ミモシン量を減少させたサイレージ乾燥ギンネムが反芻家畜に対する飼料として従来報告されているギンネムの配合量を上回って給与できるか否かを明らかにするために,めん羊を実験動物として本飼料の飼料価値と安全性について検討した.動物9頭を3頭ずつ3群(A, H, S)に分け,A群にはアルファルファペレット1,200g,H群には天日乾燥ペレット800gおよびアルファルファペレット400g,S群にはサイレージ乾燥ペレット800gおよびアルファルファペレット400gを1日2回(9時,17時)に分けて等量ずつ10週間給与した.
ギンネムペレットの一般成分値は,アルファルファペレットに比べて糧繊維および粗蛋白質含量が高く,粗脂肪含量はほぼ等しい値であった,一方,可溶無窒素物含量は,アルファルファペレットよりも低かった.粗脂肪の消化率は,天日乾燥およびサイレージ乾燥ペレットともにアルファルファペレットとほぼ等しい値を示した.また,粗繊維の消化率は,アルファルファペレットと天日乾燥ペレットはほぼ等しく,サイレージ乾燥ペレットは,アルファルファペレットに比べて低い値であったが有意差は認められなかった.粗蛋白質および可溶無窒素物の消化率は,天日乾燥およびサイレージ乾燥の両ペレットともにアルファルファペレットよりも低い値であった.これらの消化率を用いて算定した天日乾燥ペレットおよびサイレージ乾燥ペレットの可消化養分総量はアルファルファペレットより有意に低くなった.A, HおよびS群の供試めん羊は,試験期間を通して残食はみられず,給与飼料を1時間以内で全量採食した.しかし,増体量は,A, SおよびH群の順に高い値を示した.このことは,TDN摂取量に加えミモシン摂取量の相違に関係づけられた.血漿中チロキシン濃度およびトリヨードチロニン濃度は,H群およびS群ともにA群よりも低い値を示していた.一方,発毛は,H群およびS群ともに差が認められず,A群と同様に回復した,また,H群およびS群とも試験期間中における体毛の脱毛現象は全く観察されなかった.さらに,諸臓器の肉眼的所見においても異常は認められなかった.血漿中GOT活性およびGPT活性は,A群およびS群ともに10週間にわたり一定であったが,H群は漸増した.これは,肝臓,腎臓などの各種臓器の病理組織学的所見と一致していた.甲状腺組織は,A群およびS群に特に変化は認められなかったが,H群においては濾胞の顕著な萎縮と繊維化が認められた.なお,本実験におけるH群およびS群の血漿中T4濃度は,脱毛,食欲減退など肉眼的所見に病的症状が認められた放牧牛の値と比較して,いずれも高い値であった.
以上のことから,反芻家畜にギンネムを給与する以前にギンネムのミモシン量を減少させることは,ギンネムの利用性を増大させる有効な方法であると考えられた.
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