必須アミノ酸(ラット)のうち遊離の分枝アミノ酸(BCAA),フェニルアラニンおよびヒスチジンについては,ルーメン繊毛虫類による代謝様式がまだ知られていない.そこで,本研究では分枝アミノ酸を取り上げ,ルーメン繊毛虫類によるそれらの代謝を検討した.ヘイキェーブおよび濃厚試料を給与している山羊(日本在来種)のルーメン内容物から常法により繊毛虫類を採取し,洗浄後これを絶食条件下の抗生物質を含む緩衝液(MB9)中で,39°C,6時間インキェベーションを行なって細菌の影響を除去した後,再洗浄を行ない,
14C標識BCAA並びに抗生物質を加えたMB9中で.さらに12時間インキェベーションを行なった.インキェベーション用容器としては,中心井付きのワールブルグフラスコを用いた.インキュベーション前後に分析用試料を採取し,遠心上清液および虫体加水分解物中のアミノ酸および遠心上清液中の揮発性脂肪酸(VFA)を定量した,さらに,それらの放射能並びにCO
2画分の放射能を液体シンチレーションカウンターで測定した.その結果,絶食繊毛虫類は,放射性のBCAAからCO
2およびエーテル可溶物質,特に,C
4およびC
5のVFAを生成していることが分かった.本研究ではそれらのVFAを同定できなかったが,過去のルーメン細菌などの結果から,C
4-VFAはイソ酪酸でバリンから生成されると考えられた.また,C
5-VFAには,少なくともイソ吉草酸および2-メチル酪酸が含まれ,それぞれ,ロイシンおよびイソロイシンから生成されると考えられた.さらに,BCAAの分解速度についても考察した.
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