無殺菌の粉砕または細切したイナワラおよびコムギワラにトキイロヒラタケ(
Pleurotus salmoneostramineus)を培養し,無殺菌培養がワラの繊維成分および消化性に及ぼす影響ついて検討した.イナワラとコムギワラを3~5cmの長さに細切,または1mmの篩を通るように粉砕し,450ml容のマヨネーズ瓶に詰め,無殺菌でトキイロヒラタケ穀粒種菌を接種した.対照として殺菌したワラにも接種した.イナワラは50日間,コムギワラは30日間20℃で半嫌気培養した後,さらに30日間好気培養した.無殺菌の細切イナワラ以外の処理ワラでは,30日目までに菌糸は蔓延した.培養後は,粉砕および細切イナワラともに,殺菌ワラより無殺菌ワラのほうが,有機物(OM)およびセルロース含量が低く,ヘミセルロースおよびリグニン含量が高くなる傾向が見られた.無殺菌の粉砕コムギワラの
in vitro有機物消化率(OM消化率),
in vitro中性デタージェント繊維消化率(NDF消化率)および
in vitroガス生産量(ガス生産量)は,培養前のワラに比べて高い値であったが,無殺菌の細切イナワラおよびコムギワラのそれらは培養前のワラに比べて低い値であった.無殺菌の粉砕イナワラのOM消化率およびNDF消化率は培養前のイナワラに比べて高い値であったが,ガス生産量は低い値であった.これらのことから,無殺菌のワラにトキイロヒラタケを培養して,その消化性を向上させるには,ワラを砕く処理を施して担子菌にとって栄養源が利用しやすく,嫌気度の高い状態にすることが重要であると考えられた.
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