日本畜産学会報
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64 巻, 5 号
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  • 西村 和彦, 森井 平和
    1993 年 64 巻 5 号 p. 433-439
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚凍結-融解精子の運動性に対するグルタチオン(GSH)の効果を検討した.凍結精液作成時に5mM GSHを添加し,凍結-融解後の精子の運動性を無添加の場合と比較検討した.GSHを添加した場合,凍結-融解精子の運動性は無添加に比べて高く維持され,脂質の過酸化の指標であるマロンジアルデヒド(MDA)産生が抑制された.GSHの添加は凍結-融解精子のスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)活性を増加させた.ミトコンドリア膜傷害の指標となるリンゴ酸-アスパーラギン酸シセトノレ(M-A shuttle)の活性はGSHを添加した場合が無添加に比べて高かった.GSHの添加によるM-A shuttle活性の増加は,精子のATP/ADPの比の上昇と運動性の増加をもたらした.また,GSHの添加は受胎率と一腹の産子数を増加させた.これらの結果から豚凍結精液作成時のGSHの添加はSOD活性を増加させることによって脂質の過酸化を防ぎ,凍結-融解精子の運動性はより高く維持され,結果として受胎率と産子数を増加させることが示唆された.
  • 眞鍋 昇, 石橋 武彦, 宮本 元
    1993 年 64 巻 5 号 p. 440-447
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    各10匹のラットに視床下部満腹中枢破壊手術および擬手術を25~28日齢で施した.手術後90日の肥満ラットおよび擬手術ラットの12種の骨格筋(咬筋,僧帽筋,上腕三頭筋,橈側手根仲筋,深胸筋,最長筋,大腿二頭筋,半腱様筋,米膜様筋,長指仲筋,ヒラメ筋および腓腹筋)における免疫および酵素組織化学的筋線維型の構成を調べた.各筋線維型別に筋線維の横断面積を画像解析装置を用いて計測した.擬手術ラットの咬筋は,速ミオシン抗体に陽性でアルカリ安定ミオシンATPase活性が高く酸安定ミオシンATPase活性の低い速筋線維(II AおよびII B型)のみから構成されていた.しかし.視床下部性肥満ラットの咬筋においては,これらの速筋線維以外に,速ミオシン抗体に陰性でアルカリ安定ミオシンATPase活性が低く酸安定ミオシンATPase活性の高い遅筋線維(I型)が観察され,かつ筋線維の肥大が認められた.両処理群間で,他の11種の骨格筋の筋線維型構成の有為差は認められなかったが,視床下部性肥満ラットの筋線維の横断面積は全ての筋線維型で擬手術ラットより小さかった.以上の結果から,速筋線維から遅筋線維へ筋線維型が変換することが判明した.この変換は,視床下部性肥満ラットの咬筋に運動強度は弱いが長期に及ぶ運動負荷がかかったことに起因すると考えられた.
  • 森田 茂, 西埜 進
    1993 年 64 巻 5 号 p. 448-454
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    混合飼料の給与時間と採食量および採食行動り関係を検討するため,去勢牛の採食バウトの持続時間分布を調べ採食継続確率を求めた.供試動物には,ホルスタイン種去勢牛4頭を群飼し繰り返し用いた.飼料は,ペレット状配合飼料と細切2番刈乾草を54:46(原物比)で混合し給与した.処理区は,1回当りの混合飼料給与時間により2時間区,4時間区,6時間区,12時間区とした.混合飼料は,残飼量が給与量の10%以上となるように,上記給飼時間に従い,7:00および19:00より給与した.各去勢牛の採食量は,個体識別飼槽を用い,個体ごとに記録した.2時間区での代謝体重当りの乾物採食量は,他の処理に比べ有意(P<0.05)に少なかった.4時間区での採食時間は,2時間区に比べ有意(P<0.05)に長く,6および12時間区に比べ短かった.2および4時間区での採食速度は,6および12時間区に比べ有意(P<0.05)に高かった.2時間区の採食バウト持続時間分布から,4分を境に採食継続確率の異なる2種類の採食バウトが存在すると判断した(A,Bタイプ).4,6および12時間区での採食バウトは分類されなかった.4時間区の採食継続確率は,2時間区のBタイプの採食継続確率とほぼ等しく,6および12時間区に比べ有意(P<0.05)に高かった.以上のことから,1回4時間以上の飼料給与においては,持続時間による採食バウトの分類は行なわれないことが示された.また,採食速度と採食継続確率との関連性が示唆された.
  • 谷田 創, 元岡 朗丈, 関 浩一郎, 田中 智夫, 吉本 正
    1993 年 64 巻 5 号 p. 455-461
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    群飼繁殖豚用のコンピュータ自動給餌システムについて,その実用性を検討するために以下の実験を行った.成豚8頭~9頭の群れに前方退出型のフィード•ステーション1機を導入し,すべての豚にリスポンダーの首輪を取り付けた.フィード•ステーションは,午前9時に給餌を開始するように制御し,プログラムされた量の飼料を各豚に給与した.ステーションの利用状況は,タイムラプスビデオを用いた連続行動観察により調査した.予備実験:1回のステーション利用時間が5分未満である頻度が有意に高く,期待値の約2倍みられた.また,2頭の妊娠末期豚は,ステーションで採食中にいずれもその陰部を待機中の豚によって噛み切られた.本実験:飼槽争奪法により求めた一群の社会的順位は最優位豚から最劣位豚まで直線的に並んだ.社会的順位とステーション利用回数およびステーション利用時間との間には正の相関が認められた.ステーション退出後すぐに入口へ戻って再度進入する回数は,劣位豚よりも優位豚の方が多かった.また,一日の内でステーションを利用する順番は社会的順位と一致していた.以上の結果から,コンピュータ自動給餌システムを群飼豚の管理に用いた場合,社会的順位がステーションの利用状況に影響し劣位豚の採食行動は優位豚の妨害によって制約を受けることが示唆された.
  • 市川 意子, 市川 忠雄, 野附 巖, 中野 光志
    1993 年 64 巻 5 号 p. 462-469
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳中体細胞数(SCC),電気伝導度(EC), NAGaseなどを測定して,その異常値から間接的に乳房炎を診断する方法が広く用いられている.しかしながら,その成績は採用した診断法によってあるいは試料採取時期によって異なる結果になることが知られている,この実験では,過去に乳房炎の経歴があったり高体細胞数が続いた搾乳牛15頭について2ヵ月にわたって毎週1回乳汁試料を採取して,(1) SCC(2) EC(3) EC分房間差値(DEC)(4) NAGaseを測定するとともに,乳房炎起因菌として最も大きな影響を及ぼしている(5) Staphylococcus aureusの同定と,これに対する(6) ELISA法によるAntigenの測定を行ない,明らかにS. aureusに感染しているとみられる10分房を選び出し,これらについて(1)~(6)の各測定値の変動および各測定値間相互の関係を検討した.検査期間中,この10分房の(1)~(4)の測定値はかなり大きな変動を示したが,その増減は比較的平行して動く傾向がみられた.しかしながら,これらは菌検出やELISA陽性の時期とはほとんど関係が認められなかった.一方(5)および(6)が全期間陰性であった健康分房では(1)~(4)の値は安定して低い値を示した.感染10分房の期間中におけるのべ80回の検査成績のうち,乳房炎診察指針の定めた基準値を上回る値を示した回数の割合はSCC92.5%,NAGase85.0%,EC71.2%およびDEC56.2%であった.また,S. aureus菌の検出率とELISA陽性率は,それぞれ32.1%および87.7%であった.以上より,菌の同定に比べてELISA法の検出率が高く,間接法ではSCCとNAGaseが良い成績だったことから,ELISA法をスクリーニングテストとして用い,さらに上記の間接法を組み合せて複数回数の検査を実施することによって,より確実なS. aureus感染分房の検出ができることを明らかにした.
  • 相井 孝允, 村岡 誠, 寺田 文典, 坪川 正, 石田 修三, 早澤 宏紀
    1993 年 64 巻 5 号 p. 470-473
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 塚本 洋範, 辻 荘一, 万年 英之, 古市 康宏, 太田垣 進, 向井 文雄, 後藤 信男
    1993 年 64 巻 5 号 p. 474-479
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシ由来の脂肪代謝の一酵素リポプロテイン•リパーゼ(LPL)のcDNAをプローブとして黒毛和種のゲノムDNAの分析を行ない,RFLPを見出した.LPLのcDNAをアミノ酸をコ
    ードしている5'の部分と3'の非翻訳領域とに分割し,それぞれをプローブとした.3'非翻訳領域のプローブではHind IIIをのぞく8種類の制限酵素(Taq I, Xho I, Msp I, Hae III, Pst I, Eco RI,Bam HI)ではRFLPは認められず,Hind IIIのRFLPも明りょうではなかった.一方,アミノ酸をコードしている5'の部分をプローブとすると,調査した9種類の制限酵素のうち,Hind III, PstI, Hae III, Taq I, Msp Iの5種類で多型が観察された.兵庫県の閉鎖繁殖雌牛集団では,それらのRFLP型はハプロタイプ様のクラスターを形成して,お互いに関連しており,個体はAA型,AB型,BB型のいずれかに分類された.このように5種類もの制限酵素型が一致した挙動を示すことは珍しく,その原因としては5種類の制限酵素で切断される比較的長い断片がイントロン部位で正逆の方向に挿入されている可能性が高いものと推定された.美方郡の繁殖雌牛集団116頭ではAタイプのクラスターの遺伝子頻度は0.418,Bタイプのそれは0.582であった.この多型は対立関係にあって単純なメンデル遺伝をするものと推定された.また,20頭の肥育去勢牛の枝肉の調査ではこのRFLP型と枝肉の肉質,日本格付協会の脂肪交雑評点(BMS)との関係は直接には認められなかった.
  • 下司 雅也, 米内 美晴, 花田 博文, 小宮山 鐵朗, 高橋 政義
    1993 年 64 巻 5 号 p. 480-483
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    5種類の非働化血清(牛胎子血清,新生子牛血清,子牛血清,雌牛血清および過排卵処置牛血清)を用い,発生培地への添加血清の種類が,体外成熟•体外受精後の牛卵子の胚盤胞への発生に及ぼす影響について検討した.雌牛血清は性周期の8日目に,過排卵処置牛血清は過排卵処置時の発情後8日目にそれぞれ採取して作製した同一牛の血清を用いた.屠畜場より得られた牛卵巣から未成熟卵胞卵子を吸引採取し,体外成熟培養後,ヘパリン加BO液で洗浄処理した精子を用いて媒精した.媒精6時間後に発生培地に移し,媒精54時間後に卵子を卵丘細胞から取外して卵割状況を検査し,卵割した胚のみを卵丘細胞との共培養は行なわず発生培地のみで培養を経統し,媒精後7~10日(媒精日=1日)にかけて胚盤胞への発生を検査した.多精子受精を除いた受精率は86.5%であった.卵割率(2細胞期以上への発生胚数/供試卵数)は牛胎子血清(74.6%)または過排卵処置牛血清(74.0%)を用いた場合が,8細胞期あるいは胚盤胞期への発生率(8細胞期胚あるいは胚盤胞数/供試卵数)は過排卵処置牛血清(34.4,29.2%)を用いた場合が有意に高かった.以上の結果から,発生培地に添加する血清として過排卵処置牛血清の有効性が示された.
  • 加藤 容子, 新田 良平, 高野 博, 角田 幸雄
    1993 年 64 巻 5 号 p. 484-490
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシ核移植卵の体外発生能に及ぼすドナー割球とレシピエント卵細胞質との融合時期ならびに培養液添加物の影響について検討した.既報に従って除核し,レシピエント卵の囲卵腔に体外受精由来8~32細胞期胚の単一割球を注入した.ついで,成熟培養開始後30時間目あるいは40時間目に電気刺激を与えた.融合卵は,ホルモン,あるいはSODとThioredoxinを添加したTCM199液,またはグルコースをグルタミンに置換したM16液にそれぞれ5%CSを加えて卵丘細胞と共培養し,体外での発生能を検討した.得られた結果は次のとおりである.8細胞期以降の発育は,40時間目に融合刺激を与えた各区で高い傾向がみられ,融合時期を遅らせるとその後の発生に効果的であることが明らかとなった.しかしながら,ホルモン,SOD,グルタミンの添加によって発生率に改善は見られず,これらの添加は胚の発生能を向上させる効果のない結果となった.
  • 山本 修, 朝井 洋, 楠瀬 良
    1993 年 64 巻 5 号 p. 491-498
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    北海道日高地区におけるサラブレッド種の子馬,計261頭の体重,体高,胸囲,管囲を出生直後から450日齢まで経時的に測定し,子馬の発育に影響を及ぼす要因について検討した.各測定値で総じて,雄が雌よりも大きい傾向にあり,管囲,体高ではその差が顕著であった.30日齢の体重は,遅生まれ(5•6•7月生まれ)の子馬が重く,その後の発育では発育速度が冬に遅くなり,春から夏にかけて速くなるという季節による影響が認められた.一方,産次が高くなるにつれて各測定値は大きくなり,4~9産で最大に,また10産を超えると小さくなっており,さらに産次が低いと離乳前の増体量も少なかった.母馬の体重と子馬の各測定値間には有意な正の相関が認められた.また,子馬の発育は牧場間で明らかな違いがみられた.
  • 鈴木 敏郎, 松本 信二, 鴨居 郁三
    1993 年 64 巻 5 号 p. 499-504
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    加圧処理後のアクトミオシンの加熱ゲル形成に与えるSH基量の影響を知るため,塩濃度(0.1~1.0M KCl),加圧量(50~150MPa),加圧時間(5~120min)を変えてSH基量の測定を行なった.また,SH基ブロック剤であるN-Ethylmaleimide (NEM,2~16mM)の添加の影響,Sephacryl S-500による加圧処理後のアクトミオシンの分子量変化についても検討した.その結果,加圧処理を行なったアクトミオシンは,無加圧のものよりも(0.1~1,0M)KCl濃度において常に高いSH基量を示し,特に,加圧区の0.1M KClにおいてSH基量は急激に増加した.加圧量の影響は,0.25M KClにおいては100MPaから,0.70M KClでは50MPaからSH基量が増加していた.加圧処理時間の影響は,0.25M KCl,0.70M KCl共に,150MPa,10分の加圧でSE基量はほぼ最高値に達し,それ以上の加圧を行なってもほとんどSH基量の増加はみられなかった.NEM添加試験においては,0.25M KClでは4mMまでのNEM添加でワークダン値は減少し,明かな加熱ゲル形成の阻害が認められた.しかし,0.70M KClにおいては16mM NEMを添加しても加圧区,無加圧区共にワークダン値にはほとんど変化がみられず,加熱ゲル形成へのNEMの阻害は高塩濃度側では認められなかった.また,Sephacryl S-500によるゲル〓過では,加圧処理を行なったアクトミオシンの見かけ上の分子量は約270kダルトン無加圧のものより小さくなっていた.
  • 山田 昌弘, 北澤 春樹, 植村 順子, 齋藤 忠夫, 伊藤 敞敏
    1993 年 64 巻 5 号 p. 505-511
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Lactobacillus acidophiusの生物活性を調べる一環として,9菌体および細胞壁成分(CWC)について,マウス脾臓リンパ球に対する幼若化活性を検討した.試料の重量比で比較した結果では,菌体よりもCWCに活性の高いものが多く認められ,中でも,2125株のCWC(CWC-2125)に最も高い活性(S.I.=3.02,100μg/ml)が認められた.CWC-2125をイオン交換クロマトグラフィーで分画し,分画成分による幼若化活性を調べたところ,主にカラム吸着成分に有意な活性が認められた.また,その活性成分はマウス脾臓B細胞に対して特異的に作用した.さらに,糖成分を中心に構成成分を調べたとにろ,CWC-2125は,グルコース,N-アセチルグルコサミン,グリセロール,リンおよびムラミン酸を含んでいた.活性の高い画分では,グルコースに対するN-アセチルグルコサミンの離合が高かった.
  • 山崎 和幸, 深沢 芳隆, 中村 文彦, 須山 享三
    1993 年 64 巻 5 号 p. 512-517
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    核酸構成塩基であるシトシン(Cyt)および5-メチルシトシン(5-MeCyt)を,牛および豚の肺および胸腺の加水分解物から分離調製する方法について検討した.これらの塩基は活性炭カラムおよび大口径シリカゲルカラムにより分離した.それぞれCytおよび5-MeCytは,カウンターイオンとしてSDSを用いた逆相系分取HPLCにより精製し,結晶として得た.一方で,これらの塩基の逆相HPLCによる分析法を開発し,定量を行なった.その結果,乾物1g当りのCytおよび5-MeCytの含量は,それぞれ牛肺が2.11mgと2.09mg,牛胸腺が3.83mgと4.41mgであった.豚肺においてもほぼ同量含まれていた.
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