動物のアミノ酸要求量は,飼料中の蛋白質水準の増加に伴って増加する.しかし,それは飼料中の蛋白質水準が増加するからではなく,それを構成する各アミノ酸が原因していると考え,アルギニンを例にとって,個々のアミノ酸のアルギニン要求量に及ばす影響を調べた.試験1では,アルギニンの要求量を増加させる個々のアミノ酸の影響を調べるために,アルギユンが1.0%と実際の要求量より若干少ない基礎飼料に,0.6%のグリシン,ヒスチジン,イソロイシン,ロイシン,フェニールアラニン,トリプトファンまたはバリンを添加した飼料およびその混合物を添加した飼料,0.4%のリジン,スレオニンまたはメチオニンを添加した飼料,およびその混合物を添加した飼料を8日齢のブロイラー雛各区4羽に10日間自由摂取させた.10日目に増体量と飼料摂取量を測定した.その結果,メチオニン,トリプトファン,リジンおよびその混合物を添加した飼料で増体量に負の影響がみられた.試験2ではリジン過剰による増体量の減少はアルギニン欠乏によることを調べるため,アルギニンが1.0または1.4%でリジン1.14%の基礎飼料にリジンを0,0.4,0.8%添加してブロイラーの生産能に及ぼす影響を試験1と同様の方法で調べた.両アルギニン区とも,飼料中のサジン含量の増加に伴って増体量,飼料効率は悪化した.アルギニン高区では低区に比べてその悪化の程度は少なかった.飼料中のリジン含量の増加に伴って血漿中のリジン濃度は増加したが,逆にアルギニン濃度は減少した.また,アルギニン高区では血漿中のリジン濃度が減少した.飼料中の蛋白質水準が上がると,アルギニンの要求量が増加するのは,リジンが直接の原因の一つになっていることが示唆された.
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