子牛のセリ市場出荷体重を黒毛和種牛の育種に関する情報として利用することの可能性を,正規性,遺伝率の大きさおよび種雄牛のEPD (Expected Progeny Difference)の3点から検討した.材料は,宮崎県で生産され,10ヵ月齢で地域の家畜市場に出荷された黒毛和種子牛8,910頭(32頭の種雄牛の産子)のセリ市場出荷体重である.
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2検定の結果,子牛の出荷体重分布の正規性は,雌子牛および去勢子牛のいずれの分布においても認められなかった(P<0.05),また,去勢子牛の分布は雌子牛に比べて、やや尖りが目だち,しかも分布の裾が右に伸びているという特徴を示した.しかし,子牛全体の分布は,典型的なベル型の分布を示し,正規性が認められた.
父牛である種雄牛,性,母牛年齢,出荷年度および母牛の登録点数は,子牛のセリ市場出荷体重に対して,いずれも効果(p<0.01)を示した.7個の数学モデルを使って,同父半きょうだい相関法で推定したセリ市場出荷体重の遺伝率は0.46~0.63と他の子牛の発育形質の遺伝率に比べて高いものであった.また,BLUP法によって推定した32頭の種雄牛EPDの範囲は,使用したモデルによって若干の違いは認められるが,種雄牛間のEPD差は34.04~36.71kgといずれも市場出荷体重の全平均の10%以上にもおよびこの形質に関する種雄牛間の比較選択も容易であった.また,種雄牛の出生年次別にEPDを図示してみると,種雄牛の供用目的の推移が明らかになった.
以上の結果より,子牛のセリ市場出荷体重による種雄牛の評価は可能であり,市場出荷体重は黒毛和種牛の育種に積極的に活用されるべきであると思われた.
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