日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
68 巻, 8 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 大坂 郁夫, 甫立 孝一, 伊藤 文彰, 小原 嘉昭, 布施 洋
    1997 年 68 巻 8 号 p. 727-734
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種育成牛(13ヵ月齢)4頭を用いて,血漿中のインスリン,グルカゴン,成長ホルモンと代謝産物濃度に及ぼす寒冷暑熱曝露の影響を調べた.育成牛を人工気象室を用いて常温(20°C),寒冷(0°C)および暑熱(30°C)の各環境に曝露した.供試牛を寒冷あるいは暑熱環境に曝露後1,2,3,6,10,16日目に,頸静脈から採血を行い,血漿ホルモンと代謝産物濃度を測定した.インスリン濃度は暑熱曝露後2,3日目に,寒冷環境でも3日目に有意な低下が観察された.グルカゴン濃度は寒冷,暑熱曝露ともに有意の変化を示さなかった.成長ホルモンは寒冷6日目以降,常温に比べて低く推移した.グルコース濃度は寒冷曝露によって上昇したが,逆に暑熱環境では低下した.α-アミノ態窒素濃度は寒冷曝露後2,3日で増加したが,暑熱曝露では変化しなかった.β-ヒドロキシ酪酸(BHBA)は寒冷曝露下では1日目のみ増加し,暑熱曝露では3,4日に低下した.NEFA濃度は温度感作の初期は両環境で低下し,寒冷曝露では6日目以降上昇し,その後回復したが,暑熱曝露では低く推移した.以上の結果から,血漿インスリン濃度は,寒冷あるいは暑熱ストレスを受けた初期には低下し,その後速やかに回復することが示唆された.しかし,血漿グルコースやNEFAなどの栄養基質のレベルは寒冷,暑熱ストレスに適応して変化が持続していることが示唆された.
  • 石橋 晃, 由本 朱美
    1997 年 68 巻 8 号 p. 735-740
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    リジン要求量は飼料中のアミノ酸の増加に伴って,増加すること,および血漿遊離リジン濃度から推定されたリジン要求量が飼養試験の結果と一致することを明らかにするため,開放鶏舎で大羽数を用いてリジン要求量を求めた.78週齢の産卵鶏を13区にわけて開放鶏舎で単飼し,47日間試験飼料と水を自由摂取させた.試験飼料のアミノ酸充足率はNRC (1994)のアミノ酸要求量の110および125%とし,リジン含量は両区とも6段階とし,残りの1区は市販飼料を給与した.卵重は3日毎,飼料摂取量は6日毎そして生体重は試験開始日と最終日に測定した.採血は,飼養試験の最終日に行い,血漿遊離アミノ酸濃度を測定しし4.NRC (1994)の110%のアミノ酸充足率では最大生産能のためには不足であった.産卵率,飼料効率および血漿リジン濃度から得られたリジン要求量はアミノ酸充足率が110と125%でそれぞれ0.56,0.56と0.57および0.61,0.59と0.61%と推定された.以上の結果から,リジン要求量は飼料中のCPないしはアミノ酸の増加に伴い上昇すること,血漿リジン濃度から求めたリジン要求量は生産能から求めた値と良く一致することが示された.
  • 小林 泰男, 江畑 明彦, 脇田 正彰, 星野 貞夫
    1997 年 68 巻 8 号 p. 741-747
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    大腸菌とButyrivibrio fibrisolvens双方で複製可能なシャトルプラスミドpYK4とpYK7を用いて,エレクトロポレーション法によるButyrivibrio fibrisolvens OB156およびOB156Cの形質転換を試みた.電場強度を上げるにつれ,にれらの菌の形質転換は促進されたが,抵抗200オーム,キャパシタンス25μFにセットし,20kV/cmの高電圧パルスをかけた時に,効率的かつ安全な形質転換がはかれることが明らかとなった.ベクター添加量あたりに得られる形質転換体数であらわされる形質転換効率は,プラスミドを0.1μg加えた時に最も高かった.選択マーカーのエリスロマイシン耐性遺伝子は形質転換体でよく発現し,本抗生物質が800μg/ml濃度で含まれる培地内でも無添加培地とほぼ同じ速度で増殖した.また本形質転換体は選択圧のない環境,すなわちエリスロマイシンを含まない培地で24時間毎に2週間継代しても,64-77%のものがエリスロマイシン耐性を保持していることから,導入されたプラスミドはかなり安定であることがわかった.
  • ピノントアン レインハード, 奥村 純市, 村松 達夫
    1997 年 68 巻 8 号 p. 748-751
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Whole-body protein synthesis in chicken embryos was determined at 3 days of incubation age by using an in vitro culture system with or without stretched extra-embryonic membranes. Embryo cultures were conducted in a Petri dish containing synthetic serum-free medium with [3H] phenylalanine in a CO2 incubator for up to 90min. Stretch made on the extra-embryonic membranes enhanced the incorporation rate of phenylalanine into whole-body protein. However, the embryo cultured without the extra-embryonic membranes showed even a higher phenylalanine incorporation rate at 90min compared to the one with stretched membranes. It was concluded, therefore, that whole-body protein synthesis of chicken embryos should be measured without extra-embryonic membranes under the present stationary culture system.
  • 喜多 一美, ハングサネット カノックワン, 奥村 純市
    1997 年 68 巻 8 号 p. 752-755
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    We examined changes in hepatic insulin-like growth factor-I (IGF-I) and β-actin mRNA levels in chickens during early stages of growth after hatching. At 0, 1, 2, 4, 6 and 8 wk of age, hepatic IGF-I and β-actin mRNA levels were measured by using a ribonuclease protection assay. The IGF-I mRNA level in the liver significantly increased from 0 to 1wk of age, and thereafter the level tended to increase toward 8wk of age, but not significantly. The level of hepatic β-actin mRNA was maintained throughout the experiment. The IGF-I mRNA/β-actin mRNA ratio significantly increased form 0 to 6wk of age, and then tended to decrease but not significantly. These results indicate that hepatic IGF-I gene expression in chickens rapidly increases at early stages of growth after hatching.
  • 伊藤 良, 有原 圭三, 近藤 洋
    1997 年 68 巻 8 号 p. 756-759
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    The molecular species compositions of triacylglycerols isolated from M. longissimus thoracic of fattened beef cattle (Japanese Black, Japanese Shorthorn, and Holstein steers) were determined by gas chromatography. There were twenty-five molecular species in triacylglycerols. Major species having more than 10% of total molecular species for at least one breed were palmitoyl (P)-P-oleoyl (O)-glycerol (PPO), P-P-linoleoyl (L)-glycerol (PPL), P-stearoyl (S)-O-glycerol and P-O-O-glycerol (POO). The concentration of POO was the highest in these species. The concentration of POO in triacylglycerol was closely associated with the concentrations of PPO and POL.
  • 佐藤 正寛, 古川 力
    1997 年 68 巻 8 号 p. 760-766
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ブタにおいて選抜候補の血縁個体の情報量と選抜の正確度との関係を明らかにするため,1形質の家系選抜指数を用いて検討した.選抜候補およびその血縁個体はすべて単一記録を持ち,またそれらの近交係数はすべて0とした.選抜形質の遺伝率(hz)は0.1~0.6とした.選抜候補の血縁個体の情報量として,選抜候補の世代を0としてそこから遡る世代数(0~5),雄あたりの雌の交配頭数(1~5)および一腹あたりの選抜候補頭数(1~8)を変えたときの選抜の正確度を算出した.その結果,h2が高い場合(0.3≦h2)は3世代,h2が低い場合(hz<0.3)でも4世代分の血縁記録を用いれば,精度の高い育種価を推定できることが明らかとなった.
  • 出口 栄三郎, 阿久沢 正夫
    1997 年 68 巻 8 号 p. 767-773
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本試験は,子豚の群編成後の闘争が末梢血のコルチゾール濃度,白血球数,単球および好中球の貪食能に及ぼす影響を明らかにする目的で実施した.LW×D種去勢雄子豚,12頭(4頭/腹×3腹)を用い,生後45±0日齢に,同腹豚4頭(移動豚)を,別の同腹豚4頭(先住豚)を飼育している豚房に移動し,8日間同居させた.残りの同腹豚4頭は,移動せずに対照豚とした.編成直後から6時間,先住豚は移動豚に対して,顔,耳,頸および肩を噛むあるいは前肢で頸や肩に乗るなど激しく攻撃したが,移動豚の先住豚はこ対する反撃はほとんど認められなかった.その後,子豚間の闘争は試験終了時まで全くみられなかった.試験期間中,対照豚では血漿コルチゾール濃度,白血球数および単球と好中球の酵母貪食能には変化はみられなかった.いっぽう,先住豚と移動豚では,以下の成績が得られた.1) 編成後1時間における血漿コルチゾール濃度は,編成前1時間(編成前)および対照豚に比較して有意に高かったが,編成後24時間には編成前の値まで低下した.2) 試験期間中,好中球数には変化はみられなかったが,編成後1および8日における単球数および単球と好中球の酵母貪食能は,編成前および対照豚に比較して有意に低かった.3) 試験期間中,血漿コルチゾール濃度,白血球数および単球と好中球の酵母貪食能には,先住豚と移動豚との間には有意差は認められなかった.これらの成績から,群編成後の闘争はブタにとってストレッサーであり,子豚は編成後少なくとも8日間は単球数は減少し,単球および好中球の貪食能は抑制されていることが明らかになった.
  • 土肥 宏志, 山田 明央, 圓通 茂喜, 住川 隆行
    1997 年 68 巻 8 号 p. 774-779
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    被乗駕行動測定装置は,乗駕行動時のウシ同士の接触面の圧力を感知する感圧スイッチと,そのスイッチに圧力が加わった時刻と,除かれた時刻を記録する装置で構成されている.被乗駕行動測定装置を装着したウシに他のウシが乗駕した際に,その時刻と被乗駕行動の持続時間が記録される.この装置により発情の時間帯が特定でき,また授精適期を推定するための有用な情報が得られるかどうか検討した.実験1では,繰り返しを含めて7頭の黒毛和種雌牛において,被乗駕行動測定装置により得られた乗駕許容を示していると推定される3秒以上の持続時間を示す被乗駕行動の頻度分布から,発情の時間帯が判定できることを示した.実験2では,50頭からなる繁殖牛群内で,発情を誘起した6頭のウシにこの装置を装着し,1日に2回の定期的な牛群の肉眼観察により,この6頭のウシの授精適期を推定し,人工授精を行った.その結果,測定装置の記録より判定された発情の開始と終了時刻から推定された授精適期の範囲内で,人工授精された4頭のウシは受胎した.また,授精適期以外で人工授精された1頭のウシは受胎しなかった.これらの結果は,この感圧スイッチの測定記録をテレメーター装置などにより,実時間で得ることができれば,適期に人工授精が可能なことを示唆している.
  • 渡辺 彰, 松本 光人, 櫛引 史朗, 新宮 博行, 甫立 孝一
    1997 年 68 巻 8 号 p. 780-786
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    肥育牛の屠畜直後における腎臓脂肪除去とこれに続く流水による冷却促進がひれ肉の品質に及ぼす影響について調べた.日本短角種去勢肥育牛11頭を供試して屠畜30分後に各枝肉の左半丸の腎臓脂肪を除去し,流水でひれ肉を冷却処理した(RF処理).右半丸は腎臓脂肪を付けた状態(IF処理)で,両半丸とも3°Cで貯蔵した.屠畜後10日目にひれ肉を採取して食肉としての理化学的特性を測定し,さらに官能検査を凍結解凍後のひれ肉を調理して実施した.その結果,RF処理はIF処理に比較して,むれ肉状態の指標となるトランスミッション(TM)値を低く抑え(P<0.05),ひれ肉の水分含量と剪断力価を有意(P<0.05)に高くすることが示された.また,クッキングロスはRF区が有意(P<0.05)に多かったが,保水力には有意差が認められなかった(P>0.05).さらに,色調を表すハンターのL,a,b値はRF処理のほうがIF処理より有意(P<0.01)に低い値を示した.官能検査の結果,RF処理による水分含量の差(ΔM)が凍結前の値で2.4%の個体については,好ましさに差が認められる傾向があり,2.9%以上になると,RF処理のほうが多汁性に富み(P<0.01),好ましい(P<0.01)と判断されることが示された.本実験ではΔMが2.4%以上となった個体は11頭のうち4頭,2.9%以上のものは3頭であった.以上の結果から,屠畜直後の腎臓脂肪除去とこれに続く流水による冷却促進はひれ肉の水分含量を高くし,その効果が官能的にも認められる場合があることが示された.
  • 森田 英利, 坂田 亮一, 塚正 泰之, 坂田 篤, 永田 致治
    1997 年 68 巻 8 号 p. 787-796
    発行日: 1997/08/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Staphylococcus carnosusとStaphylococcus xylosusは,それぞれMRS液体培地中のメトミオグロビンを,パルマハム中に形成される赤色ミオグロビン誘導体(未同定)とニトロソミオグロビンに転換する.これらのStaphylococcus属細菌をスターターカルチャーとして,発色剤(亜硝酸ナトリウム)無添加のサラミ(約240g)を試作した.サラミは,一定の温度(20°C)と相対湿度(80%)に23日間保ち熟成させた.S. carnosusあるいはS. xylosusを接種したそれぞれの試料は,発色剤無添加でわずかの食塩を用いたのみにもかかわらず,塩漬したサラミとほぼ同等の赤色度を呈した.熟成過程中,経時的に測定した性状(pH値,残存亜硝酸根量,水分含量,水分活性,食塩濃度)は,塩漬した試料とほとんど同様の変化であった.細菌学的検査(一般生菌数,酸産生菌数,大腸菌群数,Staphylococcus属細菌数,サルモネラ菌数)を行った結果,試作した発色剤無添加サラミは,食品衛生上,良好な品質であった.また,発色剤を使用した場合においては,S. carnosusあるいはS. xylosusをスターターカルチャーとして接種することにより退色の抑制効果がみられた.
feedback
Top