本分析では,牛群,審査年月日,産次および審査委員サブクラス内の表型標準偏差の推定値によって体型記録を補正し,それら体型形質の育種価に対するヘテロ化表型分散の影響を調査した.分析には,1973年から1996年の間に生まれた雌牛において,1984年4月から1998年3月までに日本ホルスタイン登録協会で審査を実施した23の体型形質,584,377記録を使用した.サブクラス内の表型標準偏差の推定値は,WeigelとGianola22)の簡略化ベイズ法(Simple Bayesian method)を使用して推定した.各体型形質の育種価を推定するための混合モデルには,母数効果として,牛群•審査年月日•産次,審査月齢および泌乳ステージ,さらに産次と泌乳ステージおよび泌乳ステージと審査委員の各交互作用,変量効果として個体の相加的遺伝効果(育種価),恒久的環境効果および残差を含み,これを複数記録アニマルモデル(RM)とした.RMから推定した育種価は,初産次の審査記録のみを使用した場合の単一記録アニマルモデル(SM)から推定された育種価と比較した.遺伝評価は,実測記録と補正記録を用いて行った.分散分析の結果,体型形質の中には,補正することによって,審査委員と産次の影響が減少する傾向が認められるものもあった.RMを使用し実測と補正記録から推定された育種価間の相関は,すべての個体を対象にした場合,種雄牛および雌牛ともに0.98から0.99の範囲を示したが,上位牛に制限すると種雄牛において0.76から0.97の範囲,雌牛では0.51から0.85の範囲で低下する傾向が認められた.RMとSMにおける育種価間の相関係数は,種雄牛の場合,補正によって,高さ,尻の角度および蹄の角度以外の形質において,上昇する傾向が認められた.雌牛の育種価間の相関係数は,補正によって,高さと乳頭の長さ以外の形質で上昇する傾向が認められた.それゆえ,本分析では,審査委員,審査年次および産次において,ヘテロ化牛群分散が存在する可能性を示唆する結果が得られた.
抄録全体を表示