日本畜産学会報
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66 巻, 7 号
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  • 角田 健司, 野沢 謙, 岡本 新, 橋口 勉, 朱 静, 劉 愛華, 林 世英, 許 文博, 施 立明
    1995 年 66 巻 7 号 p. 585-593
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    電気泳動法および測光法によって判定される血液タンパク•非タンパク多型に基づき,Nepal在来羊種(Bhyanglung, Baruwal, Kagi, Lampuchhre)の8地方集団およびBangladesh在来羊の3地方集団との類縁関係を究明するため,雲南省中央部の祿豊および路南地域における在来緬羊集団を調査した.これらの雲南の地方集団において検索された20遺伝子座位のうち7座位,すなわち,Tf, Alp, Lap,Hb-β, X-p, CatおよびLy座位で遺伝子頻度に明らかな違いがみられた.しかしそれらの集団の平均ヘテロ接合体率(H)では差がなかった.この雲南集団はNepal-やBangladeshの全集団とTf, AlpおよびME座位において遺伝子頻度が著しく異なった.また,それらは,X-p座位でBhyanglung & Baruwalの全集団と,Ke座位ではKagi, BangladeshおよびLampuchhreの大部分の集団と類似していた.雲南の両集団のH値は池の地方集団(7-18%)に比べて高く(18-19%), Bangladeshの特にJessore-KhulnaやMymensingh集団(18-20%)の値に近かった.全検索座位および多型座位の遺伝子頻度から算出されたNEIの遺伝的距離および主成分分析では,この雲南集団はチベット系のBhyanglungやBaruwal集団ではなく,インド系のKagi, BangladeshおよびLampuchhre集団と密接な関係にあった.
  • 黒瀬 陽平, 矢野 秀雄, 宮崎 昭
    1995 年 66 巻 7 号 p. 594-598
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,暑熱環境における食欲減退にセロトニンが関与する可能性をラット(雄,体重350~400g)を用いて検討した.実験1では,試薬投与前7日間,暑熱(33°C)および快適環境(26°C)下でラットを飼育した,試薬投与直前まで自由採食とした.ノルアドレナリン(10μg)を側脳室投与すると摂食が刺激され,2時間当たりの採食量は増加した.しかしながら,33°C下の採食量の増加は26°C下の採食量の増加よりも少なかった(0.4 vs. 1.Og).セロトニン拮抗薬シプロヘプタジン(15mg/kg体重)をノルアドレナリンと同時投与しても,採食最がノルアドレナリン単独投与の場合より多くなることはなかった.したがってセロトニン神経の活性化は,ノルアドレナリンによる摂食が暑熱環境下において抑制される要因ではない.シプロヘプタジン単独投与後2時間の採食量を測定すると,26°C下では採食量が増加したが,33°C下では増加しなかった.実験2において,7日間の温度馴化後,1日当たりの採食量を明期および暗期に分けて5日間測定したところ,明期の採食量は両環境間で差がなかった.セロトニン合成阻害薬p-クロロフェニルアラニン(PCPA, 3mg)を側脳室投与すると,両環境下で,明期および暗期の採食量が増加した.PCPA投与3日後から7日後までの5日間の採食量は,明期および暗期ともに33°C下の方が26°C下よりも少なかった,以上の結果は,セロトニン神経の活性化が暑熱環境下における食欲の減退に関与しないことを示唆している.
  • 濱野 美夫, 山崎 周, 本間 至, 小林 茂樹, 寺島 福秋
    1995 年 66 巻 7 号 p. 599-604
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    サイロキシンを投与したブロイラー雛の成長および骨格筋組成に対するβ-アゴニスト(クレンブテロール)の影響を検討した.2週齢の雛を6羽ずつ6区に分け,各区の雛に基礎飼料ヘサイロキシン(0または1.2ppm),さらにクレンブテロール(0,1および2ppm)を添加した実験飼料を12日間給与した.クレンブテロールはサイロキシン投与に関係なく,増体量を減少(P<0.05)させたが,飼料摂取量および飼料効率には影響を及ぼさなかった.クレンブテロールおよびサイロキシン投与は,浅胸筋の蛋白質含量を有意(P<0.01)に増加させた.クレンブテロールとサイロキシンの有意(P<0.05)な交互作用が,浅胸筋の全脂肪含量および蛋白質:DNA比に認められた.クレンブテロールは,サイロキシン無処理雛における全脂肪含量を有意(P<0.05)に低下させたが,サイロキシン投与雛では,影響を及ぼさなかった.サイロキシン無処理区においては,クレンブテロール投与量の増加に伴って,蛋白質:DNA比が高められた(P<0.05).サイロキシンを投与した雛の場合,蛋白質:DNA比の増加の程度は,低いクレンブテロール投与区(1ppm)において,より高められた.RNA:DNA比は,サイロキシン投与に関係なくクレンブテロール投与によって増加(P<0.01)した.これらの結果から,クレンブテロールがもたらした骨各筋蛋白質蓄積量および細胞容量の増加は,甲状腺機能の状態と関係すると示唆された.
  • 桃沢 健二, 福田 芳詔
    1995 年 66 巻 7 号 p. 605-609
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシ卵母細胞の体外における成熟能と受精能を,卵細胞質が不均一な卵母細胞について均一な卵母細胞と比較検討した.不均一な卵母細胞の成熟率は培養時間の経過と共に高まり,成熟培養24時間では96.7%と均一区の80.8%より有意に高かった(P<0.05).受精の場の受精能獲得精子数が10,000,7,500および5,000の条件下で受精能を検討した.成熟卵における受精率はそれぞれ,精子数10,000では,均一区:77.5%,不均一区:93.0%,7,500では,均一区:61.7%,不均一区:80.9%,および5,000では,均一区:42.0%,不均一区:34.1%となった.正常(単精子)受精率は,精子数10,000では,均一区:42.5%,不均一区:46.5%,7,500では,均一区:46.9%,不均一区:63.8%,および5,000では,均一区:39.5%,不均一区:29.3%となった.正常受精率は,均一な卵母細胞と不均一な卵母細胞ともに,精子数7,500(150精子/μl)の場合に最も高く,不均一な卵母細胞では,均一な卵母細胞より高い傾向が認められた(63.8% vs 46.9%, P<0.1).
  • 田中 康男, 長田 隆, 羽賀 清典, 森下 惟一
    1995 年 66 巻 7 号 p. 610-617
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    トリハロメタン(THM)は浄水場での浄水過程で注入される塩素と水中の各種有機物質(THM先駆物質)が反応して生成する有毒物質であり,発癌性の可能性も指摘されている.特定の水道水源域(指定地域)では一定規模以上の畜産事業場の畜舎排水もTHM先駆物質濃度の指標であるTHM生成能(THMFP)が規制されることになった.そこで,確実なTHMFP測定の基礎として測定における畜舎排水の特性を検討した.THMFP測定では,塩素を不連続点より高い濃度で段階的に注入した試料を複数作成し,20°C,pH7で24時間静置後,遊離残留塩素が1~2mg/lの試料について生成したTHMを測定することになっている.まず,塩素注入率と残留塩素量の関係をみたところ,試料によっては不連続点前でも遊離残留塩素が見かけ上1mg/lを越える場合があった.よって,不連続点の位置を確認しないと所要塩素注入率より低い注入率でTHMFPを測定してしまう可能性のあることがわかった.所要塩素注入率の予測を行なうには化学的酸素要求量(CODMn),アンモニア態窒素およびE260を説明変数とする重回帰式を用いることが適切であった,11ヵ所(12試料)の畜舎排水のTHMFPのメジアン値は処理施設流入水で7,677μg/l,処理水で569μg/lであった.
  • 賀来 康一
    1995 年 66 巻 7 号 p. 618-629
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    畜産生産者の,現在設立の準備が進行している国内鶏卵•豚肉先物市場活用に関する検討を実施した.1993年現在,飼養頭羽数について採卵場の約60%,豚の約35%が農家以外の生産者によって飼養され,鶏卵•豚肉に関する生産主体は,農家から企業への移行過程にあり,生産者がヘッジャー(リスク削減の手段を取る人)として先物市場を活用する前提条件を満たしつつある.本稿ではまず,1983年から1993年までのシカゴ•マーカンタイル取引所(CME)上場畜産物先物3商品(Live Hog,Frozen Pork Bellies, Feeder Cattle)および1988年から1993年までの国内先物市場上場10商品(小豆,米国産大豆,トウモロコシ,粗糖,乾繭,生糸,金,銀,白金,ゴム),さらに「農村物価賃金統計」による国内豚肉(肥育豚生体10kg)•鶏卵(M1級,10kg)の値動きデータを使用して,期間1年,6ヵ月,1ヵ月の価格に関する変化率を比較した.その結果,鶏卵•豚肉の価格変化率は他の先物商品と比較して,ヘッジ(リスクを他へ移転すること)を必要とする水準にあることが明らかとなった.国内先物市場上場10商品の,順ザヤ(当限価格よりも期先価格が高い状態)または同ザヤ(当限価格と期先価格が等しい状態)期間の調査期間に占める比率と,発会ごとに売買最低単位である1枚を売り,納会ごとに売り契約を乗り換えるRoll hedge(生産者にとって,長期間にわたる大量の生産物の販売価格を,満期が個々に異なる一連の先物契約を利用してヘッジする方法)による損益の関係はr2=0.6200 (rは相関係数)であり,相関が有意に認められた(p<0.01).同様にCME畜産上場3商品のRoll hedgeとの関係もr2=0.9999となり有意な相関が認あられた(p<0.01).先物商品のうちStrorables(在庫可能商品)は順ザヤまたは同ザヤ期間が逆ザヤ(当限価格が期先価格よりも高い状態)期間よりも長い商品が多く,順ザヤまたは同ザヤ期間が長いほど売り方が有利であることが明らかとなった.また,国内先物市場10商品に関するRoll hedgeによる損益と実施年数から,Storablesに関する長期間のRoll hedgeは有利である傾向が示唆された.いっぽう,Nonstorables(在庫不能商品)は,逆ザヤ期間が長く,長期間のRoll hedgeは不利である傾向が示唆された.現在検討中の畜産物価格指数はNonstorablesと考えられるので,畜産生産者が先物市場を経営の安定化を目的として活用するには,売りヘッジを生産畜産物の範囲内にとどめ,ヘッジャーとして生産物の売却価格の将来的な固定を図るべきであり,オーバーヘッジ(生産者にとって,生産販売予定量以上を先物市場において売り約定すること)はリスクが大きい.いっぽう,畜産物先物市場を収益拡大の場として活用するにはストラドル(1つの先物契約を購入すると同時に,もう1つの先物契約を売却し,その価格の連関の変化から利益を得ようとする取引)等の技術が必要となる.
  • 三上 正幸, 長尾 真理, 関川 三男, 三浦 弘之
    1995 年 66 巻 7 号 p. 630-638
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    5頭のホルスタイン種肥育牛を用い,大腿二頭筋,半膜様筋,大腰筋,胸最長筋,腰最長筋,腹鋸筋,胸骨下顎筋の7部位を,屠殺後2日目に採取し,牛肉ホモジネートを調製して保存中のペプチド量および遊離アミノ酸量の変化について検討した.ペブチド量は筋肉間に差があり,屠殺後2日目では牛肉100g当たり69.1mgから143.3mgの範囲にあったが,21日目には264.1mgから464.8mgとなった.用いた筋肉の中では,大腿二頭筋,腰最長筋のペプチド量の値は高く,保存中の増加量も多かった.これに対して,胸骨下顎筋のペプチド量は7筋肉部位の中で最も少なく,また増加量も少なかった.18種類の遊離アミノ酸総量は,屠殺後2日目では牛肉100g当たり83.3mgから154.3mgとペプチド量の場合と類似した値であったが,21日目には176.0mgから220.6mgであった.2日目の遊離アミノ酸総量の最も高かった胸骨下顎筋では,増加量は少なかったが,最も低かった腰最長筋の増加量は多かった.個々の遊離アミノ酸については,Alaが最も高い値であったが,保存中における増加量は少なかった.Glu量は筋肉間で差があり,胸骨下顎筋では2日目から高く,その値は牛肉100g当たり44.08mgであったが,21日目においてもほとんど増加しなかった.また,Glyも同様に増加しないアミノ酸であった.いっぽう,Leuは21日間で最も増加したアミノ酸で,次いでPhe, Tyr, Asn, Arg, Lysと増加量は少なくなった.
  • 多田 耕太郎, 鈴木 敏郎
    1995 年 66 巻 7 号 p. 639-643
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    加圧処理(150MPa, 0°C, 10min)が乳清タンパク質単離物(WPI: Whey Protein Isolates)の加熱ゲル形成に与える影響を検討するため,pH(4.0~9.0),塩濃度(0.05~1.0M KCl),加熱温度(65~90°C),を変えて試験を行なった.また,SH基ブロック剤であるN-Ethylmaleimide (NEM, 1~10mM)の添加の影響についても検討した.その結果.WPIは無加圧区においても,pH6.0~9.0の範囲でゲルを形成し,とくにpH7.0~8.0で強固なゲル形成が認められた.また,KCl濃度の影響については,0.1~1.0Mの範囲でゲル形成がみられ,とくに0.2~0.4M付近で強固なゲルを形成したが,加圧処理を行なうと無加圧区のゲルよりも高いワークダン値を示すゲルを形成し,明らかな加圧効果がみられた.加熱温度については,加圧区,無加圧区ともに75°Cで30分間の加熱からゲル形成が始まり,85°C以上で30分間の加熱により両区ともに安定した強固なゲル形成がみられたが,加圧処理を行なったWPIの方が,無加圧区よりも高いワークダン値を示した.タンパク質濃度については,30mg/gからワークダン値の上昇がはじまり,50mg/gで良好なゲルが形成され,加圧処理によるゲル強度の増強もみられた.また,加圧処理により明らかにSH基量は増加し,WPIの加熱ゲル形成はNEMの添加により加圧区,無加圧区ともに抑制された.
  • 多田 耕太郎, 鈴木 敏郎
    1995 年 66 巻 7 号 p. 644-650
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    加圧処理(150MPa,0°C,10min)がアクトミオシンと乳清タンパク質単離物(WPI: Whey Protein Isolates)共存系の加熱ゲル形成に与える影響を検討するため,pH(6.0-7.5),塩濃度(0.1-1.0M KCl),加熱温度(70-85°C)を変えて試験を行なった.また,SH基ブロック剤であるN-Ethylmaleimide (NEM,1-10mM)の添加の影響についても検討するとともに,SEM (Scanning Electron Microscope)によるゲル組織の観察も行なった.この結果,pH,塩濃度,加熱温度の影響では,0.2MのKCl濃度でpH6.0~7.0の80~85°C加熱において,無加圧のものでは軟らかいゲルが形成された.いっぽう,同じ条件で加圧処理を行なうことによりワークダン値は急激に上昇し,強固なゲルが形成され,顕著な加圧効果が認められた.ゲル形成へのSH基の影響は,SH基ブロック剤であるNEMを添加すると,共存系のゲル形成は抑制された.これによりアクトミオシンとWPI共存系のゲル形成にはSH基のSS置換反応が強く関与していることが明らかになった.また,SEMによるゲル構造の観察の結果,加圧処理によりアクトミオシンがWPIの凝集体を取り込んで網目構造を形成するために,強固なゲルが形成されていることが明らかになった.
  • 橋爪 力
    1995 年 66 巻 7 号 p. 651-665
    発行日: 1995/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
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