日本畜産学会報
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71 巻, 7 号
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  • 小松 正憲, 野村 友宏, 丸野 弘幸, 川上 和夫, マティアス マナエップジョブ
    2000 年 71 巻 7 号 p. 1-11
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    我々が先に報告したRT-PCR-RFLP法によるSLAクラスII遺伝子のDNAタイピング法を用いて,フィリピン在来豚,中国産香猪由来小型豚,北京黒豚,バークシャー,梅山豚,デュロック,ランドレース,ユカタンマイクロ豚8品種55頭のSLAクラスII遺伝子3種類(SLA-DRB1,-DQBおよび-DQA)のDNAタイピングを行い,本方法が各種ブタ品種のSLAクラスII遺伝子のDNAタイピング法として有効であることを確認した.さらに,Shiaらの方法および本方法によるSLA-DRB1および-DQB両遺伝子のRFLPバンドパターンを統一した.本方法により,現在まで報告されている55種類のSLA-DRB1遺伝子は22種類のグループに,24種類のSLA-DQB遺伝子は23種類のグループに各々分類できた.SLA-DQA遺伝子は4種類のグループに分類できた.また,本方法により新たに3種類のSLADRB1遺伝子グループおよび9種類のSLA-DQB遺伝子グループを分類した.さらに,各SLAクラスII遺伝子の品種による特徴を明らかにした.
  • 萩谷 功一, 鈴木 三義, 山口 由紀, 河原 孝吉, ファン アントニオペレイラ
    2000 年 71 巻 7 号 p. 12-18
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    乳量,乳脂量および無脂固形分量に対する分娩月齢と分娩月の影響およびこれらの年代による変化について,アニマルモデルを用いた統計分析により検討した.泌乳記録は,社団法人北海道酪農検定検査協会で1975年から1995年までの21年間に集積された1,276,385頭の雌牛からの3,746,981記録である.年代による変化の検討は,個体の誕生年を1973年から1977年,1978年から1982年および1983年以降のグループに区分し,その差を比較することによって行った.分析で採用した線形モデルは,母数効果として牛群•年次,分娩月•年齢•年代,そして分娩月齢•年代の相互作用を含み,変量効果として個体の育種価,恒久的環境および誤差を含めた.分娩月別に分娩月齢効果の推定値に対して分娩月齢を多項式モデルにより適応したとき,各形質の推定値の部分的な変動が平滑化された.年代による分娩月の影響を比較すると,1983年以降に対する推定値において夏季と冬季の差異が減少した.また,月齢に対する生産量の推移は,年代の違いによる変化が認められたことから,分娩月齢の補正を行う場合,年代による変化を考慮する必要性が示唆された.
  • 広岡 博之
    2000 年 71 巻 7 号 p. 19-25
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    肉用牛の枝肉形質に関するクローン産子を用いたクローン検定とそのクローン検定と後代検定を組み合わせた組み合わせ検定における相加的遺伝標準偏差単位年当たりの遺伝的改良量(以降,遺伝的改良量と呼ぶ)を比較し,またそれらの検定システムにおける最適なクローングループサイズを調べた.クローン検定では,クローンメンバーのうち1頭が候補個体として残され,他のクローンメンバーが検定に供される.一方,組み合わせ検定では,選抜の正確度を高める目的で,候補個体が,クローン検定後に後代検定に供され,そのクローン検定と後代検定の情報より選抜指数式によって選抜される.本研究では,比較はすべて,選抜された候補個体に対する検定個体の数の比で表される検定比(K)を一定とする制限の下で行った.クローン検定においては,検定比(K)の増加に伴って,遺伝的改良量(ΔG)と最適なクローングループサイズは増加した.組み合わせ検定でも,Kが大きくなるにつれて,最適なクローングループサイズは増加し,また後代のグループサイズの増加に伴って,遺伝的改良量は低下した.非相加的遺伝子効果が存在すると仮定されたとき,遺伝的改良量は低下し,最適なクローングループサイズは小さくなった.クローン検定システムにおいては,いずれの場合にも,現行のわが国の後代検定システムよりも高い遺伝的改良量が得られた.
  • 佐々木 啓, 高橋 敏能, 萱場 猛夫
    2000 年 71 巻 7 号 p. 26-38
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    濃厚飼料と粗飼料を8:2,4:6および0:10の比率とし,これらの飼料を3頭のルーメンフィステル装着ヒツジに給与した場合のルーメン内微生物(以下PB区分)および無細胞液区分(以下R区分)における長鎖脂肪酸の濃度と組成の経時変化について調べた.PB区分とR区分の総脂肪酸(TFA)および遊離脂肪酸(FFA)濃度は,濃厚飼料の多給に伴って増加した.TFAに占めるFFAの割合は,PB区分の場合,濃厚飼料の多給に伴って増加したが,R区分においては濃厚飼料を含む飼料を与えた場合よりも,粗飼料のみを給与したときの方が高い値で推移する傾向が示された.TFA組成に関しては,PB区分では濃厚飼料の多給に伴ってステアリン酸(以下C18:0)が増加した.また,FFA組成では,C18:0とオレイン酸(以下C18:1)が濃厚飼料の多給に伴って増加した.R区分のTFAおよびFFA組成では,濃厚飼料:粗飼料比が4:6(中間配合型)の飼料を給与したときに,C18:0が高い割合で推移することが認められた.これらの結果から,微生物による不飽和脂肪酸(USFA)主体のFFAの摂取や合成は濃厚飼料の多給時に旺盛に行われるが,飼料中脂質の加水分解は粗飼料のみを給与したとき促進されると考えられた.また,微生物による水素添加は,中間配合型の飼料を給与したときに促進されると推察された.
  • 西口 靖彦, 兼松 伸枝, 宮本 進
    2000 年 71 巻 7 号 p. 39-45
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    育成牛のガストリンおよびセクレチンの血中濃度に影響を及ぼす物質を検索するため,ホルスタイン去勢育成牛5頭を用いて第4胃カニューレを通じた栄養素注入実験を行った.注入物は重炭酸ナトリウム,グルコース,揮発性脂肪酸(酢酸,プロピオン酸,n-酪酸),カゼイン,大豆タンパク液ならびに大豆油とし,それぞれの溶液600mlを30分間で注入して血漿ガストリンおよびセクレチン濃度の推移を調査した.血漿ガストリン濃度は重炭酸ナトリウムおよびタンパク質注入で有意に増加した.これらは単胃動物での研究報告と概ね一致した.タンパク質では大豆タンパク液において,カゼインと比べてタンパク質濃度が低いにもかかわらずガストリン分泌刺激能が高かった.脂肪酸や他の物質ではガストリン濃度に影響を及ぼさなかった.血漿セクレチン濃度はいずれによっても変化は認められなかった.このことは反芻家畜では栄養素によるセクレチン分泌調節が小さいものと推察された.
  • 日野 常男, 三輪 岳宏, 浅沼 成人, 白石 久仁子, 北村 博, 溝口 秀城
    2000 年 71 巻 7 号 p. 46-50
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    セルラーゼ標品の投与がウシにおける繊維の消化率を増加させるか否かを調べる目的で,ルーメン微生物のin vitro培養実験およびin vitro消化試験を行った.セルラーゼ標品として,至適pHが4-5のもの2種類と6-7のもの1種類を供試した.pH5.5-6.0の培養系では飼料のNDFは殆ど消化されなかったが,セルラーゼ標品の添加により消化率が顕著に高くなった.至適pHの低いセルラーゼ標品を用いたために,pH6.5-7.0の培養系ではその添加効果はそれほど大きくなかったが,それでも有意な効果が認められた.いずれの場合も,その効果は1種類より2種類2種類より3種類のセルラーゼ標品を添加した場合の方が大きかった.濃厚飼料を多給したウシに3種類のセルラーゼ標品を投与したところ,NDF消化率が顕著に増加した.また,ルーメン内に懸垂したナイロンバッグ中の乾草のNDFおよびセルロース粉末の消化率においても同様の効果が見られた.これらのウシのルーメン液pHは常時5.0-6.0であったので,至適pHの低いセルラーゼ標品の効果が大きかったと考えられる.粗飼料を多給したウシの場合は効果は小さかったが,3種類のセルラーゼ標品による有意なNDF消化率の増加が確認された.したがって,セルラーゼ標品の投与はウシにおける繊維の消化率を増加させ,その効果は濃厚飼料を多給している場合に大きくなると考えられる.
  • 守田 智, 岩元 久雄, 福満 裕二, 後藤 貴文, 西村 正太郎, 尾野 喜孝
    2000 年 71 巻 7 号 p. 51-59
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    見島牛の去勢牛4頭(平均月齢35.8ヵ月,平均体重517.5kg)を用い,21個の骨格筋について組織化学的観察を行った.連続凍結切片を作成して,アルカリあるいは酸処理後のmyosin ATPase活性とNADH脱水素酵素活性を検出し,筋線維をβR型,αR型およびαW型に分類した.腹鋸筋ではβR型筋線維を酸処理後のmyosin ATPase活性が強いβR. (S)型とやや弱いβR (M)型にさらに区別できた.NADH脱水素酵素活性はβR型で最も強く,フォルムアザン顆粒が筋鞘下に集積すると同時に中心部にも密に分布していた.しかし,腹鋸筋や上腕三頭筋内側頭のような骨格筋では同顆粒がやや大きいが,筋鞘下への集積が少なく,βR型筋線維全体に均一に分布していた.これに対して,αR型筋線維では中心部で粗な顆粒分布を示した.αW型筋線維ではNADH脱水素酵素活性が極めて低く,前二者との違いが判然としていた.βR型筋線維が他のいずれかの型に対して明らかに小さな直径を示したのは2個の骨格筋にすぎず,全体的に良く発達することが示された.また,見島牛では腹鋸筋の発達が良く,姿勢保持に関与するβR型筋線維が面積割合で79%を占めることが明らかになった.
  • 増田 哲也, 鈴木 和威, 森地 敏樹
    2000 年 71 巻 7 号 p. 60-68
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    牛乳のクリーミング現象に関与する乳成分を明らかするため,静置して分別したクリーム(静置クリーム)と脱脂乳,遠心して分別したクリームと脱脂乳(遠心脱脂乳),両脱脂乳から得た限外ろ過液,ならびに両クリームと両脱脂乳を加熱処理(65°C,30分)したものを組み合わせて混和した再構成乳のクリーミング状態を比較検討した.その結果,静置クリームと遠心脱脂乳のクリーミング能が高いこと,これらの乳清にはP1画分(乳清をゲルろ過したとき排除体積近傍に溶出する高分子量画分)が多いことを見出し,脂肪球の凝集に乳中のP1画分が関与することを明らかにした.このP1画分のSDS-PAGEパターンは,乳脂肪球皮膜のものと近似していた.また,P1画分には低温下で凝集し加温により消失するが,再び冷却すると凝集する可逆的な低温凝集性を示す物質が存在していた.
  • 川上 耕実, 石下 真人, 鮫島 邦彦, 新井 健一
    2000 年 71 巻 7 号 p. 69-74
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    グルタミン酸ナトリウム(Na-Glu)は魚の筋原線維(Mf)タンパク質の熱変性を抑制することが既に知られている.しかし,畜肉については調べられていない.そこで本研究では畜肉のMfについて,Ca-ATPaseを指標としてその熱変性速度を求め,パシフィック•ホワイテイング(PW)とスケトウダラのMfのそれらを熱力学的に比較すると共にNa-Gluの熱変性抑制効果をも比較検討した.結果は,ニワトリ,ウシおよびブタのMfは同程度に熱耐性が高いこと,PWおよびスケトウダラはそれらより熱耐性が著しく低いことを示した.Na-Gluによる熱変性の抑制効果は,ニワトリとブタのMfでは近似したが,ニワトリのアクトミオシンとPWのMfではNa-Gluの濃度によって異なる2段階の効果を示した.2段階の変性抑制効果は,熱耐性の弱いMfではNa-Gluの添加がタンパク質の構造変化を導いた結渠であると推察した.
  • 小迫 孝実, 井村 毅
    2000 年 71 巻 7 号 p. 75-81
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    黒毛和種子牛18頭を供試して,出生直後の誘導訓練および3ヵ月齢までの哺乳方法が,育成期におけるロープ誘導能率の改善に及ぼす影響を検討した.初期訓練は,生後7日間1日1回20分間,子牛のヒトへの追随反応を利用した誘導によって行った.哺乳方法は,牛舎内での人工哺乳あるいは放牧地での自然哺乳とし,離乳後は1群として飼育管理した.4ヵ月齢におけるヒト接近時の逃走距離は,初期訓練した人工哺乳群が最も短く,それ以外の3群は同程度であった.7ヵ月齢において個体ごとに捕獲後10mの距離をロープ誘導する作業テストを合計6回実施した.捕獲に要する時間は,当初人工哺乳群が自然哺乳群よりも短かったが,自然哺乳群の慣れとともにその差は次第に消失した.テストを重ねるにっれて,人工哺乳群の誘導に要する時間は短くなったが,自然哺乳群では逆に長くなり,テスト4日目以降にはその差は統計的に有意になった.初期訓練は,人工哺乳群に対してはヒトへの親和性を高め,ロープ誘導時間を短縮させる効果があったが,自然哺乳群に対してはほとんど効果がなかった.
  • 賀来 康一
    2000 年 71 巻 7 号 p. 82-90
    発行日: 2000/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    農産物6商品の国内先物市場での年間受渡し高と年間出来高に占める比率は62,612枚,0.18%(1990年)から,30,174枚,0.07%(1997年)へ減少した.1999年に関門商品取引所で始まるブロイラー現物先物取引の年間受渡し高は年間出来高の1%以下と推定する.月間処理羽数30万羽の処理業者の場合,もも肉とむね肉の販売金額は変動係数7.57%/年(1990-1997年)で毎日変動し,年間販売金額は16.8億円(1990年)から14.0億円(1997年)へ減少し,販売価格変動リスクを負う.国産ブロイラーもも肉(標準品)に関し,先物市場で渡し方•受け方と想定される月間処理羽数30万羽以上のブロイラー会社51社と月間取扱量1,000トン以上の荷受会社32社のシェア(出荷量÷国内流通量)は79.8%と83.9%(1996年)で,出荷量の9.9%以下,9.4%以下が先物市場を経由する.日経相場を形成する東京の荷受会社11社のシェアは50.35%に過ぎなかった(1996年).ブロイラー先物市場は公正な指標価格を形成すると考えられる.
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