日本畜産学会報
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75 巻, 1 号
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一般論文
  • 河原 孝吉, 後藤 裕作, 萩谷 功一, 山口 諭, 鈴木 三義
    2004 年 75 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    本分析では,ホルスタイン集団に関して,選抜の4径路の遺伝選抜差と世代間隔から産乳形質の遺伝的改良の現状と将来の予測を行った.データは,北海道において1976年1月から2001年6月までに乳期を終了した305日2回搾乳の検定記録であり,複数記録・単形質アニマルモデルを使用して育種価を推定した.乳量,乳脂量および乳タンパク質量の遺伝標準偏差(σGm,σGfおよびσGp)は,各々514,18および12kgと仮定した.種雄牛の父(SB)と母(DB)径路の世代間隔は,最近4年間(1993から1996年)において各々平均7.78と4.95年であった.雌牛の父(SC)と母(DC)径路の世代間隔は,最近4年間(1995から1998年)において各々平均7.98と4.49年であった.SBとDB径路の遺伝選抜差は,乳量,乳脂量および乳タンパク質量に関して,各々平均2.19σGmと1.69σGm,2.28σGfと1.85σGfおよび2.95σGpと2.14σGpであった.SC径路の遺伝選抜差は,乳量,乳脂量および乳タンパク質量に関して各々平均1.57σGm,2.40σGfおよび2.18σGp,DC径路の遺伝選抜差は,すべての形質で0.10σG以下であった.雌牛の期待選抜反応量は,実現選抜反応量に対し,乳量,乳脂量および乳タンパク質量で各々157%,193%および167%高いことが予測された.しかし,実際には,産乳形質以外にも選抜圧が加えられる可能性があるので,産乳形質の実現選抜反応量は,期待選抜反応量よりも低いと推察された.
  • 大澤 剛史, 口田 圭吾, 加藤 貴之, 鈴木 三義, 三好 俊三
    2004 年 75 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    BMSナンバーは,脂肪交雑の面積割合,脂肪交雑粒子の大きさや形状などについて総合的に評価された数値と考えられる.これら各要因について画像解析手法を用いて数値化し,遺伝的パラメータを推定することを本研究の目的とした.供試材料は,2000年4月から2002年3月にかけて,北海道内の枝肉市場に上場された黒毛和種2,998頭である.第6~7肋骨間を切開した枝肉左半丸の横断面画像について画像解析を行い,脂肪交雑のロース芯に占める面積割合(脂肪面積比),脂肪交雑粒子の全体の粒子のあらさ,最大粒子のあらさ,ロース芯の短径・長径比およびロース芯形状の複雑さの5形質を画像解析形質として求めた.また,枝肉形質として枝肉重量,ロース芯面積,ばらの厚さ,皮下脂肪厚,歩留基準値,BMSナンバーおよびBCSナンバーの7形質をそれぞれ取り上げた.母数効果として年度ごとの季節,出荷月齢および性別を,変量効果として肥育農家を考慮し,遺伝率,遺伝ならびに表型相関係数が推定された.画像解析形質の遺伝率は,脂肪面積比(0.57),全体の粒子のあらさ(0.34)および短径・長径比(0.32)において中程度から高い値が推定された.BMSナンバーと脂肪面積比(0.97)および全体の粒子のあらさ(0.68)の遺伝相関係数が正の高い値であった.
  • 柿原 篤志, 徐 春城, 工藤 隆, 伊藤 良, 鈴木 裕之, 豊川 好司
    2004 年 75 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    新鮮トウフ粕とアルコール4%添加トウフ粕サイレージを成育中の去勢雄ヒツジに給与し,肥育,脂肪組織の脂肪酸組成およびルーメン発酵に及ぼす影響を検討した.供試飼料は1)対照区 : 市販の配合飼料,2)新鮮粕区 : 新鮮トウフ粕,3)サイレージ区 : アルコール4%添加トウフ粕サイレージとした.98日間の肥育試験終了後,屠畜成績および胸最長筋(ロース芯),皮下,腎臓の各脂肪組織の脂肪酸組成を比較した.ルーメン内容物は飼料給与2時間後に経口カテーテルで採取した.日増体量は,サイレージ区がもっとも高かったが,区間に有意な差はなかった.トウフ粕飼料給与によって,すべての部位のC16 : 0およびC17 : 0が有意(P<0.05)に低下,C18 : 2が有意(P<0.05)に増加した.またC14 : 0が腎臓脂肪のみ有意(P<0.05)に低下した.ルーメン内揮発性脂肪酸(VFA)は,トウフ粕飼料給与によって,酢酸は有意(P<0.05)に高く,酪酸は反対に低くなった.カプロン酸はサイレージ区が他の2区よりも有意(P<0.05)に高く,アルコール摂取による影響が認められた.酢酸/プロピオン酸比はサイレージ区の方が高かった.トウフ粕飼料は,対照区と同等以上の肥育効果があり,ルーメン発酵においても対照区と大きな差はなかった.脂肪組織の脂肪酸組成では,必須脂肪酸のC18 : 2の増加,飽和脂肪酸の低下など,脂肪酸組成を良質化でき,濃厚飼料の代替飼料として利用可能であることが示された.
  • 相川 勝弘, 太田垣 進, 谷本 保幸, 柴田 昌宏, 松本 和典, 寺田 文典
    2004 年 75 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    黒毛和種に存在する脂肪細胞分化制御因子PPARγ2の遺伝的変異(Ala18Val)が産肉形質へ与える影響を検討するため,ヘテロ型変異体(Ala/Val体)であることが明らかな1頭の種雄牛の産子139頭の産肉成績を用いて比較研究を行った.供試した産子は非変異体(Ala/Ala体)70頭およびヘテロ型変異体(Ala/Val体)69頭であった.統計処理は,遺伝的変異の有無を処理因子とし,性と屠畜場をブロック因子とする乱塊法によって行った.その結果,Ala/Ala体に比べてAla/Val体ではバラ厚が有意に増加し(P<0.01),冷屠体重(P=0.070)と脂肪交雑基準値(P=0.078)が増加傾向を示した.一方,ロース芯面積,皮下脂肪厚,歩留基準値,屠殺日齢等については,有意差は観察されなかった.産子を母方種雄牛によって2系統に分けて解析すると,系統によってPPARγ2変異の効果の表れ方に違いが認められた.
  • 久米 新一, 野中 和久, 大下 友子, 山口 直己
    2004 年 75 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    チモシー乾草,オーチャードグラスサイレージ,アルファルファサイレージ,トウモロコシサイレージ,オーチャードグラスとアルファルファの混合サイレージ,オーチャードグラスとトウモロコシの混合サイレージ,アルファルファとトウモロコシの混合サイレージ計16点を乾乳牛各2頭に給与し,エネルギー出納を調べた.維持の代謝エネルギー要求量は,代謝体重当たりの代謝エネルギー摂取量とエネルギー蓄積量の回帰式を用いてエネルギー平衡時の値から求めた.各種粗飼料のエネルギー価は,トウモロコシサイレージがもっとも高く,ついでイネ科牧草,アルファルファの順であった.粗飼料の代謝エネルギー含量とADL含量あるいはADF含量間には,高い負の相関関係が認められた.乳牛の維持に要する代謝エネルギー要求量は,アルファルファ給与牛では567KJ/kg0.75,また全粗飼料をまとめると596KJ/kg0.75と推定された.
  • 大塚 浩通, 小松 勝一, 小岩 政照, 福田 茂夫, 初谷 敦, 岡田 啓司, 吉野 知男, 川村 清市
    2004 年 75 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    牛群における周産期疾病と免疫状態の関連を明らかにするため,疾病多発群と健康群の2牛群について免疫プロファイルテストを試みた.周産期疾病が多発した牛群(疾病群)では乳熱,第四胃変位や乳房炎など疾病発症率が40.0%であった.対照として周産期疾病の発症がなく臨床的に健康であった牛群(健康群)を用い,両群を5つの乳期に分け比較した.NRC飼養標準を参考にした飼養内容では疾病群の可消化養分総量(TDN),中性デタージェント繊維(NDF)ならびにNFCは健康群に比べ泌乳初期から泌乳中期かけて低かった.すべての乳期において,疾病群は健康群に比べ血清総コレステロール値が低く,血液尿素窒素値が高かった.白血球数,好中球数,Majar histocompatibility complex(MHC)class-II低陽性細胞(低蛍光強度 ; 単球)数はすべての乳期において,疾病群が健康群に比べ高かった.また血清インターロイキン-1ならびに腫瘍壊死因子活性は,すべての乳期において疾病群が健康群に比べ高かった.周産期疾病の多発する牛群では免疫状態に異常があり,免疫プロファイルテストは牛群としての免疫状態を評価するために有用であることが示唆された.
  • 浅沼 成人, 吉井 貴宏, 日野 常男
    2004 年 75 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    混合ルーメン微生物にWolinella succinogenesを添加して培養した実験で,本菌は硝酸・亜硝酸還元を利用してエネルギーを獲得するため,硝酸の添加により菌数がより長時間維持された.本菌の添加は硝酸還元を促進し,とくに亜硝酸還元を大きく促進したため,亜硝酸の蓄積が減少した.その結果,亜硝酸による発酵阻害なしにメタン生成が大きく減少した.さらにフマル酸を添加したところ,その還元によりさらに多くのエネルギーが獲得されて本菌の添加効果がさらに増大した.ヤギを用いた実験でも,ルーメン内の本菌の数は硝酸塩の添加により増加し,さらにフマル酸を添加したところ,さらに増加した.硝酸とフマル酸の添加によりルーメン内バクテリア総量あたりの硝酸および亜硝酸還元酵素の活性,すなわちルーメン内の硝酸および亜硝酸還元能が高くなった.したがって,本菌の数を増加させるためには,硝酸とフマル酸の供給が有効であろう.
  • 長谷川 未央, 口田 圭吾, 佃 秀雄, 加藤 浩二, 鈴木 三義, 三好 俊三
    2004 年 75 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    BMSナンバーの格付の際に,その評価を左右する要因の一部として考えられる脂肪交雑粒子のあらさ(あらさ)および胸最長筋の形状(形状)について画像解析により評価し,新たに単独粒子のあらさ指数の検討を行った.さらに,あらさおよび形状に関する情報を加味した,客観的なBMSナンバー推定法を検討した.分析には,黒毛和種間接検定材料牛446頭の枝肉横断面画像ならびに格付記録を用いた.胸最長筋内に存在する極端にあらい単独の粒子を識別するため,最大粒子のあらさを全体の粒子のあらさで除した,単独粒子のあらさ指数を算出した.同程度の脂肪面積比であるにもかかわらず,BMSナンバーが低く評価された要因について検討するため,サンプルの脂肪面積比と格付によるBMSナンバーごとの平均脂肪面積比との差(脂肪面積比の差)を解析対象とし,それが正であったサンプル(n=193)について,格付によるBMSナンバーに対するあらさや形状の影響を調査した.さらに,全データを用いてあらさおよび形状を考慮したBMSナンバーの推定を行った.単独粒子のあらさを用いることで,より好ましくないと推察される,胸最長筋内に単独で存在する粒子を選別できることが確認された.脂肪面積比の差と全体の粒子のあらさとの間に有意な正の相関が示され,BMSナンバーの評価を下げる要因のひとつを特定できた.画像解析により推定されたBMSナンバーと格付によるBMSナンバーとの差が±0である割合は51.4%,±1以内である割合は92.4%となった.
  • 張 建国, 加茂 幹男, 阿部 佳之, 河本 英憲, 青木 康浩
    2004 年 75 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    粗灰分含量を指標とし,堆肥化過程における堆肥の乾物や有機物の分解率を簡便に推定する方法を検討した.この方法では堆肥化過程における乾物や有機物の減少量を直接測らなくても,乾物中の粗灰分含量のみを測定することによって次式で推定することができる : 乾物分解率(%)=(1-X0/Xi)×100 ; 有機物分解率 (%)=(1-X0/Xi×(1-Xi/100)/(1-X0/100))×100(X0 : 原料中の粗灰分含量(%DM),Xi : 処理i日後の粗灰分含量(%DM)).推定に必要な粗灰分含量は,一般にはマッフル炉による常法で測定されるが,10g程度の風乾材料を電気ヒータで約15分間灰化し,放冷後精度0.1g以上の秤で測定することによって簡便に測定できる.
技術報告
  • 一戸 俊義, 後藤 愛, 藤原 勉
    2004 年 75 巻 1 号 p. 67-76
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/04
    ジャーナル フリー
    反芻胃カニューレ装着成メンヨウを3頭用い,井水(GW)およびアルカリ性電解水(BEW)をそれぞれ自由飲水させると共に反芻胃内に注水し,水分吸収量,微生物合成量および窒素(N)出納成績の差異を測定した.維持量の1.1倍の代謝エネルギーおよび1.5倍の代謝性タンパク質相当の飼料を給与した.試験は乱塊法により行った.消化率,反芻胃内容液量および通過量に,処理間差はなかった(P>0.05).反芻胃からの水分吸収量は,GW区およびBEW区がそれぞれ2.8,4.7l/dとBEW区が有意(P<0.05)に多かったが,吸収後の水分排泄量に差はなかった(P>0.05).反芻胃内性状(pH, VFA, NH3-N)に処理間差はなかったが(P>0.05),VFAおよびNH3-N吸収量はBEW区が多いと推定された.GW区およびBEW区での微生物合成量は,それぞれ9.7,12.2gN/dとBEW区が有意に多かったが(P<0.05),吸収されたNの蓄積率が低く(P<0.05),尿中N排泄量はBEW区が多かった(P<0.05).
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