日本畜産学会報
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69 巻, 7 号
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  • 蘆田 一郎, 祝前 博明
    1998 年 69 巻 7 号 p. 631-636
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    家畜育種の分野では,分散成分および遺伝的パラメータの制限最尤(REML)推定がしばしば実施される.REML推定のための代表的なアルゴリズムとして,expectation-maximizationやderivativefreeなどが知られているが,近年,average information (AI)と呼ばれるアルゴリズムの好ましい演算特性が注目されつつある.本研究では,個体効果(育種価)と残差を含む個体モデルを仮定し,予測残差ベクトルを含む通常のAI行列表現に基づくアルゴリズム(ここでは, AIREML (O)と呼ぶ)に対して,当該ベクトルを消去したAI行列表現について検討を加え,得られた行列要素を用いた一演算手法(AIREML (M))の計算特性を調べた.数値的な検討は,両AI手法およびEM手法(EMREML)のFSPAKサブルーティンを利用したFORTRANプログラムを作成し,黒毛和種の枝肉重量に関するデータセットを分析して行った.AI行列から予測残差のベクトルを消去した場合,同行列の要素は,観測値ベクトルおよび個体効果の解ベクトルの2次形式の関数として,混合モデル方程式の係数行列の一般化逆行列の一部分行列および相加的血縁行列の逆行列などの項を含む形で表された.AIREML (M)での反復計算過程における演算時間は,AIREML (O)のそれと大差なく,EMREMLの場合に比べてはるかに短縮された.AIREML (M)の実行に際し必要とされたメモリ量は,EMREMLによる場合と同程度であり,予測残差の計算を回避する本AIREML (M)の手法は,ここで取り上げたモデルに関するREML推定のための実用的な一演算手法であると考えられる.
  • 大星 茂樹, 藤原 昇, 吉田 達行, 友金 弘
    1998 年 69 巻 7 号 p. 637-645
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    Sprague-Dawley系ラットの1あるいは2細胞期胚の体外培養を行って,体外培養液に含まれるグルコースおよびアミノ酸が胚盤胞期への胚の発育に及ぼす影響について検討し,発育した胚を透過型電子顕微鏡を用いて観察した.培養液に0.5mMのグルコースを加えると,約60%の1細胞期胚が胚盤胞期へ発育するとともに,グルコースおよびアミノ酸の両者を添加することによって胚の発育はさらに促進され,胚盤胞の細胞数が増加する傾向がみられた.これらの結果から,ラット1細胞期胚の体外培養において,グルコースならびにアミノ酸は胚盤胞期への胚発育に重要な役割を果たしていることが示唆された.一方,1細胞期から体外において発育した胚盤胞は,妊娠5日目の子宮から採取した胚盤胞と比べて細胞数が少なく,胚盤胞腔は発達が悪く小型であるばかりでなく,内細胞塊細胞同士の間隙は狭く不明瞭であるとともに,ミトコンドリアは電子密度が高くクリステは不明瞭であった.
  • 成瀬 治己, 松井 徹, 藤原 勉
    1998 年 69 巻 7 号 p. 646-652
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    屠殺後生肉の肉色変化(退色)を制御するための方法として生体時に抗酸化剤を添加給与した場合の効果について検討するため,抗酸化作用を有するナイアシンを肥育ヒツジに投与し,その生肉の冷蔵保存中における肉色保持効果について調査した.胸最長筋,大腰筋および大腿二頭筋の挽肉およびスライス肉サンプルを調製し,それらの冷蔵保存中(4°C,2週間)におけるミオグロビン(オキシおよびメト)濃度(挽肉)および色差計による肉色(スライス肉)を経時的に測定した.I) ナイアシン投与区の大腰筋では,7日目のメトミオグロビン濃度の上昇が,対照区のそれに比して,著しく抑制された.しかし,胸最長筋および大腿二頭筋中のミオグロビン濃度の経時変化には両区間で明らかな差は認められなかった.II) 色差計による肉表面の明度(L),赤色度(a)および黄色度(b)の経時変化では,ナイアシン投与区および対照区の間で次のような結果が得られた:1) 赤色度については,胸最長筋の7および9日目で,大腰筋の1および9日目で,また大腿二頭筋の5,7,9および12日目で有意差(P<.05)が認められた.2) 黄色度については,胸最長筋と大腰筋の9日目で有意差(P<.01)が認められた.3) 明度については,両区間に顕著な差は認められなかった.以上の結果から,肥育末期におけるナイアシンの添加給与は,ヒツジ生肉の肉色保持に対して有効であることが示された.
  • 黒瀬 陽平, 若田 雄吾, 坂下 幸, 寺島 福秋
    1998 年 69 巻 7 号 p. 653-658
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    セロトニンは,脳において神経伝達物質として存在する.中枢セロトニンは,内分泌系に影響することが示唆されている.本研究の目的は,中枢セロトニン神経の活性とグルコースに対する末梢インズリン分泌反応との関係を明らかにすることである.実験動物としてWistar系雄ラット(体重351~400g)を使用した.セロトニン合成阻害薬P-クロロフェニルアラニン(pCPA,1mg)を脳内のセロトニン合成を阻害する目的で側脳室へ投与した、グルコースに対する末梢インスリン分泌反応を,グルコースクランプ法によって,pCPA投与群および生理食塩水投与群において比較検討した、グルコース注入率(GIR)および血糖値は両者間で差がないにもかかわらず,血清インスリン濃度平均増加量(MSII)は,pCPA投与群の方が有意に低かった.グルコース注入に対するインスリン分泌の指標値(MPII/GIR)は,pCPA投与群の方が有意に低かった.本研究は,脳内のセロトニンの合成阻害による欠乏,すなわちセロトーン神経の不活化が,グルコースに対する末梢インスリン分泌反応を抑制することを明確に例証した.
  • 本薗 幸広, 波多野 和広, 菅原 徳夫, 石橋 晃
    1998 年 69 巻 7 号 p. 659-665
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ブロイラー雛にピコリン酸クロムを給与した場合の発育,屠体成分および血清脂質への影響を調べた.1日齢の雌雛(チャンキー)を1週間市販飼料で群飼した後,各区20羽ずつ3群に分け,1から3週齢までは粗タンパク質(CP)21.5%,代謝エネルギー(ME)3,100kcal/kg,3から6週齢まではCP18.3%,ME3,200kcal/kgの基礎飼料に,ピコリン酸クロムをクロムとして0,200,400ppbになるように添加した飼料を自由摂取させた.体重は1,3,6週齢の3回測定した.飼料摂取量と飼料要求率は1から3週齢,3から6週齢の期間で測定した.試験終了時に採血して血清中の総コレステロールと中性脂肪を測定し,更に屠殺して腹腔内脂肪と皮なし胸肉と皮付きもも肉の粗脂肪,CP,水分を測定した.増体重,飼料摂取量,飼料要求率のいずれにおいてもクロム添加の影響はなかった.腹腔内脂肪率は,クロム含量が増加するに従い,低下する傾向であった.しかし,皮付き胸肉重量および皮付きもも肉重量とそれらの生体重当りの割合には影響はなかった.皮なし胸肉の粗脂肪含量はクロム添加(400ppb)で低下した.皮付きもも肉はクロム添加によって,粗脂肪含量は低下し,水分含量は増加した.CP含量はいずれの部位でも影響は見られなかった.血清中の総コレステロールと中性脂肪はクロム添加による影響はなかった.以上の結果から,増体重,飼料効率を下げないで可食部肉の粗脂肪含量を低下させる可能性が示された.
  • 本薗 幸広, 波多野 和広, 菅原 徳夫, 石橋 晃
    1998 年 69 巻 7 号 p. 666-673
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    3から8週齢のブロイラーの腹腔内脂肪の蓄積に及ぼす飼料中のカロリー:タンパク(C:P)の比の影響を調べた.3週齢の雌雛アーバーエーカー1.000羽を200羽ずつ,5区にわけた.試験飼料はトウモロコシ,マイロ,大豆粕,魚粉を主体としたマッシュ飼料を用いた.代謝エネルギー(ME)含量は3,200kcal/kgに固定し,飼料中の粗タンパク質(CP)を16.3,18.1,20.6%とし,C:P比を196,177,155の3段階に設定した群とMEの影響を調べるためにC:P比を155に固定し,MEを3,100と3,007kcal/kgの2レベルを設定した.計5種類の試験飼料のタンパク質含量とME含量は,16.3% 3,200kcal/kg, 18.1%3,200kcal/kg, 20.6%3,200kcal/kg, 20.0%3,100kcal/kg, 19.4%3,007kcal/kgとし,腹腔内脂肪の蓄積が高い3から8週齢の5週間給与した.その結果,増体重は各試験区間に差はなかった.飼料要求率は飼料中のC:P比が196の区とC:P比が155でMEが3,100kcal/kgと3,007kcal/kgの区で劣った.8週齢の腹腔内脂肪率は飼料中のC:P比が低くなると低下する傾向を示し,155の区では他の区よりも低かった.さらに155の区の中では,MEが低い区が腹腔内脂肪率が低くなる傾向がみられた.また,3から8週齢の期間におけるCP摂取量と,8週齢の腹腔内脂肪率との間には負の相関がみられた.8週齢の屠体率は飼料中のC:P比が低い区(155)が高い傾向であり,特にCP20.6%,ME3,200kcal/kgの区では有意に高かった.以上の結果から,飼料中のC:P比を低くすると,腹腔内脂肪率は低下し,屠体率は高くなる可能性が示唆された.但し,飼料中のC:P比を低く設定する場合,飼料中のME含量を低くすると腹腔内脂肪率はより低下する傾向にあるが,発育成績も劣った.したがって給与する発育ステージごとに適したC:P比を選ぶ必要のあることが認められた.
  • 林 孝, 米内 美晴, 島田 和宏, 寺田 文典
    1998 年 69 巻 7 号 p. 674-682
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    近赤外分光法は,生体の非破壊的計測手法の一つであり,新たな分析手法の開発および応用が進められている.動物の血漿の成分と近赤外スペクトルの関連性が見いだされれば,血漿成分の迅速な測定が可能となることから両者の関係について検討した.肉牛および乳牛より190点の血漿を採取し,血漿成分について分析した.血漿成分の分析項目は,総タンパク(TP),アルブミン(Alb),尿素態窒素(UN),グルコース(Glu),中性脂肪(TG),リン脂質(PL),遊離コレステロール(Fcho),総コレステロール(Tcho),無機リン(P),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na),カリウム(K),塩素(Cl)とした.次に近赤外分光光度計により,透過光の可視および近赤外スペクトル(400-2500nm)を波長2nm間隔で測定し,スペクトルの一次微分および二次微分を計算した.さらに,原スペクトルと誘導変数を独立変数とし,血漿成分のすべてを目的変数とする変数増減型時重回帰分析を行った.その結果,Tcho, FchoおよびPLについては,重回帰分析の5ステップ以降に,推定式の寄与率0.95以上が得られた.検証の結果から,TchoおよびFchoに関して一次微分および二次微分の7個以上の変数を予測式に取り込むことにより0.97以上の寄与率が得られた.PLでは,検証の後に5個以上の独立変数を予測式に取り込むことにより0.97以上の寄与率が得られた.一方,UN, AlbおよびGluは4個以上の独立変数を取り込むことにより,検証後の寄与率は0.5をわずかに超えたに過ぎなかった.以上の結果から,近赤外スペクトルによる血漿の中のTcho, FchoおよびPLの予測が可能であることが示された.
  • 岡本 光司, 原田 道夫, 阿久沢 正夫, 出口 栄三郎
    1998 年 69 巻 7 号 p. 683-689
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    生後3-35日齢の日本黒毛和種の正常子牛35頭とロタウイルス,コクシジウムおよび乳頭糞線虫の感染を原因とした下痢発現子牛73頭における,末梢血リンパ球幼若化能と急性相反応タンパク質であるハプトグロビン(HP)およびα1-酸性糖タンパク質(α1-AGP)の血清濃度について比較検討した.子牛の全血培養によるリンパ球幼若化能の測定法について検討したところ,ヘパリン加血液1:8%ウシ胎児血清加RPMI-1640培養液19にコンカナバリンA (ConA) 6.4μg/mlの添加が最適条件であった.ConAにより誘発されるリンパ球幼若化能は,下痢発現子牛が正常子牛に比較して有意に低かった(P<0.01).正常子牛では血清にHPは認められなかったが,下痢発現子牛の47.9(35/73)では血清にHPが出現し,血清HP濃度は262±196mg/l(範囲50-700mg/l)であった.しかし,血清α1-AGP濃度には正常子牛(402±69mg/l)と下痢子牛(440±102mg/l)の間には有意差は認められなかった.本実験結果から,下痢子牛は下痢発現日にすでにConA応答性のリンパ球幼若化能が低下し,その約半数の個体の血清にHPが出現していることが判明した.
  • 木之下 明弘, 前田 真理, 大久津 昌治, 後藤 和文, 中西 喜彦, 上村 俊一
    1998 年 69 巻 7 号 p. 690-696
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    有効な過剰排卵処理のための基礎的研究として,超音波診断装置により,未経産乳牛4頭の連続した2発情周期間の卵胞の発育動態を調べた.各個体で卵胞波が2回みられ,各波でおおむね1個の主席卵胞(DF)が出現した.第1波目のDFは途中で退行し,第2波目のDFが排卵した.第1波目のDFの出現,発育終了および退行開始は発情日を0日として,各1.4±0.7,8.0±2.3および9.6±2.4日であり,その最大直径は13.6±1.6mmであった.また,第2波目のDFの出現および出現から排卵までは,各12.1±1.2日および7.4±1.3日間であり,排卵前のその最大直径は14.7±0.5mmであった.黄体の退行開始時期,排卵卵胞の出現から黄体退行開始までおよび黄体退行開始から排卵までは,各14.4±0.7日,3.1±1.5および6.1±1.0日間であり,黄体退行開始時の排卵卵胞の直径は8.0±2.1mmであった.各個体のDFは,7/14波(50%)が左側卵巣に,7/14波(50%)が右側卵巣とランダムに同頻度で出現し,第1波目のDFは5/7(71%)が黄体側卵巣に,第2波目のDFは5/7(71%)が反黄体側卵巣にみられた.各個体において,発情周期日数および卵胞波の変動等がほぼ一定していたことより,事前に対象牛の卵胞動態を調べることは,フィールドに適した過剰排卵処理時期決定の一要素になり得るものと考えられた.
  • 寺田 文典, 阿部 啓之, 西田 武弘, 柴田 正貴
    1998 年 69 巻 7 号 p. 697-701
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
  • 橋本 英夫, 山崎 和幸, 荒井 靖子, 川瀬 学, 何 方, 細田 正孝, 細野 明義
    1998 年 69 巻 7 号 p. 702-707
    発行日: 1998/07/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    This study was undertaken to evaluate the inhibitory effects of lactic acid bacteria on serum cholesterol level. Lactobacillus acidophilus TMC 0330, L. acidophilus TMC 0343, L. casei TMC 0401 and L. casei TMC 0409, which were isolated from fermented milk, were administrated to SD rats (N=8 for one group; Age=4 weeks) with the cholesterol contained diet. After fed with 5.0% these bacterial cells and 0.5% cholesterol contained diet for 14 days, increase of serum cholesterol in the tested rats were suppressed 13.4, 11.0, 15.2, 20.40% respectively, compared to those of control rats fed with the cholesterol diet only. In the dose study, L. casei TMC 0409 suppressed the increase of serum cholesterol significantly when 5.0% of this bacterium were involved in the diet (P<0.05). However, no hypocholesterolemic effects was observed when bacterial cells of L. casei TMC 0409 in the diet was reduced to 0.02%. In the examination of the stabilities of L. casei TMC 0409 to bile and acidic environment, this bacterium can stand the expose to the artificial human gastric juice (pH 2, pepsin 0.005% and oxgall bile 0.3%). Furthermore, L. casei TMC 0409 can also adhere to human Caco-2 cell line in 50-100 bacterial cell bound to 100 Caco-2 cell line.
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