2日目の飼料給与直前に脱イオン水(対照区),濃厚飼料給与に適応した新鮮ルーメン液またはその凍結乾燥標品を含む溶液(600ml)をルーメン内に投与した.1日目の飼料摂取量は区間に差異は認められなかったが,2日目から4日目の飼料摂取量は新鮮ルーメン液投与めん羊で対照区より多く,凍結乾燥標品投与区で著しく少なかった.1日目の濃厚飼料給与後におけるルーメン液中乳酸濃度は,新鮮ルーメン液投与区でほとんど増加しなかったが対照区および凍結乾燥標品投与区で著しく増加した.この増加割合は標品投与区で大きかった,いずれの区でも2日目以降のルーメン液中乳酸濃度は低かった.1日目のルーメン内VFA濃度は濃厚飼料給与後増加したが,その増加割合は新鮮ルーメン液投与区で大きく,標品投与区で著しく小さかった.2日目以降のVFA濃度も同様の傾向を示した.これらのことから,濃厚飼料に適応したルーメン液の投与は急速な濃厚飼料への切換時の適応に対して効果を示すが,凍結乾燥標品の投与はむしろ乳酸産生を増加させてルーメン発酵異常をもたらすものと考えられる.
  • 関口 総一郎, 園田 豊, 今井 清
    1988 年 59 巻 4 号 p. 366-375
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究は,産卵鶏における連産内中央卵の排卵前24-12時間(排卵周期の前半)の血中progesterone(P4), testosterone (T), estradiol-17β(E2)の変動を明らかにするとともに,排卵前24時間にAminoglutethimide(AG)を投与してステロイドを減少させた後,羊LH,mLHRHを投与し,排卵の反応性を検討した.
    すなわち,排卵周期の前半に,血中P4とE2濃度に有意な変動が認められたが,Tに関する変動は認められなかった。また,排卵前24時間100mgのAGを投与した結果,P4,T,E2濃度は有意に減少し,全例(8/8羽)で排卵が抑制された.一方,排卵前12時間のLHまたはLHRHの投与は,全例(3/3,5/5)に早期の排卵を誘起した.LH投与後の血中P4濃度は,LHRH投与に比べて,2時間早くピークに達した.また,ホルモン投与から放卵および排卵までの時間は,LHRH投与に比較してLH投与後が明らかに短かった.さらに,同時間にLHを投与したAG前処理鶏においても,全例に排卵の誘起がみられた.一方,LHRHを投与したAG前処理鶏における排卵率は,わずかに20%であった.ホルモン投与後,排卵を生じたAG前処理鶏で,血中P4濃度の明らかな上昇がみられたが,排卵しなかったAG-LHRH処理鶏は,有意なP4の増加はみられなかった.さらに,AG処理後にLHRHを投与した鶏では,LHRH投与後の血中LH濃度が排卵の有無にかかわらず,同様に増加した.したがって,AG-LHRH処理鶏における排卵率の低下は,下垂体からのLH放出の低下に依るものではないことが指摘された.
  • 荒井 威吉, 板橋 一男
    1988 年 59 巻 4 号 p. 376-378
    発行日: 1988/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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