ウシ由来の脂肪代謝の一酵素リポプロテイン•リパーゼ(LPL)のcDNAをプローブとして黒毛和種のゲノムDNAの分析を行ない,RFLPを見出した.LPLのcDNAをアミノ酸をコ
ードしている5'の部分と3'の非翻訳領域とに分割し,それぞれをプローブとした.3'非翻訳領域のプローブではHind IIIをのぞく8種類の制限酵素(Taq I, Xho I, Msp I, Hae III, Pst I, Eco RI,Bam HI)ではRFLPは認められず,Hind IIIのRFLPも明りょうではなかった.一方,アミノ酸をコードしている5'の部分をプローブとすると,調査した9種類の制限酵素のうち,Hind III, PstI, Hae III, Taq I, Msp Iの5種類で多型が観察された.兵庫県の閉鎖繁殖雌牛集団では,それらのRFLP型はハプロタイプ様のクラスターを形成して,お互いに関連しており,個体はAA型,AB型,BB型のいずれかに分類された.このように5種類もの制限酵素型が一致した挙動を示すことは珍しく,その原因としては5種類の制限酵素で切断される比較的長い断片がイントロン部位で正逆の方向に挿入されている可能性が高いものと推定された.美方郡の繁殖雌牛集団116頭ではAタイプのクラスターの遺伝子頻度は0.418,Bタイプのそれは0.582であった.この多型は対立関係にあって単純なメンデル遺伝をするものと推定された.また,20頭の肥育去勢牛の枝肉の調査ではこのRFLP型と枝肉の肉質,日本格付協会の脂肪交雑評点(BMS)との関係は直接には認められなかった.
抄録全体を表示