本分析では,ホルスタイン集団に関して,選抜の4径路の遺伝選抜差と世代間隔から産乳形質の遺伝的改良の現状と将来の予測を行った.データは,北海道において1976年1月から2001年6月までに乳期を終了した305日2回搾乳の検定記録であり,複数記録・単形質アニマルモデルを使用して育種価を推定した.乳量,乳脂量および乳タンパク質量の遺伝標準偏差(σ
Gm,σ
Gfおよびσ
Gp)は,各々514,18および12kgと仮定した.種雄牛の父(SB)と母(DB)径路の世代間隔は,最近4年間(1993から1996年)において各々平均7.78と4.95年であった.雌牛の父(SC)と母(DC)径路の世代間隔は,最近4年間(1995から1998年)において各々平均7.98と4.49年であった.SBとDB径路の遺伝選抜差は,乳量,乳脂量および乳タンパク質量に関して,各々平均2.19σ
Gmと1.69σ
Gm,2.28σ
Gfと1.85σ
Gfおよび2.95σ
Gpと2.14σ
Gpであった.SC径路の遺伝選抜差は,乳量,乳脂量および乳タンパク質量に関して各々平均1.57σ
Gm,2.40σ
Gfおよび2.18σ
Gp,DC径路の遺伝選抜差は,すべての形質で0.10σ
G以下であった.雌牛の期待選抜反応量は,実現選抜反応量に対し,乳量,乳脂量および乳タンパク質量で各々157%,193%および167%高いことが予測された.しかし,実際には,産乳形質以外にも選抜圧が加えられる可能性があるので,産乳形質の実現選抜反応量は,期待選抜反応量よりも低いと推察された.
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