日本畜産学会報
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73 巻, 3 号
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一般論文
  • 井上 慶一, 平原 さつき, 撫 年浩, 藤田 和久, 山内 健治
    2002 年 73 巻 3 号 p. 381-387
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    交雑種肥育牛の胸最長筋の粗脂肪含量および脂肪酸組成などに及ぼす種雄牛の影響を明らかにするため, 系統の異なる5頭の黒毛和種種雄牛とホルスタイン種雌牛から得られた交雑種産子100頭を, 可能な限り条件を揃えて肥育した後, 胸最長筋部分のBMS, 水分含量, 粗脂肪含量, 粗タンパク質含量および脂肪酸組成を調査した. 統計分析にはLSMLMWを用いて最小二乗分散分析を行った. BMS, 水分, 粗脂肪および粗タンパク質含量では, 種雄牛による有意な差は認められなかった. 脂肪酸組成ではミリストレイン酸, パルミチン酸, オレイン酸および全不飽和脂肪酸を全飽和脂肪酸で除した値で種雄牛による有意な差が認められ, 遺伝的な差異が示唆された. また, 脂肪酸組成に対するBMSおよび粗脂肪含量の影響は認められなかったことから, 粗脂肪含量にかかわらず, 不飽和脂肪酸の割合を向上させる可能性が示唆された.
  • 中村 優子, 上村 俊一, 安藤 貴朗, 浜名 克己
    2002 年 73 巻 3 号 p. 389-396
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    南九州でのウマの繁殖活動を明らかにするため, 食肉センターで解体された雌の重種馬280頭について, 周年にわたり血中性ステロイド濃度の変動と卵巣の形態的変化を調査するとともに, 得られた卵胞2,202個について組織学的検査を行い, 季節的変動を検討した. 平均血中プロジェステロン (P4) 濃度は2月3.0ng/ml から7月8.3ng/ml, エストラジオール-17β (E2) 濃度は11月3.3pg/ml から6月13.1pg/ml の範囲で変動した. 11月から2月の非繁殖期において直径30mm以上の黄体が27頭にみられた. 直径30mm以上の成熟卵胞は通年で存在し, 形態的に健常な卵胞の割合は5月70%が1月32%に比べ有意に高かった. 11月から2月の非繁殖期における卵胞は3月から10月の繁殖期と比較して顆粒層が薄く, 卵胞膜細胞の矮小化と核の濃縮が観察された. この結果, 南九州で肥育された雌ウマでは, 非繁殖期においても機能的黄体が存在するなど一定程度の卵巣活動はあるが, 直径30mm以上の健常卵胞では顆粒層が薄く, 卵胞膜細胞の黄体化が認められないなど, 繁殖期のそれと比べ差異が観察された.
  • 松山 裕城, 堀口 健一, 高橋 敏能, 萱場 猛夫, 石田 元彦, 安藤 貞, 西田 武弘
    2002 年 73 巻 3 号 p. 397-405
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    圧ペン大麦主体の濃厚飼料を多量に給与した去勢牛へ第一胃刺激用具 (RF) を投与したときの飼料の消化率, 窒素出納, エネルギー出納および第一胃内性状に及ぼす影響について検討した. 供試動物はルーメンフィステル装着ホルスタイン種去勢雄牛4頭 (平均体重612kg), 給与飼料はチモシー乾草, 圧ペン大麦および大豆粕を用いた. 給与飼料中の粗飼料と濃厚飼料の割合は乾物換算で7 : 93とし, 給与量は1日増体量1.2kgを満たす代謝エネルギー量とした. RFは, 1頭当たり3個ずつルーメンフィステルを通して投与した. その結果は以下の通りであった. 1) RFの投与による消化率および栄養価への影響は認められなかった. 2) 尿中窒素排泄量は, RFを投与すると減少し (P<0.05), 体内窒素保持量が増加した (P<0.05). 3) RFを投与すると, メタンとしてのエネルギー損失量は減少した (P<0.05) が, 体内エネルギー保持量への影響は認められなかった. 4) RFの投与によって第一胃内容液pHは変わらなかったが, アンモニア態窒素濃度および揮発性脂肪酸濃度は低く推移した. また酢酸のモル割合は低く, プロピオン酸および酪酸のモル割合は高く推移した. 5) 液相および固相の第一胃内通過速度定数はRFを投与すると増加した (P<0.05). 以上のことから, 圧ペン大麦主体の濃厚飼料を多量に給与した去勢牛へRFを投与すると, 飼料の消化率は変わらないものの, 窒素の体内蓄積量が増加し, メタンとしてのエネルギー量が減少することで, 飼料の利用効率が改善された.
  • 新出 昭吾
    2002 年 73 巻 3 号 p. 407-416
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    泌乳初期の高泌乳牛における給与飼料の第一胃内粗タンパク質 (CP) 有効分解度が乳生産に及ぼす影響を検討するために, CPの第一胃内有効分解度が, 高分解度 (Hdg区), 中分解度 (Mdg区) および低分解度 (Ldg区) の3つの供試配合飼料を調製し, 給与飼料中の粗飼料割合が35%前後で, 高エネルギーの飼料給与の条件で, 次の試験を実施した. 試験1 : 供試配合飼料の第一胃内分解速度については, フィステルカニューレ装着メンヨウ3頭を用いたナイロンバッグ法で調査した。通過速度については, 泌乳前期の乳牛4頭を用い, 希土類元素 (La, ランタン) を標識した乾熱処理圧ぺん大豆による測定値と, AFRC飼養標準に示されるモデル式で推定した値と比較した. 通過速度を求めたところ, 乾熱処理圧ぺん大豆では2.72%/h, AFRCのモデル式では10.5%/hとなった. 前者の通過速度は非常に遅く, 後者は妥当な値と考えられ, CP有効分解度は, Hdg区が72.4%, Mdg区は60.9%, Ldg区は53.5%と推定された. 試験2 : CPの第一胃内有効分解度が異なる, Hdg区, Mdg区およびLdg区の3区の飼料給与が, 分娩後16週間の乳生産に及ぼす影響について乳牛9頭を用い一元配置試験法で検討した. 試験期間を通して, 飼料全体のCP有効分解度は, Hdg区は74.6±0.1%, Mdg区は65.7±0.5%, Ldg区は60.0±0.4%で推移した. 乾物摂取量, 可消化養分総量 (TDN) 摂取量は, CPの有効分解度の違いに影響されなかった. 泌乳ピークへの到達は, 分解度の低いLdg区が他の区に比較して早まる傾向にあったが, 乳量には差が認められなかった. 泌乳ピーク前 (分娩後3~6週) の乳タンパク質率は, Hdg区では低下が大きかったが, Ldg区では低下が抑制された (P<0.05). 一方, 泌乳ピーク後には, 分解度の大きいHdg区であっても分解度の違いによる乳タンパク質含量への影響が小さくなった. 分解度の異なる飼料の給与は, 泌乳ピーク前と後で乳タンパク質生産への影響が異なることが示唆された.
  • 扇 勉, 峰崎 康裕, 藤田 眞美子, 花田 正明, 高橋 雅信, 斉藤 繁
    2002 年 73 巻 3 号 p. 417-422
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    泌乳初期牛に牧草サイレージ主体の混合飼料を給与し, ルーメン保護メチオニン (RPM) およびルーメン保護リジン (RPL) の添加試験を2回実施し, 乳生産および血液成分に及ぼす影響を検討した. 試験1では2産以上の乳牛16頭を用い, RPM (DL-メチオニン量で30g) を分娩後16週間添加 (RPM区) し, 試験2では同14頭を用い, RPM (同15g) およびRPL (L-リジン量で20g) を分娩後12週間添加 (RPML区) し, 各々対照区を設けた. 乾物摂取量および実乳量は, 試験1, 2とも処理間に差がなかった. しかし, 乳蛋白質率は試験1の分娩後3~8週では, 対照区が2.87%, RPM区が3.07%, 試験2では分娩後3~12週で対照区が2.80%, RPML区が3.00%と, いずれも添加区が0.20ポイント高い傾向にあった (各々P<0.02, P<0.21). 乳蛋白質量は試験1, 2とも添加区が多い傾向にあった. 血清遊離メチオニン濃度は, 試験1, 2とも添加区が対照区に比べ高かった (P<0.01). しかし, 血清遊離リジン濃度は, リジンを添加した試験2でも処理間に差がなく, リジン添加の効果は少なかったと推察された. 以上の結果より, 牧草サイレージ主体飼養では, RPM添加により, 乳合成において制限アミノ酸とされるメチオニンが補給され, 乳蛋白質率が高まるものと考えられた.
  • 佐伯 真魚, 伊賀 亜沙子, 鈴木 由貴子, 砂川 直子, 阿部 亮
    2002 年 73 巻 3 号 p. 423-429
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    都市厨芥乾燥飼料のタンパク質について, その特性をin vitro法による人工消化試験と, 各種タンパク質画分の測定によって評価した. 方法 : 実験1. 5種類の材料 (豆腐粕, パン, ライ麦糠, 野菜屑, 豆腐製品) を, 加熱温度 (60, 80, 100, 130℃) と加熱時間 (3, 8時間) を変えて調製し, in vitro窒素 (N) 消失率を測定した. 実験2. 製造方法の異なる各種乾燥飼料 (油温減圧脱水乾燥, 高温発酵乾燥, 乾熱乾燥) の19検体について, in vitro N消失率と, 溶解性タンパク質, 中性デタージェント不溶性タンパク質, 結合性タンパク質の含量を測定し, CNCPSに基づく窒素画分 (A+B1, B2, B3, C) 含量を求めた. 結果 : 実験1. 飼料の加熱温度と加熱時間の影響によってN消失率は異なった. 実験2. N消失率と負の相関 (P<0.01) を示したB3+C画分含量がタンパク質消化率の指標として利用可能なことが示唆された.
  • 笠原 靖, 金澤 卓弥, 小杉山 基昭
    2002 年 73 巻 3 号 p. 431-439
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    成熟動物における脂肪組織量の増大は, 個々の脂肪細胞が肥大することのほかに, 未分化な細胞の増殖および分化による脂肪細胞数の増加が原因と考えられている. その脂肪細胞数の調節にはホルモンによる全身的な調節機序ばかりでなく, 組織内のパラクリン因子などの局所的な調節機序によることが予測されている. この局所的調節機序を解明するためには, 組織内のパラクリン因子を介した細胞間相互作用を再現することのできる培養系の開発が必要である. そこで, 成雄ラットの白色脂肪組織から分離した未分化細胞と成熟脂肪細胞とを共培養する新しい共培養法を考案し, 未分化細胞の増殖と脂肪細胞への分化に及ぼす成熟脂肪細胞の影響を調べた. 共培養は, 未分化細胞が接着した培養ウェルに, コラーゲンゲルを被覆して多孔膜上に固着させた成熟脂肪細胞を含むカルチャー・インサートを装着することにより行った. 対照は, 細胞を含まないコラーゲンゲルのみを固着させたカルチャー・インサートを装着した (単独培養). 培養液は10%ウシ胎児血清添加DMEMを用いた. 12日間培養した後, 単独培養と比較して共培養では, 未分化細胞の細胞DNA量がおよそ1.3倍に増加した. 単独培養では脂肪滴を持つ細胞の頻度が1.3%であったのに対し, 共培養では20.6%まで増加した. トリグリセリド含量およびグリセロール-3-リン酸脱水素酵素活性も単独培養と比較して共培養ではそれぞれおよそ1.9および1.8倍に増加した. 以上のことから, 成熟脂肪細胞はパラクリン様作用により未分化細胞の細胞増殖と脂肪細胞への分化を促進することが確認され, 本共培養法が組織内のパラクリン因子を介した細胞間相互作用を調べる上で有用であることが示唆された.
  • 布仁特古斯 , 宮本 拓, 中村 昇二, 野坂 能寛, 青石 晃宏
    2002 年 73 巻 3 号 p. 441-448
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区の中部に位置するシリンゴル盟アバハ・ノール旗 (シリンホト市の所在旗) の草原地域に住む遊牧民の家庭で製造されている馬乳酒の10試料から乳酸球菌 (153株) と乳酸桿菌 (105株) を合わせて258株分離した. 各試料には, 乳酸球菌の優勢な試料と乳酸桿菌の優勢な試料が見られた. これら乳酸菌株の分類学的性状を調べたところ, 乳酸球菌ではEnterococcus faecium (23.3%) とLeuconostoc mesenteroides subsp. dextranicum (20.9%) の出現率が高く, Streptococcus thermophilus (6.9%), Lactococcus lactis subsp. lactis (3.9%) およびPediococcus dextrinicus (0.8%) も分離された. 一方, 乳酸桿菌ではLactobacillus plantarum (21.3%) がおもに分離され, Lactobacillus casei (9.3%) やLactobacillus paracasei (4.7%) の中温性乳酸桿菌も多く分離された. また, ホモ型乳酸発酵を示すLactobacillus helveticus (1.6%) およびLactobacillus kefiranofaciens (1.2%) の乳酸菌種も含まれていた. その他に, 今回実施した性状試験では菌種の同定ができなかったEnterococcus sp. (3.4%) とLactobacillus sp. (2.7%) が分離された.
  • 安部 直重, 高崎 宏寿, 苗川 博史, 佐藤 衆介, 菅原 和夫
    2002 年 73 巻 3 号 p. 449-456
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究は150日齢でのマネキンに対する模擬闘争行動を発生した個体の特徴を行動学的および生理学的に明らかにすることを目的とした. 交雑種雄子牛10頭を供試し, ヒトの代替として設置したマネキンに対して模擬闘争を発生した6頭 (発生群) と発生がなかった4頭 (非発生群) を通常飼育下, 新奇環境下およびストレス刺激下での行動的・生理的反応に関して比較した. 通常飼育管理下では, 維持行動および常同行動に関して差はなかったが, 発生群の社会行動は多く, とくに闘争行動の6時間あたりの発生回数では発生群の3.3回に対し非発生群は1.6回, 模擬闘争行動では発生群の7.8回に対し非発生群では4.3回と有意に多かった (P<0.05). 新奇環境としてマネキンを設置したオープンフィールド (OF) 内における行動では, 発生群はOF全体を平均的に通過するのに対し非発生群はマネキン設置付近を有意に避けた (P<0.001). また, OFを囲う壁への探査行動は非発生群で200回に対し, 発生群では101回と非発生群が有意に多発し (P<0.05), マネキンに対する探査時間は発生群で109秒に対し非発生群では8秒と発生群が有意に長かった (P<0.05). 驚愕刺激前後の心拍数の変動率は, 発生群では118%に対し非発生群は115%と発生群が高い傾向にあった (P=0.10). 拘束前後の血清コルチゾール値の変動率では発生群の28%に対し非発生群では192%と非発生群が有意に大きかった (P<0.05). 血清テストステロン値は発生群の8.33ng/ml に対し非発生群は4.11ng/ml と発生群が有意に高かった (P<0.05). これらの結果から模擬闘争行動発生個体および非発生個体は, 積極型行動タイプと消極型行動タイプというストレス研究での類型化と一致する可能性が示唆された.
  • 賀来 康一, 島田 和宏, 荻野 暁史, 山内 盛弘, 深瀬 誠
    2002 年 73 巻 3 号 p. 457-465
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    1970年以降, 米国の豚肉消費量は安定的に推移した. 1990年以降, 米国の豚肉総供給量の97.2%から99.0%は北米自由貿易協定圏内で生産され, 豚肉総供給量の1.5%から6.6%が輸出された. 米国の肥育豚生産者は国内向けを主とし, 豚肉輸出は米国内の余剰部位に対する需給の調整弁と考える. 豚肉価格の年間の変動係数 (%/年) の平均値 (1995~2000年) は, 生産者価格12.34%, 卸売り価格8.99%, 小売り価格2.44%で, 米国の豚肉流通段階で生産者が常に最大の価格変動リスクを負った. 米国の肥育豚生産者から大手食肉処理業者 (パッカー) への販売の主流は, 現物市場経由から販売契約へ移行した. 現物市場経由の肥育豚の出荷は1980年から2000年にかけて95%から26%へ減少し, 肥育豚生産者とパッカー間の販売契約が急増し, 生産者の価格変動リスクは減少した. シカゴマーカンタイル取引所のLive Hog (生豚) は廃止されLean Hog (豚赤身肉) が上場された. Lean Hogの出来高はLive Hogを下回る可能性がある.
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