日本畜産学会報
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65 巻, 8 号
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  • Thevin VONGPRALUB, 小〓 深
    1994 年 65 巻 8 号 p. 695-700
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    培養液に添加したオキシトシンがマウス精子の運動性,先体反応率および受精率に及ぼす効果を検討した.10-10Mのオキシトシンを添加した培養液で精管•精巣上体尾部精子を5時間培養した結果,運動精子の割合は時間の経過とともに低下したが,培養開始後1時間目以降,対照に比べて有意に高い値を維持した.ハイパーアクチベーションを起した精子の割合は,培養期間を通して有意に高く,先体反応率は,培養開始後1,3および5時間に有意に高い値を示した.卵丘除去卵子の受精率は(46%),卵丘付着卵子(83%)よりも低い値を示したが,10-12,10-10および10-8Mのオキシトシンを添加した結果,卵丘除去卵子の受精率はそれぞれ64,73,57%に有意に増加した.これらの結果から,オキシトシンはin vitroにおいて精子の運動性を刺激し,受精に有効な作用を及ぼすものと推察された
  • 一戸 俊義, 田村 忠, 上田 宏一郎, 大久保 正彦, 朝日田 康司
    1994 年 65 巻 8 号 p. 701-708
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    刈取り期の異なるオ-チャードグラス1番刈り乾草3種類(H1,出穂前;H2,出穂:開花=1:1;H3,開花:結実=1:1)を,ルーメンカニューレ装着めん羊にそれぞれ1日1回給与し,反芻胃内容物の粒度分布の経時変化および嚥下食塊と糞の粒度分布を測定した.無細切乾草1300gを1日1回10:00から13:00の間に採食させ,飼料給与後3,7,11,15,19,24hに反芻胃内容物を全量取り出し,代表サンプルを採取した.粒度分布は,Large particles (LP,≧1180μm篩上残留分画),Small particles(SP, 47~600μm上残留分画)および可溶性分画(SOL,47μm篩通過分画)の割合で表した.嚥下食塊のLP割合は,各乾草とも60%以上であり,5600μ篩上残留分画割合はH1給与時がH2,H3給与時に比べて高かった.反芻胃内容物中のLP割合は,給与後3から24hにかけて,H1,H2,H3給与時でそれぞれ,46→13,39→14,34→8%へと減少し,各時間におけるLP割合は,H1給与時がH2,H3給与時に比べて高い傾向にあった.一方,SP割合は,H1,H2,H3給与時でそれぞれ,28→47,35→62,47→68%へと増加し,各時間におけるSP割合は,H1給与時に比べてH2,H3給与時で高かった(P<0.05).反芻胃内容物中のSOL割合は,H1で給与後3hの26%から給与後24hには41%へと増加したが,H2,H3では変動が少なく概ね25%で推移した.各乾草給与時において,反芻胃内通過が可能な飼料粒子は常に総反芻胃内容物の50%以上を占めていた.糞のLP割合は,H1,H2,H3給与時でそれぞれ,0.7,3.7,1.0%とわずかであった.SP割合はそれぞれ48.8,53.2,70.3%とH1,H2給与時に比べ,H3給与時で高かった.
  • 西野 直樹, 脇田 幸奈, 内田 仙二
    1994 年 65 巻 8 号 p. 709-715
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乾草またはサイレージという貯蔵方法の違いが,牧草の繊維消化に及ぼす影響について検討した.出穗期のイタリアンライグラスから,天日乾草および予乾サイレージを調製し,大豆粕と9:1の割合の混合飼料を山羊4頭に給与して,消化率,窒素出納,乾物とNDFのルーメン内分解率,飼料付着性のカルボキシメチルセルラーゼ(CMCase)活性,および液相(Co-EDTA)と固相(Cr-CWC)の消化管内通過速度を測定した.
    予乾サイレージ(乾物含量30.8%)のpHは4.75で,酪酸が優占した.乾草はサイレージに比べてNDF, NDIN,(中性デタージェント不溶性窒素)およびADIN(酸性デタージェント不溶性窒素)含量が高く,乾草調製中に牧草蛋白質の一部が繊維成分と結合したことが示唆された.すべての成分消化率はサイレージ給与区の方が高い値を示したが,繊維成分の消化率には有意差が認められなかった.窒素蓄積量は,サイレージを給与した山羊が有意に高い値を示した.
    サイレージは乾草に比べ,NDFのルーメン内可溶性区分の割合が高く(5:5および0.0%),分解性区分の割合(71.4および74.4%)およびその分解速度(3.2および4.2%h-1)が低かった.また飼料付着性のCMCase活性もサイレージの方が低い値を示した.消化管内通過速度は,液相および固相のいずれにおいても,給与区間に有意な差は認められなかった.これらの結果は,乾草およびサイレージという貯蔵方法の違いは,可溶性炭水化物含量だけでなく繊維成分の消化性にも少なからぬ影響を与えることを示している.
  • 石下 真人, 鮫島 邦彦
    1994 年 65 巻 8 号 p. 716-719
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 守屋 和幸, 道後 泰治, 佐々木 義之
    1994 年 65 巻 8 号 p. 720-725
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    黒毛和種の屠肉性に関して,1960年以前に出生した個体を基礎世代と見なした場合(基礎集団)および肥育牛の父母を基礎世代と見なした場合(現集団)の遺伝率のREML推定を行なった.さらに,血統情報の量および血統の遡り方が推定値に及ぼす影響についても検討した.REML法により求めた基礎集団の遺伝率推定値はそれぞれ,DCG(枝肉重量/出荷時日齢):0.373,枝肉重量:0.351,胸最長筋面積:0.518,バラ厚:0.398,皮下脂肪厚:0.420,歩留基準値:0.478およびBMSナンバー:0.593であった.一方,現集団の遺伝率推定値はそれぞれ0,325,0.326,0.495,0.364,0.256,0.381および0.644であった.血統情報として父のみを取り上げた場合,遺伝率推定値はいずれの形質についても過小評価される傾向にある反面,父側の血統情報のみを追加した場合は血統情報量の増加とともに逆に過大評価される傾向にあった.一方,父母の血統を同時に遡った場合,血統情報量の増加とともにその推定値は基礎集団の推定値に近づく傾向にあった.これらの結果から,基礎集団の遺伝率推定に関しては血統情報の量だけでなく血統の遡り方も重要であることが示唆される.すなわち,肥育牛の曾祖父母あるいは祖父母まで遡った血統情報を用いることで基礎集団の遺伝率推定が十分可能であるものと推察される.
  • 樋口 幹人, 長嶺 慶隆, 花田 博文
    1994 年 65 巻 8 号 p. 726-731
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    放牧地に生息するマダニ類が媒介するタイレリア原虫により引き起される小型ピロプラズマ病に対する,日本短角種子牛の抵抗性の向上を目的として,マダニ媒介性住血原虫病に対する抵抗性が高いゼブー(Bos indicus)の遺伝子割合が約3/8のサンタガートルーディス種と日本短角種とを交配し,F1を生産した.得られたF1子牛(ゼブー遺伝子割合約3/16)を5月から10月にかけて対照の日本短角種子牛とともに親子放牧し,赤血球中のタイレリア原虫寄生率およびヘマトクリット値の推移を比較検討した.10月を除きF1子牛は日本短角種子牛より原虫寄生率が低く推移した.また放牧期間を通じF1子隼は日本短角種子牛に比べヘマトクリット値が高く推移した.日
  • 松岡 昭善, 古川 徳, 高橋 強, 山中 良忠
    1994 年 65 巻 8 号 p. 732-737
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    発酵ソーセージ用乳酸菌株として報告例の見られない2種のKefir粒構成乳酸菌と常用菌であるPediococcusおよびLactobacillusそれぞれ3菌株の食塩および亜硝酸塩耐性を比較検討した.さらに,Kefir粒R4の構成乳酸菌(K-R4), Pediococcus acidilactici NRIC 1101(Pd-1101)およびLactobacillus pentosus NRIC 1069(L-1069)を用いて発酵挽肉製品を試作し,発酵中におけるpH,乳酸菌数の変化および原料肉に常在する有害微生物(ブドウ球菌,Micrococci,グラム陰性菌)の増殖抑制能を比較検討し,次の結果を得た.
    MRS培地中における菌の食塩および亜硝酸塩耐性は,いずれの菌株も濃度が高くなるに伴って低下したが,食塩耐性は,K-R4およびPd-1101が高く,亜硝酸塩耐性は,K-R4およびL-1069が高い傾向を赤した.K-R4, Pd-1101およびL-1069のスターターを添加した発酵挽肉製品のpHと乳酸菌数は,いずれも24時間後に4.8以下および109CFU/gに達した.挽肉製品中のブドウ球菌発育阻害率は,K-R4およびL-1069が高く,添加後24時間で99.0%以上となり,Pd-1101では48時間後にその値に達した.またMicrococci発育阻害率は,添加後24時間でPd-1101およびL-1069が94.8%以上,72時間で99.8%以上となり,K-R4では添加後24時間で84.4%,48時間で99.8%となった.一方,グラム陰性菌発育阻害率は,いずれの菌株においても添加後48時間で98%以上となった.
    これらの結果は,Kefir粒構成乳酸菌が発酵ソーセージ用スターター菌としてPediococcusおよびLactobacillusと同様に有用であることを示すもので興味深い.
  • 根岸 晴夫, 吉川 純夫
    1994 年 65 巻 8 号 p. 738-745
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    鶏肉工場で処理中の鶏肉の死後変化を明らかにするために,屠殺後18,48分,1~2,3~4および24時間経過した鶏胸肉の温度,pH,剪断力価(SFV),ATP関連化合物および筋原線維の小片化率(MFI)とSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)パターンの変化を調べた.鶏肉のpH,SFVおよびMFIは出荷時に当る死後3~4時間で最も大きく変化し,屠殺後18分に比べ,SFVの著しい低下とpH値の僅かな低下およびMFIの上昇が見られた.その後翌日までの変化は少なく,屠殺当日の出荷時には十分な軟らかさに達していると考えられた.また,ATP含量が死後48分で急速に減少したのに対して,IMP含量は増加し,24時間後もほぼ同水準を維持した.SDS-PAGEでは,死後3~4時間後に分子量マーカー31kDa付近に分子量が30kDaと32kDaと推測される2つのバンドの出現を認めた.これらのバンドの出現は熟成中の牛肉で得られる30kDa成分12)の出現よりも速かった.以上から,鶏肉の死後変化は非常に速く,そのおいしさのピークは処理当日の夕方から翌日までにあると推定された.
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