豚枝肉の格付け規格が枝肉の脂肪蓄積とどの程度関連しているかを明らかにするため,枝肉格付け規格成績,格付け背脂肪厚,枝肉横切断面の全面積に対する皮下脂肪,筋間脂肪および全脂肪面積割合との遺伝相関(rG)と表型相関(rP)について分析を行った.材料は宮城県米山町農協管内のミヤギノポーク(LWD)生産農家18戸から出荷された326頭の肥育豚である.屠殺翌日の格付け終了後に第4,5胸椎間で枝肉半丸を横切断し,切断面を写真撮影した.画像解析装置を使い写真の切断面面積,皮下脂肪と筋肉間脂肪面積を測定した.さらに,筋肉間脂肪スコア(Seam fat score: 1~5)により筋肉間の脂肪蓄積状況を評点した.出荷時期(I: 8~11月,II; 12~1月,III: 2~3月)の効果は日齢,皮下脂肪面積割合で有意であり,II期の出荷日齢が早く(181.7日),III期が遅かった(213日).また,III期の皮下脂肪面積(26.2%)がI(28.0%),II期(27.8%)より少なかった.性の効果は枝肉重量を除く全ての形質で有意であり,去勢は雌より出荷日齢が早く,上物率も高く,脂肪の蓄積が多い.格付け等級別にこれらの形質を比較すると,格付け「上」の出荷日齢が最も早く,格付け脂肪厚,皮下脂肪面積,全面脂肪面積およびSeam fat scoreも「上」,「中」ほど「並」より脂肪蓄積が多かった.しかし,筋肉間脂肪面積は等級間で差が認められなかった.格付け背脂肪厚は皮下脂肪面積割合(rG: 0.69, rp:0.61),全脂肪面積割合(rG: 0.94, rP: 0.55),Seam fat score (rG: 0.80, rP: 0.38)とそれぞれ比較的高い遺伝相関と表型相関を示し,枝肉の脂肪蓄積状態を反映しているが,筋肉間脂肪面積割合との相関は低く(rG: 0.37, rP: 0.17),筋肉間脂肪の評価には枝肉切断面の情報を直接取り込むことが必要と思われた.
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