日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
75 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
一般論文
  • 山田 信一, 西山 厚志, 河村 正, 後藤 裕司, 撫 年浩, 奥村 寿章, 山内 健治
    2004 年 75 巻 2 号 p. 165-177
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    体細胞クローン牛を同一飼養条件で肥育し,その発育や枝肉成績に関して相似性の検討を行った.供試牛として,同時期に生産した黒毛和種の体細胞クローン牛2セット(去勢4頭,雌2頭)を用いた.それぞれドナー牛に準じた方法で肥育し,発育,飼料摂取量,枝肉成績および胸最長筋部分の理化学分析の結果について,クローン牛間およびクローン牛とそのドナー牛とを比較した.クローン牛間については,去勢牛群では,各調査項目において総じて高い相似性が見られたが,雌牛群では肥育期間中の疾病の影響により,発育や枝肉成績のうち肉量に関する項目において差が見られた.クローン牛とそのドナー牛では,試験時期や試験場所の違いによる環境要因があり,発育において差が見られたが,BMS No.や胸最長筋の粗脂肪含量においてその相似性がうかがわれた.肥育期間中の個体のコンディションにより,発育や肉量に関する形質に差が生じる場合があるものの,クローン牛間での相似性は高いと考えられた.
  • 久米 新一, 野中 和久, 大下 友子, 小酒井 貴晴, 小島 英紀
    2004 年 75 巻 2 号 p. 179-184
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    自給粗飼料多給時における乾乳牛,妊娠牛および泌乳牛のカリウム排泄量の特性を明らかにするために,計62頭を用いて消化試験を実施した.供試牛の粗飼料給与比率は60∼100%の範囲内に設定し,また供試牛のカリウム摂取量は81∼555g/日の範囲であった.カリウム摂取量とカリウム吸収量の回帰式から求めたカリウムの吸収率は,乾乳牛,妊娠牛および泌乳牛とも95.6∼99.9%と非常に高い値であったが,体内に吸収されたカリウムの大部分は尿中に排泄された.乾乳牛,妊娠牛および泌乳牛とも尿中へのカリウム排泄量の増加とともに尿量が増加し,尿中カリウム排泄量が1g増加すると尿量は70g増加した.自給粗飼料のなかでは,カリウム含量の低いトウモロコシサイレージ給与により,乳牛のカリウム排泄量と尿量の低減が可能であった.
  • 徐 春城, 蔡 義民, 村井 勝
    2004 年 75 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    麦茶飲料残渣を乾物当たり10%(10%区),20%(20%区)および30%(30%区)の割合で配合飼料や乾草などと混合したTMRサイレージを調製し,その発酵特性について検討するとともに6頭のメンヨウに給与して,消化率および栄養価を測定した.3種類のTMRサイレージはいずれもpHが低く,乳酸含量が高かった.TMRサイレージ中の粗タンパク質および粗脂肪含量は区間差がなかったが,酸性デタージェント繊維(ADF)および中性デタージェント繊維(NDF)含量は,麦茶飲料残渣の配合割合の増加にともない高くなった.10%区および20%区の粗タンパク質,ADF,NDFおよびエネルギーの消化率は30%区より有意に(P<0.05)高かった.乾物中の可消化養分総量(TDN)および可消化エネルギー(DE)は,それぞれ68.4%と13.3MJ/kg, 67.3%と13.1MJ/kg, 63.4%と12.3MJ/kgであり,10%区および20%区が30%区より有意(P<0.05)に高かった.以上の結果,麦茶飲料残渣の配合割合の適量は飼料乾物中10∼20%程度である.
  • 時田 昇臣, 秋山 浩子, 河村 早苗, 今田 匡彦, 下條 雅敬, 増田 泰久
    2004 年 75 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    生育段階の異なる3草種の暖地型イネ科牧草を用い,1.2kg/cm2(120℃),20分間の蒸気加熱処理を行い,茎部および葉部の成分組成および消化率に及ぼす影響について検討した.その結果,出穂後期のグリーンパニック(GP)およびカラードギニアグラス(CG)において処理によりいずれも葉部の粗タンパク質含量が2~3.3%減少した.中性デタージェント繊維含量は,処理によりGPでは生育段階に関わらず葉部において,CGでは出穂後期の茎部を除き,3.5~6.5%増加(P<0.05)した.酸性デタージェント繊維含量は,処理によりローズグラス(RG)では生育段階および部位に関わらず2.6~3.9%低下した.酸性デタージェントリグニン,シリカおよび総エネルギー含量についてはいずれの草種においても顕著な変動効果は認められなかった.In vitro乾物消化率は,出穂前期のCG茎部およびRG葉部においてのみ4~8%増加(P<0.05)した.以上のことから,低圧域での蒸気加熱処理は暖地型イネ科牧草の粗タンパク質含量を低下させることおよび消化率を改善できる場合もあるが,その効果は草種,生育段階および部位により異なることが示された.また,リグニン含量を減少させたり,総エネルギー含量を変化させるような効果はみられなかった.
  • 高田 良三, 市川 隆久, 山崎 正史, 大塚 誠, 甘利 雅拡
    2004 年 75 巻 2 号 p. 199-204
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    現在わが国で市販されている肥育豚用飼料12種類の粒度分布を調べた.また,そのうちの一飼料を粉砕し,市販飼料の粒度変化が飼料の消化率に及ぼす影響について検討した.あわせてフィターゼの同時添加の影響についても検討を行った.粒度分布の結果は,1社を除いた他の市販飼料には径が2.36mm以上の大きな粒度を示すものが3∼16%程度含まれていた.消化試験では,市販飼料の粉砕の有無およびそれぞれについてフィターゼ添加の有無を要因とする4試験区を設定した.供試豚は体重約60kgのLWD種雌8頭で各試験区にブタを2頭ずつ配置し,繰り返し実験を行った.消化率は酸化クロム指示物質法によって測定した.その結果,粉砕によって乾物,粗タンパク質および粗脂肪の消化率はいずれも有意(P<0.01)に改善された.また,フィターゼ添加によって乾物(P<0.05),リン(P<0.01)および粗灰分(P<0.01)の消化率は有意に改善された.しかし,亜鉛,銅の吸収率は粉砕,フィターゼいずれの影響も受けなかった.糞排泄量(糞量/飼料摂取量)は対照飼料に対して粉砕,フィターゼの同時処理を行った飼料がもっとも少なかった.以上の結果より,現在市販されている飼料を粉砕することによって消化率は改善され,フィターゼをあわせて添加すると糞排泄量はさらに低減されることが明らかとなった.
  • 小峯 優美子, 小峯 健一, 貝 健三, 板垣 昌志, 植松 正巳, 木舩 厚恭, 小林 仁, 山口 高弘, 熊谷 勝男
    2004 年 75 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    乳用牛の乳汁成分は乾乳導入後,大きく変動する.乳汁タンパク質では,ラクトフェリン(Lf)が乾乳7日目にピーク値を示した.乳汁中体細胞数(SCC)は,乾乳15日目に400万/ml以上の値を示し,その多くは,CD11b細胞であった.すなわち,Lfが乳腺上皮細胞のアポトーシスを誘導し,その結果生じる乳腺の老廃組織が,増加した白血球により迅速に処理されていることが推察された.一方,CD4/CD8T比は乾乳導入直後から高値となり,そのピーク時期は,B-B2リンパ球数と同様,分娩20日前であった.また,移行抗体の主体となるIgG1は,分娩直前に最大値を示した.さらに,in vitroにおいて,ウシ末梢血単核球を用いたLfでの刺激培養によりCD4/CD8T比が高まった.このことから,Lfが乾乳期CD4Tリンパ球を誘導する可能性,すなわち泌乳期乳腺退縮後の乾乳期乳腺は,多くの報告にあるホルモンの他に,Lfの作用により急速に移行抗体産生器官に移行することが示唆された.
  • 長谷川 未央, 口田 圭吾, 齋藤 邦彦, 熊谷 周一郎, 小西 一之, 撫 年浩
    2004 年 75 巻 2 号 p. 213-220
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    黒毛和種とリムジン種の交雑種117頭から得られた枝肉横断面画像より,各筋肉の面積や横断面に対する筋肉の面積割合(筋肉面積比)を算出し,それら画像解析形質と枝肉の部分肉量との関連について検討した.横断面画像から,各筋肉の面積,脂肪の面積,筋肉面積比,胸最長筋の脂肪面積比および整形皮下脂肪面積を算出し,画像解析形質とした.部分肉調査では,骨量,整形脂肪量,腎周囲脂肪量およびその他除去部分の重量,さらに,リブロースなどの各パーツの肉量が計測され,これらと枝肉重量から,部分肉歩留ならびに各パーツの重量割合を算出した.部分肉歩留と,もっとも高い関連が示された画像解析形質は,筋肉面積比であり,その相関係数は0.66であった.部分肉歩留を推定する重回帰式に選択された変数は,整形皮下脂肪面積,広背筋の面積,胸最長筋の脂肪面積比,菱形筋の面積および背半棘筋の面積であり,その決定係数は0.57であった.全調査日(16日間)のうち,部分肉歩留と筋肉面積比との相関係数が0.90以上となった日(3日間)の22頭を抽出し,部分肉歩留を推定する重回帰分析をおこなったところ,その決定係数は0.92と非常に高くなった.また,この22頭について,各パーツの重量割合を推定する重回帰分析を行ったところ,リブロース以外では比較的高い決定係数(0.78∼0.82)となり,パーツの重量割合を画像情報から推定する可能性も示された.
  • 安部 直重, 高崎 宏寿, 苗川 博史, 佐藤 衆介, 菅原 和夫
    2004 年 75 巻 2 号 p. 221-227
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    80日齢の交雑種雄子牛12頭に,扱いやすさを改善する目的でブラッシングや声かけの馴致処理を1日5分,24日間実施したところ,その間にすべての個体がヒトに対する模擬闘争行動を発現した.発生した模擬闘争行動のうち頭突き行動発生回数における個体差は著しく,行動総発生回数では有意差(P<0.01)のある多発群6頭(297.1±120.5回/120分)および少発群6頭(70.5±21.3回/120分)が認められた.ヒトに対する頭突き行動多発群では維持行動および社会行動は調査期間中安定して発現し,驚愕刺激時の心拍数の変動率は少発群に比べてやや高く,去勢ストレス負荷後の血清コルチゾール値の変動率はやや低く,平常時血清テストステロン値は高い傾向にあった.これに対し,少発群では維持行動および社会行動は調査期間中に変動し,ストレスに対する生理的反応は多発群と異なり,血清テストステロン値は低い傾向にあった.これらの結果から,ヒトに対する頭突き行動多発個体は,行動的,生理的特徴から,これまで報告されたストレス研究における積極的行動タイプに属するウシである可能性が伺えた.
  • 苗川 博史
    2004 年 75 巻 2 号 p. 228-239
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    14頭もしくは20頭の小群内において,生後3週齢までのヒツジ母子5組の音声コミュニケーションにおける母子間の反応(以下相互作用)を音声表記と情報量に基づいて検討し,母子間の接近行動の経日的推移について解析した.音声表記については,調音作用の観点から口の開閉によって構成される母ヒツジ/nnn/と/nae/と/nnae/および子ヒツジ/nnn/と/eee/と/nee/を発声タイプとして表した.相互作用については,母子それぞれ3タイプの発声と,これらに対する反応を8タイプに分類した24通りのダイアド(母子いずれかの発声とその後に続く一方または双方の行動を1組の完了行動とする)ならびに,それらの情報量について解析した.また,接近行動については,発声の有無に分けて母子ペア毎に経日的に解析した.その結果,母子間の相互作用は,情報伝達機能上,口を開けた発声が主導を占め,発声後は相手を視認もしくは注視し,その後の行動に移行する反応系で構成されていた.その際には,口の開閉のタイプによって生起する反応のしかたに個体差が見られ,発声のしかたによって応答が異なることが示された.また,いずれの発声においても母子ヒツジ間に共有される情報量は0ビットよりも大きく,母子ヒツジ双方に情報の共有があったことが示された.音声表記の結果については,発声タイプによって周波数と持続時間に違いが認められ,それぞれの発声構造の特徴を示すことができた.すなわち,母ヒツジの場合は,口を開けた/nae//nnae/タイプが,口を閉じた/nnn/タイプよりも周波数が50ヘルツ高く,発声時間も0.1秒長かった.子ヒツジの場合は,口を開けた/eee/と/nee/タイプが,口を閉じた/nnn/タイプよりも周波数が50ヘルツ高いものの,発声時間は0.1∼0.2秒短かった.発声に基づく接近のイニシアチブは,生後3週齢までは母ヒツジ主導型であったが,発声によらない接近のイニシアチブの割合については,子ヒツジの方が大きい傾向にあった.
  • 苗川 博史
    2004 年 75 巻 2 号 p. 241-245
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,モンゴル遊牧体系における二地域の夏営地のヒツジ母子間100組を対象に,音節の組み合わせによる発声タイプと行動型を,母子間距離,母子が遭遇するまでの時間,授乳および吸乳時間との関係について検討した.音節の組み合わせによる母子間の相互作用については,子ヒツジがイニシアチブを有した8タイプと母ヒツジがイニシアチブを有した5タイプに分類された.母子ヒツジともに口の開および閉による発声の割合は,約9 : 1と開いた方が多く,また,母ヒツジが双方向(75%),子ヒツジは一方向(46%)と発声なし(31%)を示す特徴があった.子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ8(母子双方に発声なし)は,母子間距離と母子が遭遇するまでの時間との間に有意な正の相関が,また吸乳時間と母子間距離の間には有意な負の相関があり,母子間距離によって母子が遭遇するまでの時間,吸乳時間に関連性があることを示唆した.子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ5(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答なし)は,食草移動時に71.4%,休息行動時に28.6%出現した.この発声タイプ5は,発声タイプ2(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnn/)との間に,母子が遭遇するまでの時間および母子間距離において有意差があり,母子が遭遇するまでの時間,および母子間距離によって発声タイプが異なることが示唆された.子ヒツジの発声タイプ8は,食草移動時に28.6%,休息行動時に71.4%出現し,食草移動時間および休息時間の割合が発声タイプ5と対称的であった.この発声タイプ8は,子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ1(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnae/),発声タイプ2(子ヒツジの発声/eee/と母ヒツジの応答/nnn/),発声タイプ3(子ヒツジの発声/nee/と母ヒツジの応答/nnae/)との間に母子が遭遇するまでの時間および母子間距離において有意差が見られ,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離によって発声タイプが異なることが示唆された.母ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプIII(母ヒツジの発声/nnae/と子ヒツジの応答/nee/)は,子ヒツジがイニシアチブを有した発声タイプ8との間に,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離において有意差が認められ,母子が遭遇するまでの時間,母子間距離によって発声のタイプが異なることを示唆した.今回の結果から,母子間距離,母子が遭遇するまでの時間,授乳および吸乳時間は,発声時における音節の組み合わせによるタイプと行動型によってそれぞれ異なることが示唆された.
  • —中央畜産会『先進事例の実績指標』分析から—
    宮田 剛志
    2004 年 75 巻 2 号 p. 247-266
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/12
    ジャーナル フリー
    本稿では,養豚経営の上向展開の過程とそこでの経済的性格について,中央畜産会『先進事例の実績指標』の個票データを用いて明らかにした.その際,分析の対象を農業労働力の存在形態別に,家族のみ,家族+臨時雇,家族+常雇に分類した.養豚経営の上向展開の過程では,労働力数に規定された常時飼養頭数の増加によって繁殖雌豚1頭当たり所得(以降,1頭当たり所得と略記)に上限と下限があらわれた.加えて,経営に常雇が雇い入れられ「大規模飼養技術」が導入されることで1頭当たり所得に構造的な格差がみられるようになった.このような1頭当たり所得の構造的格差は,主として繁殖雌豚1頭当たり出荷頭数と単価の低さに起因するものであった.そして,養豚経営の上向展開の過程では,このような1頭当たり所得の低下を考慮に入れた上で,飼養頭数を増加させ,自立経営下限所得の実現を目指していくという過程であった.この自立経営下限所得の実現においては,家族+常雇の安定性と,家族のみ,家族+臨時雇の不安定性が明らかとなった.
feedback
Top