日本畜産学会報
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72 巻, 7 号
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  • 笹崎 晋史, 李 恩俊, 万年 英之, 国枝 哲夫, 櫻井 孝志, 山内 健治, 呂 政秀, 辻 荘一
    2001 年 72 巻 7 号 p. 1-5
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    アジアおよびヨーロッパの肉用牛5品種(黒毛和種,褐毛和種,韓牛,ヘレフォード,リムジン)に対してAmplified Fragment Length Polymorphism (AFLP)法を適応し,その遺伝的類縁関係を調べるとともにウシに対するAFLP法の有用性について検討した.AFLP法には4種類のプライマーセットを用い,合計95本の多型バンドを得た.これらの多型バンドから2個体間の類似性を示すbandsharing値を求め,品種間の遺伝的類似性の指標とした.その値は品種間では0.659から0.776の範囲であり,品種内では0.753から0.854の値を示した.この値からUnweighted pair group method average(UPGMA)法を用いて系統樹を作成したところ,アジア牛とヨーロッパ牛の大きく2つのクラスターに分かれたが,褐毛和種は遺伝的にその他のアジア牛とヨーロッパ牛の中間に位置しており,ヨーロッパ牛の遺伝的影響を大きく受けていること示唆していた.本研究の結果よりAFLP法はウシにおいても品種間の遺伝的類縁関係や集団内の遺伝的構成を知るのに簡便で有効な手段であることが示唆された.
  • 口田 圭吾, 藤田 暁子, 鈴木 三義, 三好 俊三
    2001 年 72 巻 7 号 p. 6-12
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    同一のロース芯断面について,異なる撮影装置を利用した際の,算出される脂肪面積比の差異を検討した.22頭の黒毛和種去勢牛のロース芯断面を3種類のデジタルビデオカメラで,ほぼ同時に撮影し,得られた画像からの脂肪面積比を比較した.また,平成11年4月から平成12年3月までに撮影された2,216頭の黒毛和種肥育牛のロース芯断面について,脂肪面積比と脂肪交雑ナンバー(Beefmarbling Standard, BMS)との関連性に対する季節の影響を調査した.3種類のビデオカメラのうち1種類からの脂肪面積比は,他のそれと比較し有意に高い値が算出された.しかしながら,回帰式を用いることで,脂肪面積比に対する撮影装置の影響を除去することが可能であった.脂肪面積比のBMSに対する季節1(4~6月),2(7~9月),3(10~12月)および4(2~3月)の偏回帰係数は,それぞれ0.245,0.244,0.243および0.238とほぼ同様の値が推定された.同様に,季節1,2,3および4の切片は,それぞれ-2.59,-2.27,-2.09および-2.23であった.
  • 志賀 一穂, 藤田 達男, 大竹 孝一, 木本 勝則
    2001 年 72 巻 7 号 p. 13-19
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    合成卵管液培養液(Synthetic Oviduct Fluid; SOF)を用いて,体紐胞クローン胚の発生に及ぼす培養液へのタンパク質添加および培養器内の酸素濃度の影響にっいて調べた.体細胞クローン胚の胚盤胞期胚への発生率は,牛血清アルブミン(BSA)を添加したSOF (SOF+)中で5% O2,あるいは20% O2の酸素濃度で培養した場合,それぞれ38.6% (44/114),および34.3% (37/108)と高い値を示した.しかし,BSA無添加でPVPを添加したSOF (SOF-)での発生率は,5% O2では21.4% (27/126)とSOF+での培養に比べ有意に低く,20% O2濃度では全く胚盤胞期胚へと発生しなかった.培養6日目での胚盤胞期胚への発生率は,低酸素区(SOF+およびSOF-)に比べ高酸素区(SOF+)が高かった.胚盤胞に発育した体細胞クローン胚を延べ35頭の交雑種未経産牛に移植したところ14頭が受胎したが7頭が早期流産した.以上のことから,ウシの体細胞クローン胚は,血清類などのタンパク質を加えないSOFを用い,5%の低酸素気相下で培養すると受胎可能な胚盤胞期胚へと発生することが明らかとなった.血清類を添加したSOFでは酸素気相の高低にかかわらず胚盤胞期胚へと発生することから,血清類の添加には高酸素気相下で生じる活性酸素などフリーラジカルから胚を保護する効果があることが示唆された.
  • 木之下 明弘, 上村 俊一, 今村 英晃, 大久津 昌治, 吉田 光敏, 中西 喜彦
    2001 年 72 巻 7 号 p. 20-27
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    繁殖雌牛や供胚牛の飼養管理の指標あるいは有効な過剰排卵処理のための基礎指標として,ウシにおける栄養充足率の違いが卵胞の発育動態に及ぼす影響を検討した.ホルスタイン種乾乳牛(非妊娠牛)4頭を発情周期毎に試験区(TDN充足率90%)および対照区(TDN充足率100)で反復処理し,超音波診断装置を用いて,卵胞の発育動態を毎日観察した.観察期間中全ての個体で,試験区および対照区とも2回の卵胞波が出現し,各発情周期中の第1卵胞波で出現した優勢卵胞(DF)は途中で退行し,第2波で出現したDFが排卵に至った.第1卵胞波のDFにおいて,その出現日,発育終了日,最大直径および退行開始日は試験区および対照区において,それぞれ差はみられなかった.また,排卵卵胞波のDFにおいても,その出現日,出現から排卵までの期間および排卵時の直径は両区で差はみられなかった.しかし,直径2mm以上4mm未満の小型卵胞の1日当たりの出現数は試験区で有意に少なかった.以上の結果より,乳牛においてTDN充足率90%の状態では,卵胞波の出現や排卵はみられるが,小型卵胞の出現数は少なくなることが示唆された.
  • 笹木 教隆, 河合 隆一郎, 小林 修一, 前田 淳一
    2001 年 72 巻 7 号 p. 28-33
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ウシ胚移植の受胎率向上を目的として,移植前に受胚牛の子宮頸管粘液を採取し性状を検査することにより,受胚牛の選定が可能かどうか検討した.発情後2日~移植日前日(5~7日)の受胚牛より子宮頸管粘液の採取および採血を行い,子宮頸管粘液性状および胚移植後の受胎成績とプロジェステロン濃度の関係を調査した.子宮頸管粘液中の核崩壊した上皮細胞の割合別(-:0%,±:20%未満,+:20~80%未満,++:80%以上)に,受胚牛を分類したところ,-群,±群の受胎率およびプロジェステロン濃度は,+群および++群に比べて有意に高かった(P<0.05).子宮頸管粘液のpHが,6.9以下および7.7以上の受胚牛はすべて不受胎であった.pHとプロジェステロン濃度および受胎成績の間には,一定の傾向は見られなかった.以上の結果から,子宮頸管粘液性状の検査により,受胚牛の血中プロジェステロン濃度と子宮の状態を推定することが可能となり,受胎性の高い受胚牛を選定することで,移植胚の受胎率を高められることが明らかとなった.
  • 佐伯 真魚, 北川 順矩, 松本 光洋, 西山 厚志, 三好 久美子, 望月 めぐみ, 高須 茜美, 阿部 亮
    2001 年 72 巻 7 号 p. 34-40
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    都市厨芥飼料の化学組成と栄養価を豚あるいは牛での利用を想定して評価した.供試した試料は,1) 学校給食の調理残渣,2) 学校給食の食残渣(食べ残し),3) 学校給食の調理残渣と食残渣の混合物,4) コンビニエンスストアーセントラルキッチンの乾燥調理残渣,5) 油温脱水飼料,の5種類である.乾物中の粗タンパク質含量を各製品の平均値でみるといずれも16%以上の値であったが,学校給食残渣では日間の成分変動が非常に大きかった.製品の豚用飼料としての可消化養分総量(TDN)含量を酵素分析法およびin vitro法によって推定すると乾物中77~87%の範囲にあった.また,めん羊での消化試験によって求められた油温脱水処理飼料のTDN含量は乾物中89~93%の値であった.
  • 江澤 真, 松本 加奈子, 小谷 泉美, 神田 亜希子, 神山 卓文, 松山 惇, 清澤 功
    2001 年 72 巻 7 号 p. 41-48
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    モザレラチーズ(MC)のパラカゼインでは,結合性カルシウム/無機リンモル比(Ca/Pi比)が1.0以下になることが示されている.この原因を解明するため,MC製造の諸条件のもとで牛乳にスターター(S)とレンネット(R)を添加後,生じた凝固乳を遠心分離し,5M尿素に溶解した沈降物(パラカゼイン)のCa/Pi比を求めた.その結果,(S+R)添加量およびpHの異なる凝固乳から得たパラカゼインでは,Ca/Pi比は低下せず,カゼインミセルのCa/Pi比よりも高くなった.また,牛乳,乳酸でpH 5.5にした牛乳および(S+FR)添加によりpH 5.5にした凝固乳を5°C,3時間保持した場合,これらのカゼインまたはパラカゼインのCa/Pi比は1.9以上になった.凝固乳をPH 6.0でホエー除去して得たカードに2%NaClを添加し,65-80°C,2分間加熱したところ,調製直後のカードではパラカゼインの結合性Ca/Pi比は2.0以上になったが,5°C,30日間保蔵したカードでは加熱温度が低いほど低下し,65°Cで1.1になった.これらの点から,カードに残存する乳清量がCa/Pi比の変化に関与していることが推測された.
  • 江口 祐輔, 田中 智夫, 吉本 正
    2001 年 72 巻 7 号 p. 49-54
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    イノシシの飼育管理方法を検討するための基礎的知見を得ることを目的として,分娩成績および分娩行動を調査した.分娩成績の調査は,1993年から1997年までの5年間のデータを用いて考察した.5年間における各年の平均産子数は3.3頭から5.6頭の間であった.5年間の平均産子数は4.4頭であり,雌雄の性比は1:1となった.また,各腹ごとの雌雄の性比を見ても,どちらかの性に偏ることはほとんどなかった.分娩行動の調査は,自然交配させた8頭のイノシシのうち,分娩の撮影に成功した3頭を供試した.各供試イノシシについて,分娩時および分娩の前後1時間の行動を記録した.3頭の産子数はそれぞれ4頭,4頭,5頭であった.分娩開始から末子娩出までの分娩時間は54分,41分,320分と個体によってかなりの開きがあった.1頭の雌は夕刻の分娩後,翌朝までにすべての子を殺した.子殺しを行った個体は分娩時および分娩前後の1時間において遊歩と探査が多く,分娩時の巣作り行動が消失するなど,子殺しを行わなかった個体と違いが認められた.今後,例数を増やすことによって子殺しを行う個体の行動的特徴が明らかにできるかもしれない.また,本調査において,イノシシの分娩はブタに比べて非常に軽いものであること,イノシシが分娩後に最初の授乳を行うまでに要した時間はブタよりも長いこと,分娩直後に授乳以外の世話行動もく行うこと,娩出直後に子イノシシに対してリッキングを行っている可能性があることなどが示唆された.今後はブタの使用管理方法をイノシシ飼育に流用するだけでなく,イノシシ独自の飼養管理方法の確立が必要である.
  • 根本 鉄, 壁谷 昌彦, 本田 善文, 斉藤 敏之, 粕谷 悦子, 干川 愛, 陳 文西, 石田 剛, 小林 登史夫
    2001 年 72 巻 7 号 p. 55-61
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    胎子心電図誘導と多チャンネル検出法による牛胎子の心電図モエター装置を考案•試作した.牛胎子の心電図誘導電極は,母体の右側腹部の第4腰椎から垂直に下降した部位と膝関節から水平線上との交点を中心とした約25cm四方の正方形内に約12cm間隔で体表面電極9個を装着した.心電図誘導は双極誘導で各誘導部位が交差する方法を用いて行った.牛胎子の心電図増幅器の特性は,増幅度が0~200dB,周波数帯域幅が10~30Hzを示した.周波数利得特性にもとづいて3チャンネルの胎子心電図と1チャンネルの母体心電図を構成する心電図モニター装置を試作した.本心電図モニター装置を用いてホルスタイン種12頭の受胎後137日~224日齢の胎子の心電図を測定記録した.実験結果より,受胎後157日~224日齢の胎子心電図をモニター装置のすべてのチャンネルまたはチャンネル1~3内のいずれかのチャンネルで検出できた.胎子心電図の連続測定では胎勤や母体の立位•横臥の体動変化に対しても胎子心電図が安定して記録できた.以上のことから,本心電図モニター装置と心電図誘導法は有用性を認めた.
  • 顔 培實, 伊藤 敏男
    2001 年 72 巻 7 号 p. 62-68
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    ミニブタの体温調節と環境作用の特徴について,環境温度と飼料摂取条件による横臥•伏臥姿勢の変化から検討した.体重17~19kgのミニブタ雄3頭を,環境温度(Te)25, 29, 33°Cにそれぞれ4日間感作し,2日間可消化養分総量(TDN)60g/kg0.75日摂食させた後,2日間絶食を行い,その間の横臥,伏臥,起立姿勢と体表温度を72時間測定した.Te29と33°Cでは,横臥時間は明期の66%,暗期の92%を占め,Te25°Cにおいては,伏臥姿勢が増え,とくに,絶食24時間後,伏臥時間は,明期の70%,暗期の60%を占めた.各処理ともに,暗期では横臥を多く,明期では伏臥を多く行う特徴が認められた.平均体表温度は,Teにともない上昇し,絶食により0.9°C低下し,また,伏臥姿勢に比べ横臥姿勢では0.3°C高かった。これらのことから,ブタの休息姿勢の違いは,温熱環境の作用に対応しており,横臥•伏臥姿勢の増減は熱放散の調節に大きく関与する反応の一つとして環境管理に利用できる指標になりうるものと考えられた.
  • 顔 培實, 伊藤 敏男
    2001 年 72 巻 7 号 p. 69-73
    発行日: 2001/02/25
    公開日: 2008/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,子豚を用いて行動量(ACT)と熱産生量(HP)との関係を調べ,ブタの行動性体温調節の特徴について検討した,実験では,体重10-17kgの雌子豚4頭を用いて,環境温度(Te) 18~38°Cの下で,HPとACTを測定した.ACTには, Te 25°Cに比べ,Te 18°Cでの有意な増加とTe 32°Cでの有意な減少が認められた. Te 18, 25, 32および38°Cでは,ACT250(counts/min)以上の頻度は,それぞれ74, 44, 26および16%であり,ACT25(counts/min)以下の頻度は,それぞれ0.4, 7.3, 18.7および9.0%であった.HPは,18.4~20.6kJ/kg0.75hと安定していた.各TeにおけるACTとHPの関係の回帰分析結果から,高温域においてブタがACTを低くし安静状態をとることによって,HPの上昇を抑える効果があるものと考えられた.
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