日本畜産学会報
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76 巻, 4 号
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一般論文
  • 中川 智史, 鈴木 三義, 山内 和律, 山田 渥
    2005 年 76 巻 4 号 p. 393-399
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/16
    ジャーナル フリー
    滝川畜産試験場で1980年から1996年に集積された記録を用いて,サフォーク種の体重形質,繁殖形質,羊毛形質の遺伝的パラメータをREMLにより推定した.体重形質の直接遺伝率は日齢にともない増加し(0.15→0.31),母性遺伝率は日齢にともない減少した(0.24→0.09).直接遺伝効果と母性遺伝効果間の相関は日齢にともない正から負へと変化した(0.21→-0.42).繁殖形質の直接遺伝率はいずれも低い値であり(0.03~0.18),羊毛形質はいずれも高い値であった(0.36~0.60).直接遺伝効果間の相関は,体重形質間(0.29~0.92)と繁殖形質間(0.19~0.88)で正の値,体重形質と繁殖形質間(-0.01~0.57)ではほとんどが正の値であった.羊毛形質と体重形質および繁殖形質の間では幅広い範囲の値をとった(-0.28~0.51).
  • 三浦 伸也, 鈴木 三義
    2005 年 76 巻 4 号 p. 401-406
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/16
    ジャーナル フリー
    (社)北海道酪農検定検査協会の検定日記録および(社)日本ホルスタイン登録協会北海道支局の体型記録を用い,体細胞スコアと泌乳形質および体型形質との遺伝相関を推定した.各体型形質の記録数は審査開始時期の違いにより異なるが,多くの形質に共通な記録数を示すと,初産が181,291記録であり,2産が104,105記録,3産が30,973記録であった.遺伝相関の推定には,2形質分析モデルを用いた.母数効果としては,体細胞に対して,牛群・検定日,分娩月齢,分娩後日数の1次の回帰,分娩後日数に対するWilminkの指数項,体型形質に対しては,牛群・審査日,審査時月齢,泌乳ステージ,審査員の各効果を考慮し,さらに変量効果として両形質について,相加的遺伝効果と残差を含むモデルを用いた.体細胞スコアと乳生産形質との遺伝相関は-0.22~0.15と低い値が推定され,初産において正の相関,2産以降では負の相関となる傾向が示された.体型形質と体細胞スコアとの遺伝相関は,産次により値が変動し,正負の符号の逆転が認められた.これは,加齢による体型変化に起因していると考えられる.体型形質の中で,乳房の深さ(-0.29~-0.19)および前乳房の付着(-0.25~-0.07)において,負の遺伝相関が推定された.これらの体型形質は生涯生産性,在群期間とも遺伝的な関連があり,これらの体型形質を改良することにより,体細胞スコアを低減することが可能であり,結果として生涯生産量の増加が期待できる.
  • 三木 聡子, 岡野 寛治
    2005 年 76 巻 4 号 p. 407-414
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/16
    ジャーナル フリー
    無殺菌の粉砕または細切したイナワラおよびコムギワラにトキイロヒラタケ(Pleurotus salmoneostramineus)を培養し,無殺菌培養がワラの繊維成分および消化性に及ぼす影響ついて検討した.イナワラとコムギワラを3~5cmの長さに細切,または1mmの篩を通るように粉砕し,450ml容のマヨネーズ瓶に詰め,無殺菌でトキイロヒラタケ穀粒種菌を接種した.対照として殺菌したワラにも接種した.イナワラは50日間,コムギワラは30日間20℃で半嫌気培養した後,さらに30日間好気培養した.無殺菌の細切イナワラ以外の処理ワラでは,30日目までに菌糸は蔓延した.培養後は,粉砕および細切イナワラともに,殺菌ワラより無殺菌ワラのほうが,有機物(OM)およびセルロース含量が低く,ヘミセルロースおよびリグニン含量が高くなる傾向が見られた.無殺菌の粉砕コムギワラのin vitro有機物消化率(OM消化率),in vitro中性デタージェント繊維消化率(NDF消化率)およびin vitroガス生産量(ガス生産量)は,培養前のワラに比べて高い値であったが,無殺菌の細切イナワラおよびコムギワラのそれらは培養前のワラに比べて低い値であった.無殺菌の粉砕イナワラのOM消化率およびNDF消化率は培養前のイナワラに比べて高い値であったが,ガス生産量は低い値であった.これらのことから,無殺菌のワラにトキイロヒラタケを培養して,その消化性を向上させるには,ワラを砕く処理を施して担子菌にとって栄養源が利用しやすく,嫌気度の高い状態にすることが重要であると考えられた.
  • 田名部 尚子, 中村 豊郎
    2005 年 76 巻 4 号 p. 415-422
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/16
    ジャーナル フリー
    スチームコンベクションオーブンを使用した加熱による豚肉調理加工法を開発し,製品をソフトソーセージと名づけた.材料配合は,豚肉38.76%,卵白粉,1.94%,バレイショ澱粉7.75%,食塩0.39%,ショウガ汁0.78%,水50.39%とした.水蒸気100%,庫内温度80℃に設定したスチームコンベクションオーブンで30分加熱調理した製品は,水分が80.8%で,脂肪が1.1%と低く,エネルギー106.8kcal/100gと低かった.一般生菌数は10g中300cfu以下,大腸菌群数および大腸菌数は陰性できわめて良好であった.咀嚼性試験,物性試験および官能テストの結果,軟らかいが咀嚼から嚥下に至る過程で適度なまとまりを保ち,和風食味の食肉調理品と判定された.この製品は,脂肪がきわめて低いにもかかわらず,多汁性が高く,滑らかな口ざわりを持つ特徴がある.これらのことから,この新開発の食肉調理法は,高齢者や咀嚼・嚥下困難者を対象とする調理技術として適性が高いと考えられる.
  • 松石 昌典, 加藤 綾子, 石毛 教子, 堀 剛久, 石田 雄祐, 金子 紗千, 竹之中 優典, 宮村 陽子, 岩田 琢磨, 沖谷 明紘
    2005 年 76 巻 4 号 p. 423-430
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/16
    ジャーナル フリー
    名古屋コーチン肉を特徴づけているおいしさの要因を明らかにするため,ブロイラーと合鴨肉を比較対象として,官能評価と遊離アミノ酸などの分析を行い,以下の結果を得た.名古屋コーチンとブロイラーの加熱もも肉の2点嗜好試験では,味は両者間で差はなかったが,香り,食感および総合評価で前者が有意に好ましいと判定された.両者の2点識別試験では,うま味の強さは両者間で差がなかったが,品種特異臭と推定される名古屋コーチン臭と硬さが名古屋コーチンが有意に上位にあると判定された.両鶏のもも肉から調製したスープの2点識別試験では,うま味の強度はブロイラーが強い傾向にあった.コク味はブロイラーが有意に強かった.両スープにおける遊離アミノ酸の総モル数はブロイラーが多い傾向にあり,グリシン,ヒドロキシプロリン,セリン,アスパラギン,β-アラニン,アラニンおよびプロリンはブロイラーが有意に多かった.その他のアミノ酸は有意差がなかったが,ブロイラーが多い傾向にあった.名古屋コーチン加熱もも肉と合鴨加熱むね肉の2点識別試験では,うま味強度は名古屋コーチンが大きい傾向にあった.合鴨臭と硬さは合鴨が有意に上位にあると判定された.重量比でブロイラーもも挽肉8に合鴨むね挽肉2を混合したパティは,名古屋コーチンもも挽肉パティとは香りを根拠にした3点識別試験で識別できなかった.以上の結果より,名古屋コーチンと合鴨を特徴づけているおいしさの要因は,味ではなく,両者の互いに類似した特有香と豊かな噛みごたえであり,ブロイラーはうま味とコク味の強いスープを与える特性を有していると結論された.
  • 浜崎 陽子, 口田 圭吾, 日高 智, 島田 謙一郎, 関川 三男, 丸山 新
    2005 年 76 巻 4 号 p. 431-437
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/16
    ジャーナル フリー
    BMSナンバーの格付は,第6-7肋骨間横断面における胸最長筋を中心に行われている.しかし脂肪交雑がこの他の横断面でも同様な様相を呈しているとは限らない.本研究では,ホルスタイン種を対象として,画像解析により,BMSナンバー判定式を求めることを第1の目的とし,さらに,第2の目的として,第6-7肋骨間横断面と,この他の横断面における脂肪面積比および推定BMSナンバーについて比較を行った.分析には,BMSナンバー判定式の算出用にホルスタイン種61頭の第6-7肋骨間の胸最長筋横断面画像,また,異なる横断面における脂肪交雑の程度の比較用に,別に用意したホルスタイン種18頭の胸最長筋4横断面画像(格付面を含み,腰椎方向に2.5cm間隔で切断)を用いた.画像解析の手法により,脂肪交雑粒子のあらさおよび胸最長筋の形状などのBMSナンバー評価に影響を与えると考えられる要因について評価を行った.得られた画像解析形質を用いてBMSナンバー判定式を求めた結果,BMSナンバーを推定する重回帰式には,脂肪面積比,最大粒子の面積,単独粒子のあらさ指数,胸最長筋面積が選択され(R2=0.71),BMSナンバーに最も寄与した形質は脂肪面積比であった(偏R2=0.54).同式を当てはめ,4横断面における脂肪面積比および推定BMSナンバーについて調査した結果,近接する横断面間であっても,脂肪面積比が大きく変動するサンプルが存在した(15.9%~26.2%)が,それらのサンプルにおける推定BMSナンバーには,ほとんど差が生じなかった(1.67~2.17).
技術報告
  • 芹澤 駿治, 望月 建治, 佐藤 克昭, 片山 信也
    2005 年 76 巻 4 号 p. 439-445
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/08/16
    ジャーナル フリー
    水分調整法のひとつである減圧乾燥処理の有効性を明らかにするために,搾乳牛の新鮮糞を減圧乾燥機またはオガクズ混合によって水分70%に調整し,小型堆肥化実験装置に11lずつ詰込み堆肥化した.また,減圧乾燥機を用いて水分調整した酪農家の堆肥化事例を調査した.その結果,減圧乾燥によって水分調整した牛糞は,発酵温度がオガクズで水分調整した場合に比べ有意に高く推移した.また,小型堆肥化試験,農家実態調査ともに3週間で有機物の減少が安定した.これらの糞は,堆積1~2週で腐熟程度を示す発芽率,根長指数が向上し,1ヵ月で施用可能な堆肥になったと判断できる.減圧乾燥による水分調整はオガクズによる水分調整に比べ処理コストを要するが,調整後の処理量が少なく,堆肥化期間を短縮できることから,堆肥化施設の小面積化が可能で,新しい堆肥調整法のひとつとして有効と考える.
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