黒毛和種45頭,ホルスタイン種16頭および日本短角種34頭の去勢細育牛を用いて,個々の筋肉の成長を,全筋肉重量に対する各個筋肉の相対成長と,全供試牛の幾何平均筋肉重量における個々の筋肉の重量割合について検討し,品種間の違いの有無を調べた.調査筋肉は四肢下部および頚部の下層に分布するものを除いた,全筋肉98個のうちの58個で,全筋肉重量に占める割合はそれぞれ黒毛和種90,0%,ホルスタイン種88.4%,日本短角種87.4%であった.各筋肉を標準筋肉群にまとめて,各筋肉の全筋肉重量に対する相対成長係数でみると,四肢の筋肉には1より小さいものが多く,また前躯に当たる7,8,9群では1より大きい筋肉が多く,成長波が四肢から発し,前方に移行する様子が認められた.個々の筋肉の相対成長係数が品間で異なったものは全部で18個認められたが,そのうちの13個は相対成長係数のみならず,全筋肉の幾何平均重量85.311kgでの筋肉割合でも他の筋肉よりも大きかった.したがってこれらの13個の筋肉は,品種間の重量差が成長が進むにつれて大きくなるものであった.個々の筋肉の重量割合に品種間に違いが見られた数は58個中33個で,黒毛和種では脊椎周囲部および頚部の筋肉でとくにホルスタイン種より大きいものが多く,ホルスタイン種では四肢および腹部の筋肉で,いずれも他の2品種より大きいものが多かった.また日本短角種では後肢と腹部の筋肉で黒毛和種より,また脊椎周囲部と頚部の筋肉でホルスタイン種より,それぞれ大きいものが多く見られた.黒毛和種と日本短角種は胸腰最長筋が最大筋肉であり,ホルスタイン種では大腿二頭筋が最も大きかった.
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