日本畜産学会報
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74 巻, 1 号
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一般論文
  • 口田 圭吾, 小笠原 匡教, 日高 智, 酒井 稔史, 南橋 昭, 山本 裕介
    2003 年 74 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/05/25
    ジャーナル フリー
    受精卵クローン技術は一卵性多子を生産する技術であり,種々の比較試験や能力検定に利用することができる.本研究では,同一受精卵由来の5つ子について,その枝肉を画像解析により詳細に調査し,筋肉形状,脂肪の割合ならびに肉色について類似性を検討することである.黒毛和種供卵牛から受精卵を回収し,ホルスタイン等の卵巣から得た未受精卵子(除核済み)を電気刺激により細胞融合し,核移植を行い,7頭のクローン雄子牛を生産した.そのうち5頭を和牛産肉能力検定間接法にしたがって21ヵ月齢まで肥育した.画像解析により胸最長筋,僧帽筋,菱形筋,頭半棘筋,背半棘筋,前背鋸筋および腸肋筋に関して,その面積,各筋肉内に占める脂肪の面積割合(以下,脂肪面積比)などを算出した.また,脂肪交雑粒子のあらさならびにBCSナンバーを画像解析により数値化した.5頭の供試牛の枝肉重量ならびに胸最長筋の面積の範囲は,それぞれ344kg~400kg,38.5cm2~50.4cm2の範囲にあり,類似性はそれほど高くなかった.胸最長筋内の脂肪面積比は,27.2%から28.4%の範囲にあり,類似性はきわめて高く,他の筋肉においても同様の傾向が認められた.脂肪交雑粒子のあらさについては,低い類似性を示すことが確認された.画像解析により推定したBCSナンバーは,2.92から3.26の範囲であり,比較的類似性は高かった.肥育期間中のコンディションの差異が,肉量に関わる形質に大きな影響を及ぼすものの,脂肪の割合および肉色については,類似性が高いことが確認された.
  • 西村 和行, 高橋 雅信
    2003 年 74 巻 1 号 p. 9-12
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/05/25
    ジャーナル フリー
    北海道東部におけるホルスタイン種乳牛の乳中タンパク質をPAGE法電気泳動により遺伝子型判定した.1986年10月から1997年7月までに分娩した延べ6,620記録の産乳成績をアニマルモデルREML法を用いて分析した.βラクトグロブリン(βLg)のAA型はAB型に比べて,乳量および乳タンパク質量において各々32kgおよび1.2kgの差がみられた.αs1CNのCC型はBB型に比較し,乳量,脂肪量およびタンパク質量で各々-69kg,3.1kgおよび-1.2kgの差を示した.しかし,κCNおよびβCNにおいては明確な関連性は認められなかった.
  • 河原 孝吉, 後藤 裕作, 萩谷 功一, 鈴木 三義, 曽我部 道彦
    2003 年 74 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/05/25
    ジャーナル フリー
    本分析では,種雄牛の国際遺伝評価値(I-EBV)を国内の遺伝評価(N-EBV)に組み込むことにより,種雄牛と雌牛の育種価(B-EBV)を推定した.さらに,国内における情報量が増加した段階で推定されたB-EBVと比較し,情報量が少ない段階で推定されたB-EBVの安定性を調査した.使用した記録は,北海道地域のホルスタイン種における乳量の検定記録であり,2種類のデータセットを作成した.データセットIは1976年1月から1997年10月までに240日以上305日までの乳期を終了した雌牛記録4,090,165,データセットIIは同様にして2001年6月までに乳期を終了した5,012,423記録である.使用した混合モデルは,母数効果として牛群・年次・産次のサブクラス,誕生年グループ別の分娩月齢グループと分娩月の交互作用,誕生年グループ別の分娩月齢サブグループの効果,近交退化量を示す回帰係数,変量効果として相加的遺伝子効果(EBV),永続的環境効果および残差効果を含んでいる.種雄牛のI-EBVは,米国農務省のAIPL(Animal Improvement Programs Laboratory)のインターネットホームページからダウンロードし,データセットIに関して1997年2月およびデータセットIIに関して2001年8月に公表されたものを使用し,一次回帰式を基礎とした変換法でDeregressionした後,牛群内遺伝評価法を使用して,混合モデル方程式に組み込んだ.両親平均(PA)は,両親のEBVの和の1/2として算出した.データセットIにおいて娘牛数が15から50頭を持つ種雄牛とデータセットIIにおいて娘牛が500頭以上増加した種雄牛グループとのB-PA間の相関(0.96)は,N-PA間の相関(0.88)と比較し,有意に高かった(P<0.05).同様の種雄牛グループとのB-PA間の差の標準偏差(61kg)は,N-PA間(124kg)と比較し,有意に小さい傾向を示した(P<0.01).それゆえ,N-EBVにI-EBVを組み込む方法は,PAの安定性を向上させる効果があった.B-EBV間の場合は,N-EBV間と比較し,統計的有意は認められなかったが,B-PAの安定性向上の影響を受けて,相関の低下と差の標準偏差の上昇が若干抑制できたものと推察された.
  • 口田 圭吾, 菊地 彩, 加藤 浩二, 日高 智, 鈴木 三義, 三好 俊三
    2003 年 74 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/05/25
    ジャーナル フリー
    胸最長筋の皮下脂肪側において,筋間脂肪が胸最長筋内に大きく入り込んでくぼみのあるもの(いわゆる‘ハート芯’)は,枝肉の価値を低下させる一因であるとされる.本研究では,画像解析による新たなハート芯評価方法について提案すること,ならびに黒毛和種のハート芯形成に対する種雄牛の影響を検討することを目的とした.枝肉横断面撮影装置によって撮影された第6~7肋骨間の胸最長筋画像を2値化した.2値画像について胸最長筋の境界線を検出し,膨張処理ならびに細線化処理を行い,なめらかな胸最長筋の輪郭線を得た.胸最長筋の長径より上部(皮下脂肪側)について,凸部を結んだ凸多角形を描き,凸多角形と胸最長筋の輪郭線が作る領域について,その面積,パターン幅等を測定した.得られた画像解析形質のうちから3変数を用い,肉眼で判定したハート芯の程度を分類変数とする線形判別分析を行ったところ,その判別率は,97.0%と極めて高く,画像解析によりハート芯の程度を数値化することを可能とした.237頭(種雄牛32頭)の黒毛和種産肉能力検定間接法の材料牛について,ハート芯の程度を肉眼で調査したところ,38頭においてハート芯が確認された.画像解析により評価したハート芯の程度に対する種雄牛の効果は高度に有意(P<0.01)であり,特定の種雄牛からの後代にハート芯の出現頻度が多い傾向が認められ,ある1頭の種雄牛については,後代6頭すべてがハート芯の形状を呈した.
  • 阿部 英則
    2003 年 74 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/05/25
    ジャーナル フリー
    馬鈴薯デンプン粕に麹かびを固体培養して微生物タンパク質に富む培養物(PWMBP)の多量生産を図った.培養は麹蓋の代わりとした網かごに原料を薄く盛り,好気的条件下で行った.PWMBPの生産工程は以下の通りである.脱水デンプン粕(水分含量75~78%)35.0kg,ポテトパルプ(水分含量10~15%)5.9kgおよび各0.4kgのリン酸アンモニウムと炭酸カルシウムを混合し,麹かびが原料内部で増殖しやすいように粒状に成形した.次いで,0.8kg/cm2の圧力で10分間蒸煮し,デンプンのアルファ化を図った.放冷後,ポテトパルプ1.2kg,尿素0.4kgおよび種麹0.18kgを再度混合して網かごに5cm程度の厚さに盛り30°Cの発酵室で2日間培養した.これらの操作はとくに無菌的には行わなかった.1日単位で連続的に培養することにより,PWMBPの多量調製が可能となった.生産されたPWMBPの純タンパク質含量は15.0%であって,純タンパク質中のリジン,メチオニン,イソロイシンの含量は大豆粕やルーメン細菌に近似していた.メンヨウを用いてPWMBPの栄養価を測定したところ,純タンパク質の消化率は56.8%で,可消化養分総量および可消化エネルギー含量は60.9%および2.72Mcal/kgであった.
  • 柴 伸弥, 常石 英作, 松崎 正敏, 塩谷 繁
    2003 年 74 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/05/25
    ジャーナル フリー
    褐毛和種去勢牛12頭を,アマニ油脂肪酸カルシウムを4%添加した濃厚飼料を給与する油脂区(6頭)と無添加の濃厚飼料を給与する対照区(6頭)に分け,14ヵ月齢から10ヵ月間肥育を行い,この間のメタン発生と肥育成績を比較検討した.乾物摂取量(DMI)あたりのメタン発生量は,有意な差ではなったが,試験期間を通じて対照区よりも油脂区で小さな値を示した.また,アマニ油脂肪酸カルシウム添加によるメタン発生の減少量は不飽和脂肪酸摂取量から計算される減少量の7割程度であったことから,アマニ油脂肪酸カルシウムはメタン発生抑制に効果があったと考えられた.油脂区は対照区よりも増体成績が優れ,日増体量あたりのメタン発生量は,有意な差ではないものの13%低い値を示した.以上の結果からアマニ油脂肪酸カルシウムの添加は,DMIあたりのメタン発生を抑制し,増体成績を改善することにより,増体あたりのメタン発生量を削減する可能性が示唆された.
  • 伊藤 貢, 広岡 博之
    2003 年 74 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/05/25
    ジャーナル フリー
    黒毛和種とホルスタイン種の交雑種去勢牛と未経産雌牛198頭からの682の血液サンプルと枝肉形質のデータを用いて,血清中のビタミンA濃度と総コレステロール濃度に対する遺伝的要因(種雄牛)と環境要因(農家と測定季節,測定月齢,性別およびそれらの交互作用)の効果を特定し,それらの濃度と枝肉形質との関連性を調べた.最小2乗分散分析の結果,測定季節と測定月齢およびこれらの間の交互作用は血清中のビタミンA濃度と総コレステロール濃度の両方に有意な影響を与え,また,種雄牛の効果はビタミンA濃度に,農家の効果は総コレステロール濃度にそれぞれ有意な影響を与えることが示された.血清中のビタミンA濃度と枝肉形質の間には,相関分析における18ヵ月齢から20ヵ月齢のバラの厚さおよび共分散分析における12ヵ月齢から17ヵ月齢の牛肉色基準(BCS)ナンバー以外の関係において,有意な関係は認められなかった.相関分析と共分散分析の結果,肥育後期の総コレステロール濃度は,牛脂肪交雑基準(BMS)ナンバー,枝肉重量,ロース芯面積およびバラの厚さと有意な正の関係,牛肉色基準(BCS)ナンバーと有意な負の関係のあることが示された.この結果より,肥育後期の総コレステロール濃度は,枝肉形質を屠殺する前に予測するための指標として利用できる可能性のあることが示唆された.
  • 中西 直人, 青木 康浩, 山田 知哉, 河上 眞一, 山崎 敏雄
    2003 年 74 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/05/25
    ジャーナル フリー
    放牧を利用した黒毛和種とホルスタイン種の交雑種(以下F1)雌牛の一産取り肥育を確立するため,段階屠畜を行って産肉性を調査し,適切な肥育期間を検討した.F1雌牛12頭を10ヵ月齢から6ヵ月間放牧した.12ヵ月齢で人工授精し22ヵ月齢で分娩を行い,分娩後母子を直ちに分離し濃厚飼料とトウモロコシサイレージの自由摂取により肥育した.肥育後6,9,12,15ヵ月目に各3頭屠畜した.枝肉格付けには,肥育期間による影響は認められなかった.肥育期間を通じて,枝肉中の筋肉と骨重量は有意に増加したが,脂肪重量は9ヵ月まで増加しその後は有意な増加を示さなかった.消化管,肝臓重量は肥育中に変化を示さなかった.大網膜脂肪および腸間膜脂肪重量は,肥育が進行しても有意な変化を示さなかった.肥育の進行にともない胸最長筋の総色素含量および粗脂肪含量は有意に増加したが,剪断力価や肉表面色は有意な変化を示さなかった.以上の結果から放牧を利用したF1雌牛の一産取り肥育において,肥育期間中の肉量および牛肉の理化学的性状の変化は小さく,肥育期間は9ヵ月までが望ましいと考えられた.
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