日本畜産学会報
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65 巻, 6 号
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  • 佐藤 正寛, 古川 力, 西田 朗, 小畑 太郎
    1994 年 65 巻 6 号 p. 509-514
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳牛の初産と2産の泌乳量のように,2つの形質の間の遺伝相関rGが高く,それらの遺伝率h12およびh22が似かよっているときに,それらの記録を単一形質の反復記録と見なすことが選抜の正確度に与える影響について理論的に検討した.まず,基準としてそれら2形質を含む選抜指数による選抜の正確度rIHを求める式を決めた.続いて,それら2形質の記録を遺伝率がh02である単一形質の反復記録と見なして,2つの記録の和で選抜したときの選抜の正確度rERを,反復率とh02を使って表した.さらに,2形質に関する表型および遺伝的パラメターが既知であると仮定し,それらのパラメターを用いて,2つの記録の和で選抜したときの選抜の正確度rRTを表現した.そして,rERとrRTのrIHに対する比をそれぞれ,R1=rER/rIHおよびR2=rRT/rIHと書くこととした.実際にR1とR2を求めるときには,2形質の表型分散(ケースI),遺伝分散(ケースII)および環境分散(ケースIII)のいずれかが等しいと仮定し,想定遺伝率h02が0.1~0.5の範囲にあるとして,h12とh22,rGおよび表型相関rpを変化させて,その影響をみた.h02が0.1と低く,かつh02とh12,h22との差が小さいときには,どのケースのR1の間にも差がみられず,R2にも差がみられなかった.しかし,h02とh12,h22との差が大きいときには,ケースIIのR1が最も大きく,逆にR2が最も小さい値をとる傾向にあった.一方,h02が0.5と高いときには,いずれのケースにおいてもR1,R2ともにほぼ同じ値となり,R1はrGが小さくなるにつれて大きくなった.また,R1はh02が0.3および0.5のときは,h02とh12,h22との差が大きくなるにしたがってわずかに減少し,rpの変化の影響はほとんど受けなかった.しかしh02が0.1と低いときのR1は,h02とh12,h22との差が大きくなるにしたがい,またrpが高くなるにしたがって減少した.R2はh02が同じく0.1のとき,h02とh12,h22との差の増加にともなって急速に減少した.このR2の減少量はh02が高まるにつれて小さくなり,h02が0.5に達すると,h02とh12,h22との差が大きくなってもR2はほとんど減少しなかった.また,h02が0.5のきには,rGおよびrpの変化はR2にほとんど影響を与えなかった.以上の結果より,R1およびR2は,特にh02が低い場合に両形質の遺伝率の差や両形質間の遺伝および表型相関の強さの影響を受けることが明らかとなった.このことは,h02が低いときには,産次の異なる記録を同一形質の繰り返し記録と見なす際に,選抜の正確度について検討しておく必要があることを示している.
  • Arthur Bob KARNUAH, 守屋 和幸, 佐々木 義之
    1994 年 65 巻 6 号 p. 515-524
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    枝肉横断面の画像解析により抽出した特徴パラメータについて,反復率と測定誤差の変動係数を用いて測定精度の検討を行なった.さらに枝肉構成の予測式の寄与率の向上を図るための新たな特徽パラメータの抽出についての検討も行なった.28頭の去勢肥育牛の枝肉について第5-6胸椎間で切断した横断面全体を画像解析した.画像解析には富士通画像解析システム(FIVIS)を用いた.抽出した特徴パラメータは個々の筋肉の面積,周囲長,長径,短径と新たに考慮した離心率および主軸方向,異なる筋肉の重心間の距離,枝肉横断面の総筋肉面積,総脂肪面積並びに総骨面積である.これらの二値化画像になった後のステップについて反復した場合(SET-1)と最初からの全ステップについて反復した場合(SET-2)との間で,反復率および誤差の変動係数を比較した.個々の筋肉の面積,周囲長,長径および短径の反復率はSET-1で0.88~0.99,SET-2で0.84~0.99の範囲にあった.離心率の反復率はSET-1で0.87~1.0,SET-2で085~0.99の範囲にあった.一方,主軸方向の反復率はSET-1で0.96~1.0,SET-2で0.95~0.99であった.離心率と主軸方向の反復率が非常に高い値を示したことから,これらの特微パラメータは枝肉構成の予測式に有効な新たな画像解析情報となり得ることが示唆された.加えて,大きな筋肉の重心間の距離も有効な画像解析情報と考えられる.枝肉横断面全体の総筋肉面積,総脂肪面積および総骨面積の反復率はいずれも非常に高い値を示した.さらにSET-1とSET-2との間で測定精度に差が認められなかったことから,画像解析における原画像の二値化に関する処理は測定精度に大きな影響を与えないものと推察される.しかし,小さな筋肉,特にそれらが互いに隣接している場合,スタイラスペンによる筋肉領域の分離に習熟する必要があることが示唆される.
  • 長谷川 信, 川上 智弘, 本田 和久, 氷上 雄三
    1994 年 65 巻 6 号 p. 525-531
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    絶食による鶏の体脂肪減少の機構を調べる目的で,絶食処理鶏の腹腔内脂肪組織を用いて,[1-14C]酢酸あるいは[1-14C]パルミチン酸のトリグリーセリドへの取込みおよびCO2への酸化を,in vivoおよびin vitroにおいて検討した.3週齢の白色レグホーン雄雛を用い,2日間の絶食を行なった.絶食により,[1-14C]酢酸の総脂肪酸への取込み並びに[1-14C]パルミチン酸のトリグリセリドへの取込みは,対照区に対して,おのおのin vivo実験では86%並びに93%の,in vitro実験では90%並びに88%の減少を示した.これらの結果は,絶食によりde novoのトリグリセリド合成が抑制されることを示唆している.また,in vitroにおいて,[1-14C]酢酸のCO2への酸化は,絶食により77%減少したが,[1-14C]パルミチン酸の酸化は4.1倍に増加した.これらの結果は,絶食により脂肪酸のCO2への酸化分解,即ち脂肪酸のβ-酸化が促進されることを示唆している.以上の結果に基づき,絶食による,腹腔内脂肪総織における,トリグリセリドの減少機構について考察した.
  • 文 相鎬, 永西 修, 広田 秀憲
    1994 年 65 巻 6 号 p. 532-537
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ライ麦サイレージ自由採食下の山羊において濃厚飼料の補給が採食および反芻行動に及ぼす影響を検討するため,12頭の山羊を3頭ずつ4区に分けてそれぞれ実験開始体重の0(G I),0.1(G II),0.5(GIII)および1%(GIV)の濃厚飼料を与え,ビデオカメラを用いて24時間の行動を観察した.採食および反芻時間は濃厚飼料補給量の増加につれて著しく減少し,G I区とG IIIおよびG IV区との間には有意な差が認められた(p<0.05).採食時間は摂取されたライ麦のDMと正の相関を,また,CP, NFEおよびTDN摂取量と負の相関を示した(p<0.05),反芻時間は総DM(p<0.05), CP, NFEおよびTDN摂取量と負の相関を示した(p<0.01).1食塊当りのそしゃく数とそれに消費した時間はともにGIIIとGIV区で少なく,すべての処理区で23時から5時までの時間帯に最も多かった.そしゃく速度は濃厚飼料補給量の増加につれて遅くなり,GIとG II区では11時と17時の間に速かったが,G III区とG IV区では各時間帯ともに変化は見られなかった.以上の結果より,採食および反芻行動は粗飼料や濃厚飼料の採食量により大きく影響を受けるものと考えられた.
  • 佐藤 衆介, 本田 祐介, 太田 実
    1994 年 65 巻 6 号 p. 538-546
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    分娩直後の雌牛に対する雄牛の行動的関与と子宮修復,初回排卵および発情回帰という性現象との関係を実験牛群で調査した.春分娩牛である1989年の14頭(実験1)および1990年の12頭(実験2)を同数からなる2群に分け,一方にまき牛経験のある雄牛を入れ,それぞれ約40日間飼養し,行動および発情を調査した.雌牛単独群にも雄からの視覚刺激および嗅覚刺激は可能であった.雄雌間の行動的関与量は,実験1および2と,それぞれ10.9/hおよび10.8/hであった.そのうち,雌からの関与は実験1および2で,それぞれ12.2%および17.4%で,雄雌の関係は雄からの行動に大きく依存していた.しかも,攻撃行動は極端に少なく,実験1および2でそれぞれ2%および0%で,親和行動と性行動が大半を占めた(実験1:66%と32%,実験2:52%と48%).分娩後30日および50日近辺に雄からの行動的関与が多くなる傾向がみられ,それは無発情排卵に対応するとも考えられた.分娩後の初回排卵と子宮修復に要した平均日数は雄導入群で早く,特に実験1での子宮修復日数の差は有意であった.(P<0.01).実験1では調査中に発情は回帰せず,PGF2α投与により発情を誘起したが群間に誘起率に差はみられなかった.実験2では,調査中に雄導入群のうち4頭が発情し,発情回帰のなかった雌単独群との差には有意であった(P<0.05).実験1および2で発情が回帰した雌牛としなかった雌牛とで,回帰前の雄からの行動的関与量を比較すると,前者に対して多い傾向が見られた.以上より,牛においても,雌の性現象に対して'male effect'が見られ,それは雄からの行動的関与が関係する可能性が示唆された.
  • 服部 育男, 熊井 清雄, 福見 良平, Thomas B. BAYORBOR
    1994 年 65 巻 6 号 p. 547-550
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 細野 明義, 代田 智
    1994 年 65 巻 6 号 p. 551-555
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 武田 久美子, 大西 彰, 三上 仁志, 犬丸 茂樹
    1994 年 65 巻 6 号 p. 556-562
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ミトコンドリァDNAは細胞質のミトコンドリア内に存在する核外DNAである.ミトコンドリアDNAの制限酵素切断型多型(RFLP)を,細胞質マーカーとして利用できるかどうか検討した.まずC57 BL/6(B6)マウスのミトコンドリアDNAを制限酵素SacIで直鎖状にし,ラムダファージに組み込んで完全長のクローンを得た.そしてこれをプローブとしてサザンブロットハイブリダイゼーションを行ない,マウスのミトコンドリアDNA多型の検出を試みた.B6およびRR系統マウスの各組織から抽出したDNAを用いたところ,いずれの試料からもミトコンドリアDNA由来のバンドが検出でき,B6とRR系統マウスとの間で期待されたRFLPが観察された.しかし,抽出されたDNA量当りのミトコンドリアDNA量は組織ごとに異なっていた.また,凍結保存したB6とRR系統間のキメラマウスの組織より抽出したDNAを用いたところ,両者のパターンが検出され,キメラであることが判定できた.以上の結果から,ミトコンドリアDNAのRFLPが細胞質マーカーとなりえること,ミトコンドリアDNAクローンがRFLPの検出やキメラ判定のプローブとして有効であることが明らかになった.
  • 芝田 猛, 阿部 恒夫, 川上 和夫, 大西 彰, 武田 久美子, 秋田 富士, 落合 厳, 小坂 昭三, 大山 真二, 梶 雄次, 勝俣 ...
    1994 年 65 巻 6 号 p. 563-570
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚ストレス症候群(PSS)の有力な遺伝子候補であるリアノジンレセプター(骨格筋カルシウムイオン遊離チャンネル)のミスセンス突然変異(C→T; Arg615→Cys)について,PCR法によりこの1つのエクソン部位(134bp)を増幅し,制限酵素(Hha I)によりDNA型を検出した.DNA型は,アガロース電気泳動法により,この変異がホモ型の固体(T/T)は1本のバンド(134bp),変異を持たない個体(C/C)はHha I 認識部位を持つため2本のバンド(50bpおよび84bp),およびヘテロ型の個体(C/T)は3本のバンド(50bp,84bpおよび134bp)として検出された.トロント大学より入手したハロセン陽性豚2頭はT/T型を示した.しかし本研究で用いた3集団にT/T型は検出されなかったにもかかわらず,ハロセン陽性を示す個体が多数検出された.また,これらの個体のHal-Gpi-A1Bg-Pgdハプロタイプから推定したハロセン遺伝子型は,ハロセンテストの結果とよく一致していた.一方,PCR増幅産物について塩基配列を確認したところ,目的とするDNAが増幅されDNAテストとよく一致した結果が得られた.これらの結果および他の報告から,このミスセンス突然変異はPSSの原因となるが,この変異以外もPSSの原因となる遺伝子要因が考えられ,これがPSSの症状の多様性と関連しているものと推測された.
  • 千国 幸一, 田畑 利幸, 斎藤 昌義, 門間 美千子
    1994 年 65 巻 6 号 p. 571-579
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    DNAの塩基配列の違いに基づいて食肉の原材料を決定するため,食用とされる可能性のある動物種から,ミトコンドリアのシトクロムb遺伝子をPCRで増幅し,塩基配列を決定した.PCRに用いたプライマー,MI1(5'-CAAATCCTCACAGGCCTATTCCTAGC-3'), MI2 (5'-TAGGCGA-ATAGGAAATATCATTCGGGTTTGAT-3')は,発表されているウシ,ヒト,マウス,ニワトリのシトクロムb遺伝子の配列からよく保存されている領域を選び,共通性の高い配列とした.試験対象とした8種の哺乳類と5種の鳥類からシトクロムb遺伝子の中央部分646塩基を増幅し,ダイターミネーターサイクルシーケンス法(ABI)でPCR産物の塩基配列を決定した.本試験で決定したウシの塩基配列は,すでに発表されているウシのシトクロムb遺伝子の塩基配列と一致し,ヒッジ,ヤギ,ブタ,ニワトリも発表されている塩基配列とほとんど一致していた.今回決定した塩基配列と発表されている配列との間で異なっていた塩基の数は646塩基中,7(ヒツジ),16(ヤギ),2(ブタ),3(ニワトリ)塩基であった.一方,類縁関係の近いニホンカモシカ,ヒツジ,ヤギの間で塩基配列を比較すると,3種の間で67-72塩基の違いがあり,塩基配列によって種を判別することは容易であった.簡易法として,PCR産物の制限酵素Taq I, Alu I,Hae III切断パターンから種を同定することも可能であった.
  • 海老名 卓三郎, 太田 実, 打和 秀世, 村上 梅司
    1994 年 65 巻 6 号 p. 580-589
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    皮膚ケラチンとは反応せず,毛髪に特異的に結合し,毛髪の破断強度を上げる抗毛髪ケラチ ン抗体を含む初乳ならびに常乳を免疫牛に産生させた.人毛髪ケラチン50mgを出産60日前のホルスタイン牛に筋肉内に注射し,(2~3)週間後に同抗原を乳房内または乳房リンパ節附近に投与すると,血中抗体価ならびに初乳中の毛髪ケラチンに対する抗体価は105に上昇した.この時,免疫牛一頭の初乳中に(1~1.5)kgのIgGを産生することが出来た.さらにこれらの免疫牛に分娩2~3ヵ月後ケラチンを50mgずつ筋肉注射し,4週おきに同抗原を筋肉内液射又は腹腔内注射を3回行なったところ,常乳中に初乳と同等の比活性を持った抗体が出来るにとを見出した.常乳では300日間搾乳することができ,全体では(4~5)kgのIgGを得ることができる.にれより,初乳に加えて常乳を抗体生産に利用するにとが可能となった.
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