日本畜産学会報
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62 巻, 7 号
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  • 梅津 元昭, 石井 伸一, 古沢 軌, 正木 淳二
    1991 年 62 巻 7 号 p. 605-612
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ミンク(Mustela uison)下垂体から成長ホルモンを分離し,生化学的,免疫学的特性を調べた.下垂体をアセトンで脱脂後アルカリ条件下で抽出しSDS電気泳動で22 KDの分子量を持つ蛋白をGHと仮定してDE52によるイオン交換クロマトグラフィー,硫安沈澱,Sephadex G-75と逆相高速液体クロマトグラフィー(ODS-120T)を用いて精製した,等電点電気泳動により等電点は6.9であり,またGHのアミノ酸組成は他の哺乳動物のGHと類似していた.アミノ末端のアミノ酸配列(34残基)の比較により,ミンクの22 KD蛋白は他の哺乳類のGHと類似していることが判った.さらにその蛋白はヒツジGH抗血清を用いたラジオイムノアッセイで,ウシGHと平行な競合的阻害曲線を示した.これらのことから分離された蛋白はミンクGHであると結論つけられた.
  • 勝俣 昌也, 矢野 秀雄, 宮崎 昭, 川島 良治
    1991 年 62 巻 7 号 p. 613-619
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    高温暴露がラットにおける血漿中のグルカゴンおよびインスリン濃度,ならびにグルコースと脂肪酸の動員に与える影響について検討した.12週齢のウイスター系雄ラット(平均体重359g)を26°と33°の2グループに分け,13gの市販粉末飼料を毎日午前10:00に与えて飼育した.16日目から,5日間全尿を採取し,尿への窒素排出量を測定した.22日目から32日目にかけて,給餌後2,4,8,16,24時間後に全ラットの頚静脈より1mlの血液を採取し,血漿を得た.最終の血液採取後,全血を腹部大動脈より採取して血清を分離した.また,精巣上体脂肪組織量を秤量し,ラットの体脂肪量の指標とした.高温環境下では,血液中のグルコースならびに遊離脂肪酸濃度が有意に低く,精巣上体脂肪組織量は高かった.エネルギー源としてのグルコースならびに脂肪酸動員の低下が,高温環境下におけるラットの体脂肪量の上昇に関連しているものと考えられた.一方,血漿中のグルカゴンおよびインスリン濃度は高温暴露によって変化しなかった.
  • 山口 高弘, 北澤 春樹, 星野 忠彦
    1991 年 62 巻 7 号 p. 620-627
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚胎児骨格筋より単離した豚筋原細胞(sMc)とそれよりクローニングした得た細胞を発癌物質の刺激なしに12カ月以上培養系で継代維持することに成功した.培養法は豚胎児抽出液(SFE)とコラーゲン処理培養シャーレの使用さらに初代培養での筋原細胞の選択的調製法を採用することによって達成された.sMcとクローニングされた3種の細胞(sMc-1, sMc-2, sMc-3)はすべてクレアチンホスホキナーゼ(CPK)活性が有意に高かった.sMc, sMc-1, sMc-2は紡錘形で双極性の典型的な筋原細胞の形態を示した.これらの細胞は単層培養として維持された場合,しばしば筋管細胞を形成し,細胞内CPK活性が増強した,すべての細胞は1.0-2.0%SFEと10%の牛胎児血清を添加した培地で非常によく成長し,長期培養中その形態的特徴を変えることなしに増殖し続けた.今回,sMcとそのクローン化細胞の長期純粋培養法が確立された.今後,豚骨格筋の筋形成過程を研究する上でこれらの細胞は大いに役立つと考えられる.
  • 舟場 正幸, 鍋田 肇, 矢野 秀雄, 川島 良治
    1991 年 62 巻 7 号 p. 628-635
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    高タンパク質飼料を摂取しためん羊の腎におけるカルシウム(Ca)の動態およびEDTA負荷時の血中へのCa動員量を検討した.対照飼料(CP:9.9%, ME:2.02Mcal/kg)と高タンパク質飼料(CP:19.6%, ME:2.02Mcal/kg)を6頭の成めん羊に給与し,腎クリアランス試験とEDTA負荷試験を行なった.
    高タンパク質飼料摂取により,尿中Ca排泄量の増加と血漿Ca濃度の減少が見られた.その要因として,糸球体濾過量の増加とそれに伴う糸球体濾過Ca量の増加が,尿中Ca排泄量の増加をもたらしたと考えられた.また,血漿遊離ハイドロキシプロリン濃度は,高タンパク質飼料区で高くなった.
    EDTA負荷により,血漿イオン化Ca濃度は全動物において直線的に減少したが,低下の程度は高タンパク質飼料の摂取により緩和される傾向が認められ,Ca動員量は高タンパク質飼料区で有意に増加した.EDTA負荷前の血漿上皮小体ホルモン(iPTH)濃度は,高タンパク質飼料区で高かったが,負荷時および負荷後の血漿iPTH濃度の増加は,高タンパク質飼料摂取により小さくなる傾向であった.
    めん羊に高タンパク質飼料を給与すると,尿中Ca排泄量の増加と血漿Ca濃度の減少がみられるが,骨吸収は促進されており,これはPTH分泌とその反応性の増加によるものと考えられた.
  • 相井 孝允, 栗原 光規, 白石 恭二, 玉城 政信, 千葉 好夫
    1991 年 62 巻 7 号 p. 636-644
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    計24頭のホルスタイン種搾乳牛を用い,実験計画としてラテン方格法あるいは反転法に従って3回の試験を実施した.そしてパーム油から調製した脂肪酸カルシウムの給与が乳量,乳脂肪率,乳脂肪酸組成および暑熱ストレスに与える影響ならびにその給与の経済効果について調査した.乳牛には対照区の飼料として,試験1では混合飼料を,試験2では配合飼料,ビートパルプ,アルファルファ•ヘイキュウブおよびギニアグラスサイレージを,そして試験3では配合飼料,ビートパルプ,イタリアンライグラス乾草およびヘイレージを給与した.試験区の飼料として,これら対照区の飼料に加えて試験1および2では,脂肪酸カルシウムを1日1頭当り,処理1および2としてそれぞれ220gおよび330g給与し,試験3では処理3として,154g給与した.対照区と比べ試験2の処理2では,乳脂肪率(0.27%)と乳脂肪生産量(85g/日)が有意に増加し,また試験1の処理2では,乳蛋白質率(0.07%)が有意に低下したが,その他では,乳量,乳脂肪率,乳脂肪生産量,乳蛋白質率,SNFおよび全固形分率は,いずれも対照区と試験区との間で有意な差が認められなかった.しかし乳量,乳脂肪率および乳脂肪生産量は,脂肪酸カルシウムの給与量の増加とともに,増加する傾向が見られた.乳脂肪酸では,脂肪酸カルシウムの給与により試験1および2でオレイン酸のみが有意に増加し(試験1でp<0.01および試験2でp<0.05),また乳脂肪酸生産量では,パルミチン酸,ステアリン酸およびオレイン酸が有意に増加(p<0.05,ただし試験3のパルミチン酸を除く)した.特にオレイン酸の増加量は著しく,対照区と比較し処理1,2および3で42.0,24.5および17.7g増加した.このことはパーム油の脂肪酸の一部が,直接乳脂肪に移行していることを示唆していた.脂肪酸カルシウムの給与は,呼吸数,体温,飼料摂取量および体重の変化には影響を与えなかった,これらの試験結果から,例えば夏期高温時の乳量および乳脂肪率が低下する時期に,脂肪酸力ルシウムを平均乳量20kgの搾乳牛に1日1頭当り330g給与すると,30頭の搾乳牛を飼養している農家では1月当り189,900円の収益増になる場合もあることが計算できた.
  • 島崎 敬一, 河野 信貴, 浦島 匡, 高澤 俊英, 福井 豊
    1991 年 62 巻 7 号 p. 645-650
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシ,ヤギ,ヒツジの3種の反芻動物の乳汁中に存在するラクトフェリンについて,それら相互の差異あるいは類似性を明らかにするため,アミノ酸と糖鎖の組成を比較した.ウシ,ヤギ,ヒツジからそれぞれ得た初乳を脱脂後,酸沈澱法によりカゼイン成分を除いた.次いでホエーのpHを中性に調整し,SP-トヨパール650ゲル吸着画分から粗ラクトフェリンを得,さらにAF-Blueトヨパール650MLによるアフィニティークロマトグラフィーにより精製した.各ラクトフェリンについて,糖含量の定量,アミノ酸分析,糖組成分析を行なった.その結果,セリン•グリシン•アラニンについてはヒツジラクトフェリンで一番多く,ウシラクトフェリンで最も少なかった他は,各ラクトフェリンのアミノ酸組成に特に大きな差異は見出されなかった.また,中性糖含量は8.8%(ウシ),8.0%(ヤギ),6.2%(ヒツジ)であり,アミノ糖含量は2.7%(ウシ),2.1%(ヤギ),2,2%(ヒツジ)であった.さらに,ウシラクトフェリンについては糖鎖の組成についても検討した.
  • Yanuarso Eddy HEDIANTO, 佐藤 勝紀, 河本 泰生, 猪 貴義
    1991 年 62 巻 7 号 p. 651-653
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 千国 幸一, 陰山 聡一, 小石川 常吉, 加藤 貞雄, 小堤 恭平
    1991 年 62 巻 7 号 p. 654-659
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛のκ-カゼイン遺伝子の多型を検出するため,その部位を含む領域をPCR (Polymerase Chain Reaction)法で増幅し,制限酵素で切断することによって2種類の遺伝子型(A型,B型)を同定した.試料としたゲノムDNAは牛の凍結精液または肝臓から調製し,その200ngをテンプレートとした.PCRは1ユニットのTth DNAポリメラーゼを用い,93°1分,60°1分,72°1分の反応を35同繰り返した.センスプライマーは第9エキソンの先頭部分で24merのオリゴヌクレオチド(5'CGCTGTGAGAAAGATGAAAGATTC3')を用い,アンチセンスプライマーは第4イントロン内の26mer(5'AGATTCAAGGAGTATACCAATTGTTG3')を用いた.この反応によって得られた780bpのDNAフラグメントをTaq I,Hind III, Pst Iの3種類の制限酵素で切断し,K-カゼイン遺伝子型の判定を行なった.分析は25頭の黒毛和種,20頭のホルスタイン種,10頭のヘレフォード種,6頭のアバーデンアンガス種について行なった.その結果,3種類の制限酵素によって識別される3カ所の塩基置換は完全に連鎖しており,部分的に交差している個体の存在は認められなかった.B型の遺伝子頻度は分析した全ての品種で低く(0.08-0.20),品種による大きな違いは見られなかった.分析した61頭の遺伝子型はAA型43頭,AB型16頭,BB型2頭であった.
  • 千国 幸一, 寺田 文典, 陰山 聡一, 小石川 常吉, 加藤 貞雄, 小堤 恭平
    1991 年 62 巻 7 号 p. 660-666
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛の成長ホルモンモはンでは,127番アミノ酸でLeu(A型)だけでなくVal(B型)となる多型の存在が報告されている.A型遺伝子の塩基配列は126,127番アミノ酸に対し,GAGCTGをとることが明らかにされており,この配列は内部にAlu I認識サイト(AGCT)を含んでいる.ValのコドンはGTNであるので,B型ではこの部位のAlu Iサイトが消失する.本試験はPCR(Polymerase Chain Reaction)法を用いてこのアミノ酸をコードしている領域を増幅し,制限酵素Alu Iで切断することによって遺伝子型の判定を行なった.センスプライマーは第4エキソン内にあり成長ホルモンの110番から118番アミノ酸に相当する27merのオリゴヌクレオチド(5'TATGAG-AAGCTGAAGGACCTGGAGGAA3')を用いた.アンチセンスプライマーは第5エキソン内3'非翻訳領域の28mer(5'AGAATAGAATGACACCTACTCAGACAAT3')を用いた.PCR法は93°1分,60°1分,72°1分の反応を35回繰り返した.この反応によって得られた652bpのDNAフラグメントをAlu Iで切断し,127番アミノ酸に相当する位置にAlu IサイトのあるものをA型,無いものをB型とした.25頭の黒毛和種,20種のホルスタイン種,10頭のヘレフォード種,6頭のアバーデンアンガス種について分析した結果,B型の頻度は黒毛和種(0.56)およびアバーデンァンガス種(0.41)で比較的高く,ホルスタイン種(0.22)およびヘレフォード種(0.20)において低かった.
  • 徳丸 元幸, 後藤 和文, 宅萬 義博, 木庭 正光, 大江 伸幸, 中西 喜彦, 小川 清彦
    1991 年 62 巻 7 号 p. 667-673
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    The optimum concentration of heparin for obtaining high incidence of analysable metaphase spreads was investigated using early, expanded and hatched bovine blastocysts derived from in vitro fertilization.
    The ebryos were treated with TCM 199 containing colcemid (0.04μg/ml) either with heparn (100, 200 or 400μg/ml) or without heparin at 39° for 2hr before they were subjected to a short-term treatment with 0.5% sodium citrate solution. The addition of 100 or 200μg/ml heparin resulted in higher incidences of metaphases and higher mitotic indexes. A dose of 200μg/ml heparin resulted in the highest incidences of metaphases and mitotic indexes in expanded and hatched blastocysts, mitotic indexes being 6.2, 7.2 and 4.4% for early, expanded and hatched blastocysts, respectively. The rates of embryos with metaphase plates in the treatment of 200μg/ml heparin were 94.4 (51/54), 96.6 (56/58) and 100% (31/31) for early, expanded and hatched blastocysts, respectively. The sexing rates in the treatment of 200μg/ml heparin were the highest in each developmental stages; 72.2 (39/54), 91.4 (53/58) and 90.3% (28/31) for early, expanded and hatched blastocysts, respectively. By contrast, the sexing rates in the absence of heparin were 43.8 (21/48), 60.7 (34/56) and 57.7% (15/26), respectively. The addition of 400μg/ml heparin did not increase the incidence of metaphases and mitotic index and did not increase the sexing rate. These results suggest that 200μg/ml heparin promotes the viability and mitotic activity of bovine blastocysts derived from in vitro fertilization during the colcemid-treatment.
  • 岩元 久雄, 尾野 喜孝, 後藤 貴文, 西村 正太郎, 中西 良孝, 梅津 頼三郎, 高原 斉
    1991 年 62 巻 7 号 p. 674-682
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    黒毛和種,褐毛和種およびホルスタイン種の去勢雄牛の間で,組織化学的な筋線維型構成を比較検討した.牛体各部位の18個の筋肉から材料肉片を採取し,組織化学的な方法によりASHMOREら20)の命名法に従いβR型,αR型およびαW型筋線維を区別した.胸最長筋,大腿二頭筋,半膜様筋,上腕三頭筋•長頭,半腱様筋および中殿筋は重量が重く,食肉生産上重要な筋肉である.これらの筋肉はすべての型の筋線維を含有し,また.黒毛和種と他の二品種との間で筋線維型構成に関し品種差を示した.すなわち,褐毛和種とホルスタイン種ではαW型筋線維の構成割合が黒毛和種より大きく,黒毛和種ではβR型あるいはαR型筋線維の構成割合が大きかった.黒毛和種は胸最長筋,半膜様筋,上腕三頭筋•長頭および中殿筋に加えて内側広筋でもβR型筋線維の構成割合が他の二品種より大きく,また,これらの筋肉のβR型筋線維の直径は大きかった.以上の結果から,黒毛和種の筋線維型構成に関する特徴が判然と示された.褐毛和種は胸最長筋,腸腰筋等の最高級食肉にランクづけされる筋肉の発達が著しく,逆にホルスタイン種は同筋肉の発達が悪かった.
  • 中村 哲郎, 宿野部 幸孝, 桜井 稔夫, 井戸田 正, 村田 信弥
    1991 年 62 巻 7 号 p. 683-691
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛乳カゼインを酵素により分解し,アレルゲン性の低下したペプチドを得ることを目的として,検討を行なった.カゼインの酵素分解物は,Aspergillus oryzae, Rhizopus sp.およびBacillus sp.由来の3種類のプロテアーゼを組み合せて実施した.得られた分解物中の遊離アミノ酸含量は約31%で,分解率は50%であった.また,分子量はほとんどが1,700以下であった.この分解物の抗原性について,モルモットーモルモット系の受身皮膚アナフィラキシー反応(PCA反応)を実施したところ,カゼイン分解物とカゼインは交差抗原性を持たず,カゼイン分解物には抗原性がないか,あっても非常に弱いものと判断された.また,ELISA抑制試験の結果から,分解物は未分解のカゼインに比べて,抗原性が1/10,000以下に低下していることが示された.
    酵素反応は苦味を生じないような条件下で行なったことから,得られたペプチドは牛乳アレルギー乳児治療用乳を含む,数多くの低アレルギー用食品の開発に広く利用できるものと思われる.
  • 早坂 貴代史, 田鎖 直澄, 山岸 規昭
    1991 年 62 巻 7 号 p. 692-694
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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