アマニ種子を含む飼料を乳牛に給与しα-リノレン酸(C18:3
n-3)含量の高い牛乳を生産するため,実験1では,4頭のホルスタイン種搾乳牛を用い,1期14日間の反転法の試験を実施した.乳牛にはC 18 :3
n-3を11.3g含む対照飼料(D1)あるいは主にアマニ種子からのC18:3
n-3を344.1g含む試験飼料(D2)を毎日給与した. D2によるアマニ種子給与量は約2.0kg/h/dであった.実験2では,4頭の乳牛を各2頭の2群に分け,1群にはC18:3
n-3を37.3g含む対照飼料(D3),他群には734.9g含む試験飼料(D4)を毎日56日間連続して給与した.実験3では,実験2と同一の試験設計で, 1群にはCl8:3
n-3を74.5g含む対照飼料(D5),他群には825.6g含む試験飼料(D6)を給与した. D4あるいはD6によるアマニ種子給与量はほぼ1頭当たり3.4-3.8kg/dであった.給与飼料中の脂肪,血清脂質および乳脂肪の脂肪酸組成は,各試料から脂質を抽出後メチルエステル化を行いガスクロマトグラフで分析した.D2給与時には, D1給与時と比べ血清脂質のC18:3
n-3含量は有意に増加し,反対にリノール酸(C18=2
n-6)は低下した. D4の給与により血清脂質のC18:3
n-3は4.27から20.35%まで増加したが,C18:2
n-6は44.74から27.99%まで低下した.D6給与牛も同様な傾向を示した.血清脂質中ではC18:3
n-3は主要な脂肪酸の一つであるが,乳脂肪中のそれは,アマニ種子を含まない飼料(D1, D3およびD5)の給与時にはわずか0.4%程度にすぎなかった.D2の給与により,乳脂肪中のC18:3
n-3含量はわずかであるが有意に増加した.D4あるいはD6の給与開始後1週目のC18:3
n-3含量は1.0%以上に増加し,それ以降もその含量は1%以上で推移した.D1,2,3,4,5および6給与時のC18:3
n-3の乳脂肪への移行率は13.2,0.7,7.4,1.7,5.1および1.0%.,牛乳中のC18:3
n-3含量は104.6,173.8,123.7,521.2,170.5および396.5mg/kg,そして乳脂肪のC18:2
n-6/C18:3
n-3比は,それぞれ8.8,4.5,5.6,1.7,5.0および19であった。以上の結果は,アマニ種子給与によるC18:3
n-3の乳脂肪への移行率は低いが,乳脂肪中のC18:3
n-3を1.0%以上に増加させ,また, C18:2
n-6/C18:3
n-3比を1.9程度まで低下させることのできることを示していた.
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