約3ヵ月齢のホルスタイン種去勢牛22頭(平均体重153kg)を供試し,育成牛の飼料利用性,第一胃内容液および血液性状に及ぼすサリノマイシン(SL)投与の影響を検討した,試験1は個体給飼とし,SL 0(対照区),15および30ppm添加(SL 15区およびSL 30区),試験2は群飼で,SL 0(対照区),10および20ppm添加(SL 10区およびSL 20区)のそれぞれ3群に区分した.両試験とも約3ヵ月間,配合飼料を定量給与し,チモシー主体の混播牧草を不断給与した.SL 30区の日増体量は対照区より大きく,他のSL投与区は対照区とほぼ同様な値であった.両試験のすべてのSL投与区のTDN摂取量は対照区より4-6%減少し,TDN要求率は3-12%改善された.両試験とも第一胃内容液のpHおよび総VFA濃度にSL投与による影響は見られなかった.第一胃内VFA構成モル比は,試験1ではSL投与期間を通して酢酸(A)の減少,プロピオン酸(P)の増加およびA/P比の低下が観察され,投与後1ヵ月目に有意差があった(p<0.05).一方,群飼育の試験2ではSL投与期間中,第一胃内VFA構成割合の変化は試験1と同様だが,統計的に有意性はなかった.試験2のSL投与区の第一胃乳酸濃度は投与後1ヵ月目に投与前より低下したが,2ヵ月目以降は元に戻った.また,SL 20区の第一胃内NH3-N濃度は期間を通して対照区より高かった.試験1では供試牛の血清グルコース,GOT,総コレステロール(Tch),遊離脂肪酸,トリグリセライドおよびリン脂質(PL)濃度にSL投与の影響はみられなかったが,SL投与に関係なく,加齢と共にGOTの下降,TchおよびPL濃度の上昇がみられた.
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