日本畜産学会報
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65 巻, 11 号
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  • 橋爪 力, 小山 眞一郎, 兼松 重任
    1994 年 65 巻 11 号 p. 993-998
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    PACAP (10-12~10-7M)が牛のGH,LHおよびPRLの放出に及ぼす効果を牛の下垂体前葉細胞単層培養系を用いて検討した,10-9,10-8および10-8MのPACAPはGHの放出をそれぞれ対照に比べ29(P<0.05),51(P<0.05)および79(P<0.01)%増加させた.また10-10,10-9,10-8および10-7MのPACAPはLHの放出をそれぞれ対照に比べ26,37,65および137%増加させた(P<0.01).しかしながら,今回使用したPACAPの量ではPRL放出に及ぼす影響は見られなかった.PACAPによるGHとLHの放出反応は用量依存性であった(P<0.01).本研究の結果は,PACAPが下垂体に直接作用して牛のGHおよびLHを放出させることを示唆している.
  • 関根 時江, 渡辺 恵美子, 石橋 晃
    1994 年 65 巻 11 号 p. 999-1007
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    栄養学的にブロイラーの脚異常を改善するため,雌ブロイラーの骨成長に及ぼす飼料中のアミノ酸,カルシウムおよび有効リン含量の影響を調べた.8日齢の雌ブロイラーを1区10羽9飼料区に分けた.ヒナをケージにて単飼し,14日間試験飼料および水を自由摂取させた.試験飼料は5つの必須アミノ酸がNRC要求量の80,100および120%に合うように3段階とし,カルシウムおよび有効リンは,50,100および150%の3段階になるように配合した.ただし,どの飼料においてもカルシウム:有効リン比は2.22:1と一定にした.成長に関して,飼料中アミノ酸とカルシウム-有効リン含量の間に交互作用は認められなかった.増体量は飼料中アミノ酸およびカルシウム-有効リン含量による有意な影響をうけなかった.飼料摂取量は飼料中アミノ酸含量により有意な影響がみられたが,飼料中カルシウム有効リン含量はこよる有意な影響はみられなかった.骨成長に関しては,脛骨の近位骨端部および近位骨幹部における骨密度に,飼料中アミノ酸とカルシウム-有効リンの間で交互作用が認められた.飼料中のカルシウム-有効リン含量を150%にしても,120%のアミノ酸飼料を給与した場合には,脛骨ではそれ以上の改善ははみられなかった.飼料中のカルシウム-有効リン含量は,脛骨の骨端部における縦方向の成長に関与し,骨石灰化を促進した.一方,アミノ酸含量は骨幹部における横方向の成長に関与し,骨石灰化だけでなく骨基質の形成も促進していることが示唆された.
  • ヌエ テインミョウ, 塚原 洋子, 萬田 正治, 渡邉 昭三
    1994 年 65 巻 11 号 p. 1008-1017
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    輸送開始時のストレッサーに対する反応に知覚-心理的経路が関与する可能性を明らかにするため,頸静脈と股静脈に残置カテーテルを装着した雄トカラヤギ3頭を用いて,ブランコ実験と実際の路上輸送試験を行なった.ブランコ実験ではケージにいれたままの自然の振動を組み合せた1セット15分間の振動を6回繰り返した.実際の輸送試験ではケージに入れたヤギをトラックに乗せて公道を3時間走った.ブランコ振動の間ヤギはあわててくずれた姿勢を直そうとし,また落ち着きのない行動を示した.ブランコ振動が始まるとすぐに,不規則で激しい振動のときヤギは急性で一過性の心拍数増加を示した.これと対照的に呼吸数はブランコ振動と関係がみられず,実際の経過時間と関係していた.ブランコ実験開始後30分には,血漿中のコルチゾールとグルコースがそれぞれ基礎値の4倍と3倍に上がっていた.プランコ運動終了時にはコルチゾールは同じく4倍に上昇した.そして,これらはプランコ終了後3時間で基礎値にもどった.ブランコによって好酸球は明らかに減少し開始後4.5時間で最小値を示した.白血球数は振動開始後漸増し,振動終了後3時間と12時間にピークを示した.トラック輸送では反応の大きさと持続時間がより明らかであったが,コルチゾールとグルコースは本質的にブランコ実験と同じ反応を示した.好酸球の減少は2頭にみられた.白血球数は輸送開始時から増加し,2時間後にピークを示した.コルチゾール,グルコースおよび白血球数の増加と好酸球数の減少のタイミングは,緊密に同期して実験開始直後から起っており,また,これらの反応はプランコ実験と実際の輸送試験の両方に認められた.今回の試験開始時における,実験動物の行動,コルチゾール,血液学的反応は,知覚-心理的経路の関与によって,動物が未知の処置と環境に対する恐怖と不安のために,驚愕反応を起しているにとを示唆している.
  • 中崎 真悟, 高久 一彦, 湯口 宗則, 枝松 ひとみ, 高橋 幸資
    1994 年 65 巻 11 号 p. 1018-1025
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    成牛皮由来の真皮層の細片を,水酸化ナトリウムにて25°Cで1~10日前処理し,中和•水洗後,乳酸に機械的に分散させることにより,アルカリ処理程度の異なる酸分散体コラーゲンを得た.これらの分散体コラーゲンは,ほぼタイプIコラーゲンのみで構成され,酸可溶性コラーゲンとほぼ同等の溶解性を有していた.また,分子間架橋度は酸可溶性コラーゲンより低く,ペプシン可溶化コラーゲンより高かった.さらに,アルカリ処理程度に応じて,等電点が5.4~5.0と低下し,変性温度も34~30°Cと低下した.一方,分子間凝集力はその均一性が増大していた.これらの結果から,分散体コラーゲンの分子構造やその他の諸特性を,アルカリ前処理をコントロールすることにより制御し得ることが示唆された.
  • 森田 英利, 坂田 亮一, 其木 茂則, 永田 致治
    1994 年 65 巻 11 号 p. 1026-1033
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    発酵サラミ,ビーフジャーキーおよび豚肉を浸漬したモデル系ピックルから分離された細菌(119菌株)について,ミオグロビン(Mb)のメト型から望ましい赤色Mb誘導体への転換能を有する菌株をスクリーニングした.ビーフジャーキーから分離された9菌株,モデル系ピックルから分離された7菌株(MH-1~MH-7)がメトMbを赤色Mb誘導体に転換した.分離菌株MH-5およびMH-7は,それぞれStaphylococcus carnosusおよびStaphylococcus caseolyticusと同定された.S. caseolyticus MH-7はクェン酸代謝能があり,ジアセチル/アセトインを産生した.一方,ビーフジャーキーから分離された9菌株はすべて,オキシMbを生成した.また,菌株MH-5あるいはMH-7によって赤色化したMRS培養液のアセトン抽出液は,ソーレー帯において399nmにピークがみられた.その赤色化したMRS培養液は遠心分離(10,000×g,5分間)による細胞の除去により,すばやく退色した.菌株MH-5あるいはMH-7を接種し,MRS液体培地に豚肉を浸漬し培養後,アセトン(75%)抽出した結果,417,546および584nmにピークがみられた,その赤色Mb誘導体はオキシMbあるいはニトロソMbではなく,イタリアの伝統的発酵食肉製品であるパルマハムの赤色色素吸収スペクトルと一致していた.食肉由来の細菌には,食肉製品の赤色化と風味の発現に関与しているものがあることが示唆された.
  • 三上 正幸, 長尾 真理, 関川 三男, 三浦 弘之, 本郷 泰久
    1994 年 65 巻 11 号 p. 1034-1043
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    電気刺激を行なった牛肉の熱成中におけるペプチドおよび遊離アミノ酸量を知るため,ヘレフォード種去勢肥育牛9頭に対し,40V,13.8Hzで0(対照区),30(ES30区)および60(ES60区)秒の電気刺激を行なった.供試筋肉部位は大腿二頭筋を用い,牛肉ホモジネートおよび筋漿画分を調製し,2°Cで屠殺0(6時間),2,7,14および21日目まで保存した.ES30およびES60区のホモジネート保存のペプチド量に,屠殺0日目から対照区のものよりも多く,対照区,ES30およびES60区における量は,それぞれ牛肉100g当り,162.5,192.1および198.6mgであった.この増加傾向は21日目まで続き,それぞれ356.4,409.7および405.5mgとなった.総遊離アミノ酸量は保存日数とともに増加したが,対照区と電気刺激区の間に差は見られなかった.しかしながら,電気刺激区におけるグルタミン酸量は屠殺0日目から増加しており,21日目には対照区の23.3mg(100g牛肉中)に対して,ES30およびES60区は31.1-32.0mgまで増加した.ペプチド量およびグルタミン酸量を増加させることから,ESは牛肉の呈味性向上に有効であることが認められた.一方筋漿の状態で保存した場合,ペプチドおよび遊離アミノ酸量は増加したが,その増加量は21日目において,ホモジネート保存時のそれぞれ45.8-48.5%および53.9-69.7%に相当した.これらのことから,ペプチドおよび遊離アミノ酸の生成は,筋漿のタンパク質やペプチドと同様に筋原線維タンパク質にも由来していることが分った.
  • 寺脇 良悟, 末田 英子, 松崎 重範, 明見 好信, 福井 豊
    1994 年 65 巻 11 号 p. 1044-1050
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種雄牛の精巣の横断的記録に対して非線型成長モデルを当てはめることによって成長様相の観察を行なった.さらに,精巣の絶対成長と体各部位に対する相対成長から計量的な性成熟の指標作製の可能性について検討した.ホルスタイン種雄牛57頭(2~64ヵ月齢)の陰嚢周囲,精巣硬度および精巣幅を,体各部位については体高,体長,胸深,尻長,腰角幅,かん幅,胸囲,管囲の8部位を測定した.陰嚢周囲は急激に30ヵ月齢まで,精巣幅は15ヵ月齢まで増加した.精巣硬度は加齢に伴う減少傾向を示した.精巣と体各部位との相関関係は,体高やかん幅が強く,特に体高と陰嚢周囲の相関係数は0.81(p<0.01)と高い値であった.非線型成長モデルを当てはめた結果,精巣の各形質についてはLogisticモデルが最も当てはまりが良かった.しかし,変曲点はすべて0ヵ月以前になった.体各部位に対する精巣の相対成長(二相アロメトリー)の結果から,前半は優成長を示し,後半は劣成長を示すことが明らかになった.その変移点は陰嚢周囲が18~20ヵ月齢,精巣幅は9~10ヵ月齢であった.変移点は,体の部位が変ってもほとんど変化しなかった.また,この時期の陰嚢周囲は34.8~35.9cmで,精巣幅が46.1~49.3mmであった.精巣幅の変移点は,性成熟の指標として利用できる可能性が示唆された.
  • 河原 孝吉, 柾谷 智史, 中田 稔, 鈴木 三義, 光本 孝次
    1994 年 65 巻 11 号 p. 1051-1056
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,15の線形式体型形質におけるホルスタイン種雌牛集団の遺伝的パラメータを多形質のSire modelを用いてEM-REML法により推定した.記録は,日本ホルスタイン登録協会北海道支局において1984年4月から1988年3月までに審査委員9名が審査した初産雌牛29,528頭から得られた線形スコア値であった.高く推定された遺伝率は,高さ(0.34),尻の幅(0.29)および体の深さ(0.26)であった.反対に,低く推定された遺伝率は,乳房の懸垂(0.08),前乳房の付着(0.10),蹄の角度(0.11)および鋭角性(0.14)であった.遺伝相関は,高さ,強さ,体の深さ,尻の長さおよび尻の幅との各間に0.67から0.95の範囲,後乳房の幅は外貌に関連した形質との間で0.38から0.63の範囲および後乳房の高さとの間で0.63を示した.前乳房の付着と乳房の深さ間には0.75の相関が認められた.負の遺伝相関は,尻の角度と乳房の懸垂間の-0.34が最高であった.表型相関は,高さ,強さ,体の深さ,尻の長さおよび尻の幅との各間に0.43から0.74の範囲で大きな正の相関があった.
  • 横井 伯英, 松尾 秀彦, 守屋 和幸, 佐々木 義之
    1994 年 65 巻 11 号 p. 1057-1063
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    子牛の離乳前発育記録を用いて発育性と哺育能力に関する分散共分散をREML法により推定するための前段階として,対象集団における記録の得られた期ならびに分析の際に仮定する基礎世代が推定値に及ぼす影響,さらに子牛の離乳前発育形質を説明するモデルについて検討した.材料としては,農林水産省鳥取種畜牧場において1960年から1985年までの26年間に得られた黒毛和種子牛1,892頭の離乳前発育記録を用いた.これら26年間を初期8年間,中期10年間および後期8年間という3つの期にに分けた.分析対象形質としては生時体重と生時から2ヵ月齢までのDGを取り上げた.分析モデルとして,子牛の発育性に関する育種価,母牛の哺育能力に関する育種価および残差を取り上げたモデルと,それらに加えてさらに母牛の哺育能力に関するその他の効果(非相加的効果および永続的環境効果)を取り上げたモデルを考慮した.基礎世代としては1952年から1959年まで,1960年から1967年までおよび1968年から1977年までの期間の3つを仮定した.得られた推定値には集団の期の推移に伴った一定の傾向は認あられず,また基礎世代が異なっても,同一のデータセットから得られる推定値はほぼ等しかった.哺育能力に関するその他の効果を取り上げないモデルを用いた場合,哺育能力の遺伝率は過大にに推定されるようであった.以上の結果から,集団の期ならびに分析の際に仮定する基礎世代は推定値ににほとんど影響しないにと,また子牛の離乳前発育形質を説明するたあのモデルとして,母牛の哺育能力に関する育種価とその他の効果の両方を取り上げたモデルを設定する必要のあることが示唆される.
  • 鍵山 謙介, 舟場 正幸, 入来 常徳, 阿部 又信
    1994 年 65 巻 11 号 p. 1064-1068
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    9週齢における突然の離乳が子牛の尿中プリン誘導体(PD)排泄量に及ぼす影響を検討した.4頭の子牛に代用乳を8週間給与したが,その間,固形飼料は与えなかった.離乳後は,市販濃厚飼料と稲ワラを不断給餌した.尿中PDと飼料摂取量は離乳前4日より離乳後14日目まで毎日,窒素(N)出納は離乳前(0週)および離乳後1週目と2週目に測定した.離乳直後より可消化有機物(DOM)およびOM摂取量は経日的な増加を示したが,それでも離乳1週目のDOM摂取量は著しく低く,N出納も負となった.離乳後7日間の尿中PD排泄量は,ほぼ一定であったが,8日目以降は,OM摂取量と共に経日的な増加を示した.離乳1週目の尿中PD:DOM比は2週目のそれよりも著しく高く,これは,微生物態蛋白質合成量の増加によるのではなく,内因性PD排泄量が成反芻家畜と比較して多いことも一因と考えられた.以上の結果,ルーメンが未発達な子牛では,週齢によらず尿中PD排泄量は微生物態蛋白質合成量の指標として適当でないことが示唆された.
  • 砂原 正明, 宝山 大喜, 岡村 浩
    1994 年 65 巻 11 号 p. 1069-1075
    発行日: 1994/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    皮革工場から排出される排液の総汚濁負荷量を削減するために,脱毛石灰漬け工程の改善を検討した.1実験につき100枚の塩蔵豚皮を用い,前報で示した毛を回収する脱毛法で処理した.さらに脱毛排液を3段階に分けて回収し,薬品を補充した後,9回循環利用し,総汚濁負荷量と使用薬品量の削減を図った.結果は以下の通りである.1) 原皮重量に対して約6%(乾燥重量)の毛が繊維状の形態を保ち回収された.裸皮には残毛は見られなかった.2) 脱毛排液の循環利用により,脱毛工程における硫化ナトリウムと水酸化カルシウムの使用量は従来法のおよそ半分に削減された.3) 水漬けから脱灰前の水洗工程までの排液の総汚濁負荷量を従来法と比較した結果,9回の循環利用後全排液を排出した場合,およそBODが35%,CODが59%,SSが40%,油分が28%,全蒸発残留物が19%削減され,本法が皮革排水の総汚濁負荷量の削減に非常に有効であることが分った.4) ウェットブルーの化学分析,製品革の機械的性質の測定および外観の官能検査の結果,本法で得られた衣料用スェードは従来法で得られるものと比べほとんど差はなく,脱毛排液の循環利用による影響も見られなかった.
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