日本畜産学会報
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70 巻, 8 号
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  • 佐々木 修, 山本 直幸, 富樫 研治
    1999 年 70 巻 8 号 p. 97-105
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    血縁情報が不完全である場合,アニマルモデルを用いても育種価の推定に偏りが生じると考えられる.北海道農業試験場牛群における223頭527記録を用い,種雄牛の血縁情報が不完全であるときの育種価の推定値の偏りについて検討した.多形質のアニマルモデルの制限付き最尤法を用いて,乳量,乳脂量,乳脂率,乳タンパク質量,乳タンパク質率の5形質の遺伝率,遺伝相関,分娩年次•産次効果および個体の育種価を求めた.推定には分娩年次を1年毎に分けた(1)式と,分娩年次を3年毎に分けた(2)式を用いた.(1)式では,乳量,乳脂量,乳タンパク質量の育種価が1980年以降生まれの種雄牛で過小評価された.これは,血縁情報が不完全であるために,種雄牛の遺伝的変異が考慮できなかったことによると考えられた.乳脂率,乳タンパク質率でこのような偏りが見られなかったのは,種雄牛に遺伝的変異がなかったためと考えられた.(2)式で乳量,乳脂量,乳タンパク質量に(1)式のような偏りが見られなかったのは,血縁情報が不完全であっても,同一の分娩年次•産次グループ内の個体数を増やすことで,より適切に種雄牛の遺伝的能力が推定できたためと考えられた.
  • 口田 圭吾, 小西 一之, 鈴木 三義, 三好 俊三
    1999 年 70 巻 8 号 p. 106-110
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    画像解析により算出された牛ロース芯面積に占める脂肪交雑の面積割合(脂肪面積比)と格付員によるBMSナンバーとの関連性におよぼす品種の効果を検討した。材料は黒毛和種32頭(以下,JB),アバディン•アンガス種5頭(AA),JB×ホルスタイン種7頭(BH),JB×AA11頭(BA)およびJB×マリーグレー種3頭(BM)である.粒子面積階層別に脂肪交雑粒子の平均面積とその標準偏差および粒子数を算出した.さらに脂肪交雑の配置バランスを数値化した.同一のBMSナンバーにおいて,JBの脂肪面積比は,他に比較し低い値を示した(P<0.05).粒子の平均面積は,すべての粒子面積階層においてJB,AAならびにBMが,BAおよびBHに比較し小さい傾向にあった.JBの脂肪交雑粒子数は,すべての粒子面積階層において少ない傾向にあった.また,JBおよびBMの脂肪交雑は,他の品種に比較し,均一に配置していた.
  • 山中 昌哉, 工藤 季之, 板垣 佳明, 佐藤 静治, 中村 豊郎
    1999 年 70 巻 8 号 p. 111-113
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛肉の性を科学的に鑑定する技術を確立するため,PCR法を利用した市販のウシ胚性判別キットを用いて牛肉の性判別を行った.PCR反応に供するDNAは黒毛和種(去勢雄3頭,雌3頭)の肉(20~26mg)から市販のDNA抽出キットにより得られたDNA溶液(25.60~30.95μg/ml)を用いた.ウシ胚性判別キットのプロトコールに従ってPCR反応を行い,得られたPCR産物をアガロース電気泳動で解析したところ,去勢雄肉由来のDNAでは雌雄共通PCR産物と雄特異的PCR産物が得られ,雄と判定された.雌肉由来のDNAでは雌雄共通PCR産物が得られ,雌と判定された.PCR産物は反応に供したDNA量が300ng以上で検出された.以上よりPCR法を利用した市販のウシ胚性判別キットとDNA抽出キットを組み合わせることにより,少量の肉片から牛肉の雌雄鑑別が簡便にできることが示された.
  • 西田 武弘, 栗原 光規, 寺田 文典, Agung PURNOMOADI, 柴田 正貴
    1999 年 70 巻 8 号 p. 114-118
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    経産ホルスタイン種乾乳牛8頭(体重:672.1±95.1kg,産次:4.1±1.7産)を用いて,分娩予定13週前から分娩までイタリアンライグラス1番草の乾草ウエハーと配合飼料の比率が9:1(H区,n=3,1頭除外)または5:5(C区,n=4)となるように混合して給与し,乾物摂取量(DMI)を測定した.飼料は,可消化養分総量(TDN)でホルスタイン種の維持要求量にホルスタイン種の胎子1頭増給分を満たすものとした.H区では分娩4週前以降に残飼が観察され,分娩が近づくに従ってその量が大きく増加し,乾物給与量に対するDMIの割合は分娩1週前に低くなる傾向(P<0.10)がみられた.C区では,全頭が給与飼料を全量採食した.仮に,本試験のH区におけるDMIを,分娩前各週における限界乾物摂取量とすると,分娩前4週間における乾乳牛のエネルギー要求量を満たす飼料中TDN含量は63.1%と計算される.
  • 高橋 栄二, 松井 徹, 若松 繁, 岼 紀男, 塩尻 泰一, 松山 隆次, 村上 弘明, 田中 真哉, 鳥居 伸一郎, 矢野 秀雄
    1999 年 70 巻 8 号 p. 119-122
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    反芻家畜は充分量のビタミンCを体内で合成することができるとされているが,子牛や乳牛においてビタミンC欠乏が報告されている.一方,肥育牛におけるビタミンC栄養状態はほとんど検討されていない.そこで,本試験では肥育牛の屠畜時におけるビタミンC栄養状態を血清中ビタミンC濃度の指標として調査するとともに,肥育過程における血清中ビタミンC濃度変化を検討した.市場に出荷された黒毛和種牛の屠畜時における血清中ビタミンC濃度は,26.4±22μM(4.6~95.3μM)であった.このように黒毛和種牛の屠畜時における血清中ビタミンC濃度は個体間の変動が大きく,一部のウシではビタミンCが欠乏している可能性が示唆された.ついで,黒毛和種牛の肥育に伴う血清中ビタミンC濃度の変化を測定した.いずれの時期においても血清中ビタミンC濃度は個体により大きく変動することが示されたが,この結果は屠畜時の血清中ビタミンC濃度の大きな個体差と同様であった.また,血清中ビタミンC濃度は肥育前期ではすべてのウシで60μM以上の濃度を示していたが肥育が進むとともに著しく減少した.以上の結果から,肥育の進行に伴い血清中ビタミンC濃度は低下し,個体によってはビタミンC欠乏の可能性があることが示唆された.そこで,ウシに利用可能なビタミンC製剤を肥育牛に給与することが好ましいと考えられた.
  • 西田 武弘, 栗原 光規, 寺田 文典, Agung PURNOMOADI, 柴田 正貴
    1999 年 70 巻 8 号 p. 123-131
    発行日: 1999/04/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種経産妊娠牛26頭を用いて,乳牛の妊娠末期におけるエネルギー摂取量が血中代謝産物およびホルモン濃度に及ぼす影響について検討した.イタリアンライグラス2番乾草またはサイレージ,および配合飼料を可消化養分総量(TDN)でホルスタイン種母体の維持要求量(M区),または維持要求量に胎子1頭分を増給(MP区)するものとした飼養試験を,妊娠28週目から行った.妊娠30週から40週まで2週に1度頸静脈および尾動脈から,それぞれ採食前に採血し,代謝産物濃度およびホルモン濃度の変化について検討した.M区の血漿インスリン濃度は,妊娠32週以降はMP区より有意に低く,妊娠36週以降は妊娠の進行に従って低下する傾向を示した.血漿グルコース濃度は,有意な差は観察されなかった.M区の遊離脂肪酸(FFA)濃度は,試験期間中は常にMP区より高い傾向にあり,妊娠40週目に上昇した.MP区では,妊娠38週まではほとんど変化はみられなかったが,分娩直前の40週に急激に上昇した.妊娠34週目以降におけるM区の各妊娠ステージでは,TDN摂取量が低くなるに従って,インスリン濃度は低く,グルカゴン濃度は高く,インスリンとグルカゴンのモル比率は低くなり,グルカゴン作用が優勢となっていた.以上の結果から,妊娠に必要なエネルギーを増給せず,維持量のみで妊娠末期を飼養した乳牛ではインスリンおよびグルカゴン濃度が低く,FFA濃度が高いことから体脂肪の動員が確認された.
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