電気刺激を行なった牛肉の熱成中におけるペプチドおよび遊離アミノ酸量を知るため,ヘレフォード種去勢肥育牛9頭に対し,40V,13.8Hzで0(対照区),30(ES30区)および60(ES60区)秒の電気刺激を行なった.供試筋肉部位は大腿二頭筋を用い,牛肉ホモジネートおよび筋漿画分を調製し,2°Cで屠殺0(6時間),2,7,14および21日目まで保存した.ES30およびES60区のホモジネート保存のペプチド量に,屠殺0日目から対照区のものよりも多く,対照区,ES30およびES60区における量は,それぞれ牛肉100g当り,162.5,192.1および198.6mgであった.この増加傾向は21日目まで続き,それぞれ356.4,409.7および405.5mgとなった.総遊離アミノ酸量は保存日数とともに増加したが,対照区と電気刺激区の間に差は見られなかった.しかしながら,電気刺激区におけるグルタミン酸量は屠殺0日目から増加しており,21日目には対照区の23.3mg(100g牛肉中)に対して,ES30およびES60区は31.1-32.0mgまで増加した.ペプチド量およびグルタミン酸量を増加させることから,ESは牛肉の呈味性向上に有効であることが認められた.一方筋漿の状態で保存した場合,ペプチドおよび遊離アミノ酸量は増加したが,その増加量は21日目において,ホモジネート保存時のそれぞれ45.8-48.5%および53.9-69.7%に相当した.これらのことから,ペプチドおよび遊離アミノ酸の生成は,筋漿のタンパク質やペプチドと同様に筋原線維タンパク質にも由来していることが分った.
抄録全体を表示