日本畜産学会報
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66 巻, 10 号
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  • Esam Basiouny SOLIMAN, 橋爪 力, 兼松 重任
    1995 年 66 巻 10 号 p. 823-829
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    アンジオテンシンII (A II)が牛の成長ホルモン(GH)の放出に及ぼす影響を培養牛下垂体前葉細胞を用いて検討した.10-9MのA IIにはGHの放出効果は認められなかった,10-8Mと10-7MのA IIは対照に比べGHをそれぞれ30.3%および57.3%有意(P<0.05)に増加させた.10-7MのA IIと10-8Mあるいは10-10Mの成長ホルモン放出ホルモン(GHRH: hpGRF (1-29)-NH2)を同時添加するとGH濃度はA IIおよびGHRH単独時に比べ,有意(P<0.05)に高い値を示した.しかし,10-7MのA IIと10-7MのGHRH同時添加時には同様の効果は認められなかった.10-7MのA IIにより誘起されたGHの放出はGHRHと同様に10-7Mのソマトスタチン(SRIF)により抑制された(P<0.05).A II(10-7M)およびGHRH(10-7M)を同時添加してSRIF(10-7M)を作用させた時のGH放出の抑制効果は,A IIあるいはGHRHを単独添加してSRIFを作用させた時のGH抑制効果に比べ弱かった(P<0.05).本研究の結果は,A IIは牛の下垂体前葉細胞に直接作用してGHを放出させること,またA IIはGHRHやSRIFと相互的に作用してGHの放出に関与していることを示唆している.
  • 安 秉基, 田中 桂一, 大谷 滋
    1995 年 66 巻 10 号 p. 830-840
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    n-3/n-6不飽和脂肪酸比の異なる油脂の給与が成長中ヒナの脂肪酸およびコレステロール合成関連酵素の活性,肝臓および血清の各脂質画分の含量と脂肪酸組成に及ぼす影響を検討した.4週齢の白色レグホーン雄ヒナ50羽を用い,平均体重が等しくなるように1区10羽ずつの5区に分け,サフラワー油(SFO)と亜麻仁油(LNO)のレベルを6%と0%,4.5%と1.5%,3%と3%,1.5と4.5%, 0%と6%配合した精製飼料をそれぞれの区に3週間給与した.実験最終日にすべてのヒナから採血した後,屠殺し,肝臓および脂肪組織を採集した.飼料摂取量,増体量および体重100g当りの肝臓重量は処理間で有意な差はみられなかった.肝臓のfatty acid synthetase活性はSFO 6%区より他の区の方が有意に低い値を示し,LNOの給与の増加にともなって減少程度が大きかった.Acetyl-CoA carboxylaseに及ぼす影響は見られなかったが,飼料中のLNOレベルの増加によって3-hydroxy 3-methylglutaryl CoA reductaseの活性は低下する傾向がみられた.SFO 6%区に比べて,LNO 4.5%及び3%給与区で<肝臓中のフリーコレステロールやトリグリセリド含量の有意な減少がみられ,LNO 3%区で血清中のフリーコレステロールやトリグリセリド含量も有意に低下した.肝臓,血清および腹腔内脂肪組織中の脂肪酸組成は飼料中のLNOの増加にともなって,α-リノレン酸およびn-3系不飽和脂肪酸の比率が増加し,逆にリノール酸やアラキドン酸の比率は低下した.各組織画分中のn-3/n-6脂肪酸比率はLNO 3%あるいは4.5%以上給与区で有意に増加した.以上の結果から,成長中ヒナにおいて,α-リノレン酸含有油脂がリノール酸含有油脂より肝臓および血清中のトリグリセリドやフリーコレステロール低下に効果的であり,トリグリセリドの減少に対して,脂肪酸合成段階の中,fatty acid synthetase活性の低下がその原因の1つであると考えられる.また,α-リノレン酸含有油脂の給与の増加にともなって,組織中のn-3/n-6脂肪酸比やα-リノレン酸からのn-3長鎖脂肪酸の割合が増加したことから,ヒナにおいてもn-6系脂肪酸の代謝が競合的に阻害されたと推察される.
  • ティン ミョウヌエ, 堀 英美子, 中西 良孝, 萬田 正治, 渡邉 昭三
    1995 年 66 巻 10 号 p. 841-848
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    成雄トカラヤギを供試して輸送シミュレーション負荷後の血中カテコールアミン,コルチゾール,グルコースおよび好酸球数の変動を明らかにした.ブランコ振動による輸送ミュレーションでは,ケージに入れたまま不規則な振動と規則的な振動を組み合わせた1セット15分間の負荷を6回繰り返した(90分間).採血はヤギの頚静脈あるいは大腿静脈に装着した残置カテーテルより行なった.ブランコ振動中,ヤギは落ち着きがなく,やや興奮した状態であった.ブランコ振動開始30分後,血漿中エピネフリン,ノルエピネフリン,コルチゾールおよびグルコース濃度は振動開始前の値の2倍に上昇し,ノルエピネフリンを除きそれらの値はブランコ振動終了時にピークを示したが,その後は次第に低下る傾向を示し,振動開始前の値に戻った.好酸球数はブランコ振動開始直後に減少し,振動終了1時間半後に最小値を示したが,振動終了10時間半後には振動開始前の値に戻った.本研究の結果は,輸送シミュレーション負荷が交感神経系を刺激するとともに,副腎皮質および髄質を同時に賦活化し,糖質代謝や免疫機能などの生理的変化をもたらすことを示している.また,上述の生理諸元の変動は実際の輸送実験の結果と定性的に一致しており,ブランコ振動が輸送モデルとなり得るものと考えられる.
  • 栫 裕永, 山川 ミチル, 側原 仁
    1995 年 66 巻 10 号 p. 849-853
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Isoelectric focusing (IEF) using polyacrylamide gel containing urea (Urea-PAG) was used for the characterization of equine protease inhibitor (Pi) types in light breed horses to solve the following problems in conventional IEF and two-dimensional (2-D) electrophoresis: typing complexity due to high heterogeneity of Pi system and overlapping of Pi and esterase (Es) components on IEF, operational complexity and time-consumption on 2-D. The Urea-PAG IEF method had high resolution capacity, clearly distinguishing at least 10 types frequently observed in light breed horses. Es components were not detected on Urea-PAG. There was little complexity of Pi typing as shown by these results, and thus the typing procedure is simpler and more rapid than conventional IEF and 2-D. The present method should thus prove quite adequate for exact classification of Pi system in light breed horses.
  • 粕谷 悦子, 橋爪 力, 兼松 重任
    1995 年 66 巻 10 号 p. 854-856
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    The effect of intravenous (iv) injection of pentobarbital sodium (PB) on plasma concentration of growth hormone (GH) in the Japanese Shiba goats was studied. An acute significant increase in plasma GH was observed in the goats after a single PB injection of 19mg/kg BW. Plasma GH concentration remained unchanged after injection of vehicle or 10mg/kg BW PB in the goats. The present results suggested that anesthetic dose of PB induced a release of GH in the Shiba goats.
  • 有原 圭三, 伊藤 良, 近藤 洋
    1995 年 66 巻 10 号 p. 857-861
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Specific DNA probe for Lactobacillus acidophilus group A 1 (Johnson et al. 1980) wasisolated in this study. A genomic library of L. acidophilus type strain JCM 1132T DNA fragmentsfrom a Pst I digestion was constructed in Escherichia colt JM 109 utilizing plasmid pUC 18. Of 14tested clones carrying random pieces of chromosomal DNA, a clone designated as pSP 1, pUC 18 with a 2.8 kilobase chromosomal DNA insert, established to be a probe specific for the L. acidophilus species (group A 1) strains. This specific DNA probe would lead to the rapid and exact method for identification and detection of L. acidophilus.
  • 志賀 瓏郎, 長峰 さつき, 土屋 佳紀
    1995 年 66 巻 10 号 p. 862-868
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    コリデール種泌乳ヒッジ3頭とその新生子ヒッジ4頭を用い,一定飼養条件下で,離乳前6週間の哺乳期(S期:母子同居)と5週間の離乳期(W期:母子別居)のCa, P, Mg代謝を調べた.血清濃度は,S期末期には,母子ともにCaとMg濃度が低下し,無機リン(Pi)濃度が上昇した.W期には,1週目にCa濃度の母ヒッジの上昇と子ヒッジの低下,およびMg濃度の母子の低下がみられ,2週目以降,母子ともにCaとPi濃度は一旦低下したのちに,Mg濃度は2週目から,それぞれ上昇して5週目に正常値に戻った.子ヒッジでは,Piレベルは母ヒッジより著しく高かったが,Ca, PiおよびMg濃度の変動パターンは母ヒッジと類似し,CaおよびMg濃度は母子間に正の相関が認められた.尿中の濃度において,CaとMgが母子ともにS期に比べW期に有意に高く,Piは,母ヒッジでは低い傾向を示し,子ヒッジでは有意に低かった.乳汁濃度は,CaとPとの間に負の相関が認められた.離乳は哺乳中の母子ヒッジのCa, PおよびMg代謝に変動をもたらした.
  • 須田 久也, 平松 都, 小林 泰男, 元井 葭子, 脇田 正彰, 星野 貞夫
    1995 年 66 巻 10 号 p. 869-874
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ヤギルーメン内容液にショ糖を添加して培養した時の乳酸およびエンドトキシン(ET)生成量に及ぼすイオノフォアの影響をみるため2つの実験を行なった.実験1では市販の配合飼料とヘイキューブ(2:1)で飼育した成雌トカラヤギ3頭から給餌前に採取したルーメン液を用いた.ろ液のpHを測定後,リン酸緩衝液(pH6.8)とショ糖を加え,さらに6μg/mlのサリノマイシン(SL)あるいはモネンシン(MN)のメタノール溶液を添加して,39°Cで12時間嫌気培養した.培養後のpHを測定し,遠心分離した上澄液のVFA, L (+)型およびD (-)型乳酸濃度を測定した.実験2ではヤギルーメン液に2μg/mlのSLあるいは6μg/mlのMNを添加し,実験1と同様の方法で培養し,実験1の測定項目に加え,ET濃度の測定およびバクテリアやプロトゾアの分類•計数を行なった.両実験ともショ糖とメタノールを添加して培養し,対照とした.培養後のpHは培養前に比べ著しく低下したが,イオノフォア添加によってその低下は抑制された(p<0.05).総VFA濃度,酢酸,プロピオン酸,酪酸およびイソ酪酸のモル比率にイオノフォアの影響はみられなかった,L (+)型乳酸は培養後著しく上昇したが,イオノフォアによってその上昇は抑制された.D (-)型乳酸の上昇はL (+)型乳酸より大きく,イオノフォァによる影響はほとんどみられなかった.これらの結果は両実験とも同様の傾向がみられたが,実験2においてSLはMNの1/3の濃度でpH低下およびL (+)型乳酸上昇を抑制した.したがって,SLはMNより乳酸アシドーシス予防に効果的であると思われた.実験2の培養後にみられたET濃度の上昇は,イオノフォアによって抑制される傾向がみられた.培養後のプロトゾア数は培養前の約10%まで減少し,バクテリア数はグラム陰性菌の減少により約75%まで減少した.イオノフォアにより菌叢が変化し,特にStreptococcus bovisを含むグラム陽性球菌の増加が抑制された.以上のことから,イオノフォアは菌叢を変えることでL (+)型乳酸の生成量を減少させ,アシドーシスを予防し,その結果,ETの生成量を減少させる可能性が示唆された.
  • 大下 友子, 久馬 忠, 近藤 恒夫
    1995 年 66 巻 10 号 p. 875-881
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乾草を給与しためん羊の消化管通過速度の測定における希土類元素の標識方法を検討する目的で,イネ科牧草3種類とアルファルファ4種類の乾草に,イッテルビウム(Yb)とディスプロシウム(Dy)をスプレイ法および浸漬法で標識し,18頭の去勢めん羊(平均体重62.3±2.3kg)に採食させ,糞中に排泄された希土類元素の濃度推移から消化管通過速度定数を推定して比較した.その結果,反芻胃通過速度定数(K1)には,2つの標識方法間に有意差は認められなかったが,下部消化管通過速度定数(K2)は浸漬法に比べ,スプレイ法が平均2.1%/hr大きく(p<0.01),初期出現時間(TT)と全消化管平均滞留時間(TMRT)は,スプレイ法が浸漬法よりそれぞれ平均で,1.7,4.6時間,短かった(TT:p<0.001, TMRT: p<0.05).また,いずれのパラメータについても,2つの標識方法間には有意な正の相関が認められた.
  • 古村 圭子, 今西 美幸, 柏村 文郎, 新出 陽三, 河端 真一, 林 正彦
    1995 年 66 巻 10 号 p. 882-888
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    自動搾乳システムのために今回カルフォルニア乳房炎試験(CMT)変法を利用した画像による乳房炎自動検知装置が考案され,反応画像と目視によるCMTスコアとを比較し,乳中体細胞数SCCおよび電気伝導度ECを含め検討を行なった.乳(97サンプル)と診断薬の反応物に線条光源を投影した線状の反射映像は,凝集度が高くなるにつれ線幅が広がり直線から渦巻き状となり,そのゆがみ度に応じて分類できた.目視によるCMTスコアおよびSCCの結果から3クラス(1=正常;スコア-~±,平均SCC15万cells/ml,2=乳房炎;+~2+,214万,3=重度の乳房炎;3+以上,874万)に分類した乳に対し,反射映像も同じ3クラスに判定できた.また画像写真の未経験被験者による分類試験結果は,1,2,3クラスに対し98.6,90.0,100%の正解率であった.SCCおよびECには3クラス間で有意な差が見られた(P<0.05).
  • 石田 修三, 早澤 宏紀, 清水 隆司, 玉城 政信, 相井 孝允
    1995 年 66 巻 10 号 p. 889-897
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    屠殺前28日間,アマニ油脂肪酸Caを肉豚肥育用飼料に約2.9%添加給与したところ,肥育豚の飼料要求率,屠殺時体重,増体日量,採食量,屠体重,背脂肪厚,肝臓および腎臓重量ならびにロース肉色にはマイナスの影響がみられなかった.しかし試験終了日(屠殺日前日)の血清脂質のα-リノレン酸(C18:3n-3)含量は,肉豚肥育用飼料のみ給与した対照区(0.5%)よりアマニ油脂肪酸Caを約2.9%添加した試験区(8.3%)で高値を示した(P<0.01).試験終了日の血清脂質のn-6/n-3比は,対照区(11.9)より試験区(2.9)で著しく小さくなった(P<0.01).また,試験終了日の血清脂質のエイコサペンタエン酸(C20:5n-3)含量は対照区に比べ試験区で高値を示し(P<0.01),いっぽう,アラキドン酸(C20:4n-6)およびドコサヘキサエン酸(C22:6n-3)含量は低値を示した(P<0.01).対照区に比べ試験区で肝臓および腎臓脂質のC18:3n-3含量は高く,いっぽう,C20:4n-6含量は低くなる傾向を示した.ロース脂質のC18:3n-3含量は,対照区(0.5%)より試験区(2.6%)で高くなり(P<0.01),n-6/n-3比は対照区(10.1)より試験区(3.3)で著しく低くなった(P<0.01).
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