血縁情報が不完全である場合,アニマルモデルを用いても育種価の推定に偏りが生じると考えられる.北海道農業試験場牛群における223頭527記録を用い,種雄牛の血縁情報が不完全であるときの育種価の推定値の偏りについて検討した.多形質のアニマルモデルの制限付き最尤法を用いて,乳量,乳脂量,乳脂率,乳タンパク質量,乳タンパク質率の5形質の遺伝率,遺伝相関,分娩年次•産次効果および個体の育種価を求めた.推定には分娩年次を1年毎に分けた(1)式と,分娩年次を3年毎に分けた(2)式を用いた.(1)式では,乳量,乳脂量,乳タンパク質量の育種価が1980年以降生まれの種雄牛で過小評価された.これは,血縁情報が不完全であるために,種雄牛の遺伝的変異が考慮できなかったことによると考えられた.乳脂率,乳タンパク質率でこのような偏りが見られなかったのは,種雄牛に遺伝的変異がなかったためと考えられた.(2)式で乳量,乳脂量,乳タンパク質量に(1)式のような偏りが見られなかったのは,血縁情報が不完全であっても,同一の分娩年次•産次グループ内の個体数を増やすことで,より適切に種雄牛の遺伝的能力が推定できたためと考えられた.
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