本研究では,豚の枝肉形質の超音波推定値の精度を確かめ,これら枝肉形質推定値あるいは体測定値といくつかの体構成成分との関係について調べ,さらに重回帰分析によって,枝肉形質推定と体測定値から枝肉構成成分の予測の可能性について検討した.超音波推定値と枝肉実測値との間の差の平均は,A-FTおよびA-MLTAで0.01mmおよび0.29cm
2であり,相関係数は0.88および0.90であった.超音波測定による枝肉形質推定の標準誤差はそれぞれA-FTおよびA-MLTAで1.50mmおよび1.35cm
2であった.枝肉構成成分,とくにLEANPERおよびLFはほとんどの体測定値と有意な相関係数を示した.LEANPERはBL, HG, CC, WH, CD, HWおよびHHと有意な相関係数を示し,さらにCCとの相関係数は他の体測定値に比較して高い値が認められた.肩,背および腰の脂肪厚は,HGと正の,WHおよびHHと負の有意な相関係数が認められた.また,HGはほとんどの枝肉構成成分と有意な相関係数が認められた.いっぽう,LEANPERは多くの超音波推定値と負の有意な相関係数を示し,さらにA-FTおよびC-FTとの間には若干高い値が認められた.肩,背および腰の脂肪厚はA-FT, C-FT,C-MLTAおよびD-TTと正の有意な相関が認められた.また,A-FT, C-FTおよびC-MLTAは,ほとんどの枝肉構成成分と有意な相関係数を示した.A-FTは枝肉形質の超音波推定値とLEANPERを含む枝肉実測値との相関において比較的高い値を示したことから,重要であることがみいだされた.枝肉形質の超音波推定値および体測定値を用いることによる枝肉構成成分の推定は,脂肪厚およびLEANPERについては独立変数に取り込んだA-FTが比較的高い標準偏回帰係数を示した.枝肉構成成分推定の寄与率はCL, SF, MLTAおよびHWTについては24.5%~36.1%と低い値であったが,LEANPERおよびBFはそれぞれ45.1%および42.0%であり,さらにBFおよびMLTAはそれぞれ73.5%および85.3%と高い値が認められた.
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