日本畜産学会報
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60 巻, 12 号
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  • 島田 和宏, 居在家 義昭, 鈴木 修, 小杉山 基昭
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1071-1075
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    肉用牛における乳量と吸乳行動の関係を明らかにするため,黒毛和種67組と無角和種10組の母•子牛を用いて,分娩後10,30,60,90,180日における1日当たりの乳量(1日乳量)と吸乳行動を調査した.1日乳量と1日当たりの吸乳回数(NSD)の関係は,黒毛和種においては各測定日とも相関係数が負であり,30,60日齢では,有意な相関が認められた.黒毛和種における1日乳量と1日当たりの吸乳時間(DSD)との関係は,NSDと同様に,1日乳量が増加するのに伴いDSDが短くなる傾向にあった.30,60日齢では有意な相関が認められた.無角和種では10日で乳量の増加に伴うDSDの短縮が認められた.1日乳量と1回当たりの吸乳時間(DSB)との関係は黒毛和種では認められなかったが,無角和種では30日で1日乳量が増加するのに伴いDSBが長くなった.
  • 及川 卓郎, 山岸 敏宏, 水間 豊
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1076-1081
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    沖縄における島嶼集団の遺伝的特徴について検討することを目的に,その繁殖構造の分析を行なった.集団育種推進事業基礎雌牛集団の繁殖構造を地域ごとに分析した結果,各集団の平均血縁係数は一般的に高く,いずれの地域においても近交を回避するような交配が行なわれていた.この中で石垣島集団の平均血縁係数は最も高く,近交係数,カレントインブリーディングも他の地域に比べ高かった.各地域集団間でその平均血縁係数を比較すると,石垣島と供給公社の集団,伊江島と宮古島の集団が血縁的に近かった.次に,集団分化指数をみると,いずれの指数も1.0以下で,近交を避ける交配が積極的に行なわれていたことを示していた.以上の集団間比較により,各島嶼集団における分化傾向,集団内の遺伝的均質化が明らかとなった.
    次に,典型的な繁殖地帯(伊江島地域)における導入の経過を3期に分け,その推移について検討した.その結果,1期(1969~1973)における集団は,様々な系統(血統)由来の個体が混在したモザイク状の集団であった.そのため,集団内における個体間の平均類縁係数は最も低く,個体の平均近交係数も低い値であった.第2期(1974~1978)に入ると,特定の種雄牛に供用が集中し,平均血縁係数は高い値を示した.また,3期(1979~1982)でも血縁係数は高く,近交を回避するような交配が積極的に行なわれていたことが示唆された.この血縁係数上昇の原因は,2期の場合と異なり,広島県の種雄牛に供用が集中したためであることが明らかとなった.以上の結果から,沖縄の島嶼集団の特徴は,遺伝的に分化しつつある地域集団の存在,島嶼間の環境変異が大きいことおよび島嶼間で改良傾向が異なることの3点であった.
  • 一色 泰, 中広 義雄, 周 占祥
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1082-1092
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    単冠白色レグホーン種成雄を用いて空腸遠位端,回腸中央部,回腸遠位端および直腸遠位端の4部位にそれぞれフィステルを装着し,各部位より排泄物を採取して飼料の消化率と消化管内通過時間を測定した.供試飼料は配合飼料のほか,とうもろこし,小麦,玄米,大麦,マイロ,裸麦の各単味飼料と,玄米-大豆,玄米-魚粉の各混合飼料とし,これら飼料中に混入した酸化クロム(0.5%)を指標物質として各成分の消化率を算出した.
    飼料摂取量は,飼料間では差が大きかったがフィステル装着部位による影響は比較的小さい傾向がみられた.飼料の消化率は,各成分とも飼料の種類により各部位間でかなりの差が示された.しかし全飼料の平均でみると,粗蛋白質は各部位間において,粗脂肪と可溶無窒素物は回腸中央部以降において消化率にほとんど差が示されなかった.粗繊維の消化率は空腸遠位端でとくに低い値がみられたが,バラツキが大きいために有意な差ではなかった.飼料の消化管通過時間は,全過程(直腸遠位端)を通過する時間のみならず,各部位の通過パターンにも飼料間で差異のあることが明らかになった.以上の結果は,鶏ではとくに近位の腸管で飼料成分は大部分が消化吸収されている可能性を示唆している.
  • 小林 茂樹, 新井 喜明, 和田 信行, 石丸 圀雄
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1093-1101
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本試験は,実用規模の牛ふんメタン発酵プラントにおける汚水水質浄化機能を,その有機物等負荷量の変化から調査•分析し,その効率的運転および管理方法の確立ならびに今後の同種プラント設計の資料収集を目的とした.1987年10月から1年間,東京農業大学那須牧場の牛ふんメタン発酵プラント(発酵槽容積30m3,一槽式)から約20日ごとに投入汚泥(牛ふん搾汁液),発酵槽内容液および消化廃液を採取し,その理化学的性状を測定した.その結果,発酵液と消化液のpHは弱アルカリ域,ORPは-200~-300mVの範囲にあり,良好な嫌気状態にあった.総BODは平均値で搾汁液の49,000mg/lから消化液の32,000mg/lへ,このうちの溶解性BODは26,000mg/lから14,000mg/lへ減少した.搾汁液総BODの約半分が溶解性BODであり,平均除去率はそれぞれ32.2%および45,2%であった.総CODcrおよび溶解性CODcrの除去率はそれぞれ平均32.5%および51.7%であった.TS,VS,SSおよびVSSの除去率はそれぞれ平均22.7%,31.5%,9.9%および12.8%であった.アルカリ度は発酵液の6,010mg/lから消化液の8,990mg/lに上昇し,アンモニアの発生および有機酸の消費が推察された.NH4-Nは発酵液の498mg/lから消化液の640mg/lに微増し,消化液中のT-Nは2,000mg/l以上であった.搾汁液中の有機酸含有率は酢酸3,290mg/l,プロピオン酸1,030mg/l,酪酸450mg/lおよび吉草酸97mg/lであったが,発酵液および消化液中には僅少であった.消化ガス発生量はVS1kg当り0.2~0.4m3の範囲で変動し,有機物負荷量がその発生量に影響した.なお,本実験の温度範囲(25~36°C)では,高発酵温度はVS除去率を高め(r=0.468),逆にVSS除去率を低下させた(r=-0.513).
  • 白山 琢持, 上原 孝吉, 岡村 浩
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1102-1116
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    北米産塩蔵成牛皮を裸皮の状態で予備分割し,裸皮重量に対し3%のクロム鞣剤(Cr2O3:25%)を使用してウエットブルーを調製した.このウエットブルーを分割,シェービング後,各種の鞣剤またはクロム鞣剤で再鞣を施すことにより,クロム鞣剤の使用量を大幅に削減することが可能であった.省クロム鞣しウエットブルーから調製されたナッパ革,靴甲革,靴ソフト甲革および床ベロア革の品質は良好であった.
    省クロム鞣しのウエットブルーをクロム再鞣する場合,再鞣排液中のクロムは添加量の56%と高いので,これを循環利用することがクロムの使用量と排出量の削減に非常に有効であることを認めた.
    床ウエットブルーをクロム再鞣する場合,再鞣浴にウエットブルーを16時間浸漬することにより再鞣でのクロム利用率が向上した.
  • 岡本 全弘, 阿部 英則
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1117-1121
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    稲わらをアンモニア処理,蒸煮処理および蒸煮後アンモニア処理することが化学組成,自由摂取量および消化率に及ぼす影響を明らかにするため,去勢羊を用いて4×3ユーデン方格法による試験を実施した.アンモニアの添加量はわら重量の3%であり,蒸煮条件は8kg•cm-2の蒸気圧で20分間であった.アンモニア処理により,窒素含量が高められNDFおよびヘミセルロース含量は対照の無処理のわらにくらべ減少した.また,乾物摂取量,乾物および繊維成分の消化率が向上する傾向が認められた.蒸煮処理により,NDFおよびヘミセルロース含量は減少したが,ADFおよびADL含量は増加した.また,乾物摂取量およびセルロースの消化率はやや上昇する傾向にあったが,NDFおよびADFの消化率はやや低下する傾向が認められた.蒸煮後アンモニア処理することにより,両処理が加算的に影響するようであり,ヘミセルロース含量が無処理わらにくらべて著しく減少し,乾物摂取量は顕著に上昇した.各成分の消化率はいずれもアンモニア処理をした稲わらにおいて最も高かったが,蒸煮処理の後アンモニア処理をすることにより,両処理の間の値となった.
  • 豊川 好司, 福士 浩行
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1122-1127
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    モミ殻の反芻胃内滞留と,その滞留が他飼料の摂食量を抑制する程度を知る基礎資料を得るために,去勢成雄メン羊3頭を用い1区3頭として本試験を行なった.基礎飼料にフスマ400g/日を用い,オーチャードグラス2番乾草を自由摂食させた区を対照区とした,試験区はモミ殻を対照区風乾物摂取量の5%,10%,15%および20%をルーメンフェステルから投与し,同上乾草を自由摂食させた.1) モミ殻の反芻胃内滞留時間は,モミ殻5%区は乾草より約65%長い54時間であったが,モミ殻10%区では乾草のそれの約210%と大幅に遅延し,15%区および20%区ではさらに遅延した.2)モミ殻の充満度推定値を乾草の充満度に推定したその補正係数は0.45倍となった.3) 補正係数に基づいたモミ殻区の摂取全飼料の全消化管内充満度推定値は,モミ殻5%区から15%区までが110.3~112.7g/Wkg0.75であり,対照区の109.1g/Wkg0.75より高かったが,モミ殻20%区は106.7g/Wkg0.75と低かった.4) モミ殻区の乾草摂取量の減少量はモミ殻15%区まではモミ殻投与量とほとんど同じであったが同20%区でその減少量が明らかになった.5) モミ殻の乾物消化率は19.6~20.5%の範囲内であった.6) モミ殻の反芻胃内滞留時間は長いが,全消化管内充満度推定値は乾草程度であった.7) モミ殻の反芻胃内滞留時間からみた他飼料の摂食量を大きく抑制しない安全な量は全飼料の10%以下であった.
  • 福原 利一, 守屋 和幸, 原田 宏
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1128-1134
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    2,239頭の黒毛和種去勢肥育牛の食肉市場出荷成績を用いて,新しく改正された牛枝肉取引規格に導入された歩留等級にかかわる枝肉重量,ロース芯面積,ばらの厚さ,皮下脂肪の厚さ,推定歩留と肉質等級にかかわる脂肪交雑評点の計6形質に関する遺伝的パラメータを推定するとともに,BLUP法による供用種雄牛の評価を行なった.遺伝率推定値は,それぞれ枝肉重量0.14±0.05,ロース芯面積0.32±0.09,ばらの厚さ0.23±0.07,皮下脂肪の厚さ0.12±0.05,推定歩留0.28±0.08および脂肪交雑評点0.19±0.06であった.推定歩留とロース芯面積および皮下脂肪の厚さとの間の遺伝相関は,それぞれ0.96および-0.67と大きなものであった.また,推定歩留と脂肪交雑評点との間には正の遺伝相関が認められた.BLUP法による推定歩留と脂肪交雑評点の評価値の序列がともに第1位の種雄牛が観察された.以上の結果,食肉市場などで得られる新しい牛枝肉取引規格の歩留等級にかかわる枝肉形質に関する記録は,これからの黒毛和種牛の産肉能力改良のための枝肉評価に関する情報として意義あるものと考えられた.
  • 牛田 一成, 田中 久, 小島 洋一
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1135-1142
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    デンプンを主要なエネルギー源とするインビトロルーメン発酵に対するフェノール酸の影響をバッチ式発酵装置を用いて検討した.第一試験で用いたフェノール酸は,パラクマル酸(PCA),フェルラ酸(FA),桂皮酸(CA),3-フェニルプロピオン酸(3PPA),フロレチン酸(PHLA)であった.PCA, FA, CAを培養液に0.1%(w/v)添加するとVFA,二酸化炭素,メタンの生成が抑制を受けたが,3PPAとPHLA添加で抑制はみられなかった.酢酸,酪酸およびメタンの減少は繊毛虫に対する効果に由来するものと推察された.この点をさらに検討するため,第二試験ではPCAとFA添加の効果を繊毛虫の存否との関係で検討した.酢酸とメタン生成はPCAとFAによって繊毛虫の存否に関係なく抑制を受けたが,酪酸は繊毛虫が存在する系でのみ抑制を受けた.以上の結果は,(1) 2-プロピレン側鎖の水素付加が桂皮酸誘導体の毒性を低下させること,(2) 繊毛虫が毒性の高いフェノール酸に影響を受けること,(3) 酪酸生成細菌がこれらのフェノール酸に対して感受性が低いことをルーメン微生物の混合系において確認するものと思われた。
  • 大谷 元, 細野 明義
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1143-1150
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ペプシン,トリプシンまたはキモトリプシン単独,およびそれら3種の酵素すべてで消化したαs1-カゼインを限外濾過にかけ,分子量5,000以下のペプチドを分離し,それらの抗原性と免疫原性を調べた.酵素免疫測定法での未処理αs1-カゼインとそのIgG抗体との反応は,3種の酵素すべてによる消化ペプチドではほとんど阻害を受けなかった.また,各単独酵素消化ペプチドにおいても,その25%阻害に要する量は,いずれも未処理αs1-カゼイン量の1000倍以上であり,元の抗原性は顕著に低下していた.一方,それら消化ペプチドを家兎に注射した場合,生産されるIgGクラスの特異抗体量,並びにそれら抗体のモルモットに対する受身皮膚アナフィラキシー誘導能は,3種の酵素すべてによる消化ペプチドにおいて最も低く,次いでペプシン単独,キモトリプシンとトリプシン各単独ペプチドの順に高くなった.これらの結果,およびそれら各消化ペプチドの分子量の測定結粟より,牛乳αs1-カイゼン消化物の免疫原性に関係する分子量域は1,400から5,000の範囲内にあることが示唆された.
  • 田中 桂一, 大谷 滋, 許 振忠
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1151-1160
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    成長中鶏の飼料にパンテチンを添加することによって,血漿中の各脂質画分濃度および肝臓における脂質合成に及ぼす影響を検討した.
    コレステロール無添加および添加飼料にパンテチン200ppmを添加し,14日間飼育した時,成長中鶏の増体量,飼料摂取量および肝臓重量には大きな影響を及ぼさなかったが,腹腔内脂肪重量は低下する傾向を示した.
    コレステロール添加飼料を給与した鶏に比べて,コレステロール無添加飼料を給与した鶏では胆嚢重量が大きく,さらにコレステロール添加飼料にパンテチンを添加すると胆嚢重量は増大し,胆汁の分泌が促進されることが推察された.
    コレステロール無添加飼料給与に比べて,コレステロール添加飼料給与では肝臓中のトリグリセリドおよび総コレステロール含量は高い値を,リン脂質含量は低い値を示した.さらにトリグリセリド含量は両飼料にパンテチンを添加することにより,また総コレステロール含量はコレステロール添加飼料にパンテチンを添加することによって低下した.コレステロール無添加飼料給与に比べて,コレステロール添加飼料給与では血漿中のトリグリセリド,エステル型と遊離型コレステロールおよびLDL-コレステロール濃度は高い値を示した.またトリグリセリド濃度はユレステロール添加飼料にパンテチンを添加することによって,エステル型と遊離型コレステロール,リン脂質およびLDL-コレステロール濃度は両飼料にパンテチンを添加することによって低下した.
    肝臓での脂肪酸合成関連酵素であるACC活性はコレステロール添加飼料へのパンテチン添加,NADP-MDHおよびCCEの活性はコレステロール無添加飼料へのパンテチン添加によって低下した.またCCEおよびHMG-CoA還元酵素の活性は,コレステロール無添加飼料給与に比べて,コレステロール添加飼料給与の鶏の方が低い値を示した.そしてHMG-CoA還元酵素の活性は,コレステロール添加飼料にパンテチンを添加することによって増加した.
    以上の結果から,コレステロール添加飼料にパンテチンを添加することによる肝臓および血漿中コレステロール含量の低下は,肝臓におけるコレステロール合成の低下ではなく,胆汁を通してのコレステロール分泌の促進によるものと推察される.
  • 脇田 正彰, 星野 貞夫
    1989 年 60 巻 12 号 p. 1161-1162
    発行日: 1989/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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