日本畜産学会報
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65 巻, 9 号
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  • 谷口 幸三, 渡辺 隆成, 中村 哲, 小櫃 剛人
    1994 年 65 巻 9 号 p. 775-787
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻胃内分解度の異なるデンプン源と蛋白質源を用いて調製した高蛋白質飼料を去勢牛に給与し,反芻胃と小腸内における栄養成分の消化性と菌体合成および窒素出納を調べた.試験処理区はトウモロコシs大豆粕,トウモロコシ+コーングルテンミール,大麦+大豆粕,大麦+コーングルテンミールであり,各飼料とも乾草と濃厚飼料の割合を50:50,粗蛋白質含量を17%とした.第一胃,十二指腸上部,回腸末端にカニューレを装着した4頭の去勢牛を4×4のラテン方格法で配置した.得られた測定値をデンプン源と蛋白質源およびそれらの交互作用について二元配置で解析した.有機物とデンプンの胃内消化率は大麦区で高く,逆に小腸内消化率はトウモロコシ区で高かった(P<0.05).しかし菌体窒素合成効率がトウモロコシ区で高くなる(P<0.05)ために,十二指腸に移行した菌体窒素量は大麦区よりもトウモロコシ区,特にコーングルテンミールと組み合せた飼料で,増加する傾向を示した.全窒素の十二指腰移行量は大麦区よりもトウモロコシ区で,大豆粕区よりもコーングルテンミール区で多くなった.窒素の小腸内消化率もコーングルテンミール区が大豆粕区よりも高かった(P<0.05).NDF消化率,十二指腸内容物のアミノ酸組成,窒素蓄積量はデンプン源と蛋白質源の違いによる影響を受けなかった。菌体合成効率,デンプンの反芻胃•小腸内消化率および窒素蓄積に対し,デンプン源と蛋白質源の交互作用が有意となる傾向を示した.飼料中の粗蛋白質含量を高めた飼料を去勢牛に給与する場合には,トウモロコシとコーングルテンミールの組合せが菌体合成に適することが示唆された.
  • 蔡 義民, 熊井 清雄
    1994 年 65 巻 9 号 p. 788-795
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    愛媛県下の酪農家からイタリアンライグラスとトウモロコシサイレージ40点を集めて,サイレージ中の乳酸異性体の産生比率を測定した.また,乳酸菌添加がサイレージ中のL(+)とD(-)乳酸異性体の産生比率に及ぼす影響を明らかにするために,イタリアンライグラスとトウモロコシを材料草とし,2回の実験を行なった.実験1で乳酸菌剤のSlとCyの各添加区,実験2で乳酸球菌のEnterococcus faeciumとLactococcus lactisおよび乳酸桿菌のLactobacillus caseiの各単独添加区と球•桿菌混合添加区(混合区)をそれぞれ設け,サイレージを調製した.酪農家サイレージの全乳酸に占めるL(+)乳酸の産生比率は32~38%と低かった.実験2は実験1とほぼ同様な傾向を示し,乳酸菌添加によってサイレージのpHが低下し,乳酸含量が高まった.またフリーク評点が向上し,サイレージの品質が明らかに改善された.サイレージ中のL(+)乳酸産生比率は無添加区に比べ,実験1で乳酸菌剤添加区が5~10%(P<0.05),実験2で乳酸球菌添加区が7~11%(P<0.05),乳酸桿菌区と混合区が12~14%(P<0.05)の範囲で有意に増加した.一方,乳酸桿菌区と混合区の添加効果については,両者間にほとんど差がなかったので,サイレージ発酵品質の改善効果は主としてL.caseiの添加によることが示唆された.以上の結果,酪農家サイレージはD(-)乳酸を高い比率で含有することとともに乳酸菌,とくにL(+)乳酸のみを産生する乳酸桿菌の添加はサイレージの品質とL(+)乳酸の産生比率を高めることが明らかになった.
  • 森田 茂, 西埜 進
    1994 年 65 巻 9 号 p. 796-805
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種去勢牛(試験開始時体重約200kg)16頭を供試し,以下の実験を行なった.給与飼料には,市販のペレット状配合飼料およびイネ科主体1番刈乾草を用いた.配合飼料の乾物給与日量は代謝体重kg当り75gとし,乾草は自由採食させた.いずれの飼料も,1日2回8:20および17:20に給与した.試験期間は11日間とし,その最終日にテレビカメラにより採食行動を調査した.同時に,咬筋の筋電図から反芻時間を調査した.代謝体重当りの乾草乾物採食量は,約28g/日となった.採食バウトおよび採食バウト間隔の持続時間分布から,前後に4分を超える採食活動の休止期が認められた場合に,その採食活動を採食期と定義した.反芻バウトおよび反芻バウト間隔の持続時間分布から,15分を超える期間,反芻活動の休止が認められた場合,反芻期と定義した.1日当りの採食時間(採食期の合計時間)は約4時間,反芻時間は約7時間となった.飼料給与後反芻開始までの時間は,約3時間であった.飼料給与3時間以降の期間では,前の採食終了後,次の採食開始までの時間が長いほど,次の採食期の持続時間は長くなることが示された.飼料給与後3時間以内の期間においては,前の採食時間の延長によりその後の反芻時間が延長するのに対し,3時間以降の期間では,反芻時間の長さによりその後の採食時間が影響を受けることが示された.
  • 寺田 厚, 原 宏佳, 李 雪駝, 八木 昌平, 市川 洋征, 西 純示, 洪 再発, 光岡 知足
    1994 年 65 巻 9 号 p. 806-814
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    豚(ランドレース×大ヨーク)に生菌剤(Bio livestock clean system)0.1%添加飼料を生後から給与した群を試験区とし,180日令に対照区とそれぞれ8頭ずつの糞便フローラ,糞便内腐敗産物,水分,pHを測定した.腸内フローラは生菌剤給与豚ではLactobacillus (P<0.001), Bacteroidaceae (P<0.05)及び総菌数(P<0.01)は有意に増加し,Clostridium perfringens (P< 0.001), Enterobacteriaceae (P<0.05) Pseudomonas (P<0.01) Streptococcus (P<0.05), Bacillus (P<0.01)およびYeasts (P<0.001)は有意に減少した.その他の細菌群の変動はほとんど認められなかった.<腐敗産物については,糞便のアンモニアおよび硫化物は生菌剤給与豚で有意(P<0.001)に減少し,また,糞便クレゾール(P<0.05)およびスカトール(P<0.01)も有意に減少した,糞便の短鎖脂肪酸は給与中酢酸,プロピオン酸及び乳酸が有意(P<0.05)に増加し,イソ酪酸及びイソ吉草酸が有意(P<0.05)に減少し,糞便pHはわずかに低下した、さらに,生菌剤給与豚で体重と飼料効率はわずかに改善され,糞便の臭気は減少した.
  • 柿市 徳英, 内藤 智尚, 皆川 利之, 東 和広, 鎌田 信一, 大塚 宏治, 押田 敏雄
    1994 年 65 巻 9 号 p. 815-821
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    汚泥由来珠であるNK-2Gの株のpHと脱窒活性の関係を調べるとともに,各株をPVA-硼酸法により固定化後,混合し,長期脱窒試験を試みた.PS,PDおよびNK-2G株の最大脱窒活性を示したpHはそれぞれ6,8および8であり,pH5-9の範囲では3株ともはに脱窒活性を維持した.そこで,pH活性の異なる3株をそれぞれ固定化し,脱窒試験を行った。その結果,4ヵ月は98~100%の脱窒効率を維持したが,その後83~100%を変動し,若干の低下を示した.このことから,再活性化を試みたところ,100%の効率に復帰したものの,約1ヵ月後には再び80~100%を変動した.以上より,脱窒素に対するpH活性が相違する3株を,PVA-硼酸法で固定化することににより4ヵ月間は98%以上の脱窒効率が維持し,再活性化を行なえば,さらに1ヵ月間の100%の効率を維持することが明らかとなった.
  • 入来 常徳, 舟場 正幸, 畑野 元子, 阿部 又信
    1994 年 65 巻 9 号 p. 822-825
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 高橋 由美, 高橋 明男, 松本 和也, 中潟 直己, 安斎 政幸, 宮田 堅司
    1994 年 65 巻 9 号 p. 826-833
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ラット胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)の樹立を目的として,ラット初期胚内部細胞塊(ICM)由来細胞の増殖に関する検討を行なった.マウスES細胞樹立に使用されるBuffalo ratliver細胞上清(BRL-CM)および白血病抑制因子(Leukemia inhibiting factor; LIF)の培養液への添加はICMの増殖に対して無効であったが,BRL-CMを酸処理したのち分子量5000の限外ろ過膜で分けた低分子分画(CM/La)とLIFを加えた場合のみ極めて高い頻度でICMの増殖が観察され,ほぼすべての接着胚でICMがドーム状に増殖した.さらにその一部を継代することにより,小型球形細胞からなる不定形のコロニーを形成して増殖する細胞株2株を樹立した.このICM由来細胞株はCM/Laを除去すると線維芽様細胞,神経様細胞,心筋様細胞へと分化し,また,浮遊培養により胚様体を形成したことから,多分化能を有しているものと考えられた.また,CM/LaはラットICMおよびラットICM由来細胞に対して増殖促進および分化抑制活性を持つことが示唆された.BRL-CMに由来するCM/La分画は従来困難であったラット初期胚由来細胞株の樹立•維持に有効であると考えられた.
  • 伊東 正吾, 曽根 勝, 鈴木 邦夫, 和泉屋 公一, 望月 洋, 筒井 敏彦, 中島 千絵, 小笠 晃, 中原 達夫
    1994 年 65 巻 9 号 p. 834-841
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    妊娠豚延べ273頭を用い,半減期が著しく長いProstalandin F誘導体,フェンプロスタレン(FP)の分娩誘起効果を臨床•内分泌学的に検討した.FPの投与時期は,妊娠111,112,113,114日(最終交配日を0日)の4区,また投与量は0.25,0.5,1.Omgおよび対照(生理食塩液)の4水準とし,頸部に皮下注射した.処置から分娩開始までの時間は,対照区と比較して,0.25mg投与区では有意差が見られなかったが,0.5および1.Omg投与区では有意(p<0.01)に短かった.また,0.5mgおよび1.0mgを妊娠111~113日に投与した試験区では,いずれも処置後24時間前後,114日に投与した試験区では処置後12時間前後に分娩が誘起される傾向が認められた.なお,分娩誘起時の産子数,死産子数,子豚の生時および離乳時体重,さらに離乳後における母豚の発情回帰については対照区との間に有意差は認められなかった.FPの血中移行は,その代謝産物(RS-63377)を指標にしてみると比較的速やかで,代謝産物の血中濃度は1時間で増加し始め,2~4時間前後に最高値を示して減少するが,投与後24時間以降も比較的高濃度を維持していた.また,FP投与後血中プロジェスラロン濃度は速やかに低下し,その後分娩が開始されることを認めた.以上のように,FPO.5~1.Omg投与は妊娠111~114日の豚について顕著な分娩誘起作用を発揮することが示された.
  • 平尾 温司, 杉田 昭栄, 藤原 克彦
    1994 年 65 巻 9 号 p. 842-849
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ニワトリ嗅球の神経結合について神経終末を標識する順行性軸索標識法(バイオサイチン法)および主として起始細胞を標識する逆行性細胞標識法(HRP法)を用いて調べた.1側の嗅球にパイオサイチンを注入すると両側の嗅結節,嗅旁葉,薪線条体,基底核,副高次線条体,旧線条体,原始線条体腹側部,髄条核,中脳中隔路核および梨状葉皮質に標識終末が確認できた.一方,1側の嗅球にごHRPを注入すると両側の副高次線条体および中隔核に標識細胞が確認できた.これらの結果,ニワトリの嗅球は梨状葉皮質,嗅結節,原始線条体へ投射する点では哺乳類の,中脳中隔路核へ投射する点ではハ虫類の嗅球投射と類似していた.また,嗅球から旧線条体への投射,副高次線条体および中隔核から嗅球への神経投射は,鳥類ではこれまでに報告されていないものであった.
  • 佐藤 博, 花坂 昭吾, 松本 光人
    1994 年 65 巻 9 号 p. 850-855
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳蛋白質に占める「真の蛋白質」の割合と栄養摂取の関係を解明するため,採食量および栄養(TDN,CP)摂取量が明らかな13頭の泌乳牛から定期的に136組の牛乳(朝,夕)と血液を採取した.乳蛋自質(全N)および12%トリクロル酢酸に凝固した真の蛋白質(true protein)を測定し,全Nに占める真の蛋白質Nの割合を求めた.血漿では酢酸,3-ヒドロキシ酪酸(3-HB)および尿素を分析した.136点について全N濃度の平均は0.485%(乳蛋白質として3.09%),そのうち真の蛋白質の割合は94.6(90.6~97.3)%であった.これらの数値を分娩後5週まで,6~10週,11~20週,21~30週,31週以降に分けて比較すると全Nおよび真の蛋白質の濃度は泌乳初期および後期に高い傾向を示したが,真の蛋白質の割合にはほとんど差がなかった.グラスサイレージあるいはコーンサイレージを給与したので,サイレージ別にみると全Nおよび真の蛋白質Nの濃度はコーンサイレージ飼養で高かったが,真の蛋白質の割合には差がなかった.真の蛋白質の割合は摂取CP/TDN比と賃の関係にあった.さらにグラスサイレージ飼養では,全Nや真の蛋白質の割合はTDN充足率と正の,血漿尿素とは負の相関を示した.
  • 甫立 京子, 浜田 龍夫, 前田 昭二
    1994 年 65 巻 9 号 p. 856-861
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    飼料に添加した250ppmの銅(Cu)と100ppmのビタミンE(VE)が,子豚の成長と臓器中の銅,鉄,ビタミンEと過酸化脂質値に与える影響を検討するために,Cu(250と50ppm)およびVE(100と0ppm)を組み合せた,2×2の要因分析法による飼養試験を実施した.3元雑種の離乳子豚(体重8.5kg)24頭を脱脂粉乳と小麦粉を主体とした飼料で6週間飼養した.基礎飼料には抗生物質のタイロシン88ppmと,銅中毒を防止するたあに鉄を100ppm添加した.250ppmの銅あるいは100ppmのビタミンEを添加しても,1日平均増体量と飼料効率をよくする効果はなかった.銅の含有量は血漿および肝臓,腎臓(乾物中)で,Cu250区がCu50区より有意に高かった.血漿の鉄含有量は,Cu250区がCu50区より有意に低く,飼料中の高濃度の銅は血漿中の鉄の値を低下させた.α-トコフェロールは,血漿,肝臓と心臓でVE100区がVE0区より有意に高い値を示し,血漿,肝臓と心臓の過酸化脂質値は逆にVE100区で低かった.以上のように血漿,肝臓と腎臓の銅と鉄の含有量が異なっていたにもかかわらず,過酸化脂質値はこれらのミネラル含有量の影響を受けず,VEの含有量にのみ影響された.
  • 多田 耕太郎, 鈴木 敏郎
    1994 年 65 巻 9 号 p. 862-867
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    加圧処理が乳清タンパク質濃縮物(WPC)の加熱ゲル形成に与える影響を検討するため,PH(4.0-9.0),塩濃度(0.05-1.0M KCl),加熱温度(65-85°C),加圧強度(50-200MPa),加圧時間(2.5-30min)を変えて試験を行なった.また,SH基ブロック剤であるN-Ethylmaleimide(NEM,1-10mM)の添加の影響についても検討した.この結果,無加圧区のWPCではpH6.5-9.0の範囲においてゲルを形成し,pH7.0,KCl濃度0.1M付近で最も強固なゲル形成が認められたが,加圧処理を行なうと0.05-0.15Mと0.4-1.0MのKCl濃度において,無加圧区のゲルよりも高いワークダン値を示すゲルを形成し,明らかな加圧効果がみられた.加熱温度については,加圧区,無加圧区共に70°Cで30分間の加熱からゲル形成が始まり,80°C以上で30分間の加熱により安定したゲル形成がみられた.また,加圧処理を行なったWPCの方が70°C以上の加熱温度において,無加圧区よりも高いワークダン値を示していた.加圧強度と加圧時間については,50MPa以下では殆ど加圧効果は認められなかったが,150MPaで10分間の加圧でワークダン値はほぼ最高値に達し,それ以上加圧強度を高く,加圧時間を長くしてもワークダン値は一定となっていた.加圧効果の持続性については,加圧直後に加熱したゲルと,加圧後10日目に加熱したゲルのワークダン値にほとんど差はみられなかった.また,加圧によりSH基は若干増加し,WPCの加熱ゲル形成はNEM添加により加圧区,無加圧区共に抑制された.
  • 多田 耕太郎, 鈴木 敏郎
    1994 年 65 巻 9 号 p. 868-874
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    加圧処理(150MPa, 0°C, 10min)がアクトミオシンと乳清タンパク質濃縮物(WPC)共存系の加熱ゲル形成に与える影響を検討するため,pH(6.0-7.0),塩濃度(0.1-1.0M KCl),加熱温度(70-80°C),タンパク質濃度(アクトミオシン20mg/g,WPC 20-100mg/g)を変えて試験を行なった.また,SH基ブロック剤であるN-ethylmaleimide (NEM, 1-10mM)添加の影響についても検討した.この結果,pHと塩濃度の影響では,pH6.0と6.5において無加圧のものではほとんゲルを形成しない0.2MのKCl濃度において,加圧処理によりワークダン値は急激に上昇し,強固なゲルが形成され,顕著な加圧効果が認められた.加熱温度については,70°C以下の加熱では安定したゲルの形成は認められず,80°Cの加熱により強固なゲル形成が認められた.タンパク質濃度については,アクトミオシン20mg/gに対し,WPCを50mg/g共存させるよりも100mg/g共存させた方が,そのワークダン値は明らかに高くなっていた.ゲル形成に与えるSH基の影響は,SH基ブロック剤であるNEMを添加すると共存系のゲル形成が抑制されたことにより,アクトミオシンとWPCの共存系のゲル形成にはSH基のSS結合の関与が明らかになった.
  • 中島 肇, 豊田 修次
    1994 年 65 巻 9 号 p. 875-881
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    フィンランドにおいて工業規模で生産販売されている粘質性発酵乳の凍結乾燥物の菌叢を解析したところ,高粘性を示した製品では,粘質物生産性株の出現頻度は約80%であった.これに対し,低粘性の製品では粘質物生産性株の出現頻度は6~7%であった.高粘性を示した凍結乾燥物と低粘性を示した凍結乾燥物の2種類の製品について,詳細に乳酸菌叢を解析した.両製品より分離した粘質物生産性乳酸菌は,すべてがアルギニンテスト陰性,クレアチンテスト陰性のLactococcus lactis subsp. cremorisタイプの乳酸菌であった.高粘性を示した凍結乾燥物より分離した乳酸球菌には,酸生成能の早い株と遅い株が含まれており,約70%が酸生成が早い株であった.また,粘質物生産性乳酸菌の粘質物生産性能は継代20代以内に消失した.
    回転型粘度計により,粘質物生産性乳酸菌と,非生産性株培養物のヒステリシスループを求めたところ,ループの面積,見かけの降伏値とともに粘質物生産性株の培養物が高かった.
    以上の結果から,工業規模で生産されている粘質性発酵乳の菌叢は単純であることが明らかとなった.また,粘質物生産能は不安定な形質であったが,発酵乳の物性は,粘質物生産能を有する株と保持しない株との混合比により制御できることが示唆された.
  • 根岸 晴夫, 吉川 純夫
    1994 年 65 巻 9 号 p. 882-889
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    前報11)で,屠殺後処理中の鶏胸肉筋原線維のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動から,30kDaと32kDa成分が出現することを報告した.これら分解フラグメントと鶏肉の鮮度指標として報告されているK値7,13,18)との関連性を調べるために,解体処理中および貯蔵中の鶏肉を対象として,これら成分の変化を測定した.死後鶏肉からの32kDa成分の出現量は30kDa成分よりも少なく,5°C,5日目以降の鶏肉ではほとんど消失した.鶏肉の30kDa成分の出現とK値の上昇時期は一致し,死後3~4時間目であった.30kDa成分の濃度は貯蔵4日目(死後4日相当)までは上昇したが,5日目でやや減少し,その後7日目まではほぼ一定であった.一方,K値は7日間貯蔵中,直線的に増加した.死後4日までの鶏肉81羽を統計的に解析した結果,30kDa成分は,HxR(p<0.01,r=0.663)およびK値(p<0.01,r=0.642)と高い相関関係にあった.
  • 向井 文雄
    1994 年 65 巻 9 号 p. 890-905
    発行日: 1994/09/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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