日本畜産学会報
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63 巻, 5 号
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  • 豚閉鎖群に関するシミュレーション
    佐藤 正寛, 西田 朗, 古川 力
    1992 年 63 巻 5 号 p. 457-461
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    環境効果の分散の大きさが,育種価予測の正確度に与える影響をコンピュータシミュレーションによって検討した。その際,わが国で行なわれている豚の系統造成の規模に即して,種豚の頭数が毎世代,雄10頭,雌40頭の閉鎖群を想定した。まず,遣伝率が0.1,0.3,0,5である形質を想定し,それぞれの形質について3世代分の無作為交配による記録をコンピュータによって発生させた。このとき,各形質ごとに世代効果の分散の大きさを5通りに変化させた。ついで,最終世代の各個体の育種価を,(1)個体自身の記録,(2) 個体自身とその両親および両祖父母の記録を用いた家系指数(家系指数),(3) 全平均を母数効果としたアニマルモデルによるBLUP (BLUP-μ),(4) 世代の効果を母数効果としたアニマルモデルによるBLUP (BLUP-F)を用いて予測した。これらの予測殖と真の育種価との相関係数を求めて育種価予測の正確度の指標とした。その結果,個体自身の記録および家系指数による育種価予定の正確度は,世代効果の分散の大きさとは無関係に一定であった。一方,世代効果のばらつきが大きくなるにつれて,BLUP法による予測の正確度は低下し,シミュレーションの反復による正確度のばらつきは大きくなる傾向にあった。価体自身の記録による育種価予測の正確度に対する他の予測法の正確度の比は,遺伝率が低いほど大きくなった。家系指数とBLUPによる予測の正確度の差は,遺伝率が高い(h2=0.5)場合には,非常に小さなものであった。しかし,遺伝率が低い場合,特に世代効果の分散が小さいときには,BLUPによる予測の正確度は,家系指数によるそれを上回った。世代効果の分散が大きくなるにしたがい,BLUP-Fによる育種価予測の正確度はBLUP-μのそれに比べて相対的により大きく高まり,その反復誤差は相対的により小さくなった。
  • 原山 洋, 加藤 征史郎
    1992 年 63 巻 5 号 p. 462-467
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    75~364日齢の雄梅山豚,合計22頭を用い,精巣上体通過に伴う精子の運動性および形態の変化について検討した.各雄から精巣上体を採取した後,8部位に区分し,各部位の精巣上体管内腔液を回収した.内腔液の一部は直ちにCa++欠KRB液で希釈し,精子の運動性を観察した.残りの内腔液にはグルタールアルデヒド含有PBSを等量加えて精子を固定した後,ギムザ染色標本を作製し,精子の形態を観察した.75日齢では,精巣上体尾精子のうちのわずか26%しか前進運動を示さなかった.また,59%が奇形精子で,その主なものは頭部奇形であった.さらに,62%の精子が細胞質滴を中片部の近位部に保持していた.しかし,105~120日齢になると,精巣上体の通過により89%の精子が活発な前進運動を示すようになり,98%の精子では細胞質滴が中片部の遠位部へと移動していた.他方,頭部奇形精子率については,90日齢以後において精子が精巣上体頭を通過する間に有意に低下した.以上の結果から,梅山豚の精巣上体は,精子を成熟させ,奇形精子を選択的に除去する機能を約120日齢までに獲得すると考えられる.
  • 杉山 稔恵, 大橋 知男, 楠原 征治
    1992 年 63 巻 5 号 p. 468-473
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    産卵鶏の骨髄骨は,卵が卵管の卵白分泌部に存在する時期には骨形成期,卵殻腺部に存在する時期には骨吸収期に区別される,これらの骨形成期および骨吸収期の骨髄骨をそれぞれ器官培養し,破骨細胞および骨芽細胞を電子顕微鏡学的に観察して器官培養の可能性を検討した.骨形成期の骨髄骨では,48時間の培養後でも培養前と同様に破骨細胞は,豊富な細胞質を有していたが,ruffled borderは認められず,不活発な骨吸収像を呈していた.骨芽細胞も同様に変化せず,48時間の培養後まで粗面小胞体が発達した活発な骨形成像を示していた.一方,骨吸収期の骨髄骨では,72時間の培養後において破骨細胞は指状細胞質突起であるruffled borderを有し,培養前と同様に活発な骨吸収像を示していた.骨芽細胞は,24時間の培養後まで培養前と同様な形態を示し,一般に発達の悪い細胞質を有する不活発な骨形成像を呈していた.これらの結果から,骨形成期および骨吸収期における骨髄骨の破骨細胞および骨芽細胞の機能は,培養後短時間では維持されていることが示唆された.
  • 成田 健, 南雲 靖生, 石橋 晃
    1992 年 63 巻 5 号 p. 474-480
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    コリン欠乏-低メチオニン飼料を給与したラットにおける体重回復と,肝臓還元型グルタチオン(GSH)の濃度に及ぼすシスチンとアルギニンの添加の影響について検討した.L16直交表を用いて飼料シスチンとアルギニン,L-ブチオニン-[S,R]-スルホキシミン(BSO),メチルグリオキサルビス-(グアニルヒドラゾン)(MGB)および2水準の繰り返しを配置した.試験飼料を13日間等量給与し,最後の4日間はBSO(290mg/kg体重/日)を添加した飼料を給与した.最終日にMGB(200mg/kg体重)を皮下注射して,90分後に屠殺し,肝臓のGSH,システイン,メチオニン,アルギニンなどを定量した.コリン欠乏一低メチオニン飼料を給与した時の体重減少からの回復はシスチン添加飼料を給与したラットで速やかで,その肝臓のGSHおよびシステインの濃度は高くなったが,それに反してメチオニン濃度は低かった.シスチン添加飼料と同時にBSOを給与したラットでは体重回復が遅れ,GSH濃度は低かった.これらのことから,コリン欠乏-低メチオニン飼料を給与した場合の体重回復にアルギニンは影響しなかったが,シスチンが強く関与しており,肝臓GSHレベルとの相関が認められた.
  • 長澤 孝志, 内田 利宏, 小野寺 良次
    1992 年 63 巻 5 号 p. 481-487
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ルーメン微生物によるタンパク質の分解機構を知るために,プロトゾアのエキソペプチダーゼ活性について検討した.全エキソペプチダーゼ活性はカゼインを基質として培養後,あるいは酵素反応後の遊離したアミノ基とペプチド量の差から求めた.山羊ルーメンから得た混合プロトゾアを塩類緩衝液中で培養したところ,活性はプロトゾアの細胞内画分に認められた.この活性は超音波破壊したプロトゾア細胞の遠心沈殿に主に分布していたことから,エキソペプチダーゼが細胞膜などに結合したものであることが考えられた.最適pHを超音波破壊したプロトゾアについて検討したところ,pH7.3付近にピークが認められたが,それより低いpHでもさらに高い活性が認められた.一方、ロイシル-β-ナフチルアミドを基質としてロイシンアミノペプチダーゼ様活性も測定したところ,細胞内の分布では可溶性画分に存在し,最適pHは7.8であった.これらのことからプロトゾアのエキソペプチダーゼには多くの種類があるものと考えられた.全エキソペプチダーゼ活性,ロイシンアミノペプチダーゼ様活性ともにアミノペプチダーゼBとロイシンアミノペプチダーゼの特異的阻害剤であるウベニメクス(ベスタチン)ではわずかに阻害されたにすぎなかった.したがって,プロトゾアにおいてはアミノペプチダーゼの関与は少ないことが示唆された。
  • 向井 文雄, 岡西 剛
    1992 年 63 巻 5 号 p. 488-494
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    肉用牛の枝肉形質のように,通常,形質の測定が特定の性に限られ,しかも記録を持つ後代の生産頭数が少ない繁殖雌牛では,アニマルモデルによる育種価予測値の正確度は必ずしも高くはない.本研究では,重要な経済形質(主形質;雄でのみ記録されるとする)に関して情報量の限られた個体が持つ補助形質(雌でのみ記録)をアニマルモデルによる育種価評価に導入することにより,主形質の予測値の正確度がどの程度改善されるかをモンテカルロシミュレーション法によって検討した.評価のための選抜データは,雄の主形質の表型価による個体選抜を4世代にわたり実施し,作成した.予測値の偏りに関しては,主形質のみを対象にしたアニマルモデルによる育種価予測値の偏りと補助形質を導入した2形質アニマルモデルによる主形質の予測値の偏りは,主形質の遺伝率が低い時に過大に評価する傾向が認められたが,両モデル間に大きな差異はなかった.補助形質を導入することにより,主形質の予測値の正確度の改善の程度は主形質の遺伝率が低い場合に顕著であり,両形質間の遺伝相関が0.5程度であれば,主形質を持たない雌個体では正確度が10~40%程度向上することが明らかになった.
  • 古川 力, 粟田 崇, 塩谷 康生, 田中 弘敬
    1992 年 63 巻 5 号 p. 495-502
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    雄の形質である生体精巣サイズの選抜により間接的に雌の形質である排卵数を改良することの可能性を検討する目的で,ゴールデンハムスターの近交系と,それらの間の四元交雑群を用い,雄と雌の繁殖形質に関する遺伝率,表型ならびに遺伝相関を推定した.近交系のデータについては,各形質の系統間分散を遺伝分散,系統内分散を環境分散として,各特性値を推定した.まず,雄の形質である生体精巣サイズ,摘出精巣サイズおよび精巣重量の遺伝率は0.5~0.8,これら3形質間の遺伝相関は0.8~1.0と推定され,ともに高い値となった.一方,雌の形質である黄体数と採卵数の遺伝率は各々0.4および0.2と,中程度ないしは低い推定値であった.これら雄と雌の形質に関する系統平均値の間には,高い正の相関がみられた.交雑群のデータを用いて推定した表型相関は,雄の形質と一腹産子数との間には低い正の値,雄の形質と採卵数とは中程度ないし低い正の値であった.これらの遺伝率および表型相関の推定値を用いて雄と雌の形質間の遺伝相関を推定したところ,高い正の値が得られた.生体精巣サイズに選抜を加えたときの排卵数の相関反応は,雄と雌の選抜率をそれぞれ25%および50%と仮定すると,直接,排卵数を選抜したときの反応の約2倍であると推定された.
  • 松沢 安夫, 白石 利郎
    1992 年 63 巻 5 号 p. 503-513
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    放飼下のヤギ(日本ザーネン種)を対象として,敵対行動と優劣順位の関係を調べた.供試ヤギは当歳から4歳までの雌雄計12頭で,約2,900m2の放飼場で飼育された.観察日数は42日,総観察時間は104時間であった.敵対行動は同性間で多く,異性間では少なかった.順位型は直線的相対順位型を示し,約9ヵ月齢以上の雄はすべての雌よりも優位となった.順位間隔と敵対行動数との間には負の相関(τ=-0.89,P<0.01)が認められ,順位の近い個体間で敵対行動が多く見られた.月齢と優劣順位との間には有意な正の相関が認められ,とくに雌ヤギで相関が高かった.敵対行動パターンは,食餌や休息場所などの資源を確保するための直接的な行動パターン5種と,順位闘争としての儀式的な行動パターン3種(それぞれ,SHANKの"rush association"と"clash association"に相当)が観察された.前者は上位個体から下位個体に向けて発現することが多かったが,後者は双方向的に行なわれた.雌ヤギにも雄と同様に順位闘争としての行動パターンが見られたことから,雌間にも社会的優劣順位は存在すると思われた.群の優劣順位は安定しており,群構成が変わらない限り少なくとも2年間は基本的に変化しなかった.
  • 松岡 昭善, 福崎 直美, 高橋 強, 山中 良忠
    1992 年 63 巻 5 号 p. 514-519
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    日本ザーネン種雄5頭を生後50日齢で去勢し,生体重80kgまで飼育を行ない,枝肉成績および筋肉の一般成分,脂肪酸組成,色調並びに腎脂肪の脂肪酸組成を測定した.枝肉歩留は51.2~54.2%,平均52.7%であり,半丸の前,中,後躯の割合はそれぞれ38.0%,35.7%,26.3%で前勝ちの体躯であった,前躯の骨,脂肪,筋肉の割合は15.4%,25.1%,59.5%,後躯では15.6%,23.7%,60.6%で,前躯においては脂肪の割合が,後躯においては筋肉の割合がやや高い値を示した.ロース芯の断面積は第5~6胸椎間では9.7~16.0cm2,平均12.5cm2,第12~13胸椎間では13.8~21.9cm2,平均18.7cm2で,比較的大きなばらつきがあった.筋肉の一般成分のうち,水分は71.8~74.3%,粗タンパク質は20.3~22.2%,粗脂肪は2.2~5.2%であり,胸最長筋および大腿二頭筋において脂肪含量が高く,水分含量が低い値を示した.肉色は赤味が強いが,暗い色調であった.筋肉脂質の脂肪酸組成は各筋肉とも類似したパターンを示し,C18:1が全脂肪酸の1/2以上を占め,次いでC16:0,C18:0,C18:2でこれら4種の脂肪酸が87~90%を占めた.全飽和脂肪酸含量は30~34%で,不飽和度が高かった.腎脂肪の脂肪酸組成もC18:1が最も多く,次いでC18:0,C16:0の順で,これら3脂肪酸が全体の約90%を占め,全飽和脂肪酸含量は約59%で飽和度が高かった.枝肉の解体中およびロース肉の試食によって得た印象では雄山羊独特の臭気はほとんど感じられず,食味も佳良であった.
  • 大宮 邦雄, 苅田 修一
    1992 年 63 巻 5 号 p. 520-536
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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