乳牛の体型形質と泌乳性および生産期間との関連を明らかにするために,線形審査形質の主成分スコアと各形質の遺伝相関を推定した.分析には,家畜改良センターで蓄積された1993秋の乳用牛評価用データを用いた.このデータには約12万頭の初産牛の線形審査と審査得点および泌乳形質の記録が含まれていた.線形審査形質の性質を分析するために,SASを利用して主成分分析を行った.主成分スコアと他の各形質の遺伝および環境分散•共分散の推定にはMTDFREMLプログラムを用いた.第1主成分は,高さ,体の深さ,尻の幅との関連が強く,この主成分は,体の大きさ示す形質と推察された.この成分と一般外貌,体積,決定得点という得点形質との遺伝相関はいずれも高く,それぞれ0.96,0.93,0.97であったが,泌乳形質および生産期間とは負の遺伝相関(-0.10--0.18)を示した.第2主成分は乳房の懸垂,前乳房の付着,後乳房の高さ,後乳房の幅の乳房関係の形質と体型では鋭角性に関連しており,これは乳房の付着と乳用性を表す成分であると推察された.この成分は,乳器(得点形質)や生産期間に中程度の遺伝相関(0.42)を示したが,他の得点形質とは負の値を示し,泌乳形質とは,0.08-0.11の正の相関を示した.したがって,体型審査情報だけで泌乳能力や生産寿命を大幅に改善することは望めないが,乳牛改良の補助的な情報として,決定得点に近い第1主成分よりも,むしろを乳器や鋭角性に関連する第2主成分を利用するにとが有効であると推察された.
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