日本畜産学会報
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64 巻, 6 号
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  • 橋爪 力, 兼松 重任
    1993 年 64 巻 6 号 p. 553-560
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ガラニンが牛の成長ホルモン(GH)の放出に及ぼす影響について検討した.去勢雄牛から得た視床下部-下垂体組織をin vtitro潅流系に置き,10-7~10-9Mのガラニンを潅流し,潅流液中のGH濃度をラジオイムノアッセイで測定した.潅流は,下垂体組織のみを潅流する単独潅流と第一室に視床下部の内側底部組織を入れ,そこを流れた液が下垂体前葉組織を入れた第二室に流れるようにした連続潅流を行った.潅流液には38°Cに保持した修正クレブス液を用いた.ガラニンは単独潅流時には10-7~10-9M濃度でGH濃度を有意(P⟨0.05, P⟨0.01)に増加させたが,連続潅流時には10-7M濃度で有意な(P⟨0.01)増加反応が認められたに過ぎなかった.また単独潅流時に見られた反応は用量依存性であった.これらの結果は,ガラニンはGHの放出に対して下垂体に直接作用することを示唆している.
  • 舟場 正幸, 高橋 一夫, 入来 常徳, 阿部 又信
    1993 年 64 巻 6 号 p. 561-567
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    11週齢あるいは5週齢で離乳した子牛について離乳がカルシウム(Ca)代謝に及ぼす影響を調べた.5週齢ホルスタイン種雄子牛6頭(平均64.8kg)をそれぞれ3頭ずつ11週齢離乳(L)区あるいは5週齢離乳(E)区に分け,E区の離乳1,6,8,11,19週目にL区とE区のCa出納と腎クリアランスを検討した.E区では離乳直後に若干増体が抑制されたが,その後の増体速度に差がなかったので,試験終了時もE区の方が体重が小さい傾向を示した.1,6週目にはE区で固形飼料摂取量が増加したが,TDN摂取量ではE区の方が低かった.Ca吸収は早期離乳直後に抑制された結果,保持量も減少した.Ca吸収はまたL区の離乳直後にも若干減少した.日数の経過とともに糸球体濾過量が増加し,それに伴って濾過Ca量も増加したが,そのほとんどが尿細管以降で再吸収され,尿中排泄はわずかであった(⟨7%),離乳は腎でのCa動態と血中Ca濃度に明確な影響を及ぼさなかった.以上の結果,早期離乳によりとくにCa吸収が変化し,恐らく骨へのCa沈着が減少する可能性が示唆された.
  • 小櫃 剛人, 谷口 幸三, 山谷 洋二
    1993 年 64 巻 6 号 p. 568-577
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    精製栄養素の胃内給与法を用いて,第一胃内注入揮発性脂肪酸(VFA)組成と週齢の違いが,早期離乳子牛のエネルギーと窒素利用に及ぼす影響を検討した.ホルスタイン種雄子牛6頭を用い,3頭には酢酸,プロピオン酸,酪酸のモル比を48:42:10とするVFA混合液を,残りの3頭には同76:14:10とするVFA混合液を,主要ミネラルおよび緩衝液とともに第一胃内へ注入した.第四胃内へはカゼイン,微量ミネラル,ビタミンを注入し,離乳(5から7週齢)後はこれらの注入精製栄養素のみで飼育した.総エネルギーおよび窒素注入量は,それぞれ570kJ/kgBW0.75および1.0g/kg BW0.75とした.6から14週齢の間,2週間毎に血液成分,発熱生量,窒素出納を測定した.血漿中グルコース濃度とβ-ヒドロキシ酪酸濃度にはVFA組成の影響が認められた.熱発生量にはVFA組成の影響は認められなかったが,週齢の進行にともない減少する傾向がみられた.窒素蓄積量は,プロピオン酸割合の低いVFA液を注入した場合に,10から12週齢にかけて低い傾向にあった.以上の結果より,幼齢子牛では,反芻家畜において通常の飼育下でみられるVFA組成の範囲内であっても,プロピオン酸割合が低い場合には,離乳後一時的に窒素蓄積量が低下することが示唆された.
  • 今井 壮一, 松本 光人, 渡邊 彰, 佐藤 博
    1993 年 64 巻 6 号 p. 578-583
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    岩手県五葉山で捕獲され,約2ヵ月間アルファルファヘイキューブで飼養されたニホンシカ(ホンシュウジカ)19頭よりルーメン内容を採取し,そこに見られた繊毛虫構成を調査した.その結果Entodinium属6種,Diplodinium属1種,Eudiplodinum属1種,Epidinium属1種の計4属9種の繊毛虫が認められた.これらのうち,7種はわが国の家畜に見られるものと共通であったが,Entodinium abruptum MacLennan,1935およびDiplodinum rangiferi Dogiel,1925の2種は従来シカ科動物のみから報告されているものであり,ニホンシカにおいても海外で報告されているシカ類と類似した,特徴ある繊毛虫構成を有していることが明らかとなった.Entodinium属の全種は尾棘を欠いていた.ルーメン内における繊毛虫密度は0.7-58.1×104/mlであった,種別の構成比ではE.simplexが捕獲季節に関わりなく常に優勢で,平均37.6%を占め,D.rangiferiの23.6%がこれに続いた.
  • Diego P. MORGAVI, 小野寺 良次, 長澤 孝志
    1993 年 64 巻 6 号 p. 584-592
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    In vitroの系によりルーメンプロトゾアによる嫌気性ルーメン真菌の捕食を検討した.山羊から2種類の真菌,Neocallimastix sp.Piromyces sp.を単離した.山羊から採取した混合ルーメンプロトゾアをMB9緩衝液に懸濁し,これに凍結乾燥真菌を加えて,嫌気的条件で39°C,24hまでインキュベートした.そして,培養液中の総キチン量と培養液中に遊離したグルコサミンおよびアミノ酸を経時的に測定した.Pirornycesの場合は有意ではなかったけれどもインキュベーション中に総キチン量が減少した.また,Neocallimastixではほんの少し減少する傾向が見られた.24h後に培地中に遊離したグルコサミンは両者とも有意に増加した(P⟨0.05).したがって,ルーメンプロトゾアはキチン分解活性を持つと考えられた.この点は初めての証明である.プロトゾアが培地中に放出する遊離アミノ酸は真菌の存在により増加した(P⟨⟨0.01)ので,ルーメンプロトゾアは真菌タンパク質を代謝していると推察された.
  • 佐藤 衆介, 黒田 耕作
    1993 年 64 巻 6 号 p. 593-598
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    単飼人工哺乳方式の行動学的評価を目的とし,13頭の人工哺乳子牛の行動を6頭の自然哺乳子牛の行動と比較した.人工哺乳子牛を生後直ちに母牛から離し,単飼ペンで飼育した.30日齢まで1日2回のバケツによる哺乳を行ない,乾草と人工乳を1週齢から自由摂取させた.自然哺乳子牛は,母牛とともに9時から15時まで,多用な環境を持つ放牧地に時間制限放牧された.放牧後,解放牛舎に戻し,人工乳を不断給餌した.人工哺乳子牛では24時間の行動を,自然哺乳子牛では9時から15時までの6時間の行動を,10日齢および30日齢に1分間隔で記録した.人工哺乳子牛は,単飼のため社会行動が制限されたが,自然哺乳子牛ではみられなかった隣接子牛との吸合いや柵,紐などを吸引する行動が出現した.人工哺乳子牛では,自然哺乳子牛に比べ,横臥,反すう,自己舐行動が多く,吸乳行動,探索行動,移動が少なかった.人工哺乳子牛における,横臥,反すう,自己舐行動の増加および非栄養的な吸引行動の出現は,社会行動,吸乳行動,移動および探索行動の抑制に伴う欲求不満に由来するものと考えられた.
  • 細野 明義, 佐竹 菜保子
    1993 年 64 巻 6 号 p. 599-604
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    インドネシアに伝わる発酵乳,ダディッヒ(dadih)から分離したLactococcus lactis subsp.cremoris R-48をLPY培地(ペプトン0.7%,ラクトース1%,酵母エキス0.5%,Na2HPO4 0.6%, NaH2PO4 0.4%)に37°Cで培養した.培養を開始して6時間が経過した時点でスーパーオキシドジスムターゼ(SOD,EC1•15•1•1)が急速に生産され,24時間で最大の生産を示した.24時間培養菌体より,SODの粗酵素液を調製し,それを硫安分画,DEAE-Sephadex A-50およびSephadex G-100カラムによるゲル濾過を行ない,最終的に粗酵素に対し18.6倍に活性を高めた.この精製酵素の活性はpH 6.5-8.0で最大を示し,70°Cで30分(pH 7.0)の加熱で安定であった.Mg2+, Fe2+, Fe3+, K+などの金属イオンやEDTA, SDS, H2O2などの試薬によって活性は阻害されなかった.
  • 北澤 春樹, 山口 高弘, 藤本 裕子, 伊藤 敞敏
    1993 年 64 巻 6 号 p. 605-607
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 山田 未知, 杉田 昭栄
    1993 年 64 巻 6 号 p. 608-613
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウズラにおける視床前背側部への網膜投射様式を順行性軸索標識法(horseradishperaxidase method: HRP法)を用いて明らかにした.一側の眼球にHRPを注入すると,HRPにより標識された神経線維は視神経交叉で完全に交叉し,注入側とは反対の視床前背外側核吻外側部(DLAlr),視床前背外側核外側部(DLL),視床前背外側核大細胞部(DLAmc)に終止していた.特にDLAlrとDLLへの網膜投射は強かった.また,視床前背外側核内側部(DLM)にも弱い網膜投射が見られた.さらにDLLをニッスル染色による組織像およびHRP終末様式により,構成細胞が密に分布し,網膜からの投射が最も強かったA層,細胞分布が疎で,網膜からの投射がA層に比べると弱いB層,さらに細胞分布がB層よりは密で,網膜からの投射が3層の内で最も弱いC層の3つの亜層に分けられた.
  • 織部 智宏, 李 丹, 山田 學, 堀内 俊孝
    1993 年 64 巻 6 号 p. 614-622
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    産卵鶏の卵巣における静脈の分布状態を調査するために,鋳型標本を作製して立体的に観察した.産卵鶏の卵巣は背側部では一塊の実質組織からなるが,腹側部では7~9部位の房状の卵巣に分葉している.卵巣腹側部における房状卵巣の皮質には,毛細静脈網が密に分布し,その中に多数の未成熟卵胞のこん跡が見られた.毛細静脈網は,やや直径の太い集合静脈に集められ,その後,房状卵巣の髄質を走行する主幹静脈に流入する,集合静脈は網目の粗い網状を呈し,静脈枝の吻合部には洞様構造が見られた.房状卵巣の髄質の中央部には直径の太い主幹静脈が走行し,その房状卵巣に分布する大部分の静線を集めて卵巣背側部に上行していた.卵巣背側部では,各房状卵巣から上行してきた主幹静脈はこの部位で互いに吻合して2~3本の直径の太い卵巣静脈に集められ,卵巣から排出していた.発達した卵胞の卵胞茎においては,2~4本の静脈が卵胞茎へ排出されると報告されている4).本実験では,卵胞の近位の卵胞茎では従来の報告と同様の所見が得られたが,卵胞膜から排出された複数の静脈は卵胞茎内で吻合して卵胞の遠位では1本の静脈となって房状卵巣に流入しているのを認めた.
  • 佐藤 博, 常石 英作
    1993 年 64 巻 6 号 p. 623-628
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)の飼料的利用の可能性を検討するため,育成子牛にMCTを給与して血液成分および飼料消化への影響を調べた.トリカプリリンおよびトリカプリン(C8およびC10のトリグリセリド)が混合(約6:4)しているMCTを用いた.濃厚飼料としてTDNが約70%のC飼料,これを基本にしてMCTを10%添加したM飼料,長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)を10%添加したL飼料を準備し,ホルスタイン種の去勢子牛6頭(7ヵ月齢)を用いて1期3週間のラテン方格で実験した(C, MCT, LCT区とする).各期の第3週の朝給餌の直前と4時間後に採血し,消化試験も行なった.採食前の血漿酢酸,3-ヒドロキシ酪酸(3-HB)濃度(以下,濃度を省略)には区間で差がなかった.採食後には酢酸,3-HBとも上昇し,とくにMCT区では3-HBおよびアセト酢酸(AcAc)が有意に高かった.採食前のグルコースと乳酸には区間で差がなかったが,採食後にはMCT区で低かった,コレステロール(Cho)とHDL-ChoはLCT区のみ高かった.採食後の非エステル脂肪酸(NEFA)およびトリグリセリド(TG)はLCT区で高かったが,採食前には区間で明らかな差を認めず,インスリンにも差をみなかった.NDFとADFの消化率はMCT区で低かったが,CPの消化率には油脂給与による差がなかった.
  • 仲舛 文男, Bagus P. PURWANTO, 山本 禎紀
    1993 年 64 巻 6 号 p. 629-636
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    育成牛の平均体温に及ぼす環境温度と熱産生量の影響について3つの実験を行ない検討した.実験Iは環境温度16,24および32°C下での長時間感作,実験IIは14°Cから36°Cまでの7つの温度条件下での短時間感作および実験IIIは,環境温度15°Cと30°C下における3水準の飼料摂取量(TDN量として62,50および37g/kg0.75 day)を条件として,熱産生量(HP),呼吸数(RR),皮膚温(ST)および直腸温(RT)を経時的に測定して行った.平均体温(Tb)は平均皮膚温(MST)とRTから算出した.実験Iでは,Tbの水準は環境温度により決定され,その日内変動はHPの増減や飲水に影響されることを明らかにした.実験IIでは,環境温度とTbとの相関と直線回帰式を求め,その有意性(p⟨0.01)と環境温度に対するTbの変化率が0.04であることを示した.実験IIIでは,HPとTbとの有意な相関(p⟨0.05)と直線回帰式が両環境温度下で定められることを示し,HP 1 kJ(/kg0.75h)に対するTbの平均変化率が,0.09であることを示した.また,両環境温度下でのRRとTbは有意な相関関係(p⟨0.01)にあることを示した.以上の結果から,高温域においてもTbは体熱平衡の水準と状態を表す優れた生理指標であると判断され,牛に対する温熱作用や防暑効果の判定を行うための欠くことのできない測定項目であると考察した.
  • 高橋 潤一, 安藤 貞, 渡辺 真紀子, 山本 奈緒美, 藤田 裕
    1993 年 64 巻 6 号 p. 637-644
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    1. 硝酸塩の反芻胃内還元に対するタングステンの阻害効果および硝酸塩に起因する飼料繊維成分の消化性の低下に対するタングステンの改善効果についてin vitroで検討した.2. 硝酸塩添加区,硝酸塩+タングステン酸塩添加区,タングステン酸塩添加区,無添加区の4区についてめん羊第一胃液の4重ガーゼ濾液をイノキュラムとした24時間の嫌気培養を行ない,基質オーチャードグラス低水分サイレージの繊維類消化性について比較した.3. タングステン酸塩の添加によって硝酸塩還元量の有意な(P⟨0.01)低下が認められ,亜硝酸塩の生成は顕著に減少した.硝酸塩添加によって生じた基質のNDFおよびADF消失率の低下および総VFAの産生はタングステンにより顕著な改善が認められた.4. タングステンには硝酸塩還元阻害効果の他に反芻胃内の繊維類消化•分解に対する単独の直接作用が示唆された.
  • 沼田 正寛, 副田 理美, 近藤 良房, 中村 豊郎
    1993 年 64 巻 6 号 p. 645-651
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    In vitroでの非ヘム鉄の可溶化に及ぼす牛肝臓およびその消化物の影響を検討した.非ヘム鉄として用いたFeCl3の腸内pHにおける可溶化は,牛肝臓から調製した水溶性タンパク質画分(WPF)およびその消化物(WPF消化物)の濃度に依存して著しく促進された.可溶化成分はWPFが分子量10,000~3,000の画分に,WPF消化物が分子量3,000~1,000の画分にそれぞれ存在した.WPFの各画分を消化した時,可溶化能は分子量10,000~3,000の画分を消化した時だけに認められた.ゲル濾過およびイオン交換HPLCで分離した結果,WPF消化物の可溶化成分は分子量2,500付近で少なくとも3種類の電荷の異なるペプチドであると推定された.分子量2,500付近の画分を構成する主要アミノ酸はGly, Leu, Alaであり,Cysは検出されなかった.しかし,この画分ではAsxより等電点の低い領域に数本のピークが観察され,他の画分とは異なる特徴を示した.分離前のWPF消化物の鉄可溶化能力は10.8~12.8μg/mgタンパク質と算出され,それは家禽肉の塩溶性タンパク質画分で認められた能力の約5倍に達した.以上のように,消化前後の牛肝臓はin vitroにおいて顕著な鉄可溶化能を有し,腸管内での非ヘム鉄の沈澱あるいは重合を阻止することで生体利用率の向上に寄与する可能性を示唆した.
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