日本畜産学会報
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66 巻, 11 号
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  • 花田 博文, 下司 雅也, 鈴木 修
    1995 年 66 巻 11 号 p. 909-913
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    黒毛和種における7/21ロバートソン型転座の繁殖性への影響を調べるために,この転座を保有する種雄牛の精子の染色体をハムスター卵子との異種間体外受精法を用いて調べるとともに,7/21転座ヘテロ種雄牛由来の8細胞期胚の染色体分析を実施した.7/21転座をホモに保有する種雄牛においては,転座に起因した遺伝的に不均衡な精子は観察されなかった.しかし,7/21転座ヘテロ種雄牛の場合には,3.4%と低率であったが転座染色体の隣接分離によって生じた不均衡型精子が認められた.また,7/21転座ヘテロ種雄牛の精液を体外受精して得られた胚の染色体分析においては不均衡型胚が観察された.以上のことから,7/21転座はわずかではあるものの繁殖性の低下を招くことが示された.
  • 花田 博文
    1995 年 66 巻 11 号 p. 914-917
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    黒毛和種でみられた7/2正ロバートソン型転座染色体がどのように分離して次世代に遺伝するのかを知るたあに,7/21転座ヘテロ個体由来の第2次精母細胞および精子,胚の染色体分析を行なった.その結果,いずれの場合も中部着糸型の7/21転座染色体とそれらと相同の2本の端部着糸型染色体がほぼ同数観察された.また,7/21転座ヘテロ種雄牛と正常核型の雌牛,正常核型の種雄牛とこの転座をヘテロに保有する雌牛の組合わせから生産された子牛の核型を分析した結果,正常核型の個体と7/21転座をヘテロに保有する個体の数に差はみられなかった.7/21転座ヘテロ個体においては転座染色体と2本の相同染色体の分離に偏りはなく,7/21転座染色体はメンデル遺伝によって産子に遺伝していた.
  • 吉澤 緑, 湯田 守英, 仲本 智之, 境野 夕起子, 福井 えみ子
    1995 年 66 巻 11 号 p. 918-926
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    (BALB/c×C57BL/6)F1マウスに過排卵処置を施し,排卵後,卵管内で一定時間を経過した卵を回収して体外受精させ,遅延受精による卵子の加齢の影響を調べた.体外受精率は,加齢時間が増すほど低下した.3倍体の出現率も加齢時間にともない低くなる傾向がみられた.対照的に1倍体の出現率は,加齢時間が増すほど著しく高くなった.この1倍体の染色体像は,その形態が第2成熟分裂時の染色体像とは異なり,単為発生卵(単一半数体:Uniform haploid)の染色体像に類似しており,加齢による単為発生を推察させるものであった.構造的異常の染色体の出現率は,加齢にともない増加する傾向を示したが,統計的には有意ではなかった.また,性比には,加齢の影響はみられなかった.
  • カメル HEM, 関根 純二郎, 菅 徹行, 森田 二郎
    1995 年 66 巻 11 号 p. 927-935
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻胃にカニューレを装着した3頭の雑種去勢羊(サッフォーク×コリデール:開始時体重平均43kg)を供試し,オーツ(OA),チモシー(TI)およびアルファルファ(AL)乾草の乾物(DM),窒素(N),細胞内容物(CC),中性デタージェント繊維(NDF)ならびにプリン(P)の反芻胃内分解様相をナイロンバッグ法により比較検討した.それぞれの乾草給与量は,体重の2.5%量とした.乾草のP含量は,OA, TI, ALでそれぞれ1.3,1.6,4.6mg/g DMであった.NおよびNDFの反芻胃分解率は,ALでOA, TIよりも高いものであったが,CCのそれは乾草による違いが認められなかった.DMの反芻胃分解率は,CCよりNおよびNDFの分解率によって影響されていた.Pの分解様相は乾草により異なっていたが,反芻胃内分解率はOA, TI, ALでそれぞれ,97.7,88.0,96.0%であった,反芻胃内のPの消失様相とCCのそれとの間には,有意な正の相関関係が認められた(P<0.05).飼料中のPの反芻胃以降への流出量は,OA, TI, ALでそれぞれ82.8,163.6,170.3mg/dayと算定された.これらの量は,OA, TI, ALで,小腸内の微生物由来のPのそれぞれ1.8,2.1,1.4%に相当するものであった.
  • 佐藤 正寛, 小畑 太郎
    1995 年 66 巻 11 号 p. 936-940
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ブタにおいてDNAマーカー間の連鎖解析を行なう場合,それらの多型数が連鎖解析の効率に及ぼす影響をコンピュータシミュレーションによって検討した.DNAマーカーの多型数は2から10とし,それらの遺伝子頻度は各多型数内で等しいものとし定,その結果,多型数が3以下のDNAマーカーは,それより多くの多型を示すDNAマーカーに比べて多くの検定頭数を必要とした.し加し,多型数が4ないし5を越えるDNAマーカーが複数隣接している場合には,多型数よりも染色体上の位置関係や電気泳動パターンの識別の難易等を考慮してDNAマーカーを選定するほうが望ましいことが明らかとなった.
  • 蔡 〓民, 大桃 定洋
    1995 年 66 巻 11 号 p. 941-948
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳酸菌(LAB)とセルラーゼ(E)添加がサイレージ発酵過程における微生物相,ガス生成量,乾物損失率および発酵品質に及ぼす影響を検討するため,小規模サイレージ発酵試験法を用い,Lactobacillus plantarum (LP)とL. casei (LC)の市販乳酸菌製剤,Acremonium属菌(AUS)とTrichoderma属菌(CEP)由来のセルラーゼおよびブドウ糖(G)を供試して,サイレージを調製した.材料草の処理はアルファルファ(Medicago sativa)とギニアグラス(Panicum maximum)でLP, AUSおよびG,ソルガム(Sorghum bicolor)でLP, LC, AUS, CEPおよびGを単独または混合添加した.その結果,1) LAB区,LAB+E区およびLAB+G区は無添加区(Ut)に比べサイレージ発酵初期に乳酸菌数が顕著に高まったが,好気性細菌,糸状菌と酵母の菌数は減少した.いっぽう,E区とG区は乳酸菌とともに,好気性細菌,糸状菌および酵母も旺盛に増殖した.2) LAB区,LAB+E区およびLAB+G区のガス生成量と乾物損失率はUt区に比較して有意(P<0.05)に減少したが,E区とG区のそれらは有意(P<0.05)に増加した.3) LAB区,LAB+E区およびLAB+G区はUt区よりサイレージのpH値,アンモニア態窒素およびエタノール含量が低下し,乳酸とWSC含量が高まった.4) 3草種のサイレージの発酵品質はいずれもLAB+E区,LAB+G区>LAB区>G区,E区>Ut区の順となった.以上の結果,乳酸菌とセルラーゼまたはブドウ糖の混合添加はサイレージの発酵品質を改善し,ガス生成と乾物損失を抑制することが明らかになった.
  • 上田 宏一郎, 一戸 俊義, 田村 忠, 大久保 正彦, 朝日田 康司
    1995 年 66 巻 11 号 p. 949-956
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻胃内における粒度別飼料片の繊維成分含量の変化から,反芻胃内飼料片の粒度微細化にともなう繊維成分の発酵について検討した.早刈り(EOG)および遅刈りのオーチャードグラス乾草(LOG)とアルファルファ乾草(ALF)を1日1回給与した3頭のルーメンカニューレ装着めん羊から経時的に採取した反芻胃内容物を粒度別に分画した(LP:>5600, MP:5600-1180, SP:1180-300, FP:300-47μm).各粒子分画の中性デタージェント繊維(NDF),酸性デタージェント繊維(ADF),酸性デタージェントリグニン(ADL)含量を測定した.LPとMPにおけるNDF中セルロース含量は,ALFとEOGでは経時的に減少した.NDF中ADL含量は,ALFではすべての分画において,EOGではLPとMPにおいて経時的に増加したが,EOGのSPとFPおよびLOGのすべての分画では一定で推移した.どの乾草でも反芻胃内飼料片の粒度が小さいほど,セルロース含量は低く,ADL含量が大きくなる傾向にあったが,その程度は,ALFで最も大きくEOGはLOGより大きかった.
  • 阿久澤 良造, 松石 昌典, 藤森 光弘, 沖谷 明紘
    1995 年 66 巻 11 号 p. 957-961
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛の生乳特有の芳香の1つである生乳乳様香に対する加熱の影響を調べた.ホルスタイン種の市販殺菌乳の生乳乳様香の強度は,低温殺菌乳>高温短時間殺菌乳>超高温殺菌乳の順であった.鼻孔を閉じて感知する味の濃厚感(コク味)は3者間で差がなかったが,鼻孔を開けて感知する濃厚感強度の順は生乳乳様香のそれと同じであった.したがって,本香は濃厚感を感じさせる性質をもつことが示唆された.生乳を湯浴で各種条件下で加熱したときの結果および牛乳を分画したときの結果から,生乳乳様香はおもに脂肪球皮膜に存在すると推定され,それは63°Cで30分間の低温加熱殺菌では完全に保持されるが,75°Cで15秒間の高温短時間加熱殺菌ではある程度保持され,120°Cで3秒間の超高温加熱殺菌では完全に消失することがわかった.さらに本香は生乳の63°Cで30分間の予備加熱によってより高い温度での加熱でも保持される存在形態に変わることがわかった.
  • 三津本 充, 小沢 忍, 三橋 忠由, 河野 幸雄, 原田 武典, 藤田 浩三, 小出 和之
    1995 年 66 巻 11 号 p. 962-968
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    黒毛和種去勢肥育牛にビタミンEを屠殺前4週間投与して,展示条件下における滲出液(ドリップ)量および牛肉色の退色と脂質の酸化の程度に及ぼす影響を検討した.黒毛和種去勢牛6頭を用い,3頭を対照区に他方3頭をビタミンE投与区にふり分けた.投与牛に2,500mg dl-α-トコフェロール/頭/日を屠殺前4週間毎日投与した.屠殺7日後に半腱様筋よりステーキサンプルを作成し,照明下4°Cで展示した.ドリップ量,肉表面のメトミオグロビン割合,L*a*b*値,TBARS値を展示1,4,7,10日後に測定した.その結果,ビタミンE投与により血漿,肝臓,腎臓脂肪,半腱様筋のビタミンE濃度が対照に比べ増加した(P<0.05).ビタミンE投与の牛肉は対照の牛肉に比べメトミオグロビン割合(P<0.001)とTBARS値(P<0.001)が低く,a*値(P<0.001)とb*値(P<0.05)が高かったが,ドリップ量とL*値は変わらなかった(P>0.05).4週間のビタミンE投与は対照に比べ,メトミオグロビンの形成を遅らせて良好な肉色を維持するとともに脂質の酸化を抑制した.
  • 坂本 紘, 高橋 義明, 坂元 都子, 三角 一浩, 川崎 安亮, 岡本 嘉六
    1995 年 66 巻 11 号 p. 969-975
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシにおけるアンピシリン(以下ABPC)坐剤の直腸からの吸収性について体重411~639kgの成牛24頭を用い検討した.実験群はI群(対照群)にはウシに対する一般的投与量であるアンピシリンナトリウム(以下ABPC Na) 10mg/kgずつを筋肉内注射,II群には吸収促進剤無添加ABPC坐剤をABPC Naとして20mg/kgずつを直腸内投与,III群には吸収促進剤としてカプリン酸ナトリウム10W/W%添加した坐剤をABPC Naとして20mg/kgずつを直腸内投与し,投与後の薬物動態および副作用の発現について比較検討した.血清濃度の最高値は,I群では投与後30分で12.83±4.51μg/ml,II群では30分で2.43±1.48μg/ml, III群では45分で8.83±3.70μg/mlを示した.最高濃度(Cmax)および最高濃度発現時間(Tmax)は,I群13.96±3.61μg/ml,0.72±0.20時間,II群2.80±1.25μg/ml,0.66±0.21時間,III群9.63±4.56μg/ml, 0.78±0.15時間であった.吸収促進剤を添加することにより,ABPC坐剤の直腸からの吸収性が約3.5倍増加することが明らかとなり,また筋肉内注射群のおよそ2/3に相当する血清濃度が得られれた.この値は一般的病原菌の最小発育阻止濃度を十分に上回るものであった.また,坐剤による副作用と考えられる症状はII, III群いずれにも認められなかった.これらの成績より,ウシの細菌性感染症に対してABPC坐剤の直腸内投与は,安全かつ有効な治療方法であることが示唆された.
  • 村田 英雄
    1995 年 66 巻 11 号 p. 976-978
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Healthy calves were subjected to transportation by road for 48 hours. Serum collected from each calf prior to departure and upon completion of transport was incubated with peripheral blood neutrophils from a clinically healthy calf. Thereafter, the activity of zymosan-induced chemiluminescence, an indicator of bactericidal function, of the incubated cells was examined. A significant decrease in activity was observed in the cells incubated with the sera after transport. This suggests that sera after transportation might have an immunosuppressive function on peripheral blood neutrophils.
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