日本畜産学会報
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77 巻, 4 号
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一般論文
  • 橋谷田 豊, 渡辺 晃行, 谷口 雅律, 藤井 陽一, 宮地 利江, 浦田 博文, 藤井 満貴, 横田 昌巳, 谷村 英俊, 高橋 昌志, ...
    2006 年 77 巻 4 号 p. 471-478
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/25
    ジャーナル フリー
    妊娠認識物質であるインターフェロンτを産生する栄養膜小胞(Trophoblastic Vesicles : TVs)の共移植は,ウシ胚の受胎率の改善に有効であることが知られている.しかし,TVsを過剰排卵処理により生産した伸長期胚盤胞から作出する場合,その作出効率はホルモンに対する反応性など供胚牛の状態によって異なる.本実験では,体外生産した胚盤胞の移植(ET)または過剰排卵処理-人工授精(SOV-AI)の方法により生産した伸長期胚盤胞からのTVsの作出効率について検討を行った.ETの方法では5~10個または11~20個の胚盤胞の移植から7日後の14日目,または10個の胚盤胞のETから10日後の17日目に伸長期胚を回収した.SOV-AIでは人工授精から14または17日目に胚の採取を行った.TVsは長さ3mm以上の正常な形態の伸長胚を細切して得た栄養膜の断片を培養して作出した.採取した伸長期胚数および作出されたTVs個数を各処理区の間で比較した.採取胚総数および正常形態胚数は,14日目で採取した区では5~10個の胚盤胞ET区が11~20個ETおよびSOV-AI区と比較し,有意に少なかった(P<0.05).17日目の採取ではETおよびSOV-AIの区間で採取胚総数および正常形態の伸長胚数に差はなかった.また,細切した栄養膜断片からの作出TVs数およびTVs形成率は,ETから10日後の17日目に伸長期胚盤胞を採取し,TVsを作出した区においてもっとも高かった.これらの結果から,体外生産胚をETし,体内培養後に回収した伸長期胚盤胞を用いた方法は,移植胚数が少ない場合に作出効率が低下するものの,過剰排卵処理-人工授精による方法と同様にフィールドにおけるTVs作出方法の一つとして有効であることが示された.
  • 遠山 牧人, 平田 慎一郎, 甲斐 浩一, 角田 正和, 橋本 幹夫, 後藤 秀樹, 岩下 智宏, 平井 朋和
    2006 年 77 巻 4 号 p. 479-483
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/25
    ジャーナル フリー
    本研究は浸透圧平衡化物質のひとつであるBetaineのウシ体外受精系培地への添加効果を検討した.その結果,Betaine添加により胚盤胞発生率と胚盤胞の品質が向上し,その至適濃度は3mMであることが示された.しかしBetaineは培養期間中すべての培地に添加しなければその効果は見られなかった.またBetaineを3mM添加した培地により作出された胚盤胞を移植に供したところ,受胎率は31.8%(7/22)であった.流死産などはなく,正常産子を取得することが出来た.また,産子の平均生時体重は35.4±4.6kgであり,過大子分娩例はなかった.このことからBetaine添加による産子への悪影響は無いものと思われた.以上のことから体外受精系の培養液へのBetaine添加は胚盤胞の発生率と品質の向上に有効であることが示唆された.
  • 長命 洋佑, 寺田 文典, 広岡 博之
    2006 年 77 巻 4 号 p. 485-494
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,乳牛と肉牛の窒素摂取量(乾物摂取量やタンパク含量)と窒素排泄量の関係を調べ,また両方に適用できる窒素排泄量を予測する一般式の作成を試みることであった.用いたデータは,日本では泌乳中のホルスタイン種95頭,ホルスタイン種去勢牛45頭と黒毛和種去勢牛23頭の窒素出納試験成績,外国では33の文献より得た泌乳中のホルスタイン種と去勢肥育牛の値を用いた.本研究の結果,泌乳牛は肥育牛に比べ尿による窒素排泄割合が低かった.すべてのデータに対して線形式と指数式をあてはめた結果,窒素摂取量と糞と尿による窒素排泄量の間に正の関連性がみられた.しかし,尿による窒素排泄量は泌乳牛と去勢肥育牛で大きく異なっていたが,尿中と乳中の窒素の合計と摂取窒素の関係をみると決定係数が大幅に向上した.また,糞による窒素排泄量は窒素摂取量より乾物摂取量との方がいずれの式に関しても決定係数が高かった.
  • 相馬 幸作, 増子 孝義, 清水 千尋, 山田 和典, 蔡 義民
    2006 年 77 巻 4 号 p. 495-500
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/25
    ジャーナル フリー
    北海道の基幹草種であるチモシーを対象に,地域,生育ステージ,刈取り時刻および品種などの要因を設定し,可溶性炭水化物(WSC)含量および糖組成に及ぼす影響を調べた.地域において,1番草のWSC含量は最大2.67%(乾物中),2番草では2.37%の差があった.生育ステージでは,6月30日(出穂期)にWSC含量がピークに達した.しかし,グルコース,フルクトースおよびスクロース含量は増加しなかった.刈取り時刻では,7時からWSC含量が増加し始め,17時に最大値に達し,その差は3.00%(乾物中)になった.グルコースおよびフルクトース含量は13時に最大値に達した.品種では,1番草はクンプウ(極早生)とノサップ(早生),2番草はノサップがそれぞれWSC,グルコースおよびフルクトース含量が高かった.ただし,グルコースおよびフルクトース含量の増加はわずかであった.以上の結果から,チモシーのWSC含量と糖組成は,地域,生育ステージ,刈取り時刻および品種などの要因により著しく変動することが明らかになった.
  • 高橋 健一郎, 口田 圭吾, 堀 武司, 波 通隆, 小高 仁重
    2006 年 77 巻 4 号 p. 501-507
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/25
    ジャーナル フリー
    切開面が狭い牛枝肉において広範囲かつ鮮明な横断面画像を得ることが可能なミラー型撮影装置を用い,新たな脂肪交雑粒子のあらさの指標を提案し,一般市場に出荷される肉用品種の肉質の特性を比較した.用いたミラー型撮影装置は,デジタルカメラ,フィルムタイプミラー,白色LEDライン型照明2燈を組み合わせ,切開幅が約25cmの枝肉に挿入可能であるくさび形の撮影装置である.黒毛和種(JB)58頭,黒毛和種と褐毛和種の交雑種(BBR)43頭,褐毛和種(JBR)42頭,黒毛和種とホルスタイン種の交雑種(JBH)60頭およびホルスタイン種(HOL)48頭の5品種251頭について第6-7肋骨間のロース芯画像を解析した.得られた画像からロース芯面積,脂肪面積割合,全体のあらさなどの12形質を算出した.新たな脂肪交雑のあらさの指標として個々の脂肪交雑を面積の大きい順番に並べ替え,もっとも大きい脂肪交雑粒子から5個までを加算し,脂肪交雑総面積で除した指数(上位1~5のあらさ)が有効であった.脂肪面積割合の平均はJB 43.02%, BBR 36.62%, JBR 29.72%, JBH 31.76%, HOL 19.34%となり,JBRとJBHを除いたすべての品種間について有意差が認められた(P<0.05).上位1~5のあらさはJBH(19.88)およびHOL(20.14)において有意に高い値となった(P<0.05).
  • 谷本 保幸, 波田 瑞乃, 谷村 篤, 伊藤 慎知恵, 成田 真知, 鶴田 幸一, 吉岡 一, 藤原 信一
    2006 年 77 巻 4 号 p. 509-514
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/25
    ジャーナル フリー
    自動哺乳機を用いた少量多回哺乳における1日当たりの最適な哺乳量を,遺伝的に同一な黒毛和種一卵性双子を供試し,1日当たり4.0lと5.0lの最高哺乳量を比較する試験を行った.1日の哺乳回数は5.0l区が4.0l区にくらべ多かった.一方,哺乳報酬のない自動哺乳機への訪問回数は4.0l区が5.0l区にくらべ多かった.ただし,哺乳期間中の哺乳回数と哺乳報酬のない自動哺乳機への訪問回数との合計回数の最大は,4.0l区では28.4±15.0回(平均値±標準偏差),5.0l区では26.1±12.9回と顕著な差はみられず,自動哺乳機の利用性は同程度と推察された.自動哺乳機への馴致回数,供試牛の生時,離乳時および離乳時までの日増体量にも有意な差はみられなかった.一方,代用乳摂取量は5.0l区の方が4.0l区より有意に多かった(P<0.01).黒毛和種哺乳牛に対して自動哺乳機で少量多回哺乳をする場合,1日当たりの最高哺乳量を4.0lまたは5.0lにしても,自動哺乳機1台当たりの哺乳可能頭数や離乳までの発育に差は認められず,より経済的な1日4.0lの哺乳で問題ないと考えられた.
  • 高橋 弘, 杉本 隆重
    2006 年 77 巻 4 号 p. 515-520
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/25
    ジャーナル フリー
    生産感度解析を用い,養豚農家の繁殖成績の重要な指標である年間種付け雌豚当り離乳子豚数(PWSY)に影響を与える要因について,農家ごとに要因の優先順位付けを行った.それらの要因は,一腹当りの総産子数(TB),死産子豚数(SB),ミイラ子豚数(MB),哺乳子豚死亡率(DR),種付け雌豚非生産日数(NPSD),妊娠日数(GL)と授乳日数(LL)である.79農家のフィールドデータを用い,農家別に各要因の実績値を求めた.年間種付け雌豚当り離乳子豚数の予測モデル式は,PWSY=(TB-SB-MB)×(1-DR/100)×{(365-NPSD)÷(GL+LL)}と定義した.TB, SB, MB, DR, NPSD, GLとLLの目標値は,それぞれ12.5頭/腹,0.8頭/腹,0.0頭/腹,6.8%,34.1日/(種付け雌豚・年),115日/腹,19.7日/腹を使用した.生産感度解析の結果,優先順位第1位となった農家戸数はTBがもっとも多く29戸,次いでDRの23戸,NPSDの19戸,そしてSBの8戸の順であった.生産感度解析は,農家の実現値を得ることができれば解析可能であり,実用的な優先順位付けの手法である.
技術報告
  • 小林 正人, 庄司 則章
    2006 年 77 巻 4 号 p. 521-527
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/25
    ジャーナル フリー
    中性脂肪(TG)の分子種分画が,牛肉の脂肪融点と食味に及ぼす影響を明らかにするために,黒毛和種牛肉および腹腔内脂肪からTG分子種分画を調製し,その化学的性質と食感を調べた.TGから,飽和脂肪酸(SFA)3分子からなる分子種分画(SSS),飽和脂肪酸とモノ不飽和脂肪酸(MUSFA)が2 : 1の分画(SSM),および1 : 2の分画(SMM),ならびにMUSFA3分子からなる分画(MMM)が得られた.SSSは白色粉末として得られ,融点は57.3~61.2℃であり,口の中で溶解せず,不快なザラザラした食感を呈した.SSMは室温では白色固形で,融点は27.0~27.7℃であり,口の中ですぐに溶解した.SMM分画は,室温では液体であり,融点は8.2~12.7℃であった.MMMは4℃では液体であり,融点は-12.2~-10.0℃であり,食感は水様で脂肪の後味が残らなかった.抽出した筋肉内脂肪にSSSおよびMMMを添加したところ,融点は1%当りSSSで2.73℃上昇し,MMMで0.71℃低下した.
  • 芹澤 駿治, 佐藤 克昭, 望月 建治, 片山 信也
    2006 年 77 巻 4 号 p. 529-534
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/25
    ジャーナル フリー
    水分調整法のひとつである減圧乾燥処理した豚糞堆肥の発酵および品質特性を明らかにするために,繁殖豚の新鮮糞を減圧乾燥機またはオガクズ混合によって水分65%に調整し,小型堆肥化実験装置を用いて堆肥化した.減圧乾燥によって水分調整した豚糞(減圧区)は,発酵温度がオガクズで水分調整した対照区に比べ有意に高く推移した.また,減圧区の方が有機物の減少が多かった.腐熟程度を示すコマツナ発芽試験では発芽率は差が認められず,根長指数では減圧乾燥した牛糞で観察された腐熟促進効果は認められなかった.豚糞の減圧乾燥による水分調整は,オガクズによる水分調整に比べ処理コストを要するが,調整後の処理量が少なく堆肥化施設の縮減効果があることから,施設面積に制約条件のある養豚農家では,導入する利点があると考える.
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