日本畜産学会報
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64 巻, 12 号
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  • 前田 芳實, 河邊 弘太郎, 岡 達三, 岡本 新, 岡本 悟, 橋口 勉
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1137-1140
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    体重について大小2方向に選抜されたウズラの系統を用いて,骨格筋におけるm-calpainおよびactin遺伝子のm-RNAの発現量の系統間の違いについて分析を行った.供試個体は幼若期の23日齢に屠殺され,ただちに胸筋を採取し,液体窒素で凍結した.全RNAはguanidinium thiocyanateで拙出し,またpoly (A) +RNAはoligo (dT) -cellulose columnで分離した.プローブとして,ヒトβ-actinのPst I断片(2.0kb)とニワトリm-calpainのPst I断片(1.1kb)を用いた.actinとm-calpainのm-RNAは,いずれも体重大系統(LL),対照系統(RR)および体重小系統(SS)の順に高いシグナルを示した,これらの結果から,ウズラの筋肉組織におけるm-calpainおよびactinのいずれの遺伝子においてもm-RNAの発現量には系統間で違いが存在することが明らかとなった.また,いずれの系統においても,actinの発現量がm-calpainの発現量に比べて高かった.
  • 及川 卓郎, 佐藤 勝紀, 河本 泰生
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1143-1148
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    わが国の肉用牛育種集団に特徴的な小規模集団を対象とした現場検定を想定する時,環境要因内の後代頭数の少ないことが問題となる.このような記録を使って遺伝的評価を行なう際の混合モデルについて比較するとともに,予測の正確度にかかわる要因について検討した.対象としたモデルはすべてSire modelで,牛群などに代表される環境要因を母数効果,変量効果,複合効果(頭数の多い環境要因を母数効果,少ない環境要因を変量効果),合成効果(頭数の少ない環境効果の内,環境効果予測値の近い環境効果を合成したもの)および共変量(変量効果による環境効果予測値)の5モデルに設定した.なお,頭数の少ない環境効果とは1頭の種雄牛の後代牛だけからなる環境効果を指し,頭数の多い環境効果とは複数の種雄牛からなる環境効果を指すこととする.予測されるTransmitting abilityの正確度に影響を及ぼす要因は,サブクラス(種雄牛×環境効果の1つのセル)の充足率(サブクラスの内,記録があるサブクラスの率)と記録の総数であった.一方,環境効果に関連する要因では仮定した分布の型と全表型分散に占める割合が影響した.サブクラスの充足率と記録の総数が同一である限り,頭数の少ない環境効果の割合は正確度に影響を与えなかった.混合モデル間で比較すると,環境要因を変量効果とみなしたモデルの正確度が最も高く,母数効果とみなしたモデルの正確度が最も低かった.しかし,サブクラスの充足率が高くなると差は縮小した.一方,遺伝率の違いはモデル間の正確度に関する順位に影響を与えなかった,サブクラスの充足率が低い条件では,変量効果とみなしたモデルが有利であると考えられたが,それ以外ではモデルの頑健性かう効果とみなしたモデルが有利であると推察された.
  • 林 孝, 長嶺 慶隆
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1149-1155
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛の泌乳曲線を限られた測定データから推定することは実用的な利便性があるとともに,1乳期の特徴づけを行なうことにもなることから,多くの試みが行なわれてきた.本研究では1乳期の最高乳量日と最高乳量,および任意の日とその乳量の2点のデータによる泌乳曲線の推定(2点法)を行なった.林ら(1986)は指数関数と3個のパラメータを含む振動モデルを提案している.このモデルは逐次法などにより推定されてパラメータを利用することにより乳期の特徴づけを行なうことができる.2点法の基礎となる振動モデルのパラメータ"a"を推定する非線形関数を導入したが,この関数には常数と最高乳量,最高乳量日,任意の日,任意の日の乳量の4個の既知項が含まれる,"a"の推定値はNewton法により得るとともに,最高乳量,最高乳量日,"a"の関係からパラメータ"b", "c"の推定値を得た.各モデルの重相関係数はWOODのモデル>振動モデル>2点法の順に優れていた.また,各モデルによる305日乳量の推定値の標準誤差はWOODのモデル:258.2,振動モデル:218.5,2点法:349.1であった,2点法の推定精度がやや劣ったが,乳量測定のコストが著しく低廉であることから,能力検定などに応用が可能である.
  • 尹 乗善, 田中 桂一, 大谷 滋, Urip SANTOSO
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1156-1162
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    肝臓に次いで生体内コレステロール合成の臓器とされている小腸でのコレステロール合成が飼料にコレステロールを添加した際にどのような影響を受けるかを粘膜上皮細胞におけるHMG-CoA reduc-tase活性を測定し,検討した,成長中ヒナの飼料にコレステロールを添加することによって,肝臓および空腸におけるHMG-CoA reductase活性は,コレステロール無添加飼料給与に比べて,統計的に有意に低下し,回腸では低下する傾向が観察された.空腸でのこの酵素の活性は回腸より高かった.コレステロール添加飼料を給与すると,血清中のエステル型と遊離型コレステロール濃度,肝臓および空腸と回腸の上皮細胞中の遊離型コレステロール含量は,コレステロール無添加飼料給与に比べて統計的に有意に高かった.
  • 入来 常徳, 武内 紀憲, 舟場 正幸, 和田 恭則, 阿部 又信
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1163-1167
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    体重580-660kgのホルスタイン種乾乳牛3頭を用い,給与飼料のCP含量を9.1,12.1,15.1%としてルーメン内に生理的水準をはるかに越える量(2mmol/kg体重)のDL-メチオニン(MET),L-リジン塩酸塩(LYS)およびL-トリプトファン(TRP)を投与し,それらの異化に及ぼすCP水準の影響を調べた.その結果,CP水準の増加につれてルーメン内における各アミノ酸の減少が速やかとなったが,一方では血漿中のそれらアミノ酸濃度の上昇程度もCP水準に反比例して低くなる傾向を示した.CP12.1%以上の飼料を給与した2頭の隼のルーメン内にTRPを投与すると,多分トリプトファン誘導性間質性肺気腫が原因で2頭とも死亡した.これは,ルーメン微生物によるTRP異化作用の最終産物の一つである3-メチルインドール(スカトール)の生成に起因する可能性が考えられた.しかしCP含量9.0%の飼料を与えた牛1頭については,同水準のTRPを投与したにもかかわらず異状が認められなかった.以上により,飼料のCP水準はルーメン内に投与された非保護アミノ酸の異化速度に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 根岸 晴夫, 吉川 純夫
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1168-1177
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛肉の熟度指標に及ぼす筋肉部位の影響を調べるためにご,屠殺後3日のホルスタイン種去勢牛のウデ肉から4種の筋肉(上腕三頭筋(TB),棘上筋(SS),上腕二頭筋(BB)上腕筋(BA))を採取し,ポリ塩化ビニリデンフィルムで真空包装した.これを0°Cで28日間貯蔵し,貯蔵開始当日(死後4日),7,14,21,および28日目に分析した.分析は供試筋肉のコラーゲン含量と貯蔵中の筋肉の官能的柔らかさ,剪断力価(SFV),ATP関連化合物,筋原線維小片化率(MFI),および30,000ダルトン成分(34kDa)の変化を調べた.全コラーゲン量は筋肉間で異なり,多い順にBA>BB>SS>TB筋となった.官能的柔らかさはいずれの筋肉も貯蔵日数の進行と共に向上し,貯蔵による熟成の効果が認められた.軟化の程度はコラーゲン量の多いBA筋で少なかった.貯蔵中のMFIの増加速度は筋肉間で異なり,コラーゲン量が多い筋肉(BB, BA)ほど遅い傾向にあった.30kDaはMFIの進行が速い筋肉で貯蔵中に増加傾向にあったが,その程度は前報8)のロース肉に比べ少なかった.逆にMFIの進行が遅い筋肉では30kDaの出現時期は遅く,貯蔵中の増加もわずかであった.このように30kDaの発現と筋原線維の小片化との間に強い関係が見られた.これらの特性に対し,ATP関連化合物の貯蔵中の変動パターンはどの筋肉でもほとんど同じで,上述の筋肉間の軟化の差異に対応せず,軟化速度の遅い筋肉に対しては熟度指標として好ましくなかった.以上から,牛肉の熟度指標として,ATP関連化合物よりもSFV, MFIおよび30kDaの方が有効と考えられた.
  • 花田 博文, 下司 雅也, 坂口 実, 米内 美晴
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1178-1181
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 奥内 勝也, 富田 純史, 小野寺 良次
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1182-1186
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 新村 末雄, 細江 実佐, 石田 一夫
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1187-1192
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ハムスターの過排卵卵子と自然排卵卵子について,Lens culinaris agglutinin (LCA)を用いて表層粒をレクチン組織化学的に検出するとともに多精子受精を観察し,表層粒の状態(分布と量)と多精子受精の頻度との相関の有無を調べた.未受精卵子において,LCAに陽性の表層粒は主として細胞質表層に存在していたが,量が多く単独で一様に分布している卵子(I型),量は多いが,分布が一様でない卵子(II型),および量がやや少なく単独で一様に分布している卵子(III型)の3型が区分できた.表層粒の分布が一様でない卵子(II型)の割合は,自然排卵の卵子群では0.6%であったが,過排卵のものでは高く,5.0%であった.また,表層粒がやや少ない卵子(III型)の割合は,自然排卵の卵子群では1.6%であったが,過排卵のものでは有意に高く,4.4%であった.一方前核期卵子において,多精子受精は自然排卵の卵子群では0.3%みられたが,過排卵のものでは有意に高く,2.6%みられた.このように,ハムスターでは,表層粒が少ない卵子や分布が一様でない卵子が多いと,多精子受精の頻度が高くなり,両者の間には相関のあることが示唆された.
  • 朝井 洋, 水野 豊香, 山本 修, 藤川 洋史
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1193-1200
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    北海道日高地方の25の軽種馬生産牧場で生産された約270頭の軽種子馬を対象に,生後まもなくから約18ヵ月齢まで骨端症発症状況と給与飼料中の銅および亜鉛含量との関係について検討した.子馬の骨端症は3~7ヵ月齢で球節部に,12~18ヵ月齢で腕節部に発症が認められた.しかし,牧場および個体間において,両骨端症の発症に関連性は認められなかった.跛行を伴う重度の球節部骨端症発症馬を認めた牧場における離乳直後の飼料中の銅および亜鉛の平均含量は,それぞれNRC必要量の52.5%,71.7%であり,発症率が低かった牧場に比べ明らかに低値であった.また,球節部骨端症の発症率と飼料中の銅および亜鉛含量との間には,ともに負の相関を認め,その回帰から球節部骨端症を予防するための銅および亜鉛の必要量は,NRC必要量を相当量上回るものと考えられた.しかし,腕節部骨端症においては以上のような傾向は認められず,発育ステージの相異に伴い,運動や増体速度などの要因が作用することや,銅,亜鉛の必要量が異なる可能性が示唆された.
  • 田中 勝三郎, 有塚 勉, 佐渡谷 裕朗, 佐藤 忠, 岡本 明治
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1201-1207
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ビートパルプ(DBP)より炭水化物画分であるNDF, ADF,ペクチン(BP-NDF, BP-ADF, BP-P)を抽出し,物理的特性として膨潤性(SV値),保水能(WHC)と人工ルーメンにおける発酵特性について検討した.DBPのSV値およびWHCは一般に流通している飼料原料の中で最も高い値を示した.水および第1胃内容液によるSV値の経時的変化はDBPおよびBP-NDFでは微増するが,BP-ADFでは変化がみられなかった.これらBPから得た炭水化物画分のSV値は水より第1胃内容液においてやや高い値を示した.in vitroでの乾物消化率はBP-Pの消化率が最も高く,膨潤化した後(8時間目)急速に消化されたが,BP-NDFは6時間目まで,BP-ADFは12時間目までほとんど消化されなかった.人工ルーメンでのBP-Pの発酵特性はBP-NDF, BP-ADFに比べ,培養開始後大量に酢酸を産生した.8時間目以降は,酢酸に比べてプロピオン酸の生成量が徐々に増加した.このようなBP-Pの特性はレモンやリンゴから得られたペクチンと比べて大きな差はみられなかった.
  • 佐藤 忠, 佐渡谷 裕朗, 田中 勝三郎, 岡本 明治
    1993 年 64 巻 12 号 p. 1208-1213
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    現在,わが国で流通しているビートパルプの飼料価値を検討するため,羊を用いて,国産ビートパルプ,米国産ビートパルプおよび中国産ビートパルプの消化性,窒素出納および糞の性状を調査した.その結果,羊の飼料摂取量および飲水量に差はなかったが,生糞排泄量は国産ビートパルプと比べ,米国産および中国産ビートパルプが多く,特に,中国産ビートパルプには有意差(P<0.05)が認められた.乾物,有機物,粗蛋白質,NDF, ADFの消化率は,国産ビートパルプが米国産および中国産ビートパルプよりも高い値を示した.これらの内,乾物,粗蛋白質消化率は各ビートパルプ間で有意な差(P<0.05)を示した.また,中国産ビートパルプの有機物,NDF, ADF消化率は国産および米国産ビートパルプより有意(P<0.05)に低い値であった.各ビートパルプのTDN, DCP含量はそれぞれ,国産ビートパルプ85.5%,7.8%,米国産ビートパルプ80.8%,6.3%および中国産ビートパルプ75.3%,5.3%であった.窒素出納において,糞中に排泄された窒素量は国産ビートパルプが米国産および中国産ビートパルプより少なく,窒素蓄積量は国産ビートパルプが中国産ビートパルプより有意(P<0.05)に高かった.国産ビートパルプを給与した羊は中国産ビートパルプを給与した羊に比較し,糞pHが高く,糞中の総VFA含量は低かった.
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