牛枝肉の評価法の検討を目的として,枝肉中の筋肉と可食肉重量およびそれらの割合を,枝肉測定値と枝肉の脂肪蓄積度についての審査値を用いて推定を試みた.2系統の黒毛和種,ホルスタイン種,日本短角種,黒毛和種とホルスタイン種との交雑種(75:25)の去勢肥育牛合計107頭の枝肉を供試した.これらの牛は濃厚飼料飽食方式で肥育し,各品種ともほぼ200kg以上の体重範囲にわたって,それぞれの平均枝肉組織構成割合が大きく違わないように体重範囲を設定して屠殺した.枝肉形状は長さ11部位,幅,厚みおよび周囲長は各4部位,合計23の測定値を用いた.枝肉の脂肪蓄積度の指標として,枝肉表面脂肪を前,中,後躯別に5段階法で審査評価した.筋肉量は枝肉を解体して得,可食肉量は部分肉ごとの筋肉量に特定の係数を乗じて求めた.審査値と枝肉からの分離脂肪量および枝肉中の脂肪割合との間の相関は,全審査値の平均値との間で最も高く,それぞれ0.50,0.58であった.審査値は一般に脂肪量よりも脂肪割合との相関が高かった.23の枝肉測定値の中から取り出した11の枝肉測定値の3乗値と,枝肉重量およびこれらの逆数,さらにこれらの測定値間のすべての組合せで作った比の計156個の変数,さらに脂肪審査値を用いて,各従属変数について重回帰式を求めた.筋肉と可食肉重量を求める式では,枝肉重量のみで全変動の大部分(R
2=0.87-0.89)が説明され,枝肉測定値および審査値の効果は余り大きくなかった.またそれらの割合を求める式では枝肉重量の効果は大きくなく,それぞれの比あるいは審査値の効果が大きかったが,式の寄与率は0.41から0.44で余り高くなかった.これらの式のうち最も高い寄与率が得られた式に,牛品種をダミー変数として加えると,重回帰式の寄与率は,とくに割合を求める式で大幅に(R
2=0.57)改善された.それぞれの従属変数について,品種ごとに重回帰式を求めると,式の寄与率はとくに割合を求める式で大幅に改善されたが,式に取り込まれた変数は品種間で異なっていた.
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