3頭のコリデール種妊娠羊(体重48~57kg)を用い,ヘイキューブ,フスマおよび市販の配合飼料と水3.3lを混和した飼料(分娩前;高カルシウム,高マグネシウム,分娩後;低リン,高マグネシウム)で飼育し,分娩後は自由哺乳させ,周産期のCa, P, Mg代謝を調べた.血液は分娩前5週から週1回,分娩後は1,4,7,10日と2,3および4週に,尿は分娩前4週から分娩後4週まで毎日,乳汁は分娩後1,4,7,および10日と2,3および4週に,それぞれ,給餌前に採取し,Ca, PおよびMg濃度を測定した.尿中のミネラル濃度は尿中クレアチニン濃度比(mM/Cre mM)で示した.血清濃度は,分娩直前直後にCaとMgが低下傾向を,Piが上昇(P<0.05)を示したが,分娩後4週には分娩前5週の値に戻った.CaとMgとの間に正の相関(P<0.01)が,PiとMgとの間に負の相関(P<0.001)が,PiとCaとの間に部分的に負の相関(P<0.05)があった.尿中濃度は,泌乳に伴い,Caは著しく低下(P<0.001),Piは変化なく,Mgは一過性に上昇し(P<0.05),それぞれ,異なる変動パターンを示した.乳汁中濃度は,経日的に低下し,CaとMgの間には正の相関(P<0.05)があり,Pは分娩後は低かったが,2週以降に上昇傾向を示し,分娩後4週にはCaと同様のレベルに達した.また,Mgの血清濃度と尿中濃度との間に負の相関(P<0.05)があり,羊の分娩前後には尿中排泄が促進され,血清濃度が低下することが明らかとなり,泌乳よりも尿中排泄の影響が大きいことが示唆された.羊の周産期のCa, P, Mg代謝はミネラル相互のバランスと腎機能が重要と考えられた.
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