牛,馬,豚,山羊,緬羊肉の識別とこれらを種々の比率で混合した場合の検出可能な混入率,さらに加熱処理の影響を検討するため,ポリアクリルアミドゲル等電点電気泳動法を用いて,Sarcoplasmic protein, Heme protein, Creatin kinase, Adenylate kinase, Phosphoglucomutase, EsteraseおよびTetrazorium oxidaseについて分析を行ない,次の結果を得た.Sarcoplasmic protein, Heme proteinおよびCreatin kinaseの泳動像により牛,馬,豚山羊•緬羊の4グループに識別できたが,山羊と緬羊の識別は困難であった.Tetrazorium oxidaseおよびEsteraseにいては牛,馬,豚,山羊,緬羊の間で泳動像にそれぞれ明確な差異が認められ,5畜種の識別がこれらの酵素1種のみで可能であった.ただし,Esteraseでは個体変異が認められたので,鑑別に当たってはこの点に留意する必要があった.Adenylate kinaseは馬と豚,Phosphoglucomutaseは反芻家畜と非反芻家畜の識別に有効であった.混合肉中の異種肉の識別はSarcoplasmic protein, Heme protein, Adenylate kinaseおよびCreatin kinaseにおいて,互いに識別可能な肉種間では,概ね1~5%の異種肉の混入があれば識別可能であり,前報8)のデンプンゲルよりも高い感度で検出できた.加熱処理の影響について検討した結果,65°C,30分間の加熱肉ではHeme protein染色により牛,馬,豚,山羊•緬羊の4群に識別可能であったが,75°Cおよび100°C,30分間加熱肉では牛,馬,山羊•緬羊の3群に識別された.Phosphoglucomutase染色では100°C,30分間加熱後も牛•山羊•緬羊,馬•豚の2群に識別可能であった.
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