日本畜産学会報
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67 巻, 11 号
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  • 富樫 研治, 山本 直幸, 佐々木 修, JEO Rege, 武田 尚人
    1996 年 67 巻 11 号 p. 923-929
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    QTL(量的形質遺伝子座)分散の大きさは全遺伝子座において必ずしも等しいとは考えられない.そこで,QTL分散の大きさが遺伝子座間で変わる場合のマーカーとQTL間の関連分析法を開発した.マーカーはQTLをはさみ両側にあるとした.開発手法により,(1) 全QTL数を180として,各々に等しい分散を与え,選抜に用いる情報として絶対値の大きさで上位30のマーカーにリンクしたQTL効果(MQTL効果)を用いた場合と全てのMQTL効果を用いた場合の真のMQTL効果と推定MQTL効果の相関を調べた.(2) 絶対値が大きい順に等しい数のMQTL効果を選んでいても,特定のQTLが大きな分散を持つ場合と全てのQTLが等しい分散を持つ場合とで真のMQTL効果と推定MQTL効果の相関がどう変わるかを調べた.その結果,(1) では,マーカー情報として絶対値が大きい30のマーカーを選んだ方が全てのMQTL効果を用いる場合に比べて相関係数が上昇した.(2) では,絶対値が大きい順に,同じ数のMQTL効果を選抜情報として選んでもQTLの分散が大きい方が相関係数が高くなった.以上からMQTL効果の絶対値が小さいものは推定誤差が大きく選抜の正確度が低くなりMAS(マーカー依存選抜法)では絶対値の効果が大きいマーカーを用いるべきであることが明らかになった.
  • 大山 憲二, 向井 文雄
    1996 年 67 巻 11 号 p. 930-940
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    これまでの選抜反応の予測式は,すべての個体が同一の正確度を持つとの仮定によって導かれてきているが,BLUP法で予測される育種価は各個体が記録の有無や血縁個体からの情報量により異なった正確度を持つ.したがって本報告では,個体ごとに選抜の正確度が異なる状況を想定し,直接ならびに間接選抜反応を予測する3種の予測式をシミュレーションにより比較した.予測式としては,1) 従来の予測式の選抜の正確度を,育種価予測値の正確度の平均値に置き換えた予測式(AA),2) 選抜対象集団を育種価予測値の正確度によりグループ化し,それぞれのグループから重みづけした改良量を算出する予測式(GA)および3) 育種価予測値の選抜差(SP)の3種を用いた.直接選抜反応を予測する場合,予測式間の差は小さかったが,AAの間接選抜反応は真値を大きく過小評価した.一般に本報告でシミュレートした集団のように,育種価予測値とその正確度に関連性が認められない状況では,間接選抜反応においてSPはGAより優れた予測精度を示すことが認められた.
  • 向井 文雄, 辻 荘一, 大山 憲二, 宮田 透
    1996 年 67 巻 11 号 p. 941-948
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    家畜改良センター岡崎牧場において改良量に基づく選抜指数式により1989年から1994年にかけて選抜が実施されてきた卵用鶏3系統を用いて,期待される選抜反応と実際に達成された選抜反応との比較検討を行った.3系統とも,252日齢での卵重(EW)と256日齢の体重(BW)を変化させず,初産から280日齢までの産卵率(EPB)を5%上昇させ,さらに1系統では初産日齢(SM)を5日短縮する改良目標が設定された.選抜指標としては,EW,BW,SMおよび169日齢から280日齢の産卵率(EPA)が用いられた.選抜指数式の作成には3系統ともに同一の遺伝的パラメーターが仮定され,同一の指数により5世代にわたる選抜が実施された.達成された選抜反応は,多形質REML法により推定した遺伝的パラメーターをもとに,多形質アニマルモデルBLUP法を用いて育種価を予測し,生年ごとの育種価予測値平均の世代への回帰係数より算出した.3系統ともに,BWを除き,選抜反応の方向は設定した改良目標と一致していた.しかし,体重の選抜反応は2系統では有意な減少傾向を示し,これはBWとEPAあるいはEPB間には遺伝的関連がないと仮定した指数を用いているのに対して,REMLでは小さいながらも負の遺伝相関が存在したことに起因すると考えられた.EPBの改良量に関しては,仮定したパラメーターと各系統のREML推定値の差異を反映して,ほぼ理論値に一致する系統から30%程度の系統までと異なる反応量を示した.したがって,REML法による各系統固有の遺伝的パラメーター推定値を用いた選抜指数式による選抜が改良の方向性や改良量に関して確実な効果をもたらすものと考えられた.
  • 祝前 博明, 大山 憲二, 向井 文雄, 庄條 昌之
    1996 年 67 巻 11 号 p. 949-955
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    黒毛和種の比形質およびそれらの成分形質に関して,線形性および正規性を仮定して遺伝的パラメータ値を算出し,比形質の表型価に基づく個体選抜を想定して,比および成分形質の遺伝的改良量を予測する上での比形質に関する当該パラメータ値の有効性について検討を加えた.対象とした比形質は,TDN効率(TDNE;増体量(WG)/TDN摂取量(TDNI))および粗飼料摂取率(RIR;粗飼料摂取量(RI)/総飼料摂取量(TFI))である.(共)分散成分の推定は,一分集団における662頭の直接検定牛の記録を用いて,縮約化個体モデル-REML法により行った.なお,検討に当たっては,成分形質に関するパラメータの推定値は現集団での真値に等しいと仮定した.TDNEに関する選抜により,線形性•正規性の仮定下では,WGおよびTDNIの集団平均はそれぞれ増加および減少すると予測され,真に期待される遺伝的変化の方向と一致したが,変化の量は,WGで過大評価されTDNIでは過小評価された.RIRに関する選抜を実施すると,実際にはRIおよびTFIの平均はともに低下すると期待されたが,線形性•正規性の仮定下では,RIの平均は上昇しTFIのそれは低下すると予測された.所与の仮定下で,比のテイラー展開に基づき定義されたパラメータ値を用いた場合にも,比および成分形質について実際に生じると期待される遺伝的変化は適切に説明されなかった.よって,TDNEおよびRIRについて線形性および正規性を仮定して個体モデルにより算出されたパラメータの値は,これらの比形質に対する選抜の結果を予測する上で的確な情報でない可能性が示唆される.なお,RIRに関する選抜により,両成分形質の集団平均がともに低下するとすれば,飼料摂取能力の最適化の観点から,望ましい現象でない可能性がある点に留意を要する.
  • ブンチャサック チャイヤプーン, 田中 桂一, 大谷 滋, コリアド クリスチーノ M.
    1996 年 67 巻 11 号 p. 956-967
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    低タンパク質飼料にメチオニンとシスチン(Met+Cys)を添加することによって雌ブロイラーヒナ(0から21日齢)の成長と脂肪蓄積に及ぼす影響を検討した.17%タンパク質(CP)含量試料(CP;17%,代謝エネルギー(ME);3,017kcal/kg)にMet+Cysを0.64%,0.93%,1.25%あるいは1.50%を添加した.23%CP含量の飼料(CP;23%,ME;3,017kcal/kg)を対照区とした.飼料摂取及び飲水は自由にさせた.増体量は23%CP飼料区の方が17%CP飼料区より大きかった.しかしMet+Cys1.50%添加17%CP飼料区の増体量は23%CP飼料区の値に近づき統計的に有意な差は観察されなかった.飼料要求率は23%CP飼料区の方が良かった.しかしタンパク質効率,飼料及びエネルギー摂取量は17%CP飼料区と23%CP飼料区との間で統計的に有意な差は観察されなかった.腹腔内脂肪量17%CP飼料区の方が高かった.しかし17%CP飼料区間ではMet+Cysの添加量が大きいほど腹腔内脂肪量は減少した.肝臓におけるacetyl-CoA carboxylase活性は処理間で差が観察されなかったが,fatty acid synthetase活性は17%CP飼料区の方が高い値を示した.一般に,低タンパク質飼料を給与すると肝臓,血清及び胸筋中のトリグリセリド含量は高くなるが,Met+Cysを1.5%添加することによって肝臓中のトリグリセリド含量は高タンパク質飼料区の値に近づいた.血清及び胸筋中の遊離型コレステロール含量は飼料中タンパク質含量の影響を受けなかった.肝臓では17%CP飼料区より23%CP飼料区の方がむしろ高かった.肝臓中リン脂質含量は飼料中タンパク質レベルやMet+Cys添加量による影響は観察されなかったが,胸筋中リン脂質含量は17%CP飼料区へのMet+Cys添加量の増加に伴って高くなる傾向を示した.本実験の結果は17%CP飼料でも適切な量のMet+Cysを添加することによって21日齢までの成長中ブロイラーの成長を改善することができることを,また腹腔内脂肪量は,23%CP飼料区の値よりは大きかったが,17%CP飼料にMet+Cysを添加することによって減少させることができることを示唆した.
  • 芦田 欣也, 平林 美穂, 松井 徹, 矢野 秀雄, 中嶋 隆, 斎藤 安弘
    1996 年 67 巻 11 号 p. 967-974
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    飼料中カゼインフォスフォペプチド(CPP)が低もしくは正常カルシウム飼料を給与した産卵鶏の卵殻質および骨性状に及ぼす影響を検討した.産卵開始後8ヶ月齢の成鶏60羽を2区に分け,CPPを含まない1.5もしくは3,4%カルシウム飼料を1週間給与した後,さらに各区を3区に分け,CPPを0,0.5,1.0%含む1.5もしくは3.4%カルシウム飼料を6週間給与した.3.4%カルシウム飼料群において,0.5もしくは1.0%CPP添加により卵殻質に影響は認められなかったが,脛骨の灰分含量,比重が有意に増加した.飼料中カルシウム濃度を低下させることにより,卵殻の破壊強度,乾重量,厚さ,比重,脛骨の乾重量,灰分含量,比重の低下が認められた.低カルシウム飼料への0.5%および1.0%CPP添加は卵殻比重を増加させた.しかし,脛骨においてCPP添加の効果は認められなかった.以上の結果より,産卵鶏へのCPP給与は通常カルシウム摂取条件下で骨量およびカルシウム含量を増加させ,低カルシウム摂取条件下で卵殻質を改善する可能性が示唆された.
  • 村松 達夫, 柴田 修, 大森 保成, 奥村 純市
    1996 年 67 巻 11 号 p. 975-982
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究においては,マウス精巣細胞へのクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のトランスフェクション効率をin vivoおよびin vitroで行ったリポフェクション法,エクレクトロポーレーション法ならびにパーティクルガン法にっいて比較した.併せて,in vivoエレクトロポーレーションによってマウスの生体精巣における大腸菌βガラクトシダーゼ遺伝子の三次元空間的な発現の獲得を試みた.4週齢のICR系統雄マウスを用いて全部で3回実験を行った.その結果,用いた3種類のトランスフェクション法のうちではin vivoエレクトロポーレーション法とin vivoパーティクルガン法が最も効率が良いことが判明した.in vivoエレクトロポーレーションを用いて大腸菌βガラクトシダーゼ遺伝子を導入したところ,マウス精巣において三次元空間的な明白な遺伝子発現がX-gal染色によって確認され,X-gal染色された細胞の中には精母細胞もしくは精子細胞に類似したものも含まれていた.最大導入可能DNA量,組織の損傷およびトランスフェクション効率を考慮に入れると, in vivoエレクトトポーレーションはマウスの生体精巣細胞への外来遺伝子導入に対して優れている方法であると結論された.
  • 浜野 晴三, 浜脇 淳, 小池田 明子, 吉川 基一
    1996 年 67 巻 11 号 p. 983-990
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    年間を通して採取したウシ卵子の体外成熟,体外受精およびその後の胚の発生について,季節的な影響を観察した.2年間に渡り行った体外受精試験の結果,毎年7~9月に体外受精後の2細胞期以上への分割率および胚盤胞への発生率が他の月に比べて有意に低下した.さらに,夏期には卵細胞質が黄色を呈する卵子が観察され,同時期の正常と判定された卵子と比較すると,成熟培養後の第2成熟分裂中期への核の移行は両区共に高率(95.8% vs 95.9%)であり,媒精後の雄性前核形成も両者について高率に観察された(88.9% vs 85.2%)が,体外受精後の2細胞期以上への分割率では有意に低い割合であった(31.5% vs 81.7%, P<0.05).さらに,卵丘細胞との共培養による胚盤胞への発生率も同様に有意な差が認められた(7.8% vs 19.1%, P<0.05).以上の結果より,夏期に採取される一部の卵子は,第2成熟分裂中期への成熟,および媒精後の雄性前核形成までは高率に行われるが,2細胞期以降への発生率が有意に低く,これが胚盤胞への発生率低下の一因となっていることが示された.
  • 高野 博, 小財 千明, 清水 悟, 加藤 容子, 角田 幸雄
    1996 年 67 巻 11 号 p. 991-995
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシ単為発生卵の発生能に及ぼす卵齢の影響について検討した.体外成熟培養20~22時間目に卵丘細胞を除去し第1極体が確認された卵子を用いて,成熟培養開始から24時間目(若齢卵子)あるいは44時間目(過齢卵子)に電気刺激を与えた後,シクロヘキシミド(CY)とサイトカラシンBを添加した培養液で6時間培養し,活性化率ならびに胚盤胞への発生率を比較した.ついで,若齢ならびに過齢卵子を第2減数分裂中期の染色体を含む少量の卵細胞質(カリオプラスト)おつよび染色体を含まない残りの卵細胞質(サイトプラスト)とに分離して,4種類の組み合わせの再構築卵を作出後活性化刺激を与えて発生能を比較した.また,体外受精由来の32~64細胞期胚割球を若齢ならびに過齢サイトプラストヘ融合して発生能を調べた.その結果,(1) CY添加によって若齢卵子の活性化率は有意に上昇した(19%vs97%).(2) CY添加の有無にかかわらず過齢単為発生卵の胚盤胞への発生率(12~13%)は,若齢卵に比べて有意に低かった.(3) 過齢単為発生卵の発生率が低い原因は,染色体に起因するのみではなく卵細胞質の「発生能支持力」の低下によることが,カリオプラスト•サイトプラストの交換移植ならびに核移植実験から明らかとなった.
  • 加世田 雄時朗, 野澤 謙
    1996 年 67 巻 11 号 p. 996-1002
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    野生状態で生息している御崎馬に関する16年間の行動調査と父子判定の結果を基に,12頭の種雄馬とその51頭の娘を対象に,父娘交配の発生状況とその回避機構について分析した.12頭の種雄馬とその51頭の娘が共に繁殖可能であった176回の繁殖シーズンのうち,82回は両者が互いに異なった地域で過ごした.すなわち,雌子馬が繁殖前に生来地を離れて他の地域へ移出し,繁殖可能なシーズンに父親と異なった地域で過ごすことによって,父親との接触が物理的に回避され,その結果として父娘間の交配が回避された.種雄馬とその娘が同じ行動域で過ごした繁殖シーズンは94回であったが,両者が安定した配偶関係を持った事例は1例も観察されなかった.すなわち,本研究では,雌子馬が性成熟以前に生来群を離れるいわゆる分散によって,父親と娘の間の配偶関係の形成が回避された.父子関係が確定した124例うち2組の父と娘の間に2頭の子馬が生まれた.この2例とも娘は父親とは別の種雄馬の群で生まれ育って,性成熟後に父親とハーレム群を形成した.一方生来群を一度離れた雌子馬が,性成熟後に再び生来群に戻りその種雄馬(幼児期に一緒に過ごした種雄馬)と安定な配偶関係を持った例は1例もなかった.この結果は,野生馬や半野生馬で報告されている「幼児期に同じ群で過ごした経験によって,近親交配が回避されたり,性行動が減少する」という仮説を支持している.
  • 朝賀 一美, 矢野 幸男, 宮口 信子, 中出 浩二, 和田 佳子
    1996 年 67 巻 11 号 p. 1003-1009
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛肉の硬さを生肉の状態で測定する回転式センサーの開発を行った,本センサーは刃型プランジャーを装着した回転部と,針状の固定用プランジャーを装着した固定部からなり,結合組織の切断に伴って刃型プランジャーが受ける破断応力に基づく測定により,生肉の硬さを評価した,測定条件は回転角度180°,回転速度0.80秒/°とし,2cmタイプ刃型プランジャーを2本装着したものを,肉線維にほぼ平行に回転させたときに得られる最高トルク値をその肉の硬さとした.本センサーで測定した筋肉は国産ホルスタイン種去勢牛(8頭)から採取した腸腰筋,胸最長筋,半膜様筋,半腱様筋,腓腹筋および上腕筋で,各筋肉の硬さはそれぞれ13.42,14.90,21.90,19.70,29.70および33.50kgwと筋肉間で差異が認められた.また,本センサーをオーストラリア産アンガス種去勢牛(33頭)から採取した胸最長筋と半膜様筋に適用したところ,半膜様筋では,本センサーによる測定値と加熱後の官能検査値およびテンシプレッサーによる測定値との相関係数はそれぞれ0.64(P<0.01)および0.68(P<0,01)であった.また,胸最長筋も半膜様筋と同様の傾向を示した.以上のことから,本センサーを用いた結合組織の切断による測定は,生肉の硬さの測定に有用であることが明らかとなった.
  • 高田 英資, 広田 義和, 前田 嘉道, 武尾 正弘, 石井 泰博, 白井 邦郎
    1996 年 67 巻 11 号 p. 1010-1017
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    回収牛毛を可溶化して,膜などの構造材料として利用出来る分子量の大きい可溶性タンパク質を得るために,亜硫酸ナトリウムで前処理し,パパインまたはトリプシンを用いる酵素還元加水分解法(SP法)およびアルカリ加水分解法により可溶化を行う場合の可溶化条件と可溶化タンパク質の理化学的性質を調べた.また,可溶化タンパク質の酸沈澱における挙動についても検討を加えた.SP法(パパイン)では可溶化率約44%,最終収量は22.2%で可溶化タンパク質を得た.トリプシン使用の場合には,それぞれ39%および8.4%であった.また,アルカリ加水分解法では93%および49%であった.SP法およびアルカリ加水分解法により得られた可溶化タンパク質の酸沈澱における溶解度曲線は異なったパターンを示した.両可溶化タンパク質とも共通して酸不溶性画分(沈澱物)より酸可溶性画分(上澄み液溶解物)の方が多く,また,SP法由来の酸不溶性画分はアルカリ加水分解法由来のそれに比べ,多く存在した.SDS-PAGE, SEC-HPLC分析により分子量組成を調べたところ,それぞれ2~3の画分がみられ,分子量として15KD~25KDのものが多い.アミノ酸組成はSP法による可溶化タンノパク質中にはランチオニンが多く存在し,アルカリ可溶化物では比較的少なかった.SP法とアルカリ可溶化物と比べると,システイン酸,セリンおよびプロリン等が多く,アルカリ可溶化物はセリン,トレオニンおよびランチオニンが少ないことが認められた.
  • 張 偉, 村松 晉, 高木 伸季, 吉澤 緑, 福井 えみ子
    1996 年 67 巻 11 号 p. 1018-1021
    発行日: 1996/11/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    The present paper deals with the variation in the distribution of nucleolus organizer regions (NORs) and NOR association on equine chromosomes obtained from ten domestic horses. The chromosome complement of all horses analyzed was normal, 2n=64 XX or XY. Numerical variations of Ag-NORs occurred at the cellular and individual levels, while NORs were detected in Nos. 1, 28 and 31 autosomes. The Ag-NORs were observed in four chromosomes in most of cells obtained, and the combination of the chromosomes with NORs was as follows: (1) the homologous pairs of Nos. 1 and 31 autosomes (three horses), and (2) No. 1 pair and either No. 28 or 31 chromosomes (seven horses). NOR association was found in all horses with frequency ranging from 4.3 to 14.6% (mean 9.7%). A high incidence of NOR association was observed between No. 1 pair (54.9%), Nos. 1 and 31 autosomes (27.0%) and No. 31 pair (10.4%). The incidence of association involving No. 28 autosomes was consistently lower than those of other NOR ones (2.4%).
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